[7月30日18:00.天候:不明 神奈川県相模原市緑区 政府地下秘密研究施設B2F食堂]
取りあえず、予定されていた検査と実験は全て終わったようだ。
やはりというべきか、午後の実験については、ほんの一部を映像で見せてくれるだけであった。
ただ、実際に実験を受けたリサによれば、実験用動物としての犬やミニブタなどに寄生虫を寄生させたようである。
リサにも箝口令は出されたが、私に話す分には構わないようである。
気になったのは、やはりマウスよりも高い知能を持った犬や豚をもリサは操れたということよりも、駆虫剤が一切効かなかったことであった。
つまり、リサの寄生虫に寄生されたら、それを体外に排出する術は今のところ無いということになる。
もっとも、リサの意思で体の外に出すことは可能らしい。
愛原:「これで世の中、リサの思い通りになるというわけだ」
私は夕食のチキンカツ定食を頬張りながら言った。
リサ:「うん、そうかもね。でも、私は先生の思い通りになるから」
愛原:「うん?」
リサ:「確かに私の寄生虫に寄生されたら、私の思い通り。だけど、そんな私は先生の思い通り」
愛原:「マジかよ」
高橋:「すると実質、この世の中は先生の思い通りになるということですね。さすがです!」
愛原:「ンなわけねーだろ!」
ただでさえ政府の庇護下にあるリサ、そしてその保護者役を委託されているだけの私が勝手にそんなことしたら、政府機関からもそうだし、BSAAからも狙撃の対象となってしまう。
愛原:「しかし、だからこそ、ヴェルトロのようなバイオテロ組織がリサを狙うのも分かる気がする。国家レベルで言えば、北朝鮮の工作員辺りがまた拉致活動始めるかもしれないぞ」
そういった意味では、早めに日本政府の庇護下になったことは幸いであった。
絵恋:「予定通りに終わったということは、明日は予定通りに帰れるということですね」
愛原:「そういうことになるな。これでこの地下世界からもおさらばだよ」
リサ:「うん、それは良かった」
絵恋:「そうですか……」
リサは心底ホッとした顔をしていたが、絵恋さんは逆に残念そうな顔だ。
愛原:「どうしたんだい、絵恋さん?」
絵恋:「いえ……。ぶっちゃけ地下の方が、死体が落ちて来るトラウマの心配が無くて安心なんですけど……」
愛原:「そういうことか」
リサ:「だったらサイトーだけここに残ればいい。私は先生達と地上に戻る」
絵恋:「も、もちろん、リサさんと一緒ならどこにでも行くよ!」
リサ:「先生。ここの研究員さんに、サイトーが人体実験希望だって伝えてあげたら?」
高橋:「おっ、そりゃいいかもな。上手く行きゃ、レズビアンが治るかもしれねーぞ!ひゃっはっはっはっは!」
リサと高橋が勝手なことを言った。
絵恋:「うるっさいわね!」
愛原:「それじゃ高橋、オマエも一緒に受ければ、バイセクシャルが治るかもしれないな?」
高橋:「あ、いや、多分それは一生治らないかもです!はい!」
愛原:「いや、分からんぞ?何事も実験だ!」
リサ:「ふふ……。『何事も実験だ』が、アンブレラの研究員の口癖……」
愛原:「あっ、悪かった!」
リサ:「背中から触手が生えるようになったのも、あの頃から……」
愛原:「分かった分かった!もう言わない!」
[同日19:00.天候:不明 同研究所B2F受付→国家公務員研修センター別館2F]
善野:「今日もありがとうございました」
夕食を終えた私達は、食器等をワゴンに乗せ、地上の厨房に向かう小型エレベーターに乗せた。
その後で受付に行き、手にしていたリストバンドを返却した。
善野:「明日は7時に起床されましたら、そのまま荷物を持って本館に移動して頂きます。朝食をそこの食堂で取って頂き、その後、今後に関する注意事項等を聞いて頂き、その後で退場という形になります」
愛原:「分かりました。色々とありがとうございました」
善野:「お疲れさまでした」
私達は善野氏に見送られて、地上に向かうエレベーターに乗り込んだ。
〔ドアが閉まります〕
そして、エレベーターに乗っている時に気づいたのだが、この研究所は地下3階までしかないわけではなかった。
いや、エレベーターで行ける最下層は地下3階なのだが、エレベーターのインジゲーターを見ると、『MB3F』と『MB2F』があるようだ。
ただ、そのボタンが無いので、あくまで階層としては存在しても、エレベーターで行けるわけではないようだ。
所内の説明を善野氏から受けた時も、地下2階のことしか無かった。
実際、今回は地下2階しか行かなかったからである。
一応、実験に使う資材倉庫だとか、薬品庫だとか、実験動物を飼育する施設とかがあるらしい。
あとは職員用のスペースとか……。
いずれにしろ、ビジター扱いの私達に行ける権限は無いということだ。
〔ドアが開きます〕
ピンポーン♪
〔2階です。下に参ります〕
愛原:「久しぶりの地上だな。もう外が暗いぜ」
高橋:「そうっスね」
エレベーターを降りて、廊下の窓の外を見ると、もう殆ど外は暗かった。
愛原:「どれ、風呂の準備をするか」
高橋:「先生、風呂に入れる20時まで、まだ少し時間がありますよ」
愛原:「分かってる。お茶でも入れてくれよ。オマエも一服したいだろう?」
高橋:「そうっスね」
自分達の部屋に戻る。
高橋が室内の電気ポットに水を足して、お湯を沸かし始めた。
湯呑み茶碗も、室内の洗面所で洗う。
愛原:「一応、ここではテロリストに襲撃される心配は無いみたいだな」
高橋:「明日外に出た途端、いきなりエンカウントじゃ大変ですよ」
愛原:「それは困るな。そうだ。一応、善場主任に中間報告を入れておこう」
私はスマホで善場主任宛てにメールを送った。
すると、返信メールではなく、直接電話が掛かって来た。
愛原:「はい、もしもし?」
私はすぐに電話に出た。
善場:「善場です。今日はお疲れ様でした」
愛原:「いえいえ。お役に立てて、何よりです」
善場:「検査や実験のデータは今後、国益の為になることでしょう」
やはり、核兵器代わりの抑止力に使うつもりか?
愛原:「それは一国民として何よりです。予定通りに終わりましたので、今後も予定通りに進めて宜しいでしょうか?」
善場:「はい、お願いします。明日は八王子経由でしたね?」
愛原:「はい。先日宿泊した八王子中央ホテルのオーナーが、白井伝三郎に繋がりのあると思われる画廊を知っているようなので、調べてもらうことにしました。その結果を聞きに行く予定です」
善場:「かしこまりました。それでお願いします。またその情報が分かりましたら、連絡お願い致します」
愛原:「了解しました。それでは失礼致します」
私は電話を切った。
愛原:「一応、予定通りだ」
高橋:「分かりました」
高橋は沸いたお湯を使って、お茶を入れ始めた。
愛原:「大丈夫なんだろうな?」
高橋:「何がですか?」
愛原:「いや、実験動物達が暴れ出さないかって少し心配なんだ」
リサ:「先生、シンパイショー」
高橋:「危険を予知されるとはさすがです」
絵恋:「リサさんの目が黒いうちは大丈夫ですよね?」
リサ:「いや、操る時、私の目は赤くなるんだけど……」
絵恋:「あっ、ごめんなさい!」
愛原:「いや、絵恋さんはそういう意味で言ったんじゃないと思う」
どうも、駆虫剤が一切効かないというのが引っ掛かるのだ。
最悪、実験に使われた動物は殺処分するしか無いということになるが……。
取りあえず、予定されていた検査と実験は全て終わったようだ。
やはりというべきか、午後の実験については、ほんの一部を映像で見せてくれるだけであった。
ただ、実際に実験を受けたリサによれば、実験用動物としての犬やミニブタなどに寄生虫を寄生させたようである。
リサにも箝口令は出されたが、私に話す分には構わないようである。
気になったのは、やはりマウスよりも高い知能を持った犬や豚をもリサは操れたということよりも、駆虫剤が一切効かなかったことであった。
つまり、リサの寄生虫に寄生されたら、それを体外に排出する術は今のところ無いということになる。
もっとも、リサの意思で体の外に出すことは可能らしい。
愛原:「これで世の中、リサの思い通りになるというわけだ」
私は夕食のチキンカツ定食を頬張りながら言った。
リサ:「うん、そうかもね。でも、私は先生の思い通りになるから」
愛原:「うん?」
リサ:「確かに私の寄生虫に寄生されたら、私の思い通り。だけど、そんな私は先生の思い通り」
愛原:「マジかよ」
高橋:「すると実質、この世の中は先生の思い通りになるということですね。さすがです!」
愛原:「ンなわけねーだろ!」
ただでさえ政府の庇護下にあるリサ、そしてその保護者役を委託されているだけの私が勝手にそんなことしたら、政府機関からもそうだし、BSAAからも狙撃の対象となってしまう。
愛原:「しかし、だからこそ、ヴェルトロのようなバイオテロ組織がリサを狙うのも分かる気がする。国家レベルで言えば、北朝鮮の工作員辺りがまた拉致活動始めるかもしれないぞ」
そういった意味では、早めに日本政府の庇護下になったことは幸いであった。
絵恋:「予定通りに終わったということは、明日は予定通りに帰れるということですね」
愛原:「そういうことになるな。これでこの地下世界からもおさらばだよ」
リサ:「うん、それは良かった」
絵恋:「そうですか……」
リサは心底ホッとした顔をしていたが、絵恋さんは逆に残念そうな顔だ。
愛原:「どうしたんだい、絵恋さん?」
絵恋:「いえ……。ぶっちゃけ地下の方が、死体が落ちて来るトラウマの心配が無くて安心なんですけど……」
愛原:「そういうことか」
リサ:「だったらサイトーだけここに残ればいい。私は先生達と地上に戻る」
絵恋:「も、もちろん、リサさんと一緒ならどこにでも行くよ!」
リサ:「先生。ここの研究員さんに、サイトーが人体実験希望だって伝えてあげたら?」
高橋:「おっ、そりゃいいかもな。上手く行きゃ、レズビアンが治るかもしれねーぞ!ひゃっはっはっはっは!」
リサと高橋が勝手なことを言った。
絵恋:「うるっさいわね!」
愛原:「それじゃ高橋、オマエも一緒に受ければ、バイセクシャルが治るかもしれないな?」
高橋:「あ、いや、多分それは一生治らないかもです!はい!」
愛原:「いや、分からんぞ?何事も実験だ!」
リサ:「ふふ……。『何事も実験だ』が、アンブレラの研究員の口癖……」
愛原:「あっ、悪かった!」
リサ:「背中から触手が生えるようになったのも、あの頃から……」
愛原:「分かった分かった!もう言わない!」
[同日19:00.天候:不明 同研究所B2F受付→国家公務員研修センター別館2F]
善野:「今日もありがとうございました」
夕食を終えた私達は、食器等をワゴンに乗せ、地上の厨房に向かう小型エレベーターに乗せた。
その後で受付に行き、手にしていたリストバンドを返却した。
善野:「明日は7時に起床されましたら、そのまま荷物を持って本館に移動して頂きます。朝食をそこの食堂で取って頂き、その後、今後に関する注意事項等を聞いて頂き、その後で退場という形になります」
愛原:「分かりました。色々とありがとうございました」
善野:「お疲れさまでした」
私達は善野氏に見送られて、地上に向かうエレベーターに乗り込んだ。
〔ドアが閉まります〕
そして、エレベーターに乗っている時に気づいたのだが、この研究所は地下3階までしかないわけではなかった。
いや、エレベーターで行ける最下層は地下3階なのだが、エレベーターのインジゲーターを見ると、『MB3F』と『MB2F』があるようだ。
ただ、そのボタンが無いので、あくまで階層としては存在しても、エレベーターで行けるわけではないようだ。
所内の説明を善野氏から受けた時も、地下2階のことしか無かった。
実際、今回は地下2階しか行かなかったからである。
一応、実験に使う資材倉庫だとか、薬品庫だとか、実験動物を飼育する施設とかがあるらしい。
あとは職員用のスペースとか……。
いずれにしろ、ビジター扱いの私達に行ける権限は無いということだ。
〔ドアが開きます〕
ピンポーン♪
〔2階です。下に参ります〕
愛原:「久しぶりの地上だな。もう外が暗いぜ」
高橋:「そうっスね」
エレベーターを降りて、廊下の窓の外を見ると、もう殆ど外は暗かった。
愛原:「どれ、風呂の準備をするか」
高橋:「先生、風呂に入れる20時まで、まだ少し時間がありますよ」
愛原:「分かってる。お茶でも入れてくれよ。オマエも一服したいだろう?」
高橋:「そうっスね」
自分達の部屋に戻る。
高橋が室内の電気ポットに水を足して、お湯を沸かし始めた。
湯呑み茶碗も、室内の洗面所で洗う。
愛原:「一応、ここではテロリストに襲撃される心配は無いみたいだな」
高橋:「明日外に出た途端、いきなりエンカウントじゃ大変ですよ」
愛原:「それは困るな。そうだ。一応、善場主任に中間報告を入れておこう」
私はスマホで善場主任宛てにメールを送った。
すると、返信メールではなく、直接電話が掛かって来た。
愛原:「はい、もしもし?」
私はすぐに電話に出た。
善場:「善場です。今日はお疲れ様でした」
愛原:「いえいえ。お役に立てて、何よりです」
善場:「検査や実験のデータは今後、国益の為になることでしょう」
やはり、核兵器代わりの抑止力に使うつもりか?
愛原:「それは一国民として何よりです。予定通りに終わりましたので、今後も予定通りに進めて宜しいでしょうか?」
善場:「はい、お願いします。明日は八王子経由でしたね?」
愛原:「はい。先日宿泊した八王子中央ホテルのオーナーが、白井伝三郎に繋がりのあると思われる画廊を知っているようなので、調べてもらうことにしました。その結果を聞きに行く予定です」
善場:「かしこまりました。それでお願いします。またその情報が分かりましたら、連絡お願い致します」
愛原:「了解しました。それでは失礼致します」
私は電話を切った。
愛原:「一応、予定通りだ」
高橋:「分かりました」
高橋は沸いたお湯を使って、お茶を入れ始めた。
愛原:「大丈夫なんだろうな?」
高橋:「何がですか?」
愛原:「いや、実験動物達が暴れ出さないかって少し心配なんだ」
リサ:「先生、シンパイショー」
高橋:「危険を予知されるとはさすがです」
絵恋:「リサさんの目が黒いうちは大丈夫ですよね?」
リサ:「いや、操る時、私の目は赤くなるんだけど……」
絵恋:「あっ、ごめんなさい!」
愛原:「いや、絵恋さんはそういう意味で言ったんじゃないと思う」
どうも、駆虫剤が一切効かないというのが引っ掛かるのだ。
最悪、実験に使われた動物は殺処分するしか無いということになるが……。