[8月10日10:00.天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]
翌日になり、私達は昨日あったことの詳細を話すべく、善場主任の事務所に向かった。
私の報告を聞いた善場主任は、こう言った。
善場:「斉藤社長が怪しいですね」
愛原:「斉藤社長が!?」
善場:「はい。愛原所長は斉藤社長からの情報を得て、白井画廊があったビルを訪ねました。しかし、そこでヴェルトロに襲われたわけです。ブルーアンブレラがいた理由は不明ですけど」
愛原:「それで?」
善場:「愛原所長達が行った時、ちょうどエレベーターの点検をやっていたということでしたね?」
愛原:「はい。それで、いつも週末はいない管理人さんが休日出勤してきたそうです」
善場:「それで、エレベーターの保守点検業者に確認しました。あのビルでは確かに非常ボタンが押されたことで、点検業者が向かったそうです。しかし、イタズラだと分かって引き上げたとのことでした」
愛原:「ヴェルトロが化けた偽業者が、辻褄を合わせる為にわざと非常ボタンを押したのかもしれませんね」
善場:「と、思います。保守点検業者を装ったヴェルトロが管理会社に連絡し、管理人を立ち会わせたのでしょう。そこへ、愛原所長達が来たと」
愛原:「用意周到ですね」
善場:「自動販売機の方も、わざとビルの関係者を装って故障であると伝え、しかし、本物の業者は故障が確認できなかったからと引き上げてしまった。そこへ今度は偽業者が来るわけです」
愛原:「なるほど」
善場:「問題は、そのヴェルトロに誰が伝えたか、です。私は斉藤社長ではないかと思うのですよ。何故なら、白井画廊の情報を提供したのは斉藤社長だけだからです」
愛原:「た、確かに……」
善場:「それと洋式と和式が切り替えできるトイレが、斉藤社長の家にもあったということですね?」
愛原:「そのようです」
善場:「しかも、和式にだけ水洗装置が付いていないと」
愛原:「そうです」
善場:「実験の為にBOWの排泄物を採取するというのは、日本アンブレラの御家芸です。つまり、斉藤社長は日本アンブレラの影響を受けているということになります」
愛原:「そんな……!」
高橋:「で、家宅捜索やるのか?」
善場:「あいにくと、証拠が無ければ令状は取れません。そこで、今度はリサにお願いがあるのです」
リサ:「私に?」
善場:「斉藤絵恋さんは埼玉の実家にいるんでしたよね?」
リサ:「うん。まだ、東京のマンションが見つからないって」
善場:「幸いリサは絵恋さんと友人関係です。リサはまた絵恋さんの家に、『遊びに』行ってください。そして、1階のトイレを使わせてもらってください。できれば、和式の状態で」
リサ:「分かった。報酬は?」
善場:「……再来月のあなたの誕生日プレゼント、弾ませてもらうよ」
リサ:「おー!PS5欲しい!」
愛原:「ゲームやりたがるBOW……」
善場:「人間らしくていいですね。いいですよ」
高橋:「大丈夫なのか?いや、姉ちゃんのことだからカネの心配はしてねーよ。そうじゃなくて、PS5は品薄でなかなか手に入りにくいって……」
善場:「デイライトのルートで手に入れますよ」
愛原:「高橋、国家権力ナメんじゃねーよ」
高橋:「さ、サーセン!」
愛原:「リサ。善場主任がそこまでしてくれるんだから、分かってるな?」
リサ:「うん、分かった。遊びに行く理由、何がいい?」
愛原:「絵恋さんはオマエに心酔しているから、特に理由は要らないと思うが……。あ、そうだ!」
私はふと思いついた。
愛原:「和式トイレの下を見た方がいい。地下には確かプールがあったな?」
リサ:「うん。……プールに入りに行かせてもらえばいいわけか」
愛原:「そうだ」
リサは自分のスマホを取り出した。
リサ:「……あ、もしもし。……うん、私。あのさ、これから遊びに行ってもいい?サイトーの家のプールに入りたい。……えっ?どういうこと?……うん。……うん。……そ、そう。えーと……」
リサが困ったような顔をして私を見た。
どうやら電話の内容からして、遊びに行くのを断られたらしい。
あの絵恋さんがリサが遊びに行くのを断るとは、よほど何かあるようだ。
私はメモ帳に、『また後で電話する』と書いた。
リサ:「また後で電話する。それじゃ」
リサは電話を切った。
愛原:「断られたのか?」
リサ:「うん」
愛原:「どうしてだ?リサの方から遊びに行きたいなんて、絵恋さんからすれば願ったり叶ったりじゃないか」
リサ:「それが、サイトーの家、これから水道工事が入るから断水中でプールに入れないんだって」
愛原:「断水中!?どうしてだ!?」
嫌な予感がした。
リサ:「1階のトイレが壊れたから、修理するんだって」
愛原:「やっぱり!」
善場:「どうやら、証拠隠滅するつもりのようですね。普通はトイレ1つ修理するだけで、家全体の水道が止まることはありませんよ。つまり、そうしなければならないほどの大掛かりな工事ということでしょう」
愛原:「家全体の水道が止まったら、生活はどうするんだ?」
リサ:「工事中はホテルに泊まるって言ってた。3日後には工事が終わるから、それ以降なら大丈夫だって言ってた」
愛原:「いや、そういう問題じゃない」
善場:「先手を取られましたね。本当に強かな人です」
愛原:「そうでないと、大企業家にはなれないのでしょうな」
善場:「私は公務員ですので、その思考は理解できません」
愛原:「ははは……。で、どうしますか?工事中ですけど、行ってみますか?」
善場:「そうですね……。リサ、絵恋さんはどこのホテルに泊まってるの?」
リサ:「パレスホテルだって言ってた」
愛原:「さすが斉藤家。高級ホテルですな」
善場:「パレスホテル大宮?東京?」
リサ:「えーと……ちょっと聞いてみる」
リサはスマホを出した。
今度は通話ではなく、LINEである。
愛原:「多分、大宮じゃないですか?」
高橋:「大穴で立川とか?」
愛原:「オマエの狙った穴馬は当たらねーだろーが」
高橋:「サーセン」
愛原:「ここは本命だろ」
善場:「斉藤社長にとっては通勤しやすい東京でしょう。同じ丸の内地区ですから、ハイヤー要らずですよ」
すると、リサが言った。
リサ:「先生、当たり。大宮だって」
善場:「よっし!」
高橋:「さすが先生です。オッズは低いですがね」
善場:「大宮ですか……」
愛原:「やっぱり家から近い方を狙いましたね」
すると、リサがまた言った。
リサ:「またサイトーからのLINE。サイトーのお父さんがホテルに頼んであげるって」
愛原:「何が?俺達は泊まらんぞ」
リサ:「パレスホテルにはプールがあるんだって」
愛原:「それで?」
リサ:「本当は会員登録するか、宿泊客は別料金を払ってそのプールに入れるらしいんだけど、私も特別にその宿泊者料金でプールに入れるようにしてくれるんだって」
斉藤社長はパレスホテルグループにも、何らかのコネがあるのだろうか。
人脈が凄いって羨ましいな。
リサ:「どうする?」
善場:「……リサは絵恋さんとプールで遊んでてください。愛原所長は、斉藤社長の家を見に行ってみてください。リサの送り迎えという形であれば、不自然は無いでしょう」
愛原:「分かりました」
一度家に戻り、リサの水着を用意してから大宮に向かうことにした。
翌日になり、私達は昨日あったことの詳細を話すべく、善場主任の事務所に向かった。
私の報告を聞いた善場主任は、こう言った。
善場:「斉藤社長が怪しいですね」
愛原:「斉藤社長が!?」
善場:「はい。愛原所長は斉藤社長からの情報を得て、白井画廊があったビルを訪ねました。しかし、そこでヴェルトロに襲われたわけです。ブルーアンブレラがいた理由は不明ですけど」
愛原:「それで?」
善場:「愛原所長達が行った時、ちょうどエレベーターの点検をやっていたということでしたね?」
愛原:「はい。それで、いつも週末はいない管理人さんが休日出勤してきたそうです」
善場:「それで、エレベーターの保守点検業者に確認しました。あのビルでは確かに非常ボタンが押されたことで、点検業者が向かったそうです。しかし、イタズラだと分かって引き上げたとのことでした」
愛原:「ヴェルトロが化けた偽業者が、辻褄を合わせる為にわざと非常ボタンを押したのかもしれませんね」
善場:「と、思います。保守点検業者を装ったヴェルトロが管理会社に連絡し、管理人を立ち会わせたのでしょう。そこへ、愛原所長達が来たと」
愛原:「用意周到ですね」
善場:「自動販売機の方も、わざとビルの関係者を装って故障であると伝え、しかし、本物の業者は故障が確認できなかったからと引き上げてしまった。そこへ今度は偽業者が来るわけです」
愛原:「なるほど」
善場:「問題は、そのヴェルトロに誰が伝えたか、です。私は斉藤社長ではないかと思うのですよ。何故なら、白井画廊の情報を提供したのは斉藤社長だけだからです」
愛原:「た、確かに……」
善場:「それと洋式と和式が切り替えできるトイレが、斉藤社長の家にもあったということですね?」
愛原:「そのようです」
善場:「しかも、和式にだけ水洗装置が付いていないと」
愛原:「そうです」
善場:「実験の為にBOWの排泄物を採取するというのは、日本アンブレラの御家芸です。つまり、斉藤社長は日本アンブレラの影響を受けているということになります」
愛原:「そんな……!」
高橋:「で、家宅捜索やるのか?」
善場:「あいにくと、証拠が無ければ令状は取れません。そこで、今度はリサにお願いがあるのです」
リサ:「私に?」
善場:「斉藤絵恋さんは埼玉の実家にいるんでしたよね?」
リサ:「うん。まだ、東京のマンションが見つからないって」
善場:「幸いリサは絵恋さんと友人関係です。リサはまた絵恋さんの家に、『遊びに』行ってください。そして、1階のトイレを使わせてもらってください。できれば、和式の状態で」
リサ:「分かった。報酬は?」
善場:「……再来月のあなたの誕生日プレゼント、弾ませてもらうよ」
リサ:「おー!PS5欲しい!」
愛原:「ゲームやりたがるBOW……」
善場:「人間らしくていいですね。いいですよ」
高橋:「大丈夫なのか?いや、姉ちゃんのことだからカネの心配はしてねーよ。そうじゃなくて、PS5は品薄でなかなか手に入りにくいって……」
善場:「デイライトのルートで手に入れますよ」
愛原:「高橋、国家権力ナメんじゃねーよ」
高橋:「さ、サーセン!」
愛原:「リサ。善場主任がそこまでしてくれるんだから、分かってるな?」
リサ:「うん、分かった。遊びに行く理由、何がいい?」
愛原:「絵恋さんはオマエに心酔しているから、特に理由は要らないと思うが……。あ、そうだ!」
私はふと思いついた。
愛原:「和式トイレの下を見た方がいい。地下には確かプールがあったな?」
リサ:「うん。……プールに入りに行かせてもらえばいいわけか」
愛原:「そうだ」
リサは自分のスマホを取り出した。
リサ:「……あ、もしもし。……うん、私。あのさ、これから遊びに行ってもいい?サイトーの家のプールに入りたい。……えっ?どういうこと?……うん。……うん。……そ、そう。えーと……」
リサが困ったような顔をして私を見た。
どうやら電話の内容からして、遊びに行くのを断られたらしい。
あの絵恋さんがリサが遊びに行くのを断るとは、よほど何かあるようだ。
私はメモ帳に、『また後で電話する』と書いた。
リサ:「また後で電話する。それじゃ」
リサは電話を切った。
愛原:「断られたのか?」
リサ:「うん」
愛原:「どうしてだ?リサの方から遊びに行きたいなんて、絵恋さんからすれば願ったり叶ったりじゃないか」
リサ:「それが、サイトーの家、これから水道工事が入るから断水中でプールに入れないんだって」
愛原:「断水中!?どうしてだ!?」
嫌な予感がした。
リサ:「1階のトイレが壊れたから、修理するんだって」
愛原:「やっぱり!」
善場:「どうやら、証拠隠滅するつもりのようですね。普通はトイレ1つ修理するだけで、家全体の水道が止まることはありませんよ。つまり、そうしなければならないほどの大掛かりな工事ということでしょう」
愛原:「家全体の水道が止まったら、生活はどうするんだ?」
リサ:「工事中はホテルに泊まるって言ってた。3日後には工事が終わるから、それ以降なら大丈夫だって言ってた」
愛原:「いや、そういう問題じゃない」
善場:「先手を取られましたね。本当に強かな人です」
愛原:「そうでないと、大企業家にはなれないのでしょうな」
善場:「私は公務員ですので、その思考は理解できません」
愛原:「ははは……。で、どうしますか?工事中ですけど、行ってみますか?」
善場:「そうですね……。リサ、絵恋さんはどこのホテルに泊まってるの?」
リサ:「パレスホテルだって言ってた」
愛原:「さすが斉藤家。高級ホテルですな」
善場:「パレスホテル大宮?東京?」
リサ:「えーと……ちょっと聞いてみる」
リサはスマホを出した。
今度は通話ではなく、LINEである。
愛原:「多分、大宮じゃないですか?」
高橋:「大穴で立川とか?」
愛原:「オマエの狙った穴馬は当たらねーだろーが」
高橋:「サーセン」
愛原:「ここは本命だろ」
善場:「斉藤社長にとっては通勤しやすい東京でしょう。同じ丸の内地区ですから、ハイヤー要らずですよ」
すると、リサが言った。
リサ:「先生、当たり。大宮だって」
善場:「よっし!」
高橋:「さすが先生です。オッズは低いですがね」
善場:「大宮ですか……」
愛原:「やっぱり家から近い方を狙いましたね」
すると、リサがまた言った。
リサ:「またサイトーからのLINE。サイトーのお父さんがホテルに頼んであげるって」
愛原:「何が?俺達は泊まらんぞ」
リサ:「パレスホテルにはプールがあるんだって」
愛原:「それで?」
リサ:「本当は会員登録するか、宿泊客は別料金を払ってそのプールに入れるらしいんだけど、私も特別にその宿泊者料金でプールに入れるようにしてくれるんだって」
斉藤社長はパレスホテルグループにも、何らかのコネがあるのだろうか。
人脈が凄いって羨ましいな。
リサ:「どうする?」
善場:「……リサは絵恋さんとプールで遊んでてください。愛原所長は、斉藤社長の家を見に行ってみてください。リサの送り迎えという形であれば、不自然は無いでしょう」
愛原:「分かりました」
一度家に戻り、リサの水着を用意してから大宮に向かうことにした。