[3月13日07:20.天候:晴 東京都大田区羽田空港 東京国際空港・国際線ターミナル]
イリーナ組は日本を拠点にしている関係で、真っ先に大師匠ダンテを出迎えなければならなかった。
魔道師の世界というのは、それだけ上下関係が厳しい所なのである。
尚、その割には他の魔道師達は出迎えに来ていない。
これも門内の不文律ではあるが、日本を拠点としていると正式に認められているのはイリーナ組だけである。
それ以外の組は、ダンテ来日後に来日しなくてはならないのだ。
ダンテが来日した後なら、その日であっても構わない。
しかし、既に東欧を拠点にしているアナスタシア組やマルファ組は既に来日してしまっている。
この場合はイリーナが合流した後で、合流すれば良い(つまり、後で会場入りすれば良い)。
何とも面倒臭く、どうしてこうなったのかは不明だが、とにかくそういうことをしなければならないのだ。
マリア:「大師匠様のお着きです!」
マリアが大声で言うと、イリーナは片膝をつき、稲生は『気をつけ』の姿勢をしてバッと深くお辞儀をした。
一瞬どっちに合わせれば良いのか戸惑ったのはマリアだった。
ダンテ:「出迎え、ありがとう」
ダンテは黒いローブを羽織り、茶色の山高帽を被っていた。
そして、手にはステッキ。
但し、魔法使いが使うそれと違って、ごくごく一般的に見るステッキである。
威吹の妖刀みたいに、一般的なステッキに化けさせているのだろうか(威吹は江戸扇子に化けさせていた)。
イリーナ:「お疲れでございましょう?一休みしていかれますか?」
ダンテ:「いや、先に進むとしよう。このコらを疲れさせてしまう」
稲生は最敬礼の姿勢のままだった。
日本人はお辞儀慣れしているからいいようなものの……。
マリア:(腰が痛ェ……)
マリア、よせばいいのに稲生のマネしてお辞儀なんてするから……。
ダンテ:「もういいから、顔を上げなさい」
稲生:「は、はい!」
イリーナ:「2人とも!先生への御挨拶は右膝をつくって教えたでしょ!?」
稲生:「す、すいません!」
マリア:(私の場合は片膝をついたら、スカートが……)
ダンテ:「まあ、いいからいいから」
魔法使いは杖を持っているので、その杖を持って何か敬礼の姿勢でも取るのかと思うが、騎士や兵士ではない為、そのような儀礼は無い。
恐らく、わざと体のバランスを崩して魔法が使いにくい状態にすることで、『あなたに攻撃魔法は使いませんよ』という意味があるのかもしれないと稲生は思った。
少し強引な解釈ではあるが。
ダンテ:「早速移動しよう。他のコ達も待っているのだろう?」
イリーナ:「そうですね。稲生君、タクシー乗り場に案内して」
稲生:「か、かしこまりました!」
稲生は早速下調べしていたルートでタクシー乗り場に向かった。
ハイヤーは予約すれば乗車できるのだろうが、何故かイリーナはそれは言わなかった。
恐らくダンテ自身があまり贅沢したいタイプではないのだろう。
マリアに言わせると、恐らくダンテは今回も飛行機はファーストクラスに乗って来ただろうが、航空チケットは自分で買ったものではないだろうとのこと。
ダンテのファン(というか、もはや信者)が提供したものだろうとのこと。
イリーナでさえ政財界に多くのファン(というか、もはや信者)が世界各地にいるというのに、その師匠ともなると【お察しください】。
稲生:「こちらです」
稲生はタクシー乗り場の中の『優良タクシー乗り場』にイリーナ達を案内した。
先頭に並んでいるタクシーは、黒塗りのハイグレードタイプ。
運転手がハイヤーのようにドアサービスを行った。
イリーナ:「それじゃマリア、これはお小遣い。無駄遣いしないようにね」
マリア:「ありがとうございます」
マリアが受け取ったのは、ゴールドカードのように見えた。
イリーナ:「それじゃ勇太君、マリアのこと、よろしくね」
稲生:「わ、分かりました!」
イリーナ:「約束の期日と時間は、最初に話した通りだから」
稲生:「分かりました!」
イリーナは助手席後ろの席に座って窓を開けると、稲生とマリアにそう言った。
そして、タクシーが走り去って行った。
弟子として、そこは車が見えなくなるまで見送らなくてはならない。
マリア:「OK.こんな所だろう」
稲生:「ふぅーっ!緊張したぁ……」
マリア:「……だね。私達はこれからどうする?」
稲生:「えーと……。取りあえず、僕の家に行きますか。荷物も置いて行きたいですし」
マリア:「分かった。そうしよう。で、何で行く?」
稲生:「バスなら乗り換え無しで行けるので」
稲生はタクシー乗り場の、更に向こうを指さした。
稲生:「先にバスのチケット買って来ます」
マリア:「うん、お願い」
再び到着ロビーに戻る。
どっちみちタクシー乗り場からバス乗り場に移動しようとすると、一旦そこまで戻らないといけない。
稲生:「すいません。次の大宮行き、大人2人ください」
チケットカウンターにてバスのチケットを買い求めると……。
係員:「次の便ですと、8時50分発になりますが、よろしいですか?」
稲生:「えっ、そんなに空くんですか?」
係員:「そうですね……。そうなります」
稲生:「分かりました。じゃあ、それで……」
係員:「よろしいですか?」
稲生:「はい」
稲生は2人分のチケットを購入すると、マリアの所へ戻った。
稲生:「お待たせしました」
マリア:「予約取れた?」
稲生:「はい。ただ、次の便が8時50分です」
マリア:「マジか!そんなに混んでるのか?」
稲生:「いえ。元々そういうダイヤのようです」
マリア:「そうなのか……」
稲生:「まあ、時間はたっぷりあるから、急いで家に行く必要は無いんですが……」
マリア:「それは確かに。じゃあ、どうする?」
稲生:「空港の中を散策しますか?」
マリア:「昨夜、さんざんっぱら回ったのに……」
そうしたらムーディーな雰囲気になり、ついに2人は1つの部屋で夜を過ごすことになったのだが。
さすがに今は朝で、そういう気分にはならないとは思うが。
マリア:「ま、どのみち時間は潰さないといけないか」
稲生:「そういうことです。実家への御土産を買って行ってもいいですしね」
マリア:「それだ!それを忘れてたんだ!日本の文化!」
稲生:(実家に土産を買って帰るのは、何も日本だけの文化じゃないと思うけど……)
恐らく周りの外国人観光客が、やたら日本の文化について語っているので影響でもされたのだろうか。
マリア:「早速行こう!」
稲生:「あ、はい」
マリア:「ああ、それと……」
稲生:「?」
マリア:「もう師匠は行ってしまって、ほぼプライベートみたいになったから、その……私のこと、もっと呼び易く呼んでいいよ」
稲生:「うん、分かった!」
マリア:「即答かよ!?……まあいいけど」
2人は手を取り合って、土産物店に向かった。
イリーナ組は日本を拠点にしている関係で、真っ先に大師匠ダンテを出迎えなければならなかった。
魔道師の世界というのは、それだけ上下関係が厳しい所なのである。
尚、その割には他の魔道師達は出迎えに来ていない。
これも門内の不文律ではあるが、日本を拠点としていると正式に認められているのはイリーナ組だけである。
それ以外の組は、ダンテ来日後に来日しなくてはならないのだ。
ダンテが来日した後なら、その日であっても構わない。
しかし、既に東欧を拠点にしているアナスタシア組やマルファ組は既に来日してしまっている。
この場合はイリーナが合流した後で、合流すれば良い(つまり、後で会場入りすれば良い)。
何とも面倒臭く、どうしてこうなったのかは不明だが、とにかくそういうことをしなければならないのだ。
マリア:「大師匠様のお着きです!」
マリアが大声で言うと、イリーナは片膝をつき、稲生は『気をつけ』の姿勢をしてバッと深くお辞儀をした。
一瞬どっちに合わせれば良いのか戸惑ったのはマリアだった。
ダンテ:「出迎え、ありがとう」
ダンテは黒いローブを羽織り、茶色の山高帽を被っていた。
そして、手にはステッキ。
但し、魔法使いが使うそれと違って、ごくごく一般的に見るステッキである。
威吹の妖刀みたいに、一般的なステッキに化けさせているのだろうか(威吹は江戸扇子に化けさせていた)。
イリーナ:「お疲れでございましょう?一休みしていかれますか?」
ダンテ:「いや、先に進むとしよう。このコらを疲れさせてしまう」
稲生は最敬礼の姿勢のままだった。
日本人はお辞儀慣れしているからいいようなものの……。
マリア:(腰が痛ェ……)
マリア、よせばいいのに稲生のマネしてお辞儀なんてするから……。
ダンテ:「もういいから、顔を上げなさい」
稲生:「は、はい!」
イリーナ:「2人とも!先生への御挨拶は右膝をつくって教えたでしょ!?」
稲生:「す、すいません!」
マリア:(私の場合は片膝をついたら、スカートが……)
ダンテ:「まあ、いいからいいから」
魔法使いは杖を持っているので、その杖を持って何か敬礼の姿勢でも取るのかと思うが、騎士や兵士ではない為、そのような儀礼は無い。
恐らく、わざと体のバランスを崩して魔法が使いにくい状態にすることで、『あなたに攻撃魔法は使いませんよ』という意味があるのかもしれないと稲生は思った。
少し強引な解釈ではあるが。
ダンテ:「早速移動しよう。他のコ達も待っているのだろう?」
イリーナ:「そうですね。稲生君、タクシー乗り場に案内して」
稲生:「か、かしこまりました!」
稲生は早速下調べしていたルートでタクシー乗り場に向かった。
ハイヤーは予約すれば乗車できるのだろうが、何故かイリーナはそれは言わなかった。
恐らくダンテ自身があまり贅沢したいタイプではないのだろう。
マリアに言わせると、恐らくダンテは今回も飛行機はファーストクラスに乗って来ただろうが、航空チケットは自分で買ったものではないだろうとのこと。
ダンテのファン(というか、もはや信者)が提供したものだろうとのこと。
イリーナでさえ政財界に多くのファン(というか、もはや信者)が世界各地にいるというのに、その師匠ともなると【お察しください】。
稲生:「こちらです」
稲生はタクシー乗り場の中の『優良タクシー乗り場』にイリーナ達を案内した。
先頭に並んでいるタクシーは、黒塗りのハイグレードタイプ。
運転手がハイヤーのようにドアサービスを行った。
イリーナ:「それじゃマリア、これはお小遣い。無駄遣いしないようにね」
マリア:「ありがとうございます」
マリアが受け取ったのは、ゴールドカードのように見えた。
イリーナ:「それじゃ勇太君、マリアのこと、よろしくね」
稲生:「わ、分かりました!」
イリーナ:「約束の期日と時間は、最初に話した通りだから」
稲生:「分かりました!」
イリーナは助手席後ろの席に座って窓を開けると、稲生とマリアにそう言った。
そして、タクシーが走り去って行った。
弟子として、そこは車が見えなくなるまで見送らなくてはならない。
マリア:「OK.こんな所だろう」
稲生:「ふぅーっ!緊張したぁ……」
マリア:「……だね。私達はこれからどうする?」
稲生:「えーと……。取りあえず、僕の家に行きますか。荷物も置いて行きたいですし」
マリア:「分かった。そうしよう。で、何で行く?」
稲生:「バスなら乗り換え無しで行けるので」
稲生はタクシー乗り場の、更に向こうを指さした。
稲生:「先にバスのチケット買って来ます」
マリア:「うん、お願い」
再び到着ロビーに戻る。
どっちみちタクシー乗り場からバス乗り場に移動しようとすると、一旦そこまで戻らないといけない。
稲生:「すいません。次の大宮行き、大人2人ください」
チケットカウンターにてバスのチケットを買い求めると……。
係員:「次の便ですと、8時50分発になりますが、よろしいですか?」
稲生:「えっ、そんなに空くんですか?」
係員:「そうですね……。そうなります」
稲生:「分かりました。じゃあ、それで……」
係員:「よろしいですか?」
稲生:「はい」
稲生は2人分のチケットを購入すると、マリアの所へ戻った。
稲生:「お待たせしました」
マリア:「予約取れた?」
稲生:「はい。ただ、次の便が8時50分です」
マリア:「マジか!そんなに混んでるのか?」
稲生:「いえ。元々そういうダイヤのようです」
マリア:「そうなのか……」
稲生:「まあ、時間はたっぷりあるから、急いで家に行く必要は無いんですが……」
マリア:「それは確かに。じゃあ、どうする?」
稲生:「空港の中を散策しますか?」
マリア:「昨夜、さんざんっぱら回ったのに……」
そうしたらムーディーな雰囲気になり、ついに2人は1つの部屋で夜を過ごすことになったのだが。
さすがに今は朝で、そういう気分にはならないとは思うが。
マリア:「ま、どのみち時間は潰さないといけないか」
稲生:「そういうことです。実家への御土産を買って行ってもいいですしね」
マリア:「それだ!それを忘れてたんだ!日本の文化!」
稲生:(実家に土産を買って帰るのは、何も日本だけの文化じゃないと思うけど……)
恐らく周りの外国人観光客が、やたら日本の文化について語っているので影響でもされたのだろうか。
マリア:「早速行こう!」
稲生:「あ、はい」
マリア:「ああ、それと……」
稲生:「?」
マリア:「もう師匠は行ってしまって、ほぼプライベートみたいになったから、その……私のこと、もっと呼び易く呼んでいいよ」
稲生:「うん、分かった!」
マリア:「即答かよ!?……まあいいけど」
2人は手を取り合って、土産物店に向かった。