報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「事件後の帰京」

2019-03-09 19:51:20 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月23日18:20.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、東京です。東海道新幹線、東海道本線、中央快速線、山手線、京浜東北線、横須賀線、総武快速線、京葉線、東京メトロ丸ノ内線と東西線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 私達を乗せた上越新幹線は定刻通りに都内を走行していた。

 高橋:「リサと一緒に帰るんですか?」
 愛原:「ああ。どうせ終礼もすぐ終わるだろう。それまで少し待っていようじゃないか」
 高橋:「分かりました」

 そんなやり取りがあって、列車は新幹線ホームに滑り込んだ。

〔「ご乗車ありがとうございました。終点、東京、終点、東京です。車内にお忘れ物の無いよう、お降りください。21番線に到着の電車は、折り返し18時32分発、上越新幹線“たにがわ”411号、越後湯沢行きとなります。……」〕

 私達は前の乗客に続いて列車を降りた。
 そして貸切車両となっていた7号車を見ると、スキー教室の中学生達もぞろぞろと降りていた。

 高橋:「また日本橋口に集まるんですかね?」
 愛原:「……じゃないの?」

 そしてそれは本当だった。
 やっぱり日本橋口の方が集合しやすいらしい。
 私達は自販機の付近に立って、リサ達が解散するのを待った。

 高橋:「ったく、長々と。とっとと帰らせろってんだ」
 愛原:「まあまあw」

 苛立つ高橋に対し、私は笑いを堪えながら宥めた。
 私もそうだが、高橋も覚えがあるらしい。
 大人の団体だったら、場合によっては作者の社員旅行のように帰りの乗り物の中で解散してしまうということもあるのだが。

 愛原:「おっと!」

 と、そこへ私のスマホに着信音が鳴った。
 画面を見ると、それはボスからだった。

 愛原:「はい、もしもし?」
 ボス:「私だ」
 愛原:「ボス!お疲れ様です!」
 ボス:「大活躍だったそうだな。速報は受けたよ」
 愛原:「ありがとうございます、ボス」
 ボス:「だが、クライアントの望みを半分しか叶えることができなかった。あれでは報酬も半分だな」
 愛原:「ですよね」
 高橋:「ボス!そりゃねぇだろ!?先生は全力を尽くしたんだ!」
 ボス:「高橋君。この世界は結果が全てだ。ややもすれば寝ながらでも仕事ができる世界だ。それでもクライアントの望みを全て叶えれば、それで評価される世界なのだ」
 高橋:「コナンみてぇなこと言ってんじゃねぇ!」

 あ、そうか。
 私は一瞬意味が分からなかったが、ボスは“名探偵コナン”のことを言ってたのか。
 高橋君は私以外の者に対しては、いいツッコミ役だな。

 高橋:「クソバイクがあそこで突っ込んで来なけりゃ大成功だったんだ!先生は悪くねぇ!」
 ボス:「つまり、愛原君の運が悪かったと言いたいのだね?」
 高橋:「そういうことだ。不慮の事故は免責だぜ?」
 ボス:「そういう契約にはなっていない。それに、『運も実力のうち』という言葉を知らんのか?もしキミの言う通りなのだとしたら、愛原君は運を味方に付ける実力を持ち合わせていないということになるが?」
 高橋:「な、何だと!?」
 愛原:「高橋、ボスの言う通りだ。ぶっちゃけあの時、タクシーで旅館まで先回りしてたって良かったんだ。バスの後ろを付いて行くという判断をした俺のミスだよ」
 高橋:「で、ですが……!」
 愛原:「あそこで作者が選択肢を出さなかったのも悪い。上手く行けばマイケルさんか、いおなずんさんのせいにできたのにw」

 雲羽:「しょうがないだろ!字数の都合だったんだから!」
 多摩:「てか、読者さんのせいにしようとすんなよ……」

 愛原:「報酬は半分で結構です、ボス」
 ボス:「賢明な態度だ。仕事はこれからも紹介するから、精進するように。期待している」
 愛原:「はい、分かりました。……はい。それでは、失礼します」

 私は電話を切った。

 高橋:「先生、ちょうどリサ達が解散したところです」
 愛原:「ああ、分かった」

 高橋は不機嫌そうに言った。

 愛原:「高橋、ボスは正論を言ったんだぞ?分かるな?」
 高橋:「メモっておきます!」

 高橋は苛立ちを隠しきれずに、ノートとペンを取り出した。

 リサ:「愛原さーん!お兄ちゃーん!」
 斉藤絵恋:「ど、どうも!リサさんの叔父さんとお兄さん」

 リサは表向き、家庭の事情で親戚の叔父という設定の私の家に預けられているということになっている。
 高橋については正直に、探偵の修行中の助手という説明をしている。

 愛原:「やあ、お疲れさま。いっぱい滑って来た?」
 リサ:「うん、楽しかった」
 斉藤:「リサさん、凄かったですよ!たった一回教わっただけで、もう上級者コースが滑れたんです!」
 愛原:「はは、そりゃ凄い」

 あんまり目立ってくれるな、リサ!

 愛原:「それより、ちょうど夕食時だから帰り際、夕食でも取って帰ろうかと思ってるんだけど……」
 リサ:「! おー!サイトー!サイトーもいい!?」
 愛原:「いいけど、スキー用具とかどうする?」

 リサは一式、斉藤さんから借りている。
 そして斉藤さんもまた、自分のを持っている。
 さすがにこんな大荷物持って、飲食店に行くわけには……。

 斉藤:「大丈夫です。うちの車が迎えに来てくれてますので、スキー用具とかはそれに積めます」
 愛原:「そりゃ良かった。しかし、オジさん達は一緒に乗れないだろう?」
 斉藤:「それも大丈夫です!この日の為にミニバンを用意してもらいましたから!」
 リサ:「うん。確かに今日行く時、いつもの車じゃなかった」

 さすがはセレブ。
 判断が早い。

 愛原:「それで、車はどこに?」
 メイド:「御嬢様、お迎えに上がりました」
 斉藤:「あっ、来た」
 メイド:「お待たせ致しました。それではお車の方までご案内させて頂きます」
 愛原:「車はどちらに?」
 メイド:「八重洲地下街の駐車場でございます」

 あ、なるほど。
 その手があったか。
 私はつい東京駅のどこかの出入口に車を待たせてあるものだと思っていた。

 メイド:「御嬢様、スキー用具をお持ち致します」
 斉藤:「ありがとう」
 メイド:「愛原様も」
 高橋:「おい、メイドさんよ、先生はスキーになんて行ってないぜ?」
 愛原:「バカだな。リサのこと言ってんだよ」
 高橋:「あっ!」
 リサ:「いい。大丈夫。自分で持てる」

 リサはスキー板やストック、そしてスキー靴の入ったバッグを片手でヒョイと持ち上げた。

 斉藤:「すごーい!リサさん、力持ち〜!
 リサ:「むふー

 だからリサ、目立つ行為はやめてくれー!
 私は心の中でそう叫んでいた。
コメント (1)
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