[8月10日13:30.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 斉藤家]
地下1階を見せてもらった私は、再び1階に戻ると、応接室へ入った。
高橋:「あっ、結構ゆっくりでしたね、先生?」
愛原:「まあな」
サファイア:「パールと御嬢様の忘れ物は纏めておきました。これをお持ちになってください」
サファイアはペーパーバッグを2つ差し出した。
愛原:「中身は何なの?」
高橋:「替えの下着やら化粧品やら水着も入ってますよ?」
愛原:「水着?あれ?水着ならもう持ってるんじゃないの?」
まあ、だいたい知っている。
絵恋さんはリサに見せびらかす為に、新しく買った最新トレンドの水着を持って行ったのだろう。
そこをあえてリサが、『学校の水着も着てよ』と言ったのだ。
リサに心酔している絵恋さんがリサの頼みを断れるはずがなく、それで用意するようパールに命じたのである。
サファイア:「事情は分かりかねますが、御嬢様より、急きょ用意するように命ぜられたのです」
愛原:「ふーん……」
まあ、知ってる。
それよりも……。
愛原:「この家って、地下2階があるんですか?」
サファイア:「いえ、無いと思いますが……」
サファイアは首を傾げた。
恐らくメイドさん単位では知らないのだろう。
愛原:「このエレベーターの操作盤を開ける鍵って持ってますか?」
サファイア:「いえ、持っておりません」
愛原:「誰かが持っているのですか?」
サファイア:「エレベーターの点検業者さんなら持っていると思いますが……」
愛原:「それと、斉藤社長かな?」
サファイア:「……御主人様ならお持ちかもしれませんが……。それがどうかなさったのですか?」
愛原:「実はこの前、東京の初台で、エレベーターの点検業者に化けたテロリストに襲われましてね。ここの御宅にもエレベーターがある以上、点検業者は来るでしょう?」
サファイア:「ええ、まあ……」
愛原:「なので気を付けて頂きたいのですよ」
サファイア:「かしこまりました。御忠告、ありがとうございます」
初台で私達を襲ったテロリストが、エレベーターの点検業者を装い、管理人を呼び寄せたことまでは分かっている。
なので、私の言葉にはウソは無い。
愛原:「じゃあ高橋、そろそろ行こうか」
高橋:「あ、はい」
私は荷物を受け取ると、席を立った。
再び灼熱の太陽が照り付ける中、駐車場に向かって歩く。
高橋:「先生、もうよろしいんですか?」
愛原:「表向きの用件は済んだ。にも関わらず長居をすれば、それだけで怪しまれるよ」
高橋:「はあ……」
駐車場に戻り、高橋が運転席に乗り込んでエンジンを掛ける。
高橋:「熱っ!」
案の定、炎天下に晒されていたNV200の車内は灼熱地獄と化していた。
確かにこんな所に子供を放置したら死ぬに決まっている。
私はそう考えながら、料金を投入した。
もちろん、領収書を発行するのを忘れない。
パチンコ店の駐車場も兼ねている為か、駐車場内の注意看板には、『子供の車内放置は厳禁です。時間に関わらず、発見次第警察に通報します』と書かれていた。
高橋:「先生、見てくださいよ。パールのヤツ、下着まで迷彩柄っスよ」
私が助手席に乗り込むと、高橋がバッグの隙間から中を覗いて言った。
愛原:「オマエ、彼女の下着、他人にバラすなよ……」
高橋:「先生ならOKっス」
愛原:「それより早く行こう」
高橋:「はい」
高橋は車を出した。
愛原:「あの家のエレベーター、三菱電機製だったな……」
高橋:「はあ……」
私はどうにかして、あのエレベーターの鍵を手に入れられないか考えた。
マンションにあるのはオーチス製、事務所のビルはフジテックと、メーカーが合わない。
愛原:「うーむ……」
[同日13:45.天候:晴 同市大宮区 パレスホテル大宮]
再びパレスホテル大宮に戻った私達は、フロントに荷物を預けた。
まだリサ達はプールで遊んでいるだろう。
その間どうしようか迷っているうちに、私はホテルのエレベーターの方を見た。
1つのエレベーターのドアが開けられ、そこに警備員と清掃員がいた。
清掃員がカゴの中を清掃し、それに警備員が立ち会っているといった感じだ。
警備会社は違うが、かつては私もあの制服を着て制帽を被って仕事をしていた。
どうやら、カゴの中が汚れたらしい。
客が飲み物か何かを零したのだろう。
それで警備員がエレベーターを止めて、清掃員が清掃をしているということだ。
清掃員:「はい、終わりました」
警備員:「お疲れ様」
警備員が腰のベルト(帯革という)に結着したポーチ(キーケースという)から、エレベーターのスイッチ・キーを取り出して、エレベーターを再稼働させた。
愛原:「あっ!」
高橋:「! どうしました、先生?!」
愛原:「この手があったか!」
それは、私が昔取った杵柄を活用する時であった。
愛原:「高橋、まだ時間あるな?」
高橋:「夕方には迎えに行く予定でしたからね。それがどうかしましたか?」
愛原:「ちょっと、行く所があるんだ。車で乗せてってくれないか?」
高橋:「それはいいですけど、遠いですか?」
愛原:「いや、都内だ。それも、都心部」
高橋:「それなら大丈夫っスよ。行きましょう」
愛原:「ああ、頼む」
私達は急いでホテルの駐車場に向かった。
そして、再び車に乗る。
高橋:「何かいいアイディアが浮かんだんですね?」
愛原:「そうだ。もしかしたら、斉藤家のエレベーターの鍵が手に入るかもしれない」
高橋:「先生、三菱電機にコネが?」
愛原:「いや、無い。無いけど、鍵が手に入るかもしれない」
高橋:「先生にお任せしますよ」
高橋はそう言って、車を走らせた。
そして駐車場を出て、公道に出る。
高橋:「高速乗っていいっスか?」
愛原:「いいとも」
高橋:「じゃあ、新都心西から入ります。で、どこの出入口で降りれば?」
愛原:「それじゃ呉服橋……あ、いや、あそこは確か廃止されたんだったか。そうなると……神田橋か……?」
高橋:「そうですね。今、大手町の最寄りは神田橋か宝町か霞が関か……それくらいですよ」
愛原:「車と道路に関しては、オマエに任せるよ。大手町の大手町中央ビルに行ければいい」
高橋:「大手町中央ビルですね。分かりました」
高橋は、まずは最寄りの首都高の入口に車を走らせた。
地下1階を見せてもらった私は、再び1階に戻ると、応接室へ入った。
高橋:「あっ、結構ゆっくりでしたね、先生?」
愛原:「まあな」
サファイア:「パールと御嬢様の忘れ物は纏めておきました。これをお持ちになってください」
サファイアはペーパーバッグを2つ差し出した。
愛原:「中身は何なの?」
高橋:「替えの下着やら化粧品やら水着も入ってますよ?」
愛原:「水着?あれ?水着ならもう持ってるんじゃないの?」
まあ、だいたい知っている。
絵恋さんはリサに見せびらかす為に、新しく買った最新トレンドの水着を持って行ったのだろう。
そこをあえてリサが、『学校の水着も着てよ』と言ったのだ。
リサに心酔している絵恋さんがリサの頼みを断れるはずがなく、それで用意するようパールに命じたのである。
サファイア:「事情は分かりかねますが、御嬢様より、急きょ用意するように命ぜられたのです」
愛原:「ふーん……」
まあ、知ってる。
それよりも……。
愛原:「この家って、地下2階があるんですか?」
サファイア:「いえ、無いと思いますが……」
サファイアは首を傾げた。
恐らくメイドさん単位では知らないのだろう。
愛原:「このエレベーターの操作盤を開ける鍵って持ってますか?」
サファイア:「いえ、持っておりません」
愛原:「誰かが持っているのですか?」
サファイア:「エレベーターの点検業者さんなら持っていると思いますが……」
愛原:「それと、斉藤社長かな?」
サファイア:「……御主人様ならお持ちかもしれませんが……。それがどうかなさったのですか?」
愛原:「実はこの前、東京の初台で、エレベーターの点検業者に化けたテロリストに襲われましてね。ここの御宅にもエレベーターがある以上、点検業者は来るでしょう?」
サファイア:「ええ、まあ……」
愛原:「なので気を付けて頂きたいのですよ」
サファイア:「かしこまりました。御忠告、ありがとうございます」
初台で私達を襲ったテロリストが、エレベーターの点検業者を装い、管理人を呼び寄せたことまでは分かっている。
なので、私の言葉にはウソは無い。
愛原:「じゃあ高橋、そろそろ行こうか」
高橋:「あ、はい」
私は荷物を受け取ると、席を立った。
再び灼熱の太陽が照り付ける中、駐車場に向かって歩く。
高橋:「先生、もうよろしいんですか?」
愛原:「表向きの用件は済んだ。にも関わらず長居をすれば、それだけで怪しまれるよ」
高橋:「はあ……」
駐車場に戻り、高橋が運転席に乗り込んでエンジンを掛ける。
高橋:「熱っ!」
案の定、炎天下に晒されていたNV200の車内は灼熱地獄と化していた。
確かにこんな所に子供を放置したら死ぬに決まっている。
私はそう考えながら、料金を投入した。
もちろん、領収書を発行するのを忘れない。
パチンコ店の駐車場も兼ねている為か、駐車場内の注意看板には、『子供の車内放置は厳禁です。時間に関わらず、発見次第警察に通報します』と書かれていた。
高橋:「先生、見てくださいよ。パールのヤツ、下着まで迷彩柄っスよ」
私が助手席に乗り込むと、高橋がバッグの隙間から中を覗いて言った。
愛原:「オマエ、彼女の下着、他人にバラすなよ……」
高橋:「先生ならOKっス」
愛原:「それより早く行こう」
高橋:「はい」
高橋は車を出した。
愛原:「あの家のエレベーター、三菱電機製だったな……」
高橋:「はあ……」
私はどうにかして、あのエレベーターの鍵を手に入れられないか考えた。
マンションにあるのはオーチス製、事務所のビルはフジテックと、メーカーが合わない。
愛原:「うーむ……」
[同日13:45.天候:晴 同市大宮区 パレスホテル大宮]
再びパレスホテル大宮に戻った私達は、フロントに荷物を預けた。
まだリサ達はプールで遊んでいるだろう。
その間どうしようか迷っているうちに、私はホテルのエレベーターの方を見た。
1つのエレベーターのドアが開けられ、そこに警備員と清掃員がいた。
清掃員がカゴの中を清掃し、それに警備員が立ち会っているといった感じだ。
警備会社は違うが、かつては私もあの制服を着て制帽を被って仕事をしていた。
どうやら、カゴの中が汚れたらしい。
客が飲み物か何かを零したのだろう。
それで警備員がエレベーターを止めて、清掃員が清掃をしているということだ。
清掃員:「はい、終わりました」
警備員:「お疲れ様」
警備員が腰のベルト(帯革という)に結着したポーチ(キーケースという)から、エレベーターのスイッチ・キーを取り出して、エレベーターを再稼働させた。
愛原:「あっ!」
高橋:「! どうしました、先生?!」
愛原:「この手があったか!」
それは、私が昔取った杵柄を活用する時であった。
愛原:「高橋、まだ時間あるな?」
高橋:「夕方には迎えに行く予定でしたからね。それがどうかしましたか?」
愛原:「ちょっと、行く所があるんだ。車で乗せてってくれないか?」
高橋:「それはいいですけど、遠いですか?」
愛原:「いや、都内だ。それも、都心部」
高橋:「それなら大丈夫っスよ。行きましょう」
愛原:「ああ、頼む」
私達は急いでホテルの駐車場に向かった。
そして、再び車に乗る。
高橋:「何かいいアイディアが浮かんだんですね?」
愛原:「そうだ。もしかしたら、斉藤家のエレベーターの鍵が手に入るかもしれない」
高橋:「先生、三菱電機にコネが?」
愛原:「いや、無い。無いけど、鍵が手に入るかもしれない」
高橋:「先生にお任せしますよ」
高橋はそう言って、車を走らせた。
そして駐車場を出て、公道に出る。
高橋:「高速乗っていいっスか?」
愛原:「いいとも」
高橋:「じゃあ、新都心西から入ります。で、どこの出入口で降りれば?」
愛原:「それじゃ呉服橋……あ、いや、あそこは確か廃止されたんだったか。そうなると……神田橋か……?」
高橋:「そうですね。今、大手町の最寄りは神田橋か宝町か霞が関か……それくらいですよ」
愛原:「車と道路に関しては、オマエに任せるよ。大手町の大手町中央ビルに行ければいい」
高橋:「大手町中央ビルですね。分かりました」
高橋は、まずは最寄りの首都高の入口に車を走らせた。