[8月16日09:15.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]
斉藤絵恋:「おはよう!リサさん!迎えに来たよ!一緒に学校行こう!」
リサ:「ああ、サイトー。おはよう」
今日はリサ達の登校日である。
もしまだ学校周辺に不審人物が見受けられるようなら、リサは休むことになっていた。
しかし、一部とはいえヴェルトロのメンバーやその下部組織のメンバーが逮捕されたことで、そのような不審人物の出没はナリを潜めた。
その為、今日の登校日は登校することになった次第である。
授業や試験があるわけではない為、登校時間は朝ラッシュの終わった時間になる。
尚、部活動がある場合はこの限りではない。
リサ:「引っ越し、お疲れ様」
絵恋:「ありがとう。向かい側だから、気軽に遊びに来てね」
リサ:「うん、分かった」
絵恋が住む賃貸マンションの引っ越しは昨日、行われた。
それは、新大橋通りを挟んで向かい側のマンションだった。
愛原達の住むマンションと比べれば、若干築年数は多い。
リサ:「ちょうど良かった。帰りにうちに寄って。借りてたゲーム、返す」
絵恋:「分かったわ。是非、寄らせてもらいまーす」
2人は制服の夏服を着ていたが、盛夏用に認定された薄緑色のポロシャツを上に着ていた。
ブラウスよりも通気性が良く、洗濯しやすい上に、首にリボンやネクタイを着けなくてもだらしなく見えないというのが理由である。
加えて女子用の場合は、ブラウスよりもインナーが透けにくいという利点もある。
但し、ブラウスより体にぴったりしやすい為、サイズが小さいとインナーが浮き出てしまうという欠点もあるが。
もちろん学校指定の制服の1つであるので、胸ポケットの所には校章のワッペンが着いている。
リサ:「サイトー、家のトイレの修理は終わった?」
絵恋:「もうとっくに終わったわ。今度は洋式だけになったから、安心して使ってね」
リサ:「公衆トイレじゃ、和式もあるからその練習用って聞いたけど……」
絵恋:「駅のトイレとかでしょ?そういう所も洋式が増えたからね。逆に和式に当たる事が少なくなったから、もういいんじゃないかってお父さんが言ってた」
リサ:「そう」
絵恋:「でもね、また工事が始まったのよ」
リサ:「なに?」
絵恋:「今度は地下室よ」
リサ:「地下室!?」
絵恋:「プールの配管が壊れたんですって。だからもう今年の夏は、うちのプールに入れなくなっちゃった。ほんと、嫌になっちゃうわ。リサさんの水着姿、もっと見たかったのに……」
リサ:「オマエに見せる為に着てるんじゃないからな?」
絵恋:「でも、修理ついでに温水機能付きにしてくれるらしいから、冬でも入れるようになるからね」
リサ:「元々温水機能って無かったっけ?」
[同日09:34.天候:晴 都営地下鉄菊川駅→新宿線969K電車10号車内]
朝ラッシュのピークが過ぎた時間ではあるが、まだまだ乗客の多い駅構内を歩く。
ピークは過ぎている為、当路線でも行われている女性専用車の運用は終了している。
〔まもなく1番線に、京王線直通、各駅停車、橋本行きが10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください。この電車は京王線内、区間急行となります〕
トンネルの向こうから、轟音が聞こえて来る。
そして、ゴォッという強風を巻き起こしながら京王電車が入線してきた。
最後尾の位置にいる為、その風をまともに受けることとなる。
2人の少女のサラサラとした髪がそれで大きく靡いた。
スカートの裾も靡くものの、さすがにそれは捲れるほどではない。
もっとも、捲れたところで、学校指定のスパッツを穿いている為、パンチラすることはない。
リサ達は校則で、スカートの下には必ずスパッツを穿くことが義務付けられている(これは体操服のハーフパンツとはまた別)。
かつてはスパッツではなく、ブルマーであった(ブルマーだったら、体操服と兼用できて費用も抑えられただろうに……)。
〔1番線の電車は、京王線直通、各駅停車、橋本行きです。きくかわ~、菊川~〕
時間が時間なら、女性専用車の運用が行われる車両に乗り込んだ。
この時間は既に終了しているので、もう男性客も同乗している。
朝ラッシュのピークが過ぎたとはいえ、まだ空いている時間でもない。
座ることはできず、リサと絵恋は空いている吊り革に掴まった。
〔1番線、ドアが閉まります〕
ピンポーンピンポーンと京王電車ならではの音色のドアチャイムを鳴らして、ドアが閉まった。
もっとも、音色自体は専売特許というわけではなく、JR東海の在来線なども同じような音色である。
そして、電車が走り出す。
〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Morishita.S11.Please change here for the Oedo line.〕
リサ:「サイトー、体の具合とか大丈夫?」
斉藤:「ええ、大丈夫よ。今朝も熱は36度5分の平熱よ。どうして?」
リサ:「あ、いや……。善場さんが、私がまたあなたにウィルスを移してないか心配してたからね」
本当は特異菌に感染していないかどうかである。
斉藤:「私はリサさんのウィルスだったら、喜んで感染しちゃうんだけどなぁ……」
リサ:「私もBOWだから、どうしても近くにいると移っちゃう。もちろん、私が意識しなければ、無症状だけど。だから、愛原先生達も症状は無い。というか、先生達は既に抗体があるから、また話は別だけど……」
斉藤:「私には抗体は無いの?私自身もそんなに症状があるとは思えないんだけど……」
リサ:「もちろん、私が活性化させていないからだけどね。(そうじゃなくて……)」
リサは心の中でツッコんだ。
リサ:(特異菌は私のウィルスや寄生虫をも食べてしまうらしい。サイトーに症状が無いのは、そのせいかもしれないのに……)
しかし、体に違和感は発生することがある。
リサは絵恋にそれが無いか、それとなく聞こうとしていたのだ。
だが、絵恋はそれっぽい答えを返して来なかったし、見た目には(更には、こうして話をしていても)特異菌に感染しているようには見えなかった。
100%適応できないと、特異菌はカビの一種であるから、カビの臭いがすることがあるという。
BOWたるリサは人間よりもよく利く鼻を持っているが、少なくとも絵恋からはそのような臭いはしなかった。
100%適応できた人間は、今のところ世界中に1人しかいない。
しかも、それは日本人ではない。
リサ:(サイトーは特異菌の感染者じゃないのか?それとも、私のウィルスやコロナウィルスみたいに無症状状態があるだけ?)
もっとも、今は地下鉄トンネルの中だ。
窓を開ければ、トンネルのカビ臭い臭いが車内に入って来る。
そのせいもあるかもしれなかった。
斉藤絵恋:「おはよう!リサさん!迎えに来たよ!一緒に学校行こう!」
リサ:「ああ、サイトー。おはよう」
今日はリサ達の登校日である。
もしまだ学校周辺に不審人物が見受けられるようなら、リサは休むことになっていた。
しかし、一部とはいえヴェルトロのメンバーやその下部組織のメンバーが逮捕されたことで、そのような不審人物の出没はナリを潜めた。
その為、今日の登校日は登校することになった次第である。
授業や試験があるわけではない為、登校時間は朝ラッシュの終わった時間になる。
尚、部活動がある場合はこの限りではない。
リサ:「引っ越し、お疲れ様」
絵恋:「ありがとう。向かい側だから、気軽に遊びに来てね」
リサ:「うん、分かった」
絵恋が住む賃貸マンションの引っ越しは昨日、行われた。
それは、新大橋通りを挟んで向かい側のマンションだった。
愛原達の住むマンションと比べれば、若干築年数は多い。
リサ:「ちょうど良かった。帰りにうちに寄って。借りてたゲーム、返す」
絵恋:「分かったわ。是非、寄らせてもらいまーす」
2人は制服の夏服を着ていたが、盛夏用に認定された薄緑色のポロシャツを上に着ていた。
ブラウスよりも通気性が良く、洗濯しやすい上に、首にリボンやネクタイを着けなくてもだらしなく見えないというのが理由である。
加えて女子用の場合は、ブラウスよりもインナーが透けにくいという利点もある。
但し、ブラウスより体にぴったりしやすい為、サイズが小さいとインナーが浮き出てしまうという欠点もあるが。
もちろん学校指定の制服の1つであるので、胸ポケットの所には校章のワッペンが着いている。
リサ:「サイトー、家のトイレの修理は終わった?」
絵恋:「もうとっくに終わったわ。今度は洋式だけになったから、安心して使ってね」
リサ:「公衆トイレじゃ、和式もあるからその練習用って聞いたけど……」
絵恋:「駅のトイレとかでしょ?そういう所も洋式が増えたからね。逆に和式に当たる事が少なくなったから、もういいんじゃないかってお父さんが言ってた」
リサ:「そう」
絵恋:「でもね、また工事が始まったのよ」
リサ:「なに?」
絵恋:「今度は地下室よ」
リサ:「地下室!?」
絵恋:「プールの配管が壊れたんですって。だからもう今年の夏は、うちのプールに入れなくなっちゃった。ほんと、嫌になっちゃうわ。リサさんの水着姿、もっと見たかったのに……」
リサ:「オマエに見せる為に着てるんじゃないからな?」
絵恋:「でも、修理ついでに温水機能付きにしてくれるらしいから、冬でも入れるようになるからね」
リサ:「元々温水機能って無かったっけ?」
[同日09:34.天候:晴 都営地下鉄菊川駅→新宿線969K電車10号車内]
朝ラッシュのピークが過ぎた時間ではあるが、まだまだ乗客の多い駅構内を歩く。
ピークは過ぎている為、当路線でも行われている女性専用車の運用は終了している。
〔まもなく1番線に、京王線直通、各駅停車、橋本行きが10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください。この電車は京王線内、区間急行となります〕
トンネルの向こうから、轟音が聞こえて来る。
そして、ゴォッという強風を巻き起こしながら京王電車が入線してきた。
最後尾の位置にいる為、その風をまともに受けることとなる。
2人の少女のサラサラとした髪がそれで大きく靡いた。
スカートの裾も靡くものの、さすがにそれは捲れるほどではない。
もっとも、捲れたところで、学校指定のスパッツを穿いている為、パンチラすることはない。
リサ達は校則で、スカートの下には必ずスパッツを穿くことが義務付けられている(これは体操服のハーフパンツとはまた別)。
かつてはスパッツではなく、ブルマーであった(ブルマーだったら、体操服と兼用できて費用も抑えられただろうに……)。
〔1番線の電車は、京王線直通、各駅停車、橋本行きです。きくかわ~、菊川~〕
時間が時間なら、女性専用車の運用が行われる車両に乗り込んだ。
この時間は既に終了しているので、もう男性客も同乗している。
朝ラッシュのピークが過ぎたとはいえ、まだ空いている時間でもない。
座ることはできず、リサと絵恋は空いている吊り革に掴まった。
〔1番線、ドアが閉まります〕
ピンポーンピンポーンと京王電車ならではの音色のドアチャイムを鳴らして、ドアが閉まった。
もっとも、音色自体は専売特許というわけではなく、JR東海の在来線なども同じような音色である。
そして、電車が走り出す。
〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Morishita.S11.Please change here for the Oedo line.〕
リサ:「サイトー、体の具合とか大丈夫?」
斉藤:「ええ、大丈夫よ。今朝も熱は36度5分の平熱よ。どうして?」
リサ:「あ、いや……。善場さんが、私がまたあなたにウィルスを移してないか心配してたからね」
本当は特異菌に感染していないかどうかである。
斉藤:「私はリサさんのウィルスだったら、喜んで感染しちゃうんだけどなぁ……」
リサ:「私もBOWだから、どうしても近くにいると移っちゃう。もちろん、私が意識しなければ、無症状だけど。だから、愛原先生達も症状は無い。というか、先生達は既に抗体があるから、また話は別だけど……」
斉藤:「私には抗体は無いの?私自身もそんなに症状があるとは思えないんだけど……」
リサ:「もちろん、私が活性化させていないからだけどね。(そうじゃなくて……)」
リサは心の中でツッコんだ。
リサ:(特異菌は私のウィルスや寄生虫をも食べてしまうらしい。サイトーに症状が無いのは、そのせいかもしれないのに……)
しかし、体に違和感は発生することがある。
リサは絵恋にそれが無いか、それとなく聞こうとしていたのだ。
だが、絵恋はそれっぽい答えを返して来なかったし、見た目には(更には、こうして話をしていても)特異菌に感染しているようには見えなかった。
100%適応できないと、特異菌はカビの一種であるから、カビの臭いがすることがあるという。
BOWたるリサは人間よりもよく利く鼻を持っているが、少なくとも絵恋からはそのような臭いはしなかった。
100%適応できた人間は、今のところ世界中に1人しかいない。
しかも、それは日本人ではない。
リサ:(サイトーは特異菌の感染者じゃないのか?それとも、私のウィルスやコロナウィルスみたいに無症状状態があるだけ?)
もっとも、今は地下鉄トンネルの中だ。
窓を開ければ、トンネルのカビ臭い臭いが車内に入って来る。
そのせいもあるかもしれなかった。