報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「寄生虫実験」

2021-10-03 20:58:52 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月30日12:00.天候:不明 神奈川県相模原市緑区 政府秘密研究施設B2F会議室]

 午前中の実験が終わった。
 一応リサの保護者ということで、一部だけではあるが、実験の立ち会いをさせてもらう機会に恵まれた。
 それはリサの体から採取したT・G混合ウィルス感染の回虫を実験用動物に寄生させ、実際にリサが操れるのかどうかというものだった。
 その動物はマウスであったが、まるで曲芸を覚えたかのように、リサの意思でマウスは動いた。
 午後はもっと知能の高い動物実験を行うというが、さすがにそれは立ち会わせてもらえないようだ。

 愛原:「研究員達、びっくりしてたな」
 リサ:「結構簡単に動かせた。エブリンも特異菌に感染させた人間を、ああやって操ったのかな?」
 愛原:「そうかもしれない」

 もっとも、特異菌よりも完璧かもしれないと研究員の1人が呟いていたのが気になった。
 それまでも寄生生物を使用したバイオハザード事件は海外で発生したことがあった。
 収束後は同様のバイオテロが起きなかったことから、テロ組織側も利用価値が無いものと判断したのだと思っていた。
 私が、『どうして完璧だと思うのですか?』と聞いたところ、『被寄生側に特別な変異が見受けられない』と、答えてくれた。
 確かにマウスはゾンビウィルスに感染した者等と違い、化け物に変化することはなかった。
 海外で発生した寄生生物によるバイオハザードの時でさえ、寄生された側は化け物に変化したにも関わらずだ。

 絵恋:「私も見たかったなぁ……」

 絵恋さんは検査着に着替え、左腕に点滴を打っている状態であった。
 リサに感染させられたウィルスを駆除する為、ワクチンの投与が行われているのだ。

 リサ:「フン……」

 リサはそんな絵恋さんに鼻を鳴らした。
 こりゃあれだ。
 『また後で感染させてやる』と考えているに違いない。
 だけど、ワクチンが投与されたのだから、私達と同様に抗体ができるのではないかと思うが……。
 それともあれか?寄生虫か?
 ただ、私が懸念していることがある。
 寄生虫に寄生された時の対策として、虫下し(駆虫剤)を経口摂取するというものがあるだろう?
 回復薬としても有名なグリーンハーブにはそのような作用もあるようで、アメリカのラクーン市の変電所で発生した虫の化け物は、人間の体内に卵を産み付けるタイプだったらしいが、一部の被害者はグリーンハーブを摂取したことにより、駆除に成功したという記録が残されている。
 懸念というのは、リサの寄生虫に寄生されたマウスに、今度は駆虫剤を投与するという実験が行われた際、私と高橋は急きょ立ち会いを断られ、研究室から追い出されたことである。
 私が思うに、あれは恐らく駆虫剤が効かなかったのではないか。
 想定外のことだったので、私達の立ち会いが急きょ中止になったものと思われる。

 高橋:「リサの寄生虫を政府は何に使うつもりなんですかね?」
 愛原:「医療にも使えるだろうし、軍事用としても使えるだろうなぁ……」

 これが中国や北朝鮮とかだったら、人体にも寄生させて実験とかもやるんだろうな。
 さすがの日本では、そこまではできまい。
 ……あ、因みに今は会議室で昼食を食べているところだ。

 絵恋:「私は午後も点滴だそうです」
 愛原:「大変だねぇ……。今の点滴は?」
 絵恋:「Tウィルスのワクチンだそうです」
 高橋:「よくゾンビ化しねぇな、オマエ?」
 リサ:「私が止めているからね」

 つまりリサが、絵恋さんをゾンビ化させようと思ったらできたということだ。
 まあ、ワクチンを投与されたことにより、もうリサの手からは離れたと思うが……。

 絵恋:「午後からはGウィルスのワクチンだそうです」
 愛原:「あれ?でもそれって、注射で良くなかった?……ん?そういえば、Tウィルスワクチンも」
 絵恋:「いえ。それが、どっちも点滴だそうです」
 愛原:「リサ!お前、どんだけ絵恋さんに感染させたよ!?」
 リサ:「えへへへへ……」(∀`*ゞ)
 愛原:「照れんな!」
 高橋:「先生は褒めてねーし!」

 リサはやろうと思えば絵恋さんを化け物にできたというわけだ。
 今まで人間と同様の知能や知性、理性のある上級BOWは皆そうしていた。
 あのエヴリンもそうだった。
 だけど、リサはそうしない。
 やろうと思えばできる、という状態に留めている。
 一体、リサは何を考えている?
 この点が他の日本版リサ・トレヴァーと違うところであったし、他のBOWとも違うところだ。
 今まで幾度となく食人衝動に駆られることがあったにも関わらず、食人をしたという記録は全く無い。

 絵恋:「午後は何をやるの?」
 リサ:「今度は犬とか猿に寄生虫を寄生させるんじゃない?」
 愛原:「動物実験の日だからな、今日は」

 もしもそういう知能の高い動物がクリーチャー化したら大変だが、一応所内にはそういう時の為の備えはあるらしい。
 いざとなったら、リサにも対応してもらうようだ。
 中・下級BOWであるハンターくらいの相手なら、リサでも難無く対応できる。
 もちろん実験室は、そんな動物が暴れても大丈夫なようになっているらしいが。

 絵恋:「明日には帰れるんですよね?」
 愛原:「うん。予定では明日、朝食を食べた後、注意事項などを聞いて、それから退場することになるよ」
 絵恋:「そうですか」
 愛原:「本当は真っ直ぐ帰りたいんだけど、八王子に寄らないと」
 高橋:「あのオーナーの話っスね。白井画廊について」
 愛原:「ああ。都内だといいんだけどなぁ……」
 高橋:「まあ、ワンチャン神奈川・埼玉・千葉ってところっスかね」
 愛原:「ああ。都内である確率が1番高いが、2番目は俺は栃木だと思ってる」
 高橋:「栃木っスか。……ああ!あの日光の合宿所!」
 愛原:「そうだ。それと、那須温泉の天長園な」

 いや、今こうしてみると、都内より栃木の可能性が高くなってきたように思えるな。

 絵恋:「あーあ。お昼ご飯終わったら、また処置室かぁ……」

 処置室は病院の処置室と殆ど変わらぬ構造をしている。

 絵恋:「リサさんの実験、見たかったなぁ……」
 愛原:「俺達だって午後の部は見せてくれないよ。リサから聞くしかない」

 と思ったのだが、どういうわけだか、モニター越しなら見学OKという話が舞い込んで来た。
 やはり政府機関からリサの保護を委託されている立場の者として、実験内容を全く知らないのも如何なものかと判断されたらしい。
 直接立ち会わせないことで、『ある程度の機密を守秘した上で、保護者達の安全を確保した』ということに施設側はしたいのだろう。
コメント (1)
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