[7月31日17:00.天候:雨 東京都八王子市元本郷町 警視庁八王子警察署]
刑事A:「探偵さん、さすがにこれはマズい証拠なんじゃないのかい?」
愛原:「いや、だからアリバイありますって!」
八王子中央ホテルでオーナーの死体を発見した私は、すぐに110番通報をした。
そして駆け付けた警察に状況を説明したのだが、その最中にリサが暴走してしまった。
具体的にはオーナーの血の臭いに、食人衝動が抑えきれなくなってしまったのだ。
第1形態に変化したままエントラスのガラスをブチ破ると、オーナーの死体に覆い被さり、固まり掛けていた血を啜り始めたのである。
どうやら人肉よりも、人血を欲したようである。
これはそれまで大盛りラーメンや食後のデザートを食していたこともあり、人肉については欲さなかったのだろう。
しかし、血液については別であった。
“バイオハザードシリーズ”に登場するBOWやクリーチャーにあっても、人肉より人血を欲する者はいる。
しかもオーナーの血液はO型であり、これはリサにとって一番の好物である血液型であった(もちろん、私もO型)。
それで警察が別の意味で動いたことは言うまでもない。
しかも、私と高橋は拳銃を持っている。
もちろん、ちゃんと許可があってのことだ。
それでもオーナーは私の見立て通り射殺体で見つかっており、しかも銃の口径が私の持つ物と同じということで、それも疑われた。
で、最悪なのが……。
刑事A:「いや、どう見てもこれ、キミ達だよね?」
愛原:「確かに自分らにそっくりだけど、違うよ!」
ホテルの防犯カメラに、オーナーが射殺されるところが映っていた。
ところが、そのホテルに入って来たのは私達で、しかも射殺したのが私と似た姿をした男であった。
刑事B:「先輩、何かオカシイですね?」
刑事A:「これだけの証拠が揃っているのに、吐かないとは……」
犯行時間は正午頃、つまり私達がラーメン屋にいた頃だ。
ラーメン店は個人営業の店の為、店に防犯カメラは付いていなかった。
愛原:「ラーメン屋に聞いてくれれば、その時間、俺達はそこでラーメン食ってたのが分かるよ。それに、あの辺は市街地で、防犯カメラなんてそこかしこにあるだろう?俺達が今日、13時頃に初めてホテルに行ったことが分かるよ」
刑事A:「じゃあ、明らかにホテルの防犯カメラに映っている犯行の瞬間は何なんだ?」
愛原:「だから知らないって!国家公務員特別研修センターは?」
刑事A:「警備上の機密とやらで教えられないと言っていたよ」
愛原:「こんな民間人の口から、相模原市の国家公務員特別研修センターの名前が出て来るなんて普通有り得ないと思わない?それが出て来るってことは、そこに行ってたのはウソじゃないって分かるでしょ?」
刑事A:「今、問題にしてるのはそこじゃない。犯行時間に、実際あんた達が防犯カメラに、決定的な瞬間が映っていることをどう説明するんだと聞いてるんだ」
愛原:「だから全く身に覚えが無いって言ってるでしょ!」
刑事B:「先輩、この男も強情ですね」
刑事A:「しょうがない。別の男を落とすか」
その時、取調室のドアが開けられた。
刑事A:「あ、副署長」
副署長:「ちょっといいか?」
副署長は刑事Aに何やら耳打ち。
刑事A:「何ですって!?」
副署長:「愛原さん、善場優菜さんという方を御存知ですか?」
愛原:「政府のとある機関、恐らく総務省、防衛省、外務省のどれかでしょうな。ワンチャン内閣府もあるかもしれません。そこに勤める国家公務員。普段はその関連団体であるNPO法人デイライト東京事務所にお勤めの方です」
副署長:「……やはり本当だったか」
愛原:「何ですか?善場主任が身元引受人にでも来てくれたんですか?」
副署長:「そのまさかです」
副署長は神妙な顔をして頷いた。
善場:「愛原所長、お疲れ様です」
愛原:「善場主任、助かりましたよ。でも、もう少し早く来て頂きたかったというのが本音です」
善場:「お察し致します。それにつきましては、申し訳ございません。関係機関との調整がおしてしまいまして……」
取調室を出た私は、1Fロビーに待ち受けている善場主任と合流した。
どうやら善場主任が所属機関の名前でも使って、警察に圧でも掛けてくれたのだろう。
愛原:「担当刑事が変なことを言ってたんです。ホテルの防犯カメラに、私達が映っていたと」
善場:「そのことにつきましては、私達の組織が後ほどこの警察署に依頼して拝見させてもらうことにします。警察側がかなり自信を持っていたことから、よほど愛原さん達にそっくりな人物を用意できたのでしょうね」
愛原:「犯人はヴェルトロでしょうか?」
善場:「まだ予断は禁物ですが、可能性としては有り得ます。取りあえず本日は、市内にお泊まりください。そこで話をさせてください」
愛原:「分かりました」
[同日18:00.天候:曇 同市内 京王プラザホテル八王子]
愛原:「え!?こんな高級ホテル、いいんですか!?」
善場:「セキュリティのしっかりしたホテルを緊急使用となると、どうしてもこうなるのです。費用につきましては、全てこちらで持ちますので御心配無く」
愛原:「はー……」
善場:「但し、明日のチェックアウトまで、ホテルの外には出ないでください」
愛原:「分かりました」
リサ:「先生、お腹空いた」
今のリサは正気に戻っている。
リサが暴走したということで、事件現場はBSAAも駆け付けて大変な騒ぎになった。
リサの暴走や、高橋が前科ン犯の元凶悪少年というのも警察の心証悪化の原因であった。
高橋は少年法適用時代、八王子警察署のお世話になったこともあったからだ(しかも甲州街道をバイクで遊び回ったのが原因。もちろん、道交法などどこ吹く風で)。
善場:「まずは部屋に荷物を置いて来て下さい。夕食を挟みながら、お話しをしましょう」
愛原:「分かりました」
さすがに部屋はスイートなんてことは無く、ホテルの中では安い方の部類のスタンダードツインだった。
高橋:「先生、姉ちゃんがこんな高級ホテルに泊まらせてくれるなんて、どういうことですかね?」
愛原:「俺達にそっくりな人間を使って、殺人の濡れ衣を着せようとした連中だぞ?そいつらの狙いは俺達、引いてはリサだってことだ。このままのこのこ帰ったところで、変な罠が待ち受けているに決まってるだろうが。だから、取りあえずここで一泊して様子を見るんだよ。といっても、セキュリティのしっかりしていない安ホテルじゃ、向こうからそのホテルを襲撃してくる恐れがある。だから、この町では一番の高級ホテルってことになるんだろうな」
高橋:「なるほど。さすが先生です」
荷物を置いて一息したところで、私達は再び善場主任の待つロビーへと向かった。
刑事A:「探偵さん、さすがにこれはマズい証拠なんじゃないのかい?」
愛原:「いや、だからアリバイありますって!」
八王子中央ホテルでオーナーの死体を発見した私は、すぐに110番通報をした。
そして駆け付けた警察に状況を説明したのだが、その最中にリサが暴走してしまった。
具体的にはオーナーの血の臭いに、食人衝動が抑えきれなくなってしまったのだ。
第1形態に変化したままエントラスのガラスをブチ破ると、オーナーの死体に覆い被さり、固まり掛けていた血を啜り始めたのである。
どうやら人肉よりも、人血を欲したようである。
これはそれまで大盛りラーメンや食後のデザートを食していたこともあり、人肉については欲さなかったのだろう。
しかし、血液については別であった。
“バイオハザードシリーズ”に登場するBOWやクリーチャーにあっても、人肉より人血を欲する者はいる。
しかもオーナーの血液はO型であり、これはリサにとって一番の好物である血液型であった(もちろん、私もO型)。
それで警察が別の意味で動いたことは言うまでもない。
しかも、私と高橋は拳銃を持っている。
もちろん、ちゃんと許可があってのことだ。
それでもオーナーは私の見立て通り射殺体で見つかっており、しかも銃の口径が私の持つ物と同じということで、それも疑われた。
で、最悪なのが……。
刑事A:「いや、どう見てもこれ、キミ達だよね?」
愛原:「確かに自分らにそっくりだけど、違うよ!」
ホテルの防犯カメラに、オーナーが射殺されるところが映っていた。
ところが、そのホテルに入って来たのは私達で、しかも射殺したのが私と似た姿をした男であった。
刑事B:「先輩、何かオカシイですね?」
刑事A:「これだけの証拠が揃っているのに、吐かないとは……」
犯行時間は正午頃、つまり私達がラーメン屋にいた頃だ。
ラーメン店は個人営業の店の為、店に防犯カメラは付いていなかった。
愛原:「ラーメン屋に聞いてくれれば、その時間、俺達はそこでラーメン食ってたのが分かるよ。それに、あの辺は市街地で、防犯カメラなんてそこかしこにあるだろう?俺達が今日、13時頃に初めてホテルに行ったことが分かるよ」
刑事A:「じゃあ、明らかにホテルの防犯カメラに映っている犯行の瞬間は何なんだ?」
愛原:「だから知らないって!国家公務員特別研修センターは?」
刑事A:「警備上の機密とやらで教えられないと言っていたよ」
愛原:「こんな民間人の口から、相模原市の国家公務員特別研修センターの名前が出て来るなんて普通有り得ないと思わない?それが出て来るってことは、そこに行ってたのはウソじゃないって分かるでしょ?」
刑事A:「今、問題にしてるのはそこじゃない。犯行時間に、実際あんた達が防犯カメラに、決定的な瞬間が映っていることをどう説明するんだと聞いてるんだ」
愛原:「だから全く身に覚えが無いって言ってるでしょ!」
刑事B:「先輩、この男も強情ですね」
刑事A:「しょうがない。別の男を落とすか」
その時、取調室のドアが開けられた。
刑事A:「あ、副署長」
副署長:「ちょっといいか?」
副署長は刑事Aに何やら耳打ち。
刑事A:「何ですって!?」
副署長:「愛原さん、善場優菜さんという方を御存知ですか?」
愛原:「政府のとある機関、恐らく総務省、防衛省、外務省のどれかでしょうな。ワンチャン内閣府もあるかもしれません。そこに勤める国家公務員。普段はその関連団体であるNPO法人デイライト東京事務所にお勤めの方です」
副署長:「……やはり本当だったか」
愛原:「何ですか?善場主任が身元引受人にでも来てくれたんですか?」
副署長:「そのまさかです」
副署長は神妙な顔をして頷いた。
善場:「愛原所長、お疲れ様です」
愛原:「善場主任、助かりましたよ。でも、もう少し早く来て頂きたかったというのが本音です」
善場:「お察し致します。それにつきましては、申し訳ございません。関係機関との調整がおしてしまいまして……」
取調室を出た私は、1Fロビーに待ち受けている善場主任と合流した。
どうやら善場主任が所属機関の名前でも使って、警察に圧でも掛けてくれたのだろう。
愛原:「担当刑事が変なことを言ってたんです。ホテルの防犯カメラに、私達が映っていたと」
善場:「そのことにつきましては、私達の組織が後ほどこの警察署に依頼して拝見させてもらうことにします。警察側がかなり自信を持っていたことから、よほど愛原さん達にそっくりな人物を用意できたのでしょうね」
愛原:「犯人はヴェルトロでしょうか?」
善場:「まだ予断は禁物ですが、可能性としては有り得ます。取りあえず本日は、市内にお泊まりください。そこで話をさせてください」
愛原:「分かりました」
[同日18:00.天候:曇 同市内 京王プラザホテル八王子]
愛原:「え!?こんな高級ホテル、いいんですか!?」
善場:「セキュリティのしっかりしたホテルを緊急使用となると、どうしてもこうなるのです。費用につきましては、全てこちらで持ちますので御心配無く」
愛原:「はー……」
善場:「但し、明日のチェックアウトまで、ホテルの外には出ないでください」
愛原:「分かりました」
リサ:「先生、お腹空いた」
今のリサは正気に戻っている。
リサが暴走したということで、事件現場はBSAAも駆け付けて大変な騒ぎになった。
リサの暴走や、高橋が前科ン犯の元凶悪少年というのも警察の心証悪化の原因であった。
高橋は少年法適用時代、八王子警察署のお世話になったこともあったからだ(しかも甲州街道をバイクで遊び回ったのが原因。もちろん、道交法などどこ吹く風で)。
善場:「まずは部屋に荷物を置いて来て下さい。夕食を挟みながら、お話しをしましょう」
愛原:「分かりました」
さすがに部屋はスイートなんてことは無く、ホテルの中では安い方の部類のスタンダードツインだった。
高橋:「先生、姉ちゃんがこんな高級ホテルに泊まらせてくれるなんて、どういうことですかね?」
愛原:「俺達にそっくりな人間を使って、殺人の濡れ衣を着せようとした連中だぞ?そいつらの狙いは俺達、引いてはリサだってことだ。このままのこのこ帰ったところで、変な罠が待ち受けているに決まってるだろうが。だから、取りあえずここで一泊して様子を見るんだよ。といっても、セキュリティのしっかりしていない安ホテルじゃ、向こうからそのホテルを襲撃してくる恐れがある。だから、この町では一番の高級ホテルってことになるんだろうな」
高橋:「なるほど。さすが先生です」
荷物を置いて一息したところで、私達は再び善場主任の待つロビーへと向かった。