報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「夏休みの登校日」 2

2021-10-31 21:17:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月16日09:58.天候:晴 東京都台東区上野 JR上野駅→東京中央学園上野高校]

〔「まもなく上野、上野です。お降りの際、車内にお忘れ物、落とし物なさいませんよう、ご注意ください。上野です」〕

 リサと絵恋は岩本町駅で地下鉄を降り、徒歩でJR秋葉原駅に向かった。
 そこから今度は山手線に乗り換える。
 岩本町駅と秋葉原駅は全く繋がっていないが、定期券だけは連絡運輸の扱いになっている。
 簡単に言えば、1枚の定期券で利用することができるようになっているという意味だ。
 当たり前だが、本来鉄道会社が違えば、それぞれの定期券を2枚買わないといけない。
 しかし、連絡運輸になっていれば、それを1枚に纏めることができるのだ。
 普通のキップはそれが認められていないが、定期券は認められているわけだ。
 細かい規定はあるのだが、簡単に言えばそんな感じである。

〔うえの~、上野~。ご乗車、ありがとうございます。次は、鶯谷に止まります〕

 電車を降りる2人。
 この辺りは外回りよりも空いている。
 内回りのこの電車が混んで来るのは、日暮里駅や田端駅からであろう。
 今度は、そこから池袋や新宿に向かう客達で賑わうからだ。
 もちろん、上野駅だってそれなりの乗車がある。

 絵恋:「それにしても、アレね」
 リサ:「なに?」
 絵恋:「夏休みの登校日って、単なる安否確認なのよ。つまり、出欠取って終わり。フザけてるよね」
 リサ:「そうかな?私は学校行きたかったから良かったけど……」
 絵恋:「リサさんは学校が好きなのね」
 リサ:「好き。リサ・トレヴァーの中で、まともに学校行けたの私や『1番』くらいだったから。……あと、今の『0番』さんが『12番』だった時か……」

 善場のこと。
 ローティーンの少女達が捕らわれて人体改造実験が行われた中、善場は珍しいハイティーンの時に捕まってそれを受けたクチだ。
 他にハイティーンでそういう運命を辿ったのは、『6番』くらい。
 『6番』は他のリサ・トレヴァーと比べて食人欲は旺盛な上、太陽に弱いという欠点を抱えていた。
 その為、愛原一族の攻撃(プリウスアタック)により、宮城県遠田郡で夕日の直射を浴びて焼死している。

 リサ:「私だけ特別」
 絵恋:「私にとっても、リサさんは特別よ。手ェ握って」
 リサ:「また後でな」
 絵恋:「えーっ!」

 そんなやりとりをしながら、リサ達は久しぶりに登校した。

 リサ:「よし。怪しい人物はいない」
 絵恋:「そうね。さっさと入りましょう」

 昇降口で上履きに履き替える。
 それから階段を昇ろうとすると、カチャカチャと規則正しい金属音がした。

 リサ:「この音は……。栗原センパイ」

 先に階段を上がっていた栗原蓮華を見つけた。
 2年生は登校日ではないはずだが、どうやら部活のようだ。
 剣道着を着て、袴を穿いている。

 蓮華:「ああ、アンタ達か……」
 リサ:「おはようございます」
 蓮華:「ああ……。おはよう……」

 金属音がするのは、蓮華の左足から。
 彼女の左足は義足なのである。

 絵恋:「元気が無いみたいですけど、何かあったんですか?」
 蓮華:「ああ、悪いね。ちょっとブルーなだけ」
 リサ:「気持ちはブルー。だけど、アソコは真っ赤?」

 リサは自分の股間を指さして言った。

 蓮華:「ざっけんな!!」

 リサの冗談を悪い冗談だと思ったのか、蓮華が食って掛かってきた。

 蓮華:「ったく!」

 蓮華はそのまま2階の廊下をスタスタと歩いて行った。

 リサ:「……図星かな?」
 絵恋:「もしくは、部活絡みで嫌な事でもあったのかもね」
 リサ:「そういうもんなの?」
 絵恋:「そういうものよ。私は空手部だけど、よくあるもの」
 リサ:「ふーん……。運動部は大変だ」
 絵恋:「リサさんもいい加減、部活入ればいいのに……」
 リサ:「私は帰宅部で十分」
 絵恋:「リサさん、後で先輩に謝っといた方がいいよ?あの人、アレでしょ?リサさんの正体を知って、真剣で斬ろうとしてきた人でしょう?空手部でも噂になるほど、剣道部では強い人だって聞いたよ。そんな人怒らせたら、後々面倒だよ?」
 リサ:「そ、そうか……」

 リサは蓮華が真剣を振るう姿を思い出した。
 刃には、『悪鬼滅殺』とか彫られていた。
 第一形態の姿は鬼娘そのものであるから、鬼斬りから見れば、恰好の獲物であった。

 リサ:「い、今行ってきた方がいいかな?」
 絵恋:「こういうのは少し時間を置いてからの方がいいよ。まだ頭に血が昇っているかもしれないからね」
 リサ:「なるほど。分かった。それじゃ、帰り際行ってみよう」
 絵恋:「私も一緒に行くから心配しないでね」
 リサ:「ありがとう」

[同日11:00.天候:晴 東京中央学園上野高校]

 絵恋の言う通り、出欠を取り、担任の話を聞くだけで終わった。
 それでお開きになった後、リサと絵恋は2年生の教室に行ってみた。
 クラスはどこか、一応知っていた。

 蓮華:「ちくしょう……!ニュースにすらなってない……!」

 蓮華は教室にいた。
 しかも剣道着から制服に着替えている。
 リサ達と同じように、上はポロシャツだ。
 尚、ポロシャツかブラウスかは個人の判断に委ねられている。
 絵恋や蓮華など、運動部に所属している生徒は部活の際に着替える機会が多い為、脱ぎ着やすいポロシャツを着ることが多い。
 また、ブラウスの場合は透けやすいので、下にキャミソールなどを着なければならないが、ポロシャツであればそれを着る必要は無い。
 蓮華は窓際の自分の席に座り、スマホをイジっていた。

 リサ:「蓮華センパイ」
 絵恋:「し、失礼します」
 蓮華:「なに?私の機嫌がサイアクだと知って来たの?」

 蓮華はリサを睨み付けた。

 リサ:「今朝は失礼なことを言ってゴメンナサイ。謝りに来ました」

 リサが御辞儀をしながら言うと、意外に思ったのか、蓮華は目を見開いた。

 蓮華:「ああ、そんなこと……。生理の方がまだ良かったよ。私の方こそ悪かったね。怒鳴りつけたりして」
 絵恋:「何かあったんですか?私達で良かったら、話聞きますよ?」
 蓮華:「まあ、気持ちはありがたいけど、身内のことだから……」
 絵恋:「身内?」
 蓮華:「鬼斬りに行ったうちの身内がちょっとね……。もしかしたら、鬼に返り討ちにされたかもしれないの」
 リサ:「鬼って……ええっ!?」
 絵恋:「リサさんのお知り合い?」
 リサ:「いや、知らないよ!もうリサ・トレヴァーは私だけのはずだよ!?……まあ、もしかしたら、その亜種がまだ何人かはいるかもしれないけど……。でも、その返り討ちにされたかもしれない人って、センパイより強いの?」
 蓮華:「私よりも一段上の人だよ」
 リサ:「え?」
 絵恋:「先輩より強いってこと」
 リサ:「そ、そうなんだ」
 蓮華:「アンタも鬼でしょ?もしも『鬼斬りを返り討ちにした』とイキがってる鬼を見つけたら、すぐに知らせてちょうだい」
 リサ:「分かった。分かりました」
 絵恋:「でも、先輩よりも強い人がやられたのでしょう?」
 蓮華:「まだ、そうと決まったわけじゃないけど……」
 絵恋:「リサさんが偶然その情報を掴んで先輩に教えたところで、先輩は勝てるんですか?」
 蓮華:「もちろん、私1人だけで戦うわけじゃないよ。ちゃんと道場の師範に伝えるさ」
 リサ:「先輩より強い人をやっつける鬼なんて、一体……」

 リサでさえ、蓮華との試合の時は手こずったというのに……。

 リサ:「この事、善場さんにも伝えていい?」
 蓮華:「あの国家公務員の人ね。いいよ。むしろ、そういった所が動いてくれた方がいいかも……」
 リサ:「分かった。それじゃ」

 リサと絵恋は教室をあとにした。

 絵恋:「良かったね。少しは機嫌が直ったみたい」
 リサ:「クエストクリア?」
 絵恋:「クエストクリアだね」
コメント
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