報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「シティホテルでの一夜」 2

2021-10-10 20:26:48 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月31日19:30.天候:曇 東京都八王子市 京王プラザホテル八王子 コインランドリー→客室]

 宿泊者専用コインランドリーで、使用済みの下着やジャージを洗う2人。

 リサ:「他のホテルと違って、乾燥まで一気にやってくれるんだ」
 絵恋:「終わるまで、だいぶ時間が掛かりそうね。しょうがない。夕食を食べ終わったら、また来ましょう」
 リサ:「分かった」

 尚、リサの制服については、愛原がランドリーバッグに入れてフロントまで持って行ってくれた。
 今、リサはTシャツにデニムのショートパンツという私服である。
 2人はエレベーターに乗り、それで宿泊しているフロアへ戻った。

 絵恋:「私も着替えるね。私だけ制服のままってのもアレだし」
 リサ:「サイトーも私服持って来たの?」
 絵恋:「もちろんよ」

 絵恋はキャリーバッグの中から、まだ来ていないワンピースを取り出した。

 リサ:「おー!さすが御嬢様」
 絵恋:「萌えへへへへ……ま、まあね……」

 絵恋はその服に着替えた。

 絵恋:「あー、私もランドリーに出せば良かったかな……」
 リサ:「サイトーの服は汚れてないよ?」
 絵恋:「まあ、そうなんだけどねぇ……」
 リサ:「人間の血の匂いに当てられて我を忘れるなんて、さすがに先生に申し訳ない……」
 絵恋:「リサさん!もし、どうしても我慢できなかったら、私の血を飲んでもいいから!」
 リサ:「サイトー……ありがとう」

 しばらくして、部屋のインターホンが鳴らされた。

 絵恋:「テロリストかもしれないわ!リサさんはここにいて!」
 リサ:「私が行った方がいいような気がするけど……」

 絵恋はドアの前に向かい、そこからスコープで部屋の外を見た。
 そこにはタキシードに蝶ネクタイをした若い男が立っていた。

 絵恋:「はい、何でしょうか?」

 絵恋はドアチェーンを掛けたまま、ドアを少しだけ開けた。

 ホテルマン:「お待たせ致しました。ルームサービスをお持ちしてございます」

 ホテルマンは恭しく答えた。
 ホテルマンはワゴンを押しており、その上には注文した料理と思しきものが乗せられていた。

 リサ:「おー、美味しそうな匂い」

 部屋の奥からリサのそんな声が聞こえたので、絵恋は本物のホテルマンだと判断した。
 一旦ドアを閉め、ドアチェーンを外して開ける。

 絵恋:「どうぞ」
 ホテルマン:「失礼致します」

 ワゴンの上の料理からは、カレーの匂いもした。
 確か愛原達がカレーを注文していたことを思い出す。

 絵恋:(そういえばホテルのカレーも、それぞれホテルの特色が出ていて面白いってお父さんが言ってたな……)

 絵恋がホテルマンを中に入れ、ドアを閉めようとした時だった。

 絵恋:「きゃあっ!」

 突然、ドアが勢い良く開けられ、絵恋はそれに弾かれるようにして床に倒れ込んだ。

 テロリストA:「見つけたぞ!リサ・トレヴァー!」
 テロリストB:「おとなしくしろ!」

 手にショットガンやマシンガンを構え、覆面に上下黒の作業服のような物を着た男達が数人なだれ込んで来る。
 男の1人はホテルマンを突き飛ばし、邪魔な配膳ワゴンを蹴飛ばした。
 その衝撃で、ワゴンの上の料理が床に散らばる。

 テロリストC:「リサ・トレヴァー『2番』!こいつを死なせたくなかったら、おとなしく来てもらおう!!」

 テロリストCは絵恋の頭に銃口を突き付けた。
 だが、リサは俯いたまま、第0形態から第1形態、そして第2形態へと変化して行く。

 BSAA隊長:「突入しろ!!」

 少し間を置いて、ドアを蹴破って突入するBSAA隊員達。

 BSAA隊員A:「隊長!大変です!室内は既に制圧されています!」
 隊長:「なに!?」

 隊長が室内に入ると、そこにはリサの触手によって痛い目に遭わされているテロリスト達の姿があった。
 全員が天井から吊るされていた。

 リサ:「キサマらぁぁぁっ!楽しみにしていた夕食を!食い殺す!!」
 隊長:「αチームからHQ!リサ・トレヴァーの暴走を確認!既にテロリスト達はリサ・トレヴァー『2番』によって、全員心肺停止の恐れあり!繰り返す!」
 愛原:「い、いや、『食べ物の恨み』でガヂギレしているだけで、暴走はしてないです!」
 善場:「確かに。一応、言葉は喋ってますね」
 隊長:「いや、しかし、最近のBOWは、暴走状態でも、言葉くらいは喋りますよ!?」
 愛原:「リサ!落ち着け!テロリスト達はもう倒れてるぞ!?」
 リサ:「愛原先生……」 

 リサが愛原の姿を確認すると、シュルシュルと姿を変えていく。
 まだ興奮状態なのか、第0形態にはなれなかったが、第1形態までは戻ることができた。

 リサ:「お腹空いた」
 テロリストD:「おまわりしゃん!たしゅけて!ボク、自首しまちゅ!!」

 涙や鼻水やらオシッコ漏らしながら、BSAAに助けを求めるテロリスト。

 BSAA隊員B:「俺達は警察じゃない!」
 隊長:「お前らはヴェルトロか?」
 テロリストC:「や、ヤング・ホーク団の者だ……いでででっ!」

 テロリストCが一番重傷を負っていた。
 リサの夕食をブチ撒けたからだろう。

 隊長:「ヤング・ホーク団!ヴェルトロの下部組織の1つだな。よし、連行しろ!」
 テロリストB:「び、病院に運んでくれ……」
 テロリストA:「ひぃぃ……!こんな恐ろしいヤツだなんて聞いてないよォ~……!腕と足が折れたよォ~!ママーッ!」

 BSAAの救護班によって、担架に乗せられるテロリスト達。
 もちろん、武器や弾薬は没収した上、担架にはベルトで固定して逃亡されないようにしている。

 高橋:「取りあえず殺してはいないんですね、こいつ!」
 愛原:「というわけで善場主任、リサは暴走していないという認識でよろしいでしょうか?」
 善場:「はい。上にはそのように報告しておきます」
 リサ:「先生、お腹空いた……」
 善場:「ルームサービス、また頼むからね」

 その前に、別の部屋には移動しないといけないだろう。
 尚、ホテルマンはテロリストに襲われた際、気絶したおかげで、リサの変化は見られることはなかった。

 善場:「囮作戦、成功しましたね。御協力感謝します」
 愛原:「通りでねぇ……」

 テロリストが市内に潜伏していることが分かったのなら、むしろさっさと市外に脱出するべきである。
 そうしなかったのは、BSAAは既にテロリストの作戦内容を掴んでいて、今夜掃討作戦を行う予定だったのだ。
 それを知ったNPO法人デイライトは善場を通して、わざと愛原達を市内に留まらせ、あえてヤング・ホーク団員に襲われる形を取り、後でBSAAが掃討するという作戦に加担したわけである。

 善場:「後で謝礼は致します。怖がらせて、ごめんなさいね」
 絵恋:「…………」

 因みに絵恋は放心状態であった。
 当たり前である。
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“私立探偵 愛原学” 「シティホテルでの一夜」

2021-10-10 15:41:25 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月31日18:30.天候:曇 東京都八王子市 京王プラザホテル八王子・客室フロア]

 部屋に荷物を置いて出ようとした私達だが、室内の電話が鳴った。
 何だろうと思い、電話に出てみる。

 愛原:「はい、もしもし?」
 善場:「善場です」

 善場主任からであった。

 愛原:「何でしょう?」
 善場:「所長、申し訳ありませんが、急きょ予定変更で。夕食は室内でルームサービスでお願いします。斉藤さんやリサもです」
 愛原:「えっ、そうなんですか?」
 善場:「その代わり、好きな物注文して頂いて構いませんので」
 愛原:「何かあったんですか?」
 善場:「私が所属している機関からの情報です。テロリストが市内に潜伏している恐れあり、とのことです」
 愛原:「ええっ!?」
 善場:「このホテルはセキュリティがしっかりしてはいますが、しかしロビーなどは出入り自由です。また、レストランなどは宿泊客以外も利用しますので、あまり共用部は歩かない方がいいかもしれません」
 愛原:「マジですか。因みにテロリストに、このホテルのことは……?」
 善場:「所長達が宿泊していることは内緒ですので、向こうの能力次第ですね」

 つまり、索敵能力がどれだけ優れているか、か。

 善場:「今からお部屋に向かいますので、お話もそこでさせてください」
 愛原:「分かりました」

 善場主任と電話で話しているうちに、室内のインターホンが鳴った。
 どうやら私達がなかなか部屋から出て来ないので、先に部屋から出たリサ達が痺れを切らしたらしい。

 高橋:「おう、予定変更だ。夕飯は部屋で食えだとよ」
 リサ:「部屋!?」
 絵恋:「それってルームサービスを頼めってことですか?」

 シティホテルに宿泊したことの無いリサには意味が分からなかったようだが、このような経験は何度もある絵恋さんは意味が理解できたようだ。
 恐らく、こういう所に宿泊した際、ルームサービスを実際に利用したことがあるのだろう。

 愛原:「そういうこと」

 善場主任が来るまでの間、私は今の状況を軽く説明した。

 絵恋:「しばらくこのホテルからは出られないってことですか?」
 愛原:「今日は、だろう。そのことについて、これから善場主任が説明してくれるから」

 因みにリサは制服から私服に着替えていた。
 暴走してオーナーの血の海に飛び込んだ際、特にスカートの裾を汚してしまっていたからだ。
 オーナーの血は殆ど固まっていたが、それでもまだ固まり切っていないものがリサのスカートなどに付いてしまったのだ。
 制服に関しては明日帰宅後、すぐにクリーニングに出す必要があるだろう。
 私服も一着持って来た良かったと、リサが言っていた。

 善場:「失礼します」

 しばらくして、善場主任が1人でやってきた。

 善場:「現在の状況については、愛原所長に説明した通りです。今日のところは、ホテルから一切出ないようにしてください。できれば、部屋からも出ない方がいいですね」
 リサ:「でも、着替えがもう無いから洗濯したい」
 善場:「コインランドリーは……宿泊者専用ですね。分かりました。それでは、その利用は認めましょう」
 リサ:「おー!」
 善場:「それと、お2人は部屋にお戻りください」

 善場主任はリサと絵恋さんに言った。

 リサ:「えーっ?」
 善場:「愛原所長方に大事な話があるので。ルームサービスは好きなものを頼んで頂いて結構です」

 とはいうものの……。

 愛原:「あの、あれだぞ?……そうだ。今から注文しちゃおう。いいですか、主任?」
 善場:「はい、結構です」

 善場主任は室内にあるルームサービスのメニューを取った。
 シティホテルのそれだから、値段は殆ど4ケタだ。
 それでも、ホテル内のレストランで夕食を取るよりも安いと絵恋さんは言う。

 善場:「フロントですか?ルームサービスをお願いしたいのですが。2部屋にお願いしたいんですけど、いいですか?まず、○○○号室に八王子カレー2つ、○○×号室にステーキ丼2つお願いします。あと、○○○号室にホットコーヒーをお願いします。……はい、そうです。……はい、分かりました。よろしくお願いします」

 善場主任は電話を切った。

 善場:「これで注文完了です」
 愛原:「ありがとうございます」
 善場:「それでは2人は、急いでコインランドリーに行って来てください。ルームサービスが来ても、部屋にいないようでは受け取れませんから」
 リサ:「! サイトー、行こう!」
 絵恋:「え、ええ」

 リサは絵恋の手を引っ張るようにして、部屋から出て行った。

 善場:「あと、リサの制服が汚れましたよね?ここのランドリーサービスを利用してもいいですよ?」
 愛原:「でも、こういう所のクリーニングは高そうですね」
 善場:「でしょうね。でも、リサにはまだまだ協力して頂きますから、これくらいの出費は構いませんよ」

 どうも、リサの寄生虫の件が発覚してから、リサへの取り扱いが変わったような気がする。
 寄生虫に関しては、軍事用・医療用などに使えると日本政府は踏んでいるのだ。
 寄生虫は普通の回虫と見分けが付かないし、リサの意思で自由に動かせるということは、リサを制御できているうちは安全だという判断がされているのだろう。
 日本の国益に大いに役に立つBOWとあらば、一泊くらい、こういう高級ホテルに泊まらせるのも構わないということか。
 表向きにはテロリストから守る為とはいえ。

 善場:「本当は、お食事前にこういう話をするのは憚れるのですが……」
 愛原:「構いませんよ。これも仕事ですからね」

 私は善場主任にお茶を入れながら、ふと気づいた。
 主任だけルームサービスを何も注文していない。
 それどころか、一緒に宿泊するわけではないようである。
 それについて聞いてみると、

 善場:「確かに私はこのホテルに宿泊しません。また、夕食も別の所で取らせて頂きます。この後、関係機関との調整が控えていますので」

 とのことだった。
 どうやらこの週末、休み返上で動くようである。
 いくら国家の裏で動く仕事とはいえ、大変なことだと私は思った。

 愛原:「話の内容というのは、リサの寄生虫のことですね?」
 善場:「そうです。今までのリサ・トレヴァーができなかったことを、あのコはやってくれましたので」

 いつもはポーカーフェイスの善場主任が、やや得意そうな顔になったので、それほどまでにリサの寄生虫はファインプレーだったのだろう。
 私と高橋は善場主任から話を聞いた。
コメント (3)
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