報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「2日目の朝」

2021-10-01 19:54:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月30日07:00.天候:晴 神奈川県相模原市緑区 国家公務員特別研修センター別館2F]

 枕元のスマホがアラームを鳴らして、私は目が覚めた。
 昨夜は少し変な夢を見たが、まあまあ眠れた方だ。
 何しろ、リサの触手に絡め取られるという夢だったのだから。
 私は起き上がると、頭をぶつけそうになった。
 私は2段ベッドの下段に寝ていた。
 上段との高さが低いので、油断して上体を一気に起こすと上段に頭をぶつけてしまう。
 2泊だけなので、シーツなどのリネンはそのままにしておく。

 愛原:「おはよう」
 高橋:「……おはざっス」

 高橋も寝惚け眼であった。
 室内にも洗面所はあるが、1つだけである。
 私は洗面道具を手に取ると、それを手に部屋を出た。
 本館にもあったが、こちら別館側にも洗面室があるからである。
 そしてやはり、コインランドリーもあった。

 リサ:「先生、おはよう」
 絵恋:「おはようございます」

 そこで歯を磨いていると、少女2人も起きて来た。
 浴衣からジャージに着替えている。
 歯磨き中で喋れない私は首を縦に振ることにより、答礼とした。
 洗面室から部屋に戻ってから、また私は着替える。
 私の場合は白ワイシャツに、スーツのズボンである。
 8時ぐらいを目途に、また地下へと向かった。

 リサ:「また地下生活か……」
 愛原:「今日だけだよ。今日だけな」

 不安げなリサに対して、私はそう言った。
 今日は昨日と打って変わって天気が良い。
 窓から差し込む朝日が明るいが、今日もまた暑くなるだろう。
 そして、夕方にはゲリラ豪雨が降るかもしれない。

〔下に参ります〕

 そんな夏の日光に別れを告げ、私達は地下世界へと向かう。

[同日08:00.天候:晴 同区内 地下秘密研究所]

 ガラガラと重々しい音を立てて、エレベーターのもう1つのドアが開いた。

〔ようこそ、お越しくださいました。訪問を歓迎します〕

 エレベーターのドアが開く度に、エレベーターホールのスピーカーからこのような音声が流れる。
 この事から、このエレベーターは来客用なのだと分かる。
 その為、職員達は別のエレベーターを使用しているのだと。
 その割には殺風景な、ビルのバックヤードにあるような荷物用エレベーターっぽい内装だが。
 まだ善野氏は来ておらず、代わりに地上の守衛所にいる守衛さん達の1人が受付に座っていた。

 守衛:「おはようございます。それじゃ今日も、このリストタグをお着けください」

 昨日着けたものと同じリストタグが渡される。
 昨日は地上に戻る時に受付に返却していた。
 再びビジター用の物を装着する。
 守衛さんは善野氏とは違う紫色のタグを着けていた。
 これは確か、所長用のタグではなかったか。
 もちろんこの人が所長ということは無く、警備業務上、どこのドアも開けられるタグを持っているだけだろう。
 もしも所長クラスしか開けられない部屋で火災が発生した時に、いちいち所長クラスを呼んでいるわけにはいかないだろうから。

 守衛:「それじゃですね、あちらの食堂で朝食を御用意しておりますので、9時まで利用できます。それ以外の部屋は、例の会議室とトイレ、喫煙所が使えます」
 愛原:「了解しました。ありがとうございます」

 まだ一般職員としては始業時間前なので、その間は守衛さん達が張っているのだろう。
 食堂に向かう間に、別の巡回中の守衛さんとすれ違った。

 リサ:「ここの守衛さんは、警棒持ってるだけでいいね」
 愛原:「そうなのか?」
 リサ:「アンブレラの研究所のは、銃を持ってたから……」

 まあ、リサのようなBOWが収容されているような施設だと銃は必須だろう。
 しかし、さすが非合法の物を研究していた悪の製薬会社なだけはある。
 警備も法律を無視したものであったようだ。
 多分、アンブレラ・セキュリティ・サービス(通称、USS)かな。
 名前の通り、アンブレラ直営の警備会社である。
 アメリカでは州にもよるが、許可さえ取れば民間の警備会社の警備員でさえも銃を所持することができるし、警察権を持つこともできる。
 日本でも、表向きの施設(本社ビルや普通の認可薬の製薬工場など)では作者が所属しているような普通の警備会社に委託していたようだが、リサ達が収容されていたような裏の施設ではUSSが警備していたようである。

 愛原:「非合法の施設だから、警備も非合法か」
 リサ:「うん。ああいうお巡りさんみたいな恰好じゃなく、軍服を着てたから」
 愛原:「あー、なるほど……」

 リサ達相手だから、警備がもはや中東地域を警備するような態勢だったわけか。

 愛原:「えーと……ここだな」

 食堂に行くと、他に職員達はいなかった。
 恐らく、普段はモーニングはやっていないのだろう。
 だから、この時間と夕食は直接食堂を利用して良いようだ。

〔……科学的計算に基づいた、健康的で美味しい食事をお楽しみください〕

 リストバンドで食堂のドアを開けると、またもや音声案内が流れた。
 どうやら、ビジター用のリストタグやカードキーに反応して音声が流れるようである。

 愛原:「で、どうやって朝食を持ってくるんだろう?」

 火災防止の為か、実は厨房は無い。
 この真上の1階には本館の食堂があり、そこの厨房で作ったものを専用の小型エレベーター(ダムウェイター)で運んでいるというわけである。
 私達が給茶機でお茶や水を入れていると、エレベーターの到着する音が聞こえた。
 こういう小型エレベーターのドアは手動式である。
 手で開けると、朝食がワゴンに乗っていた。
 ワゴンの上には他に、『食事が終わりましたら、このワゴンに乗せて1階まで回送願います』という注意書きもあった。

 愛原:「こういうことか」

 朝食は八王子中央ホテルで出たものと大体同じ。
 ただ、ボリュームは一回り大きかった。
 焼き魚も、ホテルで出たものよりも大きくて厚い。
 御飯の入ったおひつも一回り大きいものが2つあったし、味噌汁は鍋に入ったままであった。
 つまり、鍋に入っている分、お代わり自由ということである。

 愛原:「こりゃいい」

 ここの食堂の食事に関しては、リサも特に申し分無いようであった。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「一日目の検査終了」

2021-10-01 16:00:20 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月29日19:00.天候:不明 神奈川県相模原市緑区 地下秘密研究施設]

 1日目の検査が終了した。
 少なくとも、これで分かったことがある。
 リサの体内にある寄生虫について。
 寄生虫自体はただの回虫であるのだが、それがリサの体内に入った際にTウィルスとGウィルスに感染したことにより、リサの“ペット”となった。
 T・G混合ウィルスはリサの意思で自由に操れるが、それに感染した回虫もリサの意思で動くようになっているという。
 これが何を意味しているのか。
 今はただのリサの意思で操られる回虫に過ぎないが、これが更に変異すると、とんでもないBOWが生まれる恐れがあるという。
 翌日は実際に、この回虫をどれだけリサが操れるのかを実験することになった。
 あと、できればいつリサがこのような能力を手にしたのかも確認したいとのことだ。
 回虫に寄生されているリサ自身には何も症状は無い。

 善野:「今日はお疲れさまでした。それでは明日、9時からよろしくお願い致します」
 愛原:「分かりました」

 私達は再びエレベーターに乗り込んだ。

〔上に参ります〕

 反対側の防犯窓の付いている扉側のボタンを押すと、音声案内が流れた。
 上に行く分には、カードキーは要らないようである。

〔ドアが閉まります〕

 研究施設側の防犯窓の付いていない重々しい金属の扉が閉まった。
 エレベーターがゆっくり上昇する。
 会議室で夕食を食べた私達は、研修センター別館の宿泊施設に戻ることとなった。

 愛原:「今日は御苦労さんだったな」
 リサ:「私の寄生虫について、随分興味を持ってたみたい」

 かつてスペインの片田舎やアフリカでも、寄生生物を介したバイオハザード事件があったが、あれとは全くの別物だという。
 ただ、明日詳しい実験をしないと分からないが、本質的にはそれら(寄生された者達。ガナードやマジニと呼ばれる)と変わらぬのではないかのこと。

〔ドアが開きます。2階です〕

 防犯窓に地上の景色が映ると、リサはホッとしたようだ。
 そしてエレベーターが2階に到着し、ドアが開いた。

〔下に参ります〕

 愛原:「風呂は20時から入れるらしいから、それまでステイルームだな」
 リサ:「地上にも自販機ある?」
 愛原:「それはあるだろう。俺も何か飲み物を買って行くか」

 先に1度部屋に戻った。
 廊下は暑かったか、部屋はクーラーが効いて涼しかった。
 窓の外を見ると、雨は止んでいるようだ。

 愛原:「朝食は8時から下の食堂で食べれるらしい」
 高橋:「てことは実質、8時には下に行くことっスね」
 愛原:「まあ、そうなるな」

 私は頷いた。

 愛原:「どれ、下に行くか」

 さすがに1階には階段で行く。
 研修センター別館の階段は1階までしか無かったが、階段の隣に、施錠された鉄扉が倉庫のような佇まいで存在しており、もしかしたらこれが地下へと続く階段なのかもしれない。
 そして地上の自動販売機もまた、現金は使えないようになっていた。

 愛原:「ますますチャージしといて良かったよ」
 高橋:「そうっスね」

 自販機コーナーに行くと、本館のそれと同じように、タバコの自販機やアルコールの自販機も設置されていた。
 高橋はそこでタバコを補充。
 私は缶ビールとおつまみを購入した。
 リサと絵恋さんはお菓子やジュースを購入している。
 ま、軽食や飲み物の心配は無いか。
 研修センターは自由に出入りできるわけではない上、コンビニなどもすぐ近くに無いからだろう。
 因みにWi-Fiも、ちゃんと飛んでいる。
 再び部屋に戻ると、私はテレビを点けた。
 NHKではニュースをやっていて、八王子の事件とオリンピック関連をやっていた。
 チャンネルを変えて民放にしておく。
 リサ達は、どうせ後で風呂に入るからと、ジャージから制服に着替えることはせず、そのままの恰好であった。
 因みに寝巻は浴衣が付いている。

 愛原:「こうしていると、何だか暇だなー」
 リサ:「アンブレラの研究所なんか、研究員が夜も寝ないで実験ばっかりやってたのに……」

 そしてそれに付き合わされるリサ・トレヴァー達も、自然と昼夜逆転というか、不規則な生活を強いられていたという。

 愛原:「そこが民間の研究所と国家の研究所の違いだろうな」

 お役所も残業規制が厳しいので、ここの研究員達も、なるべく定時で上がるようになっているのだろう。
 地下の職員達がどのような出退勤のルートを取っているのかは分からないが、研究施設内には他にもエレベーターがあったので、それを使って地上と行き来しているのだろう。
 そして、この研修センターも正門以外に裏門などもあるようで、そういう所から出入りしているのもしれない。
 実際、駐車場には車が何台も止まっていた。
 ここはとても交通が不便な所で、通りには路線バスも通ってはいるが、狭い道である為、片方向の循環路線であり、本数も少ない。
 なので、車通勤が当たり前なのだろう。
 守衛さんに確認したら、帰りは敷地内まで迎えのタクシーを入れても良いそうだ。

 リサ:「! そういえば……」
 愛原:「どうした?」
 リサ:「寄生虫というか、それに関連した怖い話を学校で聞いたことがある」
 愛原:「そうなのか」
 リサ:「私の場合は寄生虫みたいだけど、寄生樹っていうの?それに寄生されるんだけど、普段の生活はそのまま送れて、老廃物をその植物が食べてくれるので、トイレに行かずに済む。そんな人が昔、学校にいたなんて話」
 愛原:「何か、バイオハザードの現場にありそうな気はするけど……どうなんだろうな」

 アメリカのアンブレラ本社が、Tウィルスを植物に投与した実験をしていたらしいが、その植物は食人を直接するようになり、リサの言うような寄生植物にはならなかったようである。
 アメリカのバイオハザード現場では、似たような植物系のクリーチャーも出没したことがあったようだが、日本ではそのようなことは無かった。
 霧生市でも、植物がクリーチャー化して襲ってきたことは無かったし。
 そんなことを話していると20時を回ったので、私は風呂に入ることにした。
 当然ながら高橋とリサは付いて来ようとしたし、絵恋さんもリサが行くなら自分も、といった感じだった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする