報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「リサを狙うのはテロ組織だけではない」

2021-10-13 20:02:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月1日13:00.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 斉藤家1F食堂]

 斉藤絵恋の実家で昼食を御馳走になるリサ達。
 昼食はピザやパスタなど、イタリア料理が出た。
 リサはそれらの料理を何の疑いも無く平らげた。

 リサ:「ここのメイドさんの料理も美味しい」
 高橋:「だが、『決まった味』だな。多分、俺が作っても同じ味になるだろうよ。なあ?」
 パール:「……でしょうね」

 ここのメイド達は高橋同様、刑務所を出所した者を雇用しているのだ。
 罪状は様々だが、模範囚として仮釈放を認められた者や満期出所した者を、保護司としての顔も持つ斉藤社長が面倒を見ているという形である。
 なのでここのメイド達は終身雇用ではなく、他に行く当てが見つかればそこに転身することもある。
 元学校長など、公務員経験者や神父などの宗教家が保護司を務めることが多いが、自営業者も割合存在する。
 トチロ~さん、お1ついかがですか?

 高橋:「刑務所辺りで炊事班に配属されれば、料理が覚えられるからな」

 つまり、高橋もそれで料理を覚えたのだ。

 リサ:「お代わり、お代わりー」
 パール:「はい、ただいまお持ちします」

 前に来た時は大皿から取り分ける方式だったのが、今は個別に配膳される方式となった。
 メイドによって違うのか、或いはコロナ対策なのかは不明である。

 ダイヤモンド:「食後のコーヒーでございます」
 愛原:「ありがとう」
 斉藤秀樹:「愛原さん、大宮駅までタクシーを手配しますので、少しお待ちください」
 愛原:「それは申し訳ないですよ。もう仕事は終わったんですから、バスか徒歩で……」

 しかし、愛原の固辞を秀樹は手で制した。

 秀樹:「未だにテロ組織からは狙われているのでしょう?八王子では下部組織のメンバーが逮捕されたようですが、まだ本家は捕まっていないわけですからね」
 愛原:「それはそうですが……」
 秀樹:「本当ならご自宅まで、車での送迎が必要なほどだとは思うのですが……」
 愛原:「そういった意味では、日本は平和でいいですね」

 別に、リサ達が無防備というわけではない。
 家の外から時折ヘリコプターの音が聞こえるが、あれがBSAAのヘリだということは既に分かっている。
 上空からBSAAの護衛付きなのだ。
 もちろんBSAAの目的はそれだけではなく、リサが暴走したら止めに来るのが大きい。

 オパール:「失礼します。御主人様、開発部の皆様が到着されました」
 秀樹:「そうか。例の場所に通しておいてくれ」
 オパール:「かしこまりました」
 愛原:「開発部の方って……」
 秀樹:「ああ、うちの社員です。ちょっと、これから仕事の話があるので……」
 愛原:「日曜日なのに大変ですね」
 秀樹:「そうなんですよ。タクシーは手配させますので、それまではどうぞごゆっくりなさってください」
 愛原:「ありがとうございます」
 リサ:「……ちょっとトイレ」

 リサは腹を押さえながら席を立った。

 絵恋:「向こうにあるよ。私が案内するわ」
 秀樹:「いや、それはダメだ」
 絵恋:「えっ?」
 秀樹:「オパール、キミが案内してくれ」
 オパール:「かしこりました。それではリサ様、こちらへどうぞ」
 リサ:「う、うん……」
 ダイヤモンド:「御主人様、社員の皆様がお待ちですので……」
 秀樹:「ああ、すぐに行く」

[同日13:30.天候:不明 斉藤家B2F秘密研究施設]

 ……秀樹はホームエレベーターに乗った。
 そのエレベーターは本来、地下1階までしか行かないはずだった。
 しかし、B1Fのボタンの横には、カバーに隠された無地のボタンがあった。
 それを押すと、エレベーターは斉藤家秘密の地下室へと降りて行く。

 研究員A:「社長、お疲れ様です」
 秀樹:「待たせたな。『被験体』は?」
 研究員B:「はっ、たった今、例のトイレに入ったところです」

 研究員Bがモニタを映し出す。
 そこには斉藤家のトイレに入ったリサが映し出されていた。
 隠しカメラで撮影しているのである。
 トイレに入ったリサは、しばし呆然としていた。
 何故なら、そこにある便器は和式だからである。
 もちろん、普段そのトイレは洋式である。
 しかし、ある条件を満たすとレバー1つで洋式トイレと和式トイレが入れ替わるギミックが施されているのである。
 学校でもトイレの洋式化が進みつつあるという。
 ましてや、私立校となると尚更だ。
 とはいうものの、東京中央学園上野高校では和式が全滅したわけではないので、一応使い方はリサは知っている。
 また、それでなくても、日本アンブレラは日本版リサ・トレヴァー達に和式トイレをよく使わせた。
 『検便しやすいから』『BOWはどのように排便・排尿するか観察する為』等と称して。
 下り腹となったリサには、もう考えているヒマは無くなったのだろう。
 制服のスカートの中に手を入れ、黒いショーツを下ろすと、便器に跨った。
 すぐに、便器に大量の大便が落ちる。

 秀樹:「さすがは我が社の下剤だ。水様便にすることなく、適度な硬さの便がすぐに出るようになっている」
 研究員A:「あれも開発するのに苦労しました。しかも、下痢の症状が続いては本末転倒です。あくまでも、催すのは1回ないし2回までとなるようにしています」
 研究員B:「あの日本アンブレラが開発したBOWリサ・トレヴァーにも、我が社の下剤が効くことが証明されましたな」
 秀樹:「おいおい。今回の目的はそれではないぞ。それはあくまで副産物だ」
 研究員B:「そうでした」

 トイレットペーパーで拭き終わったリサが、水を流そうとレバーやボタンを探す。
 だが、見つからない。
 それはそうだ。
 それは、ここで遠隔で流せるようにしているのだから。
 正確に言えば、流すのではない。

 秀樹:「よし、採取しろ」
 研究員A:「はっ」

 研究員がボタンを押すと、便器に穴が開き、そこからリサの大便が落ちた。
 その様子に驚くリサ。
 だが、その後で水が流れたことで安心したのか、下着を元通りに穿くと、個室を出て行った。
 一方、便器の穴から落ちて来た大便が、研究員達の目の前のカプセルに落ちて来る。

 研究員C:「ありました!例の寄生虫です」
 研究員A:「うーむ……。やはり、見た目はごく普通の回虫と同じだ」
 秀樹:「だからこそ、普通の回虫と誤魔化して確保することができるというわけだな。よし、いくつかサンプルを回収して研究所に回せ」
 研究員B:「はっ!」
 研究員A:「社長、これで我が社も……」
 秀樹:「政府にばかりいい思いはさせんよ。政府はリサ・トレヴァーを核兵器の代わりとなる抑止力に使いたいようだが、我々はあくまでも製薬企業として、新薬の開発に利用させて頂く」

 秀樹がこんな回りくどいやり方でリサの寄生虫を採取したのは、当然ながらリサのことは本来国家機密モノであり、そこからウィルスや寄生虫を勝手に採取するのは御法度だからである。
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“私立探偵 愛原学” 「斉藤社長との話」

2021-10-13 15:58:12 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月1日11:15.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 斉藤家]

 応接間に行くと、私服姿の斉藤社長が待ち構えていた。

 斉藤秀樹:「やあやあ、愛原さん。御足労ありがとうございます」
 愛原:「とんでもございません」

 私はソファを勧められ、ゆっくりと腰かけた。
 すかさず、メイドのダイヤモンドが冷茶を持ってくる。
 パーラーメイドの仕事は接客係であり、このような呈茶も立派な業務内容の1つである。

 秀樹:「まずはこれを……」

 社長は茶封筒をテーブルの上に置いた。

 秀樹:「娘を安全に、ここまで送って頂いた謝礼です」
 愛原:「ありがとうございます」

 私が封筒を手に取ると、そこには現金が入っていた。
 今まで斉藤社長からの依頼で、現金を受け取るのはこれが初めてである。

 秀樹:「正式な契約ではないものですから、報酬はこれでお願いします」
 愛原:「ああ、なるほど。恐れ入ります。後で領収書を作成してお持ち致します」
 秀樹:「こちらに郵送で構いませんので」
 愛原:「郵送でよろしいですか」
 秀樹:「はい。特に急ぎの物ではないので、普通郵便で結構ですよ」

 とはいうものの、ちゃんと必ず届いたかどうかは確認したいので、簡易書留くらいにして送った方が良いだろう。

 愛原:「かしこまりました」
 秀樹:「それより、捜査はどこまで進みましたか?テレビで観ましたが、愛原さんの宿泊先のホテル関係者が殺されたらしいですね。しかも、昨日は宿泊中のホテルを襲撃されたようだ」
 愛原:「いや、大変でしたよ。まさか、テロ組織に狙われるとは……」
 秀樹:「こちらも色々と調べましたよ」
 愛原:「本当ですか」
 秀樹:「まず、バイオテロ組織ヴェルトロの復活は本当のようです。2005年にBSAA……正確にはBSAAに吸収される前のFBCというアメリカ政府肝煎りのバイオテロ捜査機関が、当時のヴェルトロを壊滅させたということになっています」
 愛原:「しかしながら、リーダーのジャック・シュラ・カッパー……もとい、ジャック・ノーマンは地中海に沈んだ船の奥底で生き永らえていたわけですね。そこをBSAAの幹部隊員によって倒されたと……」
 秀樹:「ヴェルトロには、もう1つの顔がありました。それは宗教組織という顔です。ジャック・ノーマンは、ダンテの“神曲”と旧約聖書の一部を経典とした新興宗教を運営していたようです。そのカリスマ性に惹かれて、組織に入った者も数多くいたとか……」
 愛原:「仏教典と旧約聖書のいいとこ取りをした宗教である天長会と似ていますね」
 秀樹:「それと神道ですね。天長会は仏教と神道とカトリック系キリスト教の融合体です。どちらかというと仏教の色は薄く、神道の色が濃いようです」
 愛原:「『最も危険な12人の巫女』なんて言葉が出て来るくらいですものね」

 天長会の信者だった白井伝三郎は、日本版リサ・トレヴァーを天長会の教義をモデルにして作ったのだろう。
 白井を追い詰める鍵は天長会にあるような気がして、そこの資料などを読んでみたが、よく分からなかった。
 白井は幹部信者ではないのか、そこの機関紙や機関誌に彼の名前が出て来ることはなかった。
 会長と称する白衣を着た教祖らしき男の演説が載っているのと、よくある『私は天長会で幸せになれました』的な体験発表くらいである。

 愛原:「うちのリサは、そんな『危険な12人』の1人にカウントされていたわけです」
 秀樹:「今となっては、頼もしいコじゃありませんか。京王プラザホテル八王子では、大活躍だったそうじゃありませんか」
 愛原:「食べ物の恨みは恐ろしかったということですよ」
 秀樹:「は?」
 愛原:「いえ、何でも……。それと、私からも社長にお聞きしたいことがあるのです」
 秀樹:「どうぞ、何なりと。但し、今答えられるものとそうでないものがありますが」
 愛原:「恐らく前者になるであろう質問です。失礼ですが、社長の御宅には立派な絵画が飾ってありますね」
 秀樹:「ああ、これですか。家が殺風景にならないよう、飾っているだけです。無名画家の個展などで仕入れたものなので、そんなに価値があるものではありませんよ。もっとも、将来有望な画家もいましたから、彼らが有名になれば、値段は上がるでしょうがね。愛原さんも、絵画に興味があるんですか?」
 愛原:「ある意味では……」

 私は八王子中央ホテルであったことを社長に話した。

 秀樹:「白井画廊ですか……」
 愛原:「社長は御存知ですか?」
 秀樹:「いえ、あいにくと……。私は、あまり画廊では絵画を購入しないのですよ。吹っ掛けられますからね。こちらが、ちょっと金を持っているだけの絵の素人だと思って……」
 愛原:「不動産売買でもあり得そうな話ですね」
 秀樹:「そうですね。株の売買においてもです。……話を戻しましょう。1人、話しやすい画廊の者がいますので、その者に聞いてみます」

 斉藤社長は自分のスマホを取り出した。

 秀樹:「ああ、私だがね……。いや、誰がゴッホの絵なんか買うかい!……ピカソの絵が入ったぁ!?だから、買わないって!」

 大丈夫か、この画廊?
 “クレヨンしんちゃん”に出て来る、野原家に干された埼玉県の画家、ピカソ小川の絵だったりして。

 秀樹:「いや、ちょっと、同じ画廊のことについて聞きたいんだがね。白井画廊って知ってるかい?……やっぱり知らないか。八王子のホテルの支配人に絵を売り付けていた画廊だよ。……知らない?知り合いの話によると、今まで世界中で発生したバイオハザード事件を描いた絵とかを扱っているらしいんだ。……調べてくれるかい。ありがとう。上手く行ったら、絵画の購入も考えてやる。天野喜孝の絵でよろしく」

 何故に天野喜孝!?
 斉藤社長もFFが好きなのか!?
 電話を切った社長が私に言う。

 秀樹:「やっぱり無名の画廊らしく、最初は知らないと言ってました。ところが、バイオハザード事件の絵を専門的に扱っていると言ったら、業界内部では噂になっているらしく、そこから調べると言ってくれました」
 愛原:「そうですか」
 秀樹:「申し訳無いですね。この程度のことしかお役に立てなくて……」
 愛原:「いえいえ、とんでもございません。十分過ぎるご協力です。ありがとうございます」

 恐らく、何日かは掛かることだろう。
 その後、色々と話しているうちに、ダイヤモンドが昼食の用意ができたと呼びに来た。
 私は固辞して帰ろうと思ったのだが、既に私達の分も用意されているという。
 社長からも誘われたので、昼食だけ御馳走になって帰ることになった。
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