報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「八王子ホテル殺人事件」

2021-10-07 20:00:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月31日17:00.天候:雨 東京都八王子市元本郷町 警視庁八王子警察署]

 刑事A:「探偵さん、さすがにこれはマズい証拠なんじゃないのかい?」
 愛原:「いや、だからアリバイありますって!」

 八王子中央ホテルでオーナーの死体を発見した私は、すぐに110番通報をした。
 そして駆け付けた警察に状況を説明したのだが、その最中にリサが暴走してしまった。
 具体的にはオーナーの血の臭いに、食人衝動が抑えきれなくなってしまったのだ。
 第1形態に変化したままエントラスのガラスをブチ破ると、オーナーの死体に覆い被さり、固まり掛けていた血を啜り始めたのである。
 どうやら人肉よりも、人血を欲したようである。
 これはそれまで大盛りラーメンや食後のデザートを食していたこともあり、人肉については欲さなかったのだろう。
 しかし、血液については別であった。
 “バイオハザードシリーズ”に登場するBOWやクリーチャーにあっても、人肉より人血を欲する者はいる。
 しかもオーナーの血液はO型であり、これはリサにとって一番の好物である血液型であった(もちろん、私もO型)。
 それで警察が別の意味で動いたことは言うまでもない。
 しかも、私と高橋は拳銃を持っている。
 もちろん、ちゃんと許可があってのことだ。
 それでもオーナーは私の見立て通り射殺体で見つかっており、しかも銃の口径が私の持つ物と同じということで、それも疑われた。
 で、最悪なのが……。

 刑事A:「いや、どう見てもこれ、キミ達だよね?」
 愛原:「確かに自分らにそっくりだけど、違うよ!」

 ホテルの防犯カメラに、オーナーが射殺されるところが映っていた。
 ところが、そのホテルに入って来たのは私達で、しかも射殺したのが私と似た姿をした男であった。

 刑事B:「先輩、何かオカシイですね?」
 刑事A:「これだけの証拠が揃っているのに、吐かないとは……」

 犯行時間は正午頃、つまり私達がラーメン屋にいた頃だ。
 ラーメン店は個人営業の店の為、店に防犯カメラは付いていなかった。

 愛原:「ラーメン屋に聞いてくれれば、その時間、俺達はそこでラーメン食ってたのが分かるよ。それに、あの辺は市街地で、防犯カメラなんてそこかしこにあるだろう?俺達が今日、13時頃に初めてホテルに行ったことが分かるよ」
 刑事A:「じゃあ、明らかにホテルの防犯カメラに映っている犯行の瞬間は何なんだ?」
 愛原:「だから知らないって!国家公務員特別研修センターは?」
 刑事A:「警備上の機密とやらで教えられないと言っていたよ」
 愛原:「こんな民間人の口から、相模原市の国家公務員特別研修センターの名前が出て来るなんて普通有り得ないと思わない?それが出て来るってことは、そこに行ってたのはウソじゃないって分かるでしょ?」
 刑事A:「今、問題にしてるのはそこじゃない。犯行時間に、実際あんた達が防犯カメラに、決定的な瞬間が映っていることをどう説明するんだと聞いてるんだ」
 愛原:「だから全く身に覚えが無いって言ってるでしょ!」
 刑事B:「先輩、この男も強情ですね」
 刑事A:「しょうがない。別の男を落とすか」

 その時、取調室のドアが開けられた。

 刑事A:「あ、副署長」
 副署長:「ちょっといいか?」

 副署長は刑事Aに何やら耳打ち。

 刑事A:「何ですって!?」
 副署長:「愛原さん、善場優菜さんという方を御存知ですか?」
 愛原:「政府のとある機関、恐らく総務省、防衛省、外務省のどれかでしょうな。ワンチャン内閣府もあるかもしれません。そこに勤める国家公務員。普段はその関連団体であるNPO法人デイライト東京事務所にお勤めの方です」
 副署長:「……やはり本当だったか」
 愛原:「何ですか?善場主任が身元引受人にでも来てくれたんですか?」
 副署長:「そのまさかです」

 副署長は神妙な顔をして頷いた。

 善場:「愛原所長、お疲れ様です」
 愛原:「善場主任、助かりましたよ。でも、もう少し早く来て頂きたかったというのが本音です」
 善場:「お察し致します。それにつきましては、申し訳ございません。関係機関との調整がおしてしまいまして……」

 取調室を出た私は、1Fロビーに待ち受けている善場主任と合流した。
 どうやら善場主任が所属機関の名前でも使って、警察に圧でも掛けてくれたのだろう。

 愛原:「担当刑事が変なことを言ってたんです。ホテルの防犯カメラに、私達が映っていたと」
 善場:「そのことにつきましては、私達の組織が後ほどこの警察署に依頼して拝見させてもらうことにします。警察側がかなり自信を持っていたことから、よほど愛原さん達にそっくりな人物を用意できたのでしょうね」
 愛原:「犯人はヴェルトロでしょうか?」
 善場:「まだ予断は禁物ですが、可能性としては有り得ます。取りあえず本日は、市内にお泊まりください。そこで話をさせてください」
 愛原:「分かりました」

[同日18:00.天候:曇 同市内 京王プラザホテル八王子]

 愛原:「え!?こんな高級ホテル、いいんですか!?」
 善場:「セキュリティのしっかりしたホテルを緊急使用となると、どうしてもこうなるのです。費用につきましては、全てこちらで持ちますので御心配無く」
 愛原:「はー……」
 善場:「但し、明日のチェックアウトまで、ホテルの外には出ないでください」
 愛原:「分かりました」
 リサ:「先生、お腹空いた」

 今のリサは正気に戻っている。
 リサが暴走したということで、事件現場はBSAAも駆け付けて大変な騒ぎになった。
 リサの暴走や、高橋が前科ン犯の元凶悪少年というのも警察の心証悪化の原因であった。
 高橋は少年法適用時代、八王子警察署のお世話になったこともあったからだ(しかも甲州街道をバイクで遊び回ったのが原因。もちろん、道交法などどこ吹く風で)。

 善場:「まずは部屋に荷物を置いて来て下さい。夕食を挟みながら、お話しをしましょう」
 愛原:「分かりました」

 さすがに部屋はスイートなんてことは無く、ホテルの中では安い方の部類のスタンダードツインだった。

 高橋:「先生、姉ちゃんがこんな高級ホテルに泊まらせてくれるなんて、どういうことですかね?」
 愛原:「俺達にそっくりな人間を使って、殺人の濡れ衣を着せようとした連中だぞ?そいつらの狙いは俺達、引いてはリサだってことだ。このままのこのこ帰ったところで、変な罠が待ち受けているに決まってるだろうが。だから、取りあえずここで一泊して様子を見るんだよ。といっても、セキュリティのしっかりしていない安ホテルじゃ、向こうからそのホテルを襲撃してくる恐れがある。だから、この町では一番の高級ホテルってことになるんだろうな」
 高橋:「なるほど。さすが先生です」

 荷物を置いて一息したところで、私達は再び善場主任の待つロビーへと向かった。
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“私立探偵 愛原学” 「天国と地獄」

2021-10-07 15:57:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月31日11:52.天候:晴 東京都八王子市 JR八王子駅→一麺]

〔まもなく八王子、八王子。お出口は、左側です。八高線、横浜線と相模線はお乗り換えです〕
〔The next station is Hachioji.JC22.The doors on the left side will open.Please change here for the Hachiko line,the Yokohoma line and the Sagami line.〕

 電車は幸いにも定刻通りに八王子駅に到着した。
 腹を空かせたリサの怒りが爆発せずに済みそうだ。

〔はちおうじ~、八王子~。ご乗車、ありがとうございます。次は、豊田に止まります〕

 電車を降りて階段を昇る。

 高橋:「先生。駅に1番近いラーメン屋は向こうです」
 愛原:「了解」

 私は私よりラーメンに詳しい高橋に検索させた。
 もちろん、食べるのはただのラーメンではなく、八王子ラーメンである。
 この時点で日高屋や横浜家系などのチェーン店は除外されるわけだ。

 愛原:「しっかし、こんなクソ暑い日にラーメンとは……」
 高橋:「ラーメン通はそんなの関係無いっスよ」
 リサ:「そうそう。カンケー無い」
 絵恋:「そうそう。カンケー無い」
 愛原:「多数決で負けた……」

 改札口を出て、駅は北口を出る。
 例のホテルはこちら側にあるからだ。
 南口より賑わっているのは、京王八王子駅もあるからだろう。
 駅前の道をしばらく歩くと、高橋が検索したラーメン屋が現れた。
 この時点で既に満席だったので、少し待たされる形で入店することになる。
 因みに待たされることに関しては、リサは特に文句は言わなかった。
 目的地に辿り着けさえすれば、あとは多少のトラブルは意に介しないというのがリサのスタンスだ。
 ディズニーリゾートにさえ着きさえすれば、あとはアトラクションは何時間待っても良いというのと似ているか。
 つまり、辿り着けなければ最悪だということだ。

 愛原:「高橋は甲州街道沿いのラーメン屋に入ったことがあるんだっけか」
 高橋:「そうっス。なんで、駅近くのラーメン屋はあんまり知らなくて……」
 愛原:「まあ、いいさ」

 カウンター席に通される。
 そこに並んで座って、早速注文。
 先に食べている他の客のラーメンを見る限りでは、ちゃんと八王子ラーメンの定義通りのものであるようだ。
 即ち、『刻み玉ねぎを使用すること(長ネギは併用してもしなくても良い)』『醤油ベースのスープを使用すること(なので、醤油豚骨もOK)』『ラードをふんだんに使い、スープの表面はラードの油膜で覆われる程度にすること』である。
 ただ、玉ねぎと長ネギはどうしても味の方でケンカしがちである為、併用する店は少ないそうだ(無いわけではない。また、長ネギをカウンターに置いて、客が自由に取れるようにしている店もある)。
 醤油ベースのスープは必須である為、塩ラーメンや味噌ラーメンの八王子ラーメンは無いものと思って良い。
 スープの表面はラードで覆われるということだが、その度合いは店によって様々である。

 店主:「お待ちどうさまです!」
 愛原:「あ、どうもー」

 私はチャーシュー麺を注文し、高橋はネギチャーシュー、リサは一番具材の多いネギメンマチャーシューを注文した。
 絵恋さんは控えめに普通のラーメンを注文している。
 さすがのリサの食欲には、絵恋さんも付いて行けないと自覚しているのか、食事面に関してはリサと並走することを諦めている。
 この店のスープは、そんなに濃い油膜ではなかった。
 高橋によれば、下の醤油スープの色がボヤけるほどギトギトの油膜で覆って来る店もあるとのことだ。

 愛原:「おお、こりゃいい。うん、美味い美味い」
 高橋:「俺の検索した店っスよー?」
 愛原:「うん、さすが高橋。でかした」
 高橋:「あざーっス!」
 絵恋:「そこは『あざまる水産』じゃないの?」
 高橋:「俺はパリピじゃねぇ!」
 絵恋:「見た目はパリピギャル男なのにねぇ……」
 高橋:「ンなワケねーだろ!」

 チャラ男には見えるが、ギャル男ってほどの……アレじゃないな。
 少なくとも、渋谷よりは新宿歌舞伎町周辺を歩いていそうな男……かな、高橋は。
 で、リサはペロリとスープまで平らげた。
 この小さい体のどこに、こんな大盛りラーメンが入るのか不思議でしょうがない。
 変化の時のエネルギーに消費されるのはもちろんだが、体内で飼育している寄生虫の栄養源になっているのではという見方がされた。

[同日13:00.天候:曇 同市内某所 八王子中央ホテル]

 ラーメン屋だと、食べたらすぐに出ないといけないという変な空気がある。
 もちろん昼時で混雑しているから、当たり前と言えば当たり前なのだが。
 しかしそれだと、まだ13時にはならない。
 食べた後で、仕方なく食後のコーヒーでも飲もうかと、コーヒーショップに立ち寄った。
 そこで時間を潰し、13時になったのを見計らってホテルに向かった。
 場末にあるということもあって、あまり人通りは多くない。
 もちろん駅前ということもあって、寂しい所ではない。
 パチンコ屋も近所にあるので、その店に出入りする客がこの辺りの通行人といったところだ。
 ところが、だ。
 ホテルに近づく度に、リサが眉を潜めた。
 その割には……。

 リサ:「何だかいい匂いがする」
 愛原:「そうか?だけど、さっき昼食ったばかりだろ?」
 リサ:「うん。でも、別腹的にまた入りそう」
 高橋:「おいおい、どんだけ先生にタカる気だよ?さっきも食後のデザート食ったばかりだろうが」
 リサ:「食後のデザートというか、メインディッシュというか……」
 愛原:「んん?」

 私はリサを見た。
 リサの目が金色に光っている。
 これは変化しようとする時の目だ。
 そして、マスクが湿り気を帯びている。
 これはリサが涎を垂らしているからだ。

 愛原:「一体どうしたんだ、リサ?」

 そして、ホテルの前に着く。

 リサ:「血の匂いがする……。人間の……血の匂い……」

 リサの手の爪が長く鋭く伸びる。
 変化を抑えきれないでいる。

 愛原:「何だって!?」

 私はエントランスのドアを開けた。
 するとロビー内は、血の臭いが漂っていることが分かった。

 愛原:「高橋、絵恋さんとそこにいろ」
 高橋:「は、はい」
 愛原:「リサは中に入れ」
 リサ:「う、うん」

 リサはホテルの中に入ると同時に第1形態へと変化した。
 額の上に一本角が生え、両耳は長く鋭く尖る。
 そして、マスクを取ると、鋭い牙が覗いた。
 変化が完了すると、金色の瞳が赤色に変わる。

 愛原:「臭いはどこからだ?」
 リサ:「あそこ」

 私は銃を取り出し、安全措置を外して、リサが指さした方向に歩き出した。
 それはカウンターだった。
 リサが指さしたのは、カウンターの奥。
 私がハンドガンを構えながらカウンターの奥に目をやると……。

 愛原:「うわ……!」

 カウンターの内側の下で、オーナーが血の海を作って倒れていた。
 どうやら、銃で撃たれたらしい。
 頭と胸から血を噴き出したのがすぐに分かり、当然もう息が無いのも分かった。

 愛原:「リサ、外に出よう。このままじゃオマエ、暴走する」
 リサ:「ウゥ……!血……飲みたい……!」

 私はリサの腕を掴み、強引に引っ張ってホテルの外に出た。

 愛原:「オーナーが死んでる。警察呼ぶぞ」
 高橋:「ええっ!?」

 私は手持ちのスマホで、すぐに110番通報をした。
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“私立探偵 愛原学” 「八王子へ」

2021-10-07 11:24:50 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月31日11:00.天候:晴 神奈川県相模原市緑区 国家公務員特別研修センター正門守衛所]

 守衛A:「はい、これで書類手続きは終了です。今度はあちらで手荷物検査をお願いします」
 愛原:「はい」
 守衛B:「あれ!?銃弾預けてなかったの!?こりゃダメだよ!」
 高橋:「うるせー。預けるのは『銃刀剣』であって、『弾』とは言ってなかっただろうが」
 守衛B:「もちろん弾もだ!全く!」
 リサ:「これが一昨日着けてた下着、これが昨日着けてた下着、それとこれが……」
 ケンショーグリーン:「ハァハァ……。嗚呼……15歳の女の子ならではの、ガーリーとアダルティの間の微妙な下着……。い、いけませんね……。こ、これは全て没収です。ハァ、ハァ……!」(;゚∀゚)=3ハァハァ
 守衛C:「誰だキサマ!?おい、つまみ出せ!」
 守衛D:「承知!」
 グリーン:「あ~れ~……」
 愛原:「ん?今誰かいた?」
 高橋:「さあ……。気が付きませんでしたね」
 愛原:「すいません、今度は気をつけますので……」
 守衛B:「お願いしますよ」
 グリーン:「ああ、あと、あなたはもっとガーリーな下着の方が似合うと思いますよ。クフフフフフ……」
 絵恋:「うるっさいわね!」
 守衛C:「いいから来い!」
 守衛D:「一体どこから侵入しやがった!」

 ようやく退構手続きが済んで、私達は呼んでいたタクシーに乗り込んだ。

 愛原:「藤野駅までお願いします」
 運転手:「はい、藤野駅ですね」

 重厚な横引タイプの門扉が重々しい音を立てて左右に開く。
 それとは対照的に、静かに走り出したハイブリッドのタクシー。
 真夏の太陽が照り付ける公道へタクシーは躍り出た。
 車内は冷房が効いて涼しい。
 定員ギリギリの人数で乗っているのだから、クーラーはガンガンに効いていた。
 吹き出し口から風の音がよく聞こえるほどだ。

 高橋:「入るのも出るのもメンド臭い所っスね」
 愛原:「政府の施設なんだからしょうがない」

 このまま“やまなみ温泉”にでも行きたい気分だが、早いとこ八王子に行って情報を仕入れないといけない。
 今日はまた今度ということになるか。
 朝食後に注意事項を聞くだけなのにこんな時間になったのは、開始時刻が遅れたからである。
 BSAAや自衛隊が合同で展開している訓練で想定外の事が起こり、その処理に手間どったのだとか。
 こりゃもしかして、訓練とは名ばかりの実戦だったのかもしれないな。
 本当にリサが寄生させた寄生虫が暴れだしたのかもしれない。
 しかし、特に応援の依頼を受けていない以上、勝手なことはできない。
 マンガやアニメの探偵のようにホイホイしゃしゃり出て、警察を差し置いて勝手に事件解決なんてことは本来有り得ないのだ。

[同日11:15.天候:晴 同区内 JR藤野駅]

 藤野駅には無事に着いた。
 私がタクシーチケットで料金を払っている間、助手席に乗っていた高橋が先に降りて、後ろに積んだ荷物を降ろしていた。

 高橋:「あっち~……」

 駅前広場は直射日光で、タクシーから降りたら灼熱の地獄だ。
 タクシーを降りて、駅構内に入る。
 改札口はICカードで通過する。
 その上にある発車標を見ると、幸い次の電車は東京方面に直通するようだ。
 それに乗れば、乗り換え無しで八王子に行ける。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の2番線の列車は、11時31分発、中央特快、東京行きです。この列車は4つドア、10両です。次は、相模湖に止まります〕

 

 狭いホームにATOSの自動放送が流れる。
 駅には待合室が無い上、ホームの屋根も一部しか無いので、乗客達はその日陰に入って電車を待っていた。
 絵恋さんは御嬢様らしく、高そうな日傘を持っていたが。

 愛原:「まあ、しばらく電車を待つことになりそうだ」

 私は自動販売機で冷たい飲み物を購入した。
 するとリサも飲みたそうにしているので、仕方が無いから買ってあげた。
 同じ物を買ってあげたのだが、リサはパッと私の飲みかけを奪い取ると、それを美味そうに飲み干した。

 リサ:「間接キッス~
 高橋:「ああっ、テメ!なに抜け駆けを!先生!俺にも!俺にも先生の飲み掛けを!!」
 愛原:「あー、うるさい。暑苦しい」

 私は耳を塞いで、新しく買った飲み物を飲んだ。

[同日11:31.天候:晴 JR中央本線1122M列車10号車内]

〔まもなく2番線に、中央特快、東京行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください。この列車は4つドア、10両です。次は、相模湖に止まります〕

 接近放送が鳴ると、私達は直射日光が照り付けるホームの後方へと歩いた。
 BSAAとの取り決めで、リサは先頭車または最後尾に乗らないといけないことになっているからだ。
 最後尾にしたのは、何となくそっちの方が空いていそうな気がしたから。

〔ふじの~、藤野~。ご乗車、ありがとうございます〕

 中央快速線で運転されているE233系のオレンジ色の電車がやってきた。
 案の定、最後尾は空いていた。
 乗務員室の前の4人席など、まるまる空いているくらい。
 そこに仲良く4人で座る。

〔2番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の列車を、ご利用ください〕

 この辺りは本来、半自動ドア扱いを行う区間であるが、新型コロナ対策として換気促進の為、自動ドア扱いとなっている。
 これは東北地方でも同じ(但し、ワンマン運転時を除く)。
 ドアが閉まると、すぐに電車は走り出した。
 冷房の他に空気清浄機も作動しているようで、それのモーター音も響いてくる。

〔次は、相模湖です〕
〔The Next station is Sagamiko.JC25.〕

 リサ:「これで行くと、八王子にはだいたいお昼頃に着くね?」
 愛原:「ああ、そうだな」
 リサ:「八王子ラーメン、食べれるよね?」
 愛原:「そうだな」

 私としては一刻も早く情報を仕入れたいところだが、確かに時刻表で見ると、この電車が八王子に着くのは11時52分である。
 そこからホテルまで行こうとすると、本当にお昼になってしまう。
 オーナーの勤務体系がどんなものなのかは知らぬが、オーナーだって昼食は取るだろうから、それを外して行った方がいいかもしれない。
 即ち、ホテルには13時に着くといった感じで。
 その時間からチェックインやチェックアウトする客はいないだろうし、しかしチェックインを迎える準備などで、ホテルにいないということもないだろう。
 つまり、私と話ができる余裕はあると思われる。
 仮に忙しくても、白井画廊の場所と連絡先さえ教えてくれればいい。
 私はそこまで考えた。

 愛原:「よし。じゃあ、着いたら先にラーメン食べるか」
 リサ:「やった!」
 高橋:「『お客様にお知らせします。この電車は高尾駅で人身事故が発生した為、しばらく運転を見合わせます。運転再開時刻は、【お察しください】』なんつって!な!?」

 高橋がフザけてリサにそんなことを言った。

 リサ:「人身事故起こしたヤツ、ゾンビ化させる

 上級BOWにゾンビ化させられないよう、鉄道飛び込みはやめましょう。
 
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