報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「容疑者・斉藤秀樹」

2021-10-20 19:48:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月10日10:00.天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 翌日になり、私達は昨日あったことの詳細を話すべく、善場主任の事務所に向かった。
 私の報告を聞いた善場主任は、こう言った。

 善場:「斉藤社長が怪しいですね」
 愛原:「斉藤社長が!?」
 善場:「はい。愛原所長は斉藤社長からの情報を得て、白井画廊があったビルを訪ねました。しかし、そこでヴェルトロに襲われたわけです。ブルーアンブレラがいた理由は不明ですけど」
 愛原:「それで?」
 善場:「愛原所長達が行った時、ちょうどエレベーターの点検をやっていたということでしたね?」
 愛原:「はい。それで、いつも週末はいない管理人さんが休日出勤してきたそうです」
 善場:「それで、エレベーターの保守点検業者に確認しました。あのビルでは確かに非常ボタンが押されたことで、点検業者が向かったそうです。しかし、イタズラだと分かって引き上げたとのことでした」
 愛原:「ヴェルトロが化けた偽業者が、辻褄を合わせる為にわざと非常ボタンを押したのかもしれませんね」
 善場:「と、思います。保守点検業者を装ったヴェルトロが管理会社に連絡し、管理人を立ち会わせたのでしょう。そこへ、愛原所長達が来たと」
 愛原:「用意周到ですね」
 善場:「自動販売機の方も、わざとビルの関係者を装って故障であると伝え、しかし、本物の業者は故障が確認できなかったからと引き上げてしまった。そこへ今度は偽業者が来るわけです」
 愛原:「なるほど」
 善場:「問題は、そのヴェルトロに誰が伝えたか、です。私は斉藤社長ではないかと思うのですよ。何故なら、白井画廊の情報を提供したのは斉藤社長だけだからです」
 愛原:「た、確かに……」
 善場:「それと洋式と和式が切り替えできるトイレが、斉藤社長の家にもあったということですね?」
 愛原:「そのようです」
 善場:「しかも、和式にだけ水洗装置が付いていないと」
 愛原:「そうです」
 善場:「実験の為にBOWの排泄物を採取するというのは、日本アンブレラの御家芸です。つまり、斉藤社長は日本アンブレラの影響を受けているということになります」
 愛原:「そんな……!」
 高橋:「で、家宅捜索やるのか?」
 善場:「あいにくと、証拠が無ければ令状は取れません。そこで、今度はリサにお願いがあるのです」
 リサ:「私に?」
 善場:「斉藤絵恋さんは埼玉の実家にいるんでしたよね?」
 リサ:「うん。まだ、東京のマンションが見つからないって」
 善場:「幸いリサは絵恋さんと友人関係です。リサはまた絵恋さんの家に、『遊びに』行ってください。そして、1階のトイレを使わせてもらってください。できれば、和式の状態で」
 リサ:「分かった。報酬は?」
 善場:「……再来月のあなたの誕生日プレゼント、弾ませてもらうよ」
 リサ:「おー!PS5欲しい!」
 愛原:「ゲームやりたがるBOW……」
 善場:「人間らしくていいですね。いいですよ」
 高橋:「大丈夫なのか?いや、姉ちゃんのことだからカネの心配はしてねーよ。そうじゃなくて、PS5は品薄でなかなか手に入りにくいって……」
 善場:「デイライトのルートで手に入れますよ」
 愛原:「高橋、国家権力ナメんじゃねーよ」
 高橋:「さ、サーセン!」
 愛原:「リサ。善場主任がそこまでしてくれるんだから、分かってるな?」
 リサ:「うん、分かった。遊びに行く理由、何がいい?」
 愛原:「絵恋さんはオマエに心酔しているから、特に理由は要らないと思うが……。あ、そうだ!」

 私はふと思いついた。

 愛原:「和式トイレの下を見た方がいい。地下には確かプールがあったな?」
 リサ:「うん。……プールに入りに行かせてもらえばいいわけか」
 愛原:「そうだ」

 リサは自分のスマホを取り出した。

 リサ:「……あ、もしもし。……うん、私。あのさ、これから遊びに行ってもいい?サイトーの家のプールに入りたい。……えっ?どういうこと?……うん。……うん。……そ、そう。えーと……」

 リサが困ったような顔をして私を見た。
 どうやら電話の内容からして、遊びに行くのを断られたらしい。
 あの絵恋さんがリサが遊びに行くのを断るとは、よほど何かあるようだ。
 私はメモ帳に、『また後で電話する』と書いた。

 リサ:「また後で電話する。それじゃ」

 リサは電話を切った。

 愛原:「断られたのか?」
 リサ:「うん」
 愛原:「どうしてだ?リサの方から遊びに行きたいなんて、絵恋さんからすれば願ったり叶ったりじゃないか」
 リサ:「それが、サイトーの家、これから水道工事が入るから断水中でプールに入れないんだって」
 愛原:「断水中!?どうしてだ!?」

 嫌な予感がした。

 リサ:「1階のトイレが壊れたから、修理するんだって」
 愛原:「やっぱり!」
 善場:「どうやら、証拠隠滅するつもりのようですね。普通はトイレ1つ修理するだけで、家全体の水道が止まることはありませんよ。つまり、そうしなければならないほどの大掛かりな工事ということでしょう」
 愛原:「家全体の水道が止まったら、生活はどうするんだ?」
 リサ:「工事中はホテルに泊まるって言ってた。3日後には工事が終わるから、それ以降なら大丈夫だって言ってた」
 愛原:「いや、そういう問題じゃない」
 善場:「先手を取られましたね。本当に強かな人です」
 愛原:「そうでないと、大企業家にはなれないのでしょうな」
 善場:「私は公務員ですので、その思考は理解できません」
 愛原:「ははは……。で、どうしますか?工事中ですけど、行ってみますか?」
 善場:「そうですね……。リサ、絵恋さんはどこのホテルに泊まってるの?」
 リサ:「パレスホテルだって言ってた」
 愛原:「さすが斉藤家。高級ホテルですな」
 善場:「パレスホテル大宮?東京?」
 リサ:「えーと……ちょっと聞いてみる」

 リサはスマホを出した。
 今度は通話ではなく、LINEである。

 愛原:「多分、大宮じゃないですか?」
 高橋:「大穴で立川とか?」
 愛原:「オマエの狙った穴馬は当たらねーだろーが」
 高橋:「サーセン」
 愛原:「ここは本命だろ」
 善場:「斉藤社長にとっては通勤しやすい東京でしょう。同じ丸の内地区ですから、ハイヤー要らずですよ」

 すると、リサが言った。

 リサ:「先生、当たり。大宮だって」
 善場:「よっし!」
 高橋:「さすが先生です。オッズは低いですがね」
 善場:「大宮ですか……」
 愛原:「やっぱり家から近い方を狙いましたね」

 すると、リサがまた言った。

 リサ:「またサイトーからのLINE。サイトーのお父さんがホテルに頼んであげるって」
 愛原:「何が?俺達は泊まらんぞ」
 リサ:「パレスホテルにはプールがあるんだって」
 愛原:「それで?」
 リサ:「本当は会員登録するか、宿泊客は別料金を払ってそのプールに入れるらしいんだけど、私も特別にその宿泊者料金でプールに入れるようにしてくれるんだって」

 斉藤社長はパレスホテルグループにも、何らかのコネがあるのだろうか。
 人脈が凄いって羨ましいな。

 リサ:「どうする?」
 善場:「……リサは絵恋さんとプールで遊んでてください。愛原所長は、斉藤社長の家を見に行ってみてください。リサの送り迎えという形であれば、不自然は無いでしょう」
 愛原:「分かりました」

 一度家に戻り、リサの水着を用意してから大宮に向かうことにした。
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“私立探偵 愛原学” 「ヴェルトロと“青いアンブレラ”」

2021-10-20 11:46:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月9日15:30.天候:不明 東京都渋谷区初台 白井画廊跡地下室]

 リサ:「私が開ける」

 リサがそう言ったので、私は高橋に梯子を下りるように言った。
 リサは梯子に登らず、下から右手を挙げると、掌から触手を出して、それを突っつき棒のように蓋を突き上げた。

 リサ:「左手も!?」

 リサは左手からも触手を出すと、それで蓋を突き上げた。

 高橋:「開いた!」
 愛原:「よし、今だ!脱出するぞ!」

 私は梯子を登った。
 高橋とリサも後から続く。

 高橋:「先生、こういう時、梯子は体重の軽いヤツから登るもんだって聞きましたよ?」
 愛原:「リサが先ってか?それでもいいが、リサのヤツ、スカートだから中が見えるだろう?」
 高橋:「リサ、オマエ何だってこういう時にスカート穿いてくるんだ!」
 リサ:「いや、だって……」
 愛原:「まあ、いいからいいから」

 そして私はリサがこじ開けた穴から顔を出した。

 愛原:「!!!」

 と、そこへ、私の頭に硬い物が当たった。
 私が顔を上げると、それは銃口だった。

 テロリスト:「ようこそ、真実へ。愛原学」
 愛原:「し、しまった!罠か!」

 男はグレーのつなぎ服を着ており、頭にはガスマスクを被っていた。
 ガスマスクを被ってテロ活動をするのは、あのヴェルトロに他ならない。

 テロリスト:「銃を捨てて上がってきたまえ」
 愛原:「くっ……」

 私は銃を下に捨てた。
 高橋にもそうさせた。

 テロリスト:「それでいい。上がってきたまえ」

 ガスマスクを被っている為、声はくぐもっている。
 私が上がると、室内には管理人さんの死体が転がっていた。
 この男に殺されたのか。
 男はハンドガンを持っている。
 他にも、ミリタリーナイフのような物を携えていた。

 テロリスト:「我々の求めるものは唯一つ。数少ない完璧なBOW、日本のリサ・トレヴァーだ」

 やはりか。

 愛原:「1つ教えてくれ。ヴェルトロはうちのリサを使って、何しようってんだ?」
 テロリスト:「ヴェルトロの再興。偉大なるジャック・ノーマン閣下の野望を再開する。それにリサ・トレヴァーは必要不可欠」

 多分、“ベタな悪の組織の法則”で、世界征服でも目論んでいるのだろうが、もし本当にそれを実現したいならば、核兵器を超える物を用意しなければならない。
 核兵器でさえ、世界征服の道具にはなり得なかったのだから。
 いくら何でも、リサが核兵器以上の力を持っているとは思えない。
 それに、アンブレラの創業者、オズウェル・E・スペンサーは、何も世界征服の為にウィルスを開発したわけではないというぞ。

 愛原:「どうしてリサが必要不可欠なのか、聞いても教えてくれないだろうな」

 私はリサに上がって来るように言った。
 リサは梯子を登って上がって来る。

 テロリスト:「ほお、これはこれは……」

 テロリストはリサに近づいた。
 そして……跪いた。

 テロリスト:「初めてお目に掛かります。私、ヴェルトロ……」

 と、その時だった。
 管理室の窓ガラスがブチ破られ、そこから銃弾が飛んで来た。

 テロリスト:「ぐわッ!?」

 それはライフル弾で、明らかにテロリストを狙ったものだった。
 そして、ドカドカと侵入してくる集団。
 指揮を取っているのは……。

 高野芽衣子:「そこまでよ、ヴェルトロ」
 愛原:「た、高野君!?」

 “青いアンブレラ”に所属している高野君だった。
 分類上は民間軍事会社で、国連組織BSAAと違い、日本国内では正式な活動は認められていない為、ここでの活動は全て非合法のものとなる。

 高野:「捕えろ!」

 高野君が命じると、ショットガンなどを構えた隊員達が被弾して苦しむヴェルトロを捕まえた。

 テロリスト:「な、仲間がいるぞ……!」
 高野:「ああ、あなたのお仲間なら、既に捕まえたから」
 テロリスト:「な、なに……!?」
 高野:「このビルに出入りしてる業者、全部がヴェルトロの仲間なんですって」
 愛原:「な、何だって!?じゃあ、この管理人は……」
 高野:「この方はお気の毒でしたね。巻き込まれてしまって……」

 エレベーターの点検業者の他に、自販機の補充業者とかいたけど、それもヴェルトロが化けていたのか。

 高野:「さて、警察が来る前にズラからせてもらいますね。欧米なら私達、合法組織なのに……」
 愛原:「日本じゃ、銃をバンバン撃てないからね。ヴェルトロをどこに連れて行くんだ?」
 高野:「結局はBSAAに引き渡すことになります。私達の表向きは、BSAAの後方支援ですから」

[同日20:00.天候:晴 東京都渋谷区本町 警視庁代々木警察署→甲州街道]

 高橋:「よぉ、姉ちゃん。遅ェよ。身元引受人」
 善場:「それは失礼致しましたね」
 高橋:「カンベンしてくれよ。こっちは巻き込まれただけなのに、危うく犯人にされちゃう所だったんだからよ。ねぇ、先生」
 愛原:「あの様子じゃ、警察に疑われても仕方が無いな」

 警察が駆け付けた時には、ヴェルトロも“青いアンブレラ”もおらず、ミイラ化した死体と射殺体が転がっていて、その場にいたのは私達だけってことになればね。

 善場:「愛原所長、あまり先走らないでくださいと言いましたよね?」
 愛原:「申し訳ない。まさか、あそこでヴェルトロが出て来るとは思いもしなくて……。更には、“青いアンブレラ”まで来るなんて……」

 高野君には申し訳ないが、東京拘置所から脱獄した高野君がいたということは警察に話しておいたよ。
 もっとも、信じてくれたかどうかは分からない。
 多分、信じてないな。
 高野君も強かだから、そういうことも見越して私達の前に現れたのかもしれない。
 防犯カメラの映像だが、管理人室の物は全て壊され、録画も消されていた。
 なので、映像による証拠は全く無い。
 私達は善場主任が乗って来た黒塗りの高級ミニバンに乗り込んだ。
 運転席には主任の部下が乗っている。
 甲州街道に車が出ると、善場主任が口を開いた。

 善場:「まあ、いいでしょう。……それで、ヴェルトロはリサの前で跪いたということですね?」
 愛原:「そうなんです。つい、有無を言わさず連れて行くと思ったんですが……」
 善場:「その理由はいくつか考えられます。1つは所長の仰る通り、無理にでも連れて行こうとするならば、リサは抵抗したでしょう。そうなると、どうなるかは……火を見るより明らかです。それを防ぐ為、平身低頭の対応をしたのかもしれません。もう1つは、ヴェルトロは宗教組織の顔も持っています。指導者ジャック・ノーマン亡き後、リサを神格化する教義が生まれたのかもしれません。白井伝三郎は天長会の信者。白井はヴェルトロと接触を持っています。その際、天長会の教えがヴェルトロに影響したと仮定すれば、その可能性はあります。何しろ、リサは『最も危険な12人の巫女たち』の唯一の生き残りですからね」
 愛原:「なるほど。ああやってヴェルトロが現れたということは、その拠点が日本にあるかもってことですね?」
 善場:「そうです。そして私達は、それは八王子中央ホテルにあったのではないかと見ているんですよ」

 その流れから今から八王子に向かうのかと思ったが、そんなことはなく、車は東へと向かった。
 多分、実際に捜索するのはデイライトなのだろう。
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