報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「最終日の朝」

2021-10-06 19:41:09 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月31日07:00.天候:晴 神奈川県相模原市緑区 国家公務員特別研修センター別館2F]

 枕元のスマホがアラームを鳴らす。
 私はそれで起きた。

 愛原:「……フム」

 今度はゆっくり起き上がる。
 上段ベッドに頭をぶつけないようにする為だ。

 高橋:「先生、おはようございます」
 愛原:「ああ、おはよう」

 昨夜は何も無かったみたいだな。
 私はベッドから出ると、テレビやテーブルなど、リビングに相当する空間に出た。
 さて、リサ達が起きて来る前に顔を洗って来るか。
 私は洗面道具を手に、洗面所に向かった。

 愛原:「うーむ……」

 何も無かったか。
 いや、私はつい、夜中にリサの寄生虫に寄生された実験動物達がクリーチャー化し、研究施設で暴れたのみならず、それが地上にも押し寄せ、ここで一戦交えることを予想していたのだが、意外だったな。
 映画の観過ぎ……いや、実体験のし過ぎか。
 さすがに今は、ちゃんと安全に配慮されているらしい。

 高橋:「あの、先生……」
 愛原:「ん、何だ?」

 後から洗面室に入って来た高橋が、驚きを無理に隠そうとして隠しきれないという感じでやってきた。

 高橋:「外、御覧になりました?」
 愛原:「外?」

 洗面室にも窓がある。
 私は歯ブラシを咥えながら、窓の前に寄ってみた。

 愛原:「ブッ!」

 思わず歯ブラシを吹き飛ばしそうになった。
 建物の前の車道は、多くの特殊車両で埋め尽くされていた。
 どちらかというと、BSAAや自衛隊の物が多い。
 そしてその特殊車両の周りには、武装したBSAA隊員や自衛官達の姿があった。

 愛原:「な、何だこりゃあ!?」

 や、やっぱり夜中に何かあったのか!?
 その割には建物内は静かだが……。

 高橋:「ど、どうします?」
 愛原:「守衛所とか研究施設から連絡は?」
 高橋:「何もありません」
 愛原:「分かった。取りあえず、俺達は何も知らないままでいよう」
 高橋:「ええっ!?」
 愛原:「で、ここを出る時に気づいたというテイで行くんだ。そして、そのタイミングで守衛所に問い合わせる。これで行こう。リサ達にも伝えろ」
 高橋:「わ、分かりました」

 一体、何が起きている?
 それからおよそ30分後、朝の支度が終わった私は部屋の内線電話を取って、守衛所に問い合わせた。

 守衛:「はい、もしもし?」
 愛原:「あ、あの、別館に宿泊させて頂いている愛原ですが……」
 守衛:「ああ、愛原さん。どうしました?」
 愛原:「いや、どうしたもこうしたも……!何か、外が随分と物々しいんですが、何かあったんですか!?」
 守衛:「ああ、あれですか。あれはBSAA極東支部日本地区本部隊と陸上自衛隊の合同訓練です」
 愛原:「えっ!?」
 守衛:「ここが、国家公務員特別研修センターだということは御存知ですよね?」

 でも、BSAA隊員は国際公務員で、自衛隊員も階級が下だと地方公務員扱いではなかったか?
 だけど、ヘタに口答えして面倒なことになるのもどうかと思う。

 愛原:「は、はあ……」

 と、だけ反応しておいた。

 守衛:「地下の研究施設で、ウィルス実験に使用した実験動物が暴れ出したという想定で、合同訓練が行われるのです。機密事項になりますので、お教えしてませんでしたね」

 何だ、そういうことか。
 もしかしたら、リサの実験で使用した動物を、ただ単に殺処分するのではなく、こういう訓練に再使用するということか。
 何だ、最近のお役所はちゃんとムダを省いているではないか。
 ……ああ、まあ、その……省き方がいちいちアレだっていうツッコミ所はあるか。

 愛原:「それで、私達はどうすれば?」
 守衛:「もう、そちらを出られる準備は済みましたか?」
 愛原:「ああ、はい。まあ、だいたい……」
 守衛:「そのまま本館に向かってください。すぐ入れるようになってますから、そこの食堂で朝食を召し上がってください」

 と、その時、外から号令の掛かる威勢の良い声が聞こえた。
 『整列!!』とか、『番号!!』とか聞こえる。
 暢気に朝食を召し上がれる状況に無いような気がするのだが……。
 守衛さんら国家公務員さん達にとっては当たり前の状況かもしれないが、私ら民間人には心臓に悪いぞ。

 愛原:「わ、分かりました……」

 私は電話を切った。

 高橋:「何ですって?」
 愛原:「フツーに本館に来て、朝飯食ってくれってことだ」
 高橋:「いいんスか!?大丈夫なんスか!?何か今、突入作戦がどうとか聞こえてきましたよ!?」
 愛原:「その突入作戦の訓練らしい。俺達は気にせず、のこのこと本館に向かってくれとのことだ」
 高橋:「ネンショーの教官とか、ムショの刑務官より凄いっスよ……」

 訓練とはいえ、凄い気合の入りようだ。
 まるで、本当に突入作戦を行うかのような……。

[同日08:00.天候:晴 同区内 同センター本館1F食堂]

 前に来た時は、ここの食堂を利用したわけだ。
 配膳台から朝食を受け取る。
 そこから厨房を覗くと、地下研究施設の食堂へ配膳する小型エレベーターが見えた。
 おひつや味噌汁の入った鍋などは、既にテーブルの上に置かれていた。

 愛原:「今朝は鯖の塩焼きに玉子焼き、ひじきの煮物に、漬物、納豆と大根のお味噌汁か」
 リサ:「♪~」

 リサは鼻歌混じりで、ヒョイヒョイと自分の茶碗に御飯を山盛りに盛った。
 もはや当たり前の光景に、誰もツッコミを入れない。

 高橋:「先生、飯の後は注意事項を受けるということですが……」
 愛原:「いつまで掛かるんかね」

 せめて、東京方面行きの直通電車に乗れるようにはなりたい。
 外では、どうやら『突入作戦』が始まったようだ。
 本館には入って来ないようだが、別館には突入したようだ。
 それで私達に、本館へ移動するよう言ってたのか。

 高橋:「週末は休みでヒマだろうと思ってたのに、案外忙しいんスね」
 愛原:「まあ、週末でないとできないことってあるだろうからな」

 最初、おひつも味噌汁鍋も1つずつしか無かったが、リサがあまりにもお代わりするものだから、先日みたいにまた1つずつ追加された。
 これでも、人食いするよりはマシだろう。

 リサ:「先生、八王子に寄るんでしょ?」
 愛原:「そうだ」
 リサ:「だったらお昼は八王子ラーメン食べたい」
 愛原:「朝飯食べてる最中に、もう昼飯の話か!」

 私の中では、八王子ラーメンは薬味のネギが長ネギではなく、玉ねぎのみじん切りというイメージしか無いが……。
コメント
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