[6月13日07時00分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階ダイニング]
愛原「おはよう」
パール「おはようございます、先生」
私が3階のダイニングに向かうと、既に朝食の用意は出来上がっていた。
今朝はベーコンエッグ。
1つ目玉のタイプだが、ベーコンが多い。
リサ向けの朝食と言える。
本当に卵料理は洋食にも和食にも使えるから、汎用的だ。
リサ「おはよう」
リサも起きて来た。
愛原「おはよう」
パール「おはようございます」
愛原「今日は高橋に面会に行く日だな」
パール「はい。善場係長は、8時に迎えに来てくださいます」
愛原「8時か。まあ、ちょうどいい時間かな」
東京拘置所の面会受付開始時間は、平日の8時30分から。
そして、面会時間は9時から。
その前に差入店に立ち寄って、差入品を購入することも考えているそうだ。
高橋のような未決囚は、基本的に独房に入れられる。
他人への配慮が必要無い分、話し相手がいなくて寂しいということもある。
未決囚は既決囚よりも規則が緩いとはいえ、暇でしょうがないというのはあるようだ。
そんな時、マンガや雑誌などの読み物を差し入れしてあげると喜ぶのだとか。
愛原「じゃ、さっさと食べるか。お昼までには帰って来るんだろ?」
パール「その予定です」
[同日09時00分 天候:曇 同地区 愛原学探偵事務所2階]
朝食後の洗い物はリサがやった。
そして時間通り、8時には善場係長がいつもの車で迎えに来た。
パールはそれに乗って東京拘置所へ。
手紙の直接差入は認められていないので、私の伝言をパールに伝えておいた。
愛原「それじゃ、依頼人に電話しよう」
私は事務所の固定電話で、依頼人の携帯電話に掛けてみることにした。
すると……。
〔はい、高橋です。ただいま、この電話に出ることはできません。X(旧・Twitter)に、DMを送ってください。Xのアカウント名は、『依頼人ボス』です〕
愛原「は?!」
掛けてみると、高橋の声で録音された伝言メモが流れた。
電話を切って、Xにアクセスしてみた。
どうも、捨て垢っぽいアカウントがあった。
試しにDMを送ってみると、確かに依頼人だという。
『依頼人ボス』という名前は、かつてこの事務所に、探偵業協会から依頼人を斡旋してきた通称『ボス』のことだろう。
私達みたいな個人営業の探偵業者は、ピンポイントで依頼人を見つけることが難しい。
そこで探偵業協会が依頼を受けると、その依頼人を斡旋してくれるのだ。
その際、電話が掛かってくるのだが、『私だ』という一言から始まるので、『まるでボスのようだ』ということから、『ボス』という通称が付いた。
正体は探偵業協会の役員でもあった斉藤秀樹元社長であったが。
仕事の関係上、その依頼を匿名でしてくる依頼人もいる。
その為、私はこの依頼人を、『ボス』と呼ぶことにした。
依頼人『ボス』の話によると、依頼内容の事故物件は、かつてはとあるセレブの別荘だったらしいのだが、その一家が没落してしまい、残った別荘は何故か買い手が付かず、そのままになってしまったとのことだ。
その為、今では廃墟同然となっているという。
とはいうものの、所有権はまだそのセレブ一家の縁者とかにあるだろうから、勝手に調べていいのかと私は質問した。
ボス「大丈夫だ。あの別荘が建っている土地は、他人の物だ。そしてその土地を管理している管理人にツテがある。土地所有の関係者であれば、調べる権利もあるだろう。実際に別荘の鍵も預かっていると聞く。その者に話を通しておく」
愛原「それで、報酬は?」
ボス「【ぴー】万円」
愛原「……やります」
思っていたよりも高額な報酬だったので、引き受けることにした。
因みに、リサの他のブルマの内ポケットに入っていたQRコードのカードは、その別荘で使うものだという。
なので、それも忘れないようにとのことだ。
愛原「高橋がいない以上、俺が1人で行くのか……」
リサ「わたしが一緒に行くよ。お兄ちゃんがいない今、わたしが助手だよ!?」
愛原「しかし、オマエは学校が……」
リサ「今週一杯まで停学なう!」
愛原「……大きな声で言えることじゃないからな?」
リサ「いつ行くの!?」
愛原「明日には行こう。パールにも伝えておかないといけないし。契約書も作成して送らないといけない」
契約書の送付先が埼玉県の私書箱になっているのが気になるが……。
そもそも、イタズラだったらどうしよう……?
愛原「あ……」
リサ「ん?」
銀行のアプリから通知があり、『依頼人ボス』から、着手金が振り込まれたとのことだった。
愛原「こりゃ、イタズラじゃなくて本気だな」
私は『依頼人ボス』がイタズラじゃないことを確認すると、急いで契約書を作成した。
愛原「よっし!あとはこれをレターパックで送るだけ」
リサ「わたしが出してくるよ」
愛原「ああ、頼むよ」
因みに今のリサは、体操服ではなくて、私服に着替えている。
青いTシャツとデニムのスカートだった。
リサが赤いレターパックを持って出て行くと、事務所の電話が鳴った。
愛原「はい、愛原学探偵事務所です」
???「別荘の管理人のアンバーです」
電話口の向こうからは、若い女性の声が聞こえて来た。
愛原「え?え?え?あなたが、『依頼人ボス』さんの仰っていた管理人さん?」
アンバー「はい、愛原学様ですね?」
愛原「そ、そうですが……」
これは意外だ。
私はつい、私よりもっと年上の男性が管理人かと思っていたのだが……。
アンバー「ボスより愛原学様を案内しろと言われました。いつ、おみえになりますか?」
愛原「契約書を送ったばかりだから、明日には行こうと思ってる。もう既に着手金も受け取ったわけだし」
アンバー「かしこまりました!」
普通は契約書を交わしてから着手金を頂戴し、それから仕事に取り掛かるものなのだが、よほど急いでいると見える。
契約書を交わす前に、既に着手金を振り込んで来たのだから。
……こりゃ、レターパックじゃなく、バイク便の方が良かったかな?
もう出してしまったのは、しょうがない。
レターパックも速達郵便扱いではあるから、今日出して明日届くシステムにはなっているのだが。
斉藤元社長の時もそうだったな。
ほとんど随意契約みたいなもので、依頼書が来たらすぐに着手金をもらって、契約書はその後という変則的過ぎることをやっていたものだ。
それを思い出す。
それにしても、『アンバー』と名乗る若い女性管理人も、匿名を名乗るとはどういうことなのだろう?
どうせ直接会うのだから、今から匿名にしても意味が無いような気がするのだが……。
ん?そもそも、『アンバー』ってどういう意味だ?
愛原「おはよう」
パール「おはようございます、先生」
私が3階のダイニングに向かうと、既に朝食の用意は出来上がっていた。
今朝はベーコンエッグ。
1つ目玉のタイプだが、ベーコンが多い。
リサ向けの朝食と言える。
本当に卵料理は洋食にも和食にも使えるから、汎用的だ。
リサ「おはよう」
リサも起きて来た。
愛原「おはよう」
パール「おはようございます」
愛原「今日は高橋に面会に行く日だな」
パール「はい。善場係長は、8時に迎えに来てくださいます」
愛原「8時か。まあ、ちょうどいい時間かな」
東京拘置所の面会受付開始時間は、平日の8時30分から。
そして、面会時間は9時から。
その前に差入店に立ち寄って、差入品を購入することも考えているそうだ。
高橋のような未決囚は、基本的に独房に入れられる。
他人への配慮が必要無い分、話し相手がいなくて寂しいということもある。
未決囚は既決囚よりも規則が緩いとはいえ、暇でしょうがないというのはあるようだ。
そんな時、マンガや雑誌などの読み物を差し入れしてあげると喜ぶのだとか。
愛原「じゃ、さっさと食べるか。お昼までには帰って来るんだろ?」
パール「その予定です」
[同日09時00分 天候:曇 同地区 愛原学探偵事務所2階]
朝食後の洗い物はリサがやった。
そして時間通り、8時には善場係長がいつもの車で迎えに来た。
パールはそれに乗って東京拘置所へ。
手紙の直接差入は認められていないので、私の伝言をパールに伝えておいた。
愛原「それじゃ、依頼人に電話しよう」
私は事務所の固定電話で、依頼人の携帯電話に掛けてみることにした。
すると……。
〔はい、高橋です。ただいま、この電話に出ることはできません。X(旧・Twitter)に、DMを送ってください。Xのアカウント名は、『依頼人ボス』です〕
愛原「は?!」
掛けてみると、高橋の声で録音された伝言メモが流れた。
電話を切って、Xにアクセスしてみた。
どうも、捨て垢っぽいアカウントがあった。
試しにDMを送ってみると、確かに依頼人だという。
『依頼人ボス』という名前は、かつてこの事務所に、探偵業協会から依頼人を斡旋してきた通称『ボス』のことだろう。
私達みたいな個人営業の探偵業者は、ピンポイントで依頼人を見つけることが難しい。
そこで探偵業協会が依頼を受けると、その依頼人を斡旋してくれるのだ。
その際、電話が掛かってくるのだが、『私だ』という一言から始まるので、『まるでボスのようだ』ということから、『ボス』という通称が付いた。
正体は探偵業協会の役員でもあった斉藤秀樹元社長であったが。
仕事の関係上、その依頼を匿名でしてくる依頼人もいる。
その為、私はこの依頼人を、『ボス』と呼ぶことにした。
依頼人『ボス』の話によると、依頼内容の事故物件は、かつてはとあるセレブの別荘だったらしいのだが、その一家が没落してしまい、残った別荘は何故か買い手が付かず、そのままになってしまったとのことだ。
その為、今では廃墟同然となっているという。
とはいうものの、所有権はまだそのセレブ一家の縁者とかにあるだろうから、勝手に調べていいのかと私は質問した。
ボス「大丈夫だ。あの別荘が建っている土地は、他人の物だ。そしてその土地を管理している管理人にツテがある。土地所有の関係者であれば、調べる権利もあるだろう。実際に別荘の鍵も預かっていると聞く。その者に話を通しておく」
愛原「それで、報酬は?」
ボス「【ぴー】万円」
愛原「……やります」
思っていたよりも高額な報酬だったので、引き受けることにした。
因みに、リサの他のブルマの内ポケットに入っていたQRコードのカードは、その別荘で使うものだという。
なので、それも忘れないようにとのことだ。
愛原「高橋がいない以上、俺が1人で行くのか……」
リサ「わたしが一緒に行くよ。お兄ちゃんがいない今、わたしが助手だよ!?」
愛原「しかし、オマエは学校が……」
リサ「今週一杯まで停学なう!」
愛原「……大きな声で言えることじゃないからな?」
リサ「いつ行くの!?」
愛原「明日には行こう。パールにも伝えておかないといけないし。契約書も作成して送らないといけない」
契約書の送付先が埼玉県の私書箱になっているのが気になるが……。
そもそも、イタズラだったらどうしよう……?
愛原「あ……」
リサ「ん?」
銀行のアプリから通知があり、『依頼人ボス』から、着手金が振り込まれたとのことだった。
愛原「こりゃ、イタズラじゃなくて本気だな」
私は『依頼人ボス』がイタズラじゃないことを確認すると、急いで契約書を作成した。
愛原「よっし!あとはこれをレターパックで送るだけ」
リサ「わたしが出してくるよ」
愛原「ああ、頼むよ」
因みに今のリサは、体操服ではなくて、私服に着替えている。
青いTシャツとデニムのスカートだった。
リサが赤いレターパックを持って出て行くと、事務所の電話が鳴った。
愛原「はい、愛原学探偵事務所です」
???「別荘の管理人のアンバーです」
電話口の向こうからは、若い女性の声が聞こえて来た。
愛原「え?え?え?あなたが、『依頼人ボス』さんの仰っていた管理人さん?」
アンバー「はい、愛原学様ですね?」
愛原「そ、そうですが……」
これは意外だ。
私はつい、私よりもっと年上の男性が管理人かと思っていたのだが……。
アンバー「ボスより愛原学様を案内しろと言われました。いつ、おみえになりますか?」
愛原「契約書を送ったばかりだから、明日には行こうと思ってる。もう既に着手金も受け取ったわけだし」
アンバー「かしこまりました!」
普通は契約書を交わしてから着手金を頂戴し、それから仕事に取り掛かるものなのだが、よほど急いでいると見える。
契約書を交わす前に、既に着手金を振り込んで来たのだから。
……こりゃ、レターパックじゃなく、バイク便の方が良かったかな?
もう出してしまったのは、しょうがない。
レターパックも速達郵便扱いではあるから、今日出して明日届くシステムにはなっているのだが。
斉藤元社長の時もそうだったな。
ほとんど随意契約みたいなもので、依頼書が来たらすぐに着手金をもらって、契約書はその後という変則的過ぎることをやっていたものだ。
それを思い出す。
それにしても、『アンバー』と名乗る若い女性管理人も、匿名を名乗るとはどういうことなのだろう?
どうせ直接会うのだから、今から匿名にしても意味が無いような気がするのだが……。
ん?そもそも、『アンバー』ってどういう意味だ?
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