[魔界時間2月11日12:30.天候:霧 魔界王国アルカディア王都アルカディアシティ49番街 国立病院]
稲生:「すいません、あの病院の前で降ろしてください」
運転士:「はいよ」
アルカディアシティの路面電車は、ターミナル以外に決まった電停が無いので、乗客は降りたい所で降りる。
大抵は交差点などで止まったタイミングで降りるが、あえて止まって欲しい場合、ワンマン運転の場合は運転士に、ツーマン運転の場合は車掌に申し出る。
この場合は前者だった。
よほど変な所でも無い限りは、大抵停車してくれる。
稲生だけでなく、他にも降車希望者がいたり、逆に病院の前から乗車する者もいた。
マリア:「だから私も同業者だっつの!飴要らないっての!」
老魔女:「ヒェッヘッヘッヘッ!お嬢ちゃん、またよろしく頼むよ~」
因みに外国、特に途上国の公共交通機関では『車内販売』が実施されることがある。
もちろんそれは運行当局には無断だ。
しかし大らかな国柄の場合、乗務員らは禁止することをしない。
このアルカディア王国もそうだった。
マリア:「たまに落ちぶれたヤツが物乞いとか、変な物売り付けたりするんだった」
稲生:「大変ですねぇ……」
電車を降りて病院に入る。
稲生:「ああいう魔女の御婆さんが、我流者の成れの果てなんですか?」
マリア:「ダンテ一門に限らず、所属していた魔法門を除名されたりした者の成れの果てだな。除名を食らった者を拾う魔法門なんて、他に無いからね。だから皆、怖いんだよ。仲間外れにされて、最後には除名されるの……」
稲生:「ダンテ一門の綱領第一に、『仲良き事は美しき哉』とありますが、急に重みを感じる言葉ですね」
マリア:「そういうこと」
病院の中に入り、入院患者のいる病棟へ向かう。
中はまるで19世紀の病院のようだ。
いや、アルカディアシティ自体が18世紀か19世紀のような雰囲気。
たまに電車で20世紀ものが入っていたりするものがあるだけで、中には更に過去に戻ったかのように、RPGの世界から出て来たと見紛うほどの冒険者達も歩いたりする。
さっきも路面電車が、ビキニアーマーの女戦士の横を通って行った。
マリア:「師匠の部屋はここだ」
稲生:「こんにちは。イリーナ先生、稲生入ります」
マリア:「マリアンナです。生きてますかー?」
ゾンビ:「グワァーッ!!」
稲生:「わあーっ!?」
いきなりドアの陰からゾンビが襲い掛かって来た!
マリア:「師匠!変な冗談はやめください!」
ゾンビ:「バレた?」
すると、ゾンビが見る見るうちにイリーナの姿に変わって行く。
どうやらイリーナが、魔法でゾンビに変身していただけのようだ。
稲生:「『モシャス』!?」
因みにドラクエシリーズの変身魔法モシャスの語源は、相手の姿を『模写す』るからとのこと。
マリア:「私もびっくりした。でも師匠、体の具合は良さそうですね。良かったです」
するとイリーナ、フラフラっとベッドに戻る。
イリーナ:「うんにゃ、薬の副作用で熱が39度もあるんよ……」
稲生:「ええっ!?」
マリア:「具合悪いならおとなしく寝とれーっ!」
イリーナ、ベッドに潜り込む。
稲生:「あ、あの、今は食欲無いかもですが、これ、もし宜しかったらお見舞いのカステラで……」
イリーナ:「おお~、スッパスィーバ!後で頂くよ~」
マリア:「……本当に具合悪いんですか?」
イリーナ:「あなたのママに肝臓潰されたからね。おかげで治るまで禁酒よ。具合が悪いのはそのせいね」
稲生:(肝臓潰されたことはスルーしていいんだ!?)
だが稲生、かつて妖狐の威吹邪甲と共に行動をしていた時、敵対妖怪の攻撃で威吹が大ダメージを食らったことがある。
その際、腹に穴を開けられたのだが、翌日にはケロッとしていた。
そのことを思い出した。
稲生:(僕も臓器1つ無くなったくらいでは平気なまでになるのかなぁ……)
もっとも、普通の人間であっても腎臓なら1つ無くても大丈夫らしいがw
2つあるといい。
マリア:「うちの毒親が本っ当すいません!!」
さすがにマリア、そこは娘として全力で謝った。
イリーナ:「いやあ、所詮は我流者と思って見くびっていたんだけど、まさかバァルのクソジジィと契約してたとはねぇ……」
マリア:「ほんと、あれだけはマジで卑怯だと思います」
正々堂々と真正面から戦い、卑怯行為を嫌う戦士に対し、『勝てば官軍負ければ賊軍』思考が一般的な魔道士は、そんな戦士から見れば卑怯の対象に当たる行為も平然と行う。
トチロ~さんが前者で、作者は後者であるから、この辺で対立するかもねw
ま、そこは体育会系と文科系の違いってことでw
で、そんな魔道士から見ても更に『卑怯』と非難されることをアレクサはしたということだ。
イリーナ:「あの爺さんへの抗議として、今年の敬老の日は全部無視してスルースルーと行きましょう」
稲生:「日本の敬老の日、あと半年以上もありますけど?」
マリア:「勇太。師匠もお年を召されているんだから、時間の感覚が私達と違うの」
稲生:「あ、そうか。……あ、すいません!昨年の敬老の日、先生に何も差し上げてませんでした!申し訳ありませんでした!」
イリーナ:「社交辞令でも本気でも、後でお説教ね」
稲生:「ええっ!?」Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン
マリア:「退院祝いでもあげればいいよ」
稲生:「そ、そうですか」
イリーナ:「勇太君も、マリアの影響を多大に受けているようねぇ……」
稲生:「そ、そりゃまあ、いつも一緒ですから……」
イリーナ:「いつも一緒ねぇ……」
イリーナはクスッと笑った。
稲生の失言でこめかみに怒筋を浮かべたイリーナだったが、やっとその怒筋が消えた。
イリーナ:「『仲良き事は美しき哉』というし、今後とも2人は仲良くおやり」
稲生:「は、はい!」
マリア:「それはもちろん」
イリーナへの見舞は終わったのだが、稲生達は病院からしばらく出られなかった。
他の病室に入院している同門の士に対し、アレクサの悪行を娘のマリアが謝罪しに回ったからである。
稲生:「すいません、あの病院の前で降ろしてください」
運転士:「はいよ」
アルカディアシティの路面電車は、ターミナル以外に決まった電停が無いので、乗客は降りたい所で降りる。
大抵は交差点などで止まったタイミングで降りるが、あえて止まって欲しい場合、ワンマン運転の場合は運転士に、ツーマン運転の場合は車掌に申し出る。
この場合は前者だった。
よほど変な所でも無い限りは、大抵停車してくれる。
稲生だけでなく、他にも降車希望者がいたり、逆に病院の前から乗車する者もいた。
マリア:「だから私も同業者だっつの!飴要らないっての!」
老魔女:「ヒェッヘッヘッヘッ!お嬢ちゃん、またよろしく頼むよ~」
因みに外国、特に途上国の公共交通機関では『車内販売』が実施されることがある。
もちろんそれは運行当局には無断だ。
しかし大らかな国柄の場合、乗務員らは禁止することをしない。
このアルカディア王国もそうだった。
マリア:「たまに落ちぶれたヤツが物乞いとか、変な物売り付けたりするんだった」
稲生:「大変ですねぇ……」
電車を降りて病院に入る。
稲生:「ああいう魔女の御婆さんが、我流者の成れの果てなんですか?」
マリア:「ダンテ一門に限らず、所属していた魔法門を除名されたりした者の成れの果てだな。除名を食らった者を拾う魔法門なんて、他に無いからね。だから皆、怖いんだよ。仲間外れにされて、最後には除名されるの……」
稲生:「ダンテ一門の綱領第一に、『仲良き事は美しき哉』とありますが、急に重みを感じる言葉ですね」
マリア:「そういうこと」
病院の中に入り、入院患者のいる病棟へ向かう。
中はまるで19世紀の病院のようだ。
いや、アルカディアシティ自体が18世紀か19世紀のような雰囲気。
たまに電車で20世紀ものが入っていたりするものがあるだけで、中には更に過去に戻ったかのように、RPGの世界から出て来たと見紛うほどの冒険者達も歩いたりする。
さっきも路面電車が、ビキニアーマーの女戦士の横を通って行った。
マリア:「師匠の部屋はここだ」
稲生:「こんにちは。イリーナ先生、稲生入ります」
マリア:「マリアンナです。生きてますかー?」
ゾンビ:「グワァーッ!!」
稲生:「わあーっ!?」
いきなりドアの陰からゾンビが襲い掛かって来た!
マリア:「師匠!変な冗談はやめください!」
ゾンビ:「バレた?」
すると、ゾンビが見る見るうちにイリーナの姿に変わって行く。
どうやらイリーナが、魔法でゾンビに変身していただけのようだ。
稲生:「『モシャス』!?」
因みにドラクエシリーズの変身魔法モシャスの語源は、相手の姿を『模写す』るからとのこと。
マリア:「私もびっくりした。でも師匠、体の具合は良さそうですね。良かったです」
するとイリーナ、フラフラっとベッドに戻る。
イリーナ:「うんにゃ、薬の副作用で熱が39度もあるんよ……」
稲生:「ええっ!?」
マリア:「具合悪いならおとなしく寝とれーっ!」
イリーナ、ベッドに潜り込む。
稲生:「あ、あの、今は食欲無いかもですが、これ、もし宜しかったらお見舞いのカステラで……」
イリーナ:「おお~、スッパスィーバ!後で頂くよ~」
マリア:「……本当に具合悪いんですか?」
イリーナ:「あなたのママに肝臓潰されたからね。おかげで治るまで禁酒よ。具合が悪いのはそのせいね」
稲生:(肝臓潰されたことはスルーしていいんだ!?)
だが稲生、かつて妖狐の威吹邪甲と共に行動をしていた時、敵対妖怪の攻撃で威吹が大ダメージを食らったことがある。
その際、腹に穴を開けられたのだが、翌日にはケロッとしていた。
そのことを思い出した。
稲生:(僕も臓器1つ無くなったくらいでは平気なまでになるのかなぁ……)
もっとも、普通の人間であっても腎臓なら1つ無くても大丈夫らしいがw
2つあるといい。
マリア:「うちの毒親が本っ当すいません!!」
さすがにマリア、そこは娘として全力で謝った。
イリーナ:「いやあ、所詮は我流者と思って見くびっていたんだけど、まさかバァルのクソジジィと契約してたとはねぇ……」
マリア:「ほんと、あれだけはマジで卑怯だと思います」
正々堂々と真正面から戦い、卑怯行為を嫌う戦士に対し、『勝てば官軍負ければ賊軍』思考が一般的な魔道士は、そんな戦士から見れば卑怯の対象に当たる行為も平然と行う。
ま、そこは体育会系と文科系の違いってことでw
で、そんな魔道士から見ても更に『卑怯』と非難されることをアレクサはしたということだ。
イリーナ:「あの爺さんへの抗議として、今年の敬老の日は全部無視してスルースルーと行きましょう」
稲生:「日本の敬老の日、あと半年以上もありますけど?」
マリア:「勇太。師匠もお年を召されているんだから、時間の感覚が私達と違うの」
稲生:「あ、そうか。……あ、すいません!昨年の敬老の日、先生に何も差し上げてませんでした!申し訳ありませんでした!」
イリーナ:「社交辞令でも本気でも、後でお説教ね」
稲生:「ええっ!?」Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン
マリア:「退院祝いでもあげればいいよ」
稲生:「そ、そうですか」
イリーナ:「勇太君も、マリアの影響を多大に受けているようねぇ……」
稲生:「そ、そりゃまあ、いつも一緒ですから……」
イリーナ:「いつも一緒ねぇ……」
イリーナはクスッと笑った。
稲生の失言でこめかみに怒筋を浮かべたイリーナだったが、やっとその怒筋が消えた。
イリーナ:「『仲良き事は美しき哉』というし、今後とも2人は仲良くおやり」
稲生:「は、はい!」
マリア:「それはもちろん」
イリーナへの見舞は終わったのだが、稲生達は病院からしばらく出られなかった。
他の病室に入院している同門の士に対し、アレクサの悪行を娘のマリアが謝罪しに回ったからである。