報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「南会津の旅」

2023-03-18 11:31:27 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月29日08時12分 天候:曇 栃木県日光市今市 東武鉄道下今市駅]

 

〔「まもなく下今市、下今市です。2番線に入ります。お出口は、左側です。下今市駅で、前3両と後ろ3両の切り離し作業を行います。“リバティ会津”101号は、8時16分に発車致します。“リバティけごん”1号は……」〕

 私達を乗せた特急列車は、ダイヤ通りに下今市駅に到着した。

 愛原「……なあ、おい」

 私達は先頭車両に乗っているので、ホームに入線した時、先にホームの様子を知ることができる。
 そこで私は気づいた。

 愛原「駅弁の売店、閉まってなくね?」

 と。
 私がそれを呟くと、背後からパンタグラフがスパークするような音が聞こえた。
 えーと……この車両、パンタグラフがあったかなぁ……と。

 高橋「先生、リサの放電のせいで、電子機器がヤバそうなんスけど……」
 リサ「駅弁が買えない……!」

 段々と鉄道の旅も不便になってくるねぇ……。
 しょうがないので、この駅では自販機で飲み物だけ買い足しておくことにした。

[同日09時40分 天候:晴 福島県南会津郡南会津町 会津鉄道田島駅]

〔「長らくのご乗車、お疲れさまでした。まもなく終点、会津田島、会津田島に到着致します。1番線に入ります。お出口は、左側です。会津田島より先へおいでのお客様、9時47分発、快速“リレー”101号、会津田島行きは3番線から発車致します。……」〕

 何時間もかけて、ようやく鉄道の旅は終わりを見せようとしている。
 そう、『鉄道の旅』は!
 何せ、目的地はこの町ではない。
 今度は、鉄道の無い村まで、車で行かなくてはならない。
 お昼ぐらいには着けるのかなぁ……?
 そう考えると、リサの言った通り、学校は早退させてでも、前乗りして今夜はこの町に泊まり……といった方法でも良かったかもしれない。

 愛原「あー、やっと着いた」

 電車が架線の張られているホームに到着する。
 1番線は行き止まりのホームだが、他のホームはまだ線路が先まで続いている。
 だが、架線が張られているのはこの駅まで。
 接続列車が発車するホームには、架線が張られていない。
 つまり、接続列車はディーゼルカーだということだ。
 ホームに降りると、案外ヒヤッとした風が私達に吹き付けた。
 もうここは東北地方。
 しかも、山間で冬は豪雪地帯ということもあり、既に冬の影がチラチラとこちらの気配を窺っているような10月末である。
 2番線を挟んだ向こうのホームでは、ディーゼルカーのアイドリング音が響いている。
 一部の乗客達は、そちらへ移動する。
 電車は確かに、東武鬼怒川線の各駅で乗客を降ろしていった。
 会津田島駅で降りた乗客はもちろん私達だけではないが、それでも都内から乗り通した客は週末であっても、少ないようだった。

 駅員「はい、ありがとうございました」

 自動化されていない改札口に立つ駅員に、浅草からのキップを渡して出場する。

 愛原「この後は地元のレンタカーショップに行くが、もう行って大丈夫か?少し休んでから行くか?」
 高橋「いえ、俺は大丈夫っス。久しぶりに運転できて、腕が鳴りますよ!」
 リサ「わたし、トイレに行って来る」
 愛原「ああ、行ってこい」

 リサにとっては駅弁も車内販売も無い、つまらない鉄旅であったか。
 まあ、帰りに期待しよう。

[同日10時00分 天候:晴 同町内 会津レンタカー]

 リサがトイレから戻ってきた後、私達はレンタカー会社へ向かった。
 レンタカー会社は全国チェーン店ではなく、地元の会社である。
 駅から徒歩4~5分くらいだということで、そこへ向かう。

 愛原「いいか?本当はオマエ、免停なのに、今日と明日だけは善場主任の計らいで、特別に運転できるんだ。感謝の気持ちを忘れんなよ?」
 高橋「も、もちろんです、先生」

 善場主任は政府機関の職員で、そこからデイライトに出向しているという形を取っている。
 そしてそんな主任が本当に所属している機関の手に掛かれば、高橋の免停を解除できる力を持っているのだろう。
 とはいえ完全にというわけではなく、あくまで今日と明日の2日間だけ。
 持ち点も1点だけというものだった。
 もしまた減点を食らおうものなら、今度は良くて免停期間の延長、最悪は免取になるかもしれないという。

 スタッフ「それでは、こちらのお車をご利用ください」

 私達のプランでは、コンパクトカーである。
 車種は選べないとのことだったが、スタッフが指定したのはホンダのフィットだった。
 大抵、レンタカー会社で私達が乗ろうとすると、これである。

 愛原「ありがとうございます」

 私達はハッチを開けると、そこに荷物を積んだ。

 スタッフ「これから、どこに行かれるんですか?」
 愛原「桧枝岐村です」
 スタッフ「桧枝岐ですか」
 愛原「ここから車で、どのくらい掛かりますか?」
 スタッフ「そうですねぇ……。休憩無しで急いで向かっても、1時間強といったところでしょうか。村の中心部までくらいでしたら、そんなに難しい道じゃないですし、カーナビも付いてますから」
 愛原「ありがとうございます」

 高橋は運転席に乗り込んだ。
 私が助手席に乗り込み、リサはリアシートに乗り込んだ。

 愛原「リサ、狭くないか?」
 リサ「ううん、大丈夫。……けど、何だか車が小さいような……?」
 愛原「それはオマエが大きくなったんだよ」
 リサ「あ、そうか」

 車を出して、まずは会社の前の町道に出る。
 そこから西進して、国道121号線に向かった。
 この国道だけで行ければ良いのだが、そんなことはない。

 愛原「さっきのスタッフ、急いでいけば1時間ちょっとって言ってたな。まあ、こっちはそれまでにも鉄道の旅をしてきたわけだし、休憩を挟みながら行こう」
 高橋「うっス」
 愛原「遅くても、昼過ぎぐらいに着ければいいんだ。だから高橋、スピード違反とか信号無視で捕まるなよ?あとは、一時停止不停止とか」
 高橋「だ、大丈夫っスよ」

 国道121号線は数百メートル走っただけで別れる。
 今度は国道289号線に入り、さっき乗って来た会津鉄道の線路の下を潜った。

 愛原「そうだな……。途中に道の駅があったら、そこで休もう」
 高橋「はい」

 どうやらこの国道沿いに、それはあるようだ。
 まずは、そこを目指してみることにした。
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“私立探偵 愛原学” 「思い出辿る旅」

2023-03-17 21:00:33 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月29日05時45分 天候:晴 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線511T電車最後尾車内]

 出発の日になり、私達は早朝の菊川駅にいた。
 土曜日の早朝ということもあり、駅構内には人は疎らである。
 リサも高橋も、眠そうな顔で電車を待っている。

〔まもなく1番線に、各駅停車、笹塚行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 トンネルの向こうから、電車の轟音と強い風が吹いてくる。
 最後尾の車両が止まる位置で電車を待っている為、風をもろに受ける形となるだろう。
 リサはグレーのパーカーを着ていて、フードを被っている。
 今は人間に化けれているようだが、変異後の状態にまだ慣れていないので、間違って変化しても隠す為である。

 愛原「おい、電車が来るぞ。下がってろ」
 高橋「うっス……」

 都営の車両が入線してきた。
 平日の同じ時間と比べると、確かに客は少ない。

〔1番線の電車は、各駅停車、笹塚行きです。きくかわ~、菊川~〕

 最後尾の車両に乗り込む。
 すぐに、短い発車メロディが流れた。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 電車のドアと、ホームドアが閉まる。
 それから、乗務員室から発車合図のブザーが聞こえてくると、電車が動き出した。
 関東ではブザー一択だが、名鉄や関西の私鉄ではチンベルを鳴らすようだ。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕

 私達が最後尾に乗っているのは、何もリサが同行しているからだけではない。
 途中の馬喰横山駅で都営浅草線に乗り換えるのだが、向こうの東日本橋駅とは尻合わせの状態になっている為、上り電車からの乗り換えの場合、連絡通路が後ろ側にあるからだ。

 リサ「ふわ……!」

 リサは大きな欠伸をした。
 白いマスクをしているからバレてないが、さすがに牙までは隠せないもよう。
 昔は、牙も隠せていたこと考えると、人間から遠ざかっているような気がしてならない。
 角も1本増えてしまったし。

[同日06時03分 天候:晴 東京都台東区駒形 都営地下鉄浅草駅]

〔2番線の電車は、京成押上線直通、各駅停車、青砥行きです。あさくさ~、浅草~。地下鉄銀座線、東武鉄道線はお乗り換えです〕

 京急電車が浅草駅に到着する。
 都営浅草線内では京急電車に縁があるが、たまたま京急線内から乗り入れてきたのだろう。
 様々な会社の電車が来るからか、浅草駅にはホームドアが無い。
 東京メトロの浅草駅よりも東武浅草駅からは離れているので、少し歩かないといけない。
 何しろ、住所が違う点でお察しだ。

 リサ「前乗りとか、できなかったの?」
 愛原「まさかオマエが変化するとは思わなかったんだ。学校を休むわけにはいかなかったし、それで土日の1泊だよ」

 さすがに日帰りできるとは思っていなかった。
 なので、現地で宿は取っている。

 リサ「ふーん……」

 都営地下鉄浅草駅から、東武浅草駅に移動する。
 その際に一旦地上に出る。
 真冬ならまだ暗い時間だが、秋の今はもう日が出ている。
 今日は天気が良く、地上に出た瞬間、朝日がアサヒビール本社ビルの方から差し込んできた。

 リサ「眩しい……」

 リサは日光を手で遮った。
 この際、目の色がまた変わる。
 白目が黒くなり、瞳がグレー……。
 瞳が赤くなる時より、更に不気味さを増している。

 愛原「この目の色の変化は、何とかならんのか?」
 リサ「えっ?変わってるの?」

 自覚が無いのか……。
 そう思っていると、また元の色に変わる。
 光の加減で変わるのか???

 高橋「先生、朝飯は駅弁スか?」
 愛原「そうしたいんだけどねぇ、朝早すぎて、駅弁売ってないんだよ」
 リサ「ええっ?それじゃ……」
 愛原「途中の下今市駅辺りでワンチャン狙うしかない」
 リサ「車内販売は?」
 愛原「もう東武特急では無くなった」
 高橋「……コンビニ買いですかね」
 愛原「そういうことだな。まあ、昼飯や夕食は何とかなるだろう」

 私達は東武浅草駅前のコンビニに立ち寄ることにした。

[同日06時20分 天候:晴 東京都台東区花川戸 東武浅草駅→東武スカイツリーライン1101列車先頭車内]

 愛原「キップは1人ずつ持とう。どうせ終点の会津田島駅も、自動改札じゃないからな」
 高橋「分かりました」

 新幹線と違って、座席は2人席しかないので、鍵型に乗るしかない。
 リサと高橋には後ろに乗ってもらって、私はその前に座ればいいだろう。

 

 特急ホームにはインフォメーションを兼ねた中間改札があり、そこで特急券の確認が行われる。

〔「3番線に停車中の電車は、6時30分発、特急“リバティけごん”1号、東武日光行きと特急“リバティ会津”101号、会津田島行きです。1号車から3号車が会津田島行き、4号車から6号車が東武日光行きです。お手持ちの特急券の座席番号をお確かめの上、指定の席をご利用ください。……」〕

 ホームの前の方に向かって歩く。
 東武浅草駅は、ターミナル駅としては特殊な構造をしていて、駅を出ると、すぐ90度に近い右カーブがあるのである。
 駅のホームからして既に曲がっており、前の方に行けば行くほど細くなるという構造になっている。

 リサ「代替修学旅行を思い出す」
 愛原「ああ。その時も、このリバティだったな」

 しかも、同じく先頭車だ。
 今回は代替修学旅行と違って夜行列車はなく、朝出発の電車だ。
 土曜日の朝ということもあり、既に多くの行楽客がドアが開くのを待っている。
 ただ、その多くがお年寄りの団体だったり、外国人グループという辺りに格差を感じるのは、私が格差を一身に受けるロスジェネ世代だからだろうか。

〔「お待たせ致しました。まもなくドアが開きます」〕

 ドアが開くと、前の車両の方には渡り板が置かれる。
 ホームが湾曲しているので電車とホームの間が広く空く為、乗客が落ちないようにする為である。
 この渡り板は、発車の直前に外される。

 

〔♪♪♪♪。東武鉄道をご利用頂き、ありがとうございます。この電車は6時30分発、特急“リバティけごん”1号、東武日光行きと特急“リバティ会津”101号、会津田島行きです。……〕

 高橋「飲み物買って来ます」
 愛原「そうしよう。まあ、俺はコーヒーだな」
 高橋「了解っス」

 座席に荷物を置くと、高橋はホームの自販機に向かって行った。
 コンビニで食べ物とペットボトルは購入したが、それとは別にコーヒーでもといったところだ。
 それにしても、私達のように終点まで乗って行く客はどれだけいるのだろうか?
 多くが鬼怒川温泉辺りで降りそうな気がして、しょうがないのだ。
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“私立探偵 愛原学” 「『四天王』のお見舞い」

2023-03-17 14:50:20 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月27日15時30分 天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 淀橋「魔王様ぁ、体の具合どう?」
 小島「家で倒れたって聞いて、もー心配で心配で……」
 上野凛「リサ先輩、御無事で良かったです!」
 桜谷「リサ様のお元気になった姿、今度は彫像にして……」

 『魔王軍』の『四天王』が見舞いに来た。
 凛を除けば、全員文化部である。
 凛だけ体育の時間、ブルマを穿いていないが、陸上部に所属しており、そこのユニフォームとしてのレーシングブルマを穿くことにより、リサからの圧を免れている。

 高橋「いきなりうるさくなりやがりましたね。在宅ワークの邪魔だ」
 愛原「こういうこともあるからな。やはり、事務所と住居、建物は統一するにしても、そこは分かれている方がいい」
 高橋「先生、何の話ですか?」

 『魔王』と『四天王』達は、リサの部屋にいる。
 リサは白いTシャツに黒い短パンでベッドに横になることにより、病気療養であることをさりげなくアピール。

 愛原「事務所移転の話だよ。オマエもそうだったが、いつでも3人が事務所にいるとは限らない。そんな時、あの事務所は広過ぎる」
 高橋「あー、まあそうですね」

 私が長期入院している間、デイライトさんが動いてくれて、今の状態なのだが、何年もやっていると、さすがに不都合が出てきた。

 愛原「何とか、条件に合う移転先が見つかればと思っている」
 高橋「俺も探しているんスけど、先生の仰る条件って、『なるべくこの近く』『事務所と住居が同じ建物』『事務所と住居は別の区画』ってことっスよね?」
 愛原「そうなんだ。探せばありそうで、実はあまりない」

 『なるべくこの近く』という条件を外せば、遠くにあったりするのだが、リサも通学が大変になるからな……。

 高橋「良さそうな物件が無いかどうか、俺の知り合いにも探させますよ」
 愛原「知り合いに不動産関係とかいるの?」
 高橋「そうなんです。『追い出し屋』とかやってるヤツがいますもんで、良さそうな物件にいやがる奴がいたら、あの手この手で追い出して……」
 愛原「昔のヤクザか!地上げ屋とかの!」
 高橋「法律のせいでヤーさんができなくなったもので、半グレが……」
 愛原「後でこっちが泣きを見そうだから、別にいいよ」

 私と高橋は休憩とばかりに、ダイニングでコーヒータイム。

 愛原「そうだ。あのコ達にも、お茶を持って行ってあげよう」
 高橋「先生、自らですか?」
 愛原「ああ。LGBTの自称G、実質Bのお前が持って行くより、どノーマルの俺が持って行った方がいいだろう」
 高橋「後でこのブログが炎上しても知りませんよ?」
 愛原「Twitterじゃないから問題なし」
 高橋「さすが先生、天才っス!」
 愛原「だろう?」

 私は紅茶を入れて、リサの部屋に向かって行った。

 愛原「おーい、リサ!入るぞー」
 リサ「オッケー!」

 私が部屋のドアを開けると……。

 愛原「紅茶を持って来たぞ」
 リサ「ありがとう」

 少女達は見舞いの品のお菓子と、持ち寄ったジュースを飲んでいた。

 愛原「ってかリサ、何だその恰好は?」

 リサは東京中央学園のものではない体操服に、下はエンジ色のブルマを穿いていた。

 リサ「皆からのお見舞いの品。秋葉原で買って来たんだって」
 愛原「コスプレ衣装か?」
 淀橋「コスプレ衣装ではあるんですけど、素材は本物ですよ?」

 確かにペラペラの生地や、テカテカと光るコスプレ撮影用の衣装とは違う学販用の体操服とブルマだった。

 小島「学校用の緑や、インナー用の紺色は既に購入したと聞いたもので、エンジ色にしてみました。似合いますよね?」
 愛原「似合うと思うが、どうして見舞いの品がこれなんだ?」
 桜谷「『魔王様の肖像画』が思いの外、大好評でして……」
 凛「都のコンクールで、最優秀賞を受賞したんです」
 愛原「それは凄い!」
 桜谷「特別審査員の南原先生の推薦も大きかったようです」

 大丈夫かな?
 絵を購入したことで、票を買ったことにならないかな?
 でもまあ、リサも欲しかったみたいだし……。

 桜谷「第2段として、また描かせて頂こうと思いまして。南原先生から、『今度は情熱性を狙うと良い』とアドバイスを下さったこともあり、それで今度はブルマを赤にしてみようと思いました」
 愛原「そ、そうなのか。完全な赤色ではなく、エンジ色というのも何か拘りがあるのかな?」
 淀橋「魔王様はコスプレ用は着心地が悪いから嫌だと言っていたもので……。で、お店に行ってみたら、赤いブルマはコスプレ用でしか売ってなかったので」

 学販用としてはエンジ色しか無かったというわけか。
 ……ん?

 愛原「ん?あれだよな?ブルセラショップじゃないよな?キミ達」
 小島「何ですか、それ?」
 リサ「あれだよ。だいぶ前、ヤンキーの八島とか伊藤とかがやってたヤツ。気の弱いコ捕まえて、下着脱がせて転売してたヤツ」
 小島「ああ、要は下着の転売ヤーってことですか」
 愛原「そ、そう!そういう店!」
 淀橋「大丈夫ですよ。ちゃんと、新品を買いましたから。中古品なんて、魔王様に失礼ですから」
 リサ「他の女の穿いたヤツなんて穿きたくない」
 凛「先輩も、こう仰ってますし」
 愛原「そ、そうか。それより、下着の転売してたコ達ってどうなった?」

 するとリサ、目の色を変えた。

 愛原「!?」

 私が息を呑んだのは、目の色の変わり方が以前と異なっていたからだ。
 以前は瞳の色が赤や金色に変わるだけだった。
 それが今や、白目が黒くなり、瞳の色が銀色に変わるというもの。

 リサ「『イジメ、ダメ!ゼッタイ!』」
 淀橋「ついにあいつら、『魔王軍』のメンバーにも手を出しやがったので、魔王様が自ら制裁に乗り出されました」
 小島「具体的には寄生虫を植え付け、授業中お漏らしの刑です」
 凛「さすがは魔王様」
 桜谷「魔王様は偉大です」

 リサの寄生虫の影響を未だに色濃く受けている『四天王』の4人は、リサの武勇伝に対し、目を死なせて褒め称えたのであった。
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“私立探偵 愛原学” 「愛原と善場は東京中央学園へ」

2023-03-15 20:15:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月27日12時59分 天候:曇 東京都港区新橋 JR新橋駅→山手線1214G電車先頭車内]

 話が終わる頃には、ちょうど昼食の時間になっていた。
 そこで私達は昼食を取ってから、行動に移ることにした。
 リサと高橋は、マンションに帰る。
 あくまでもリサは病気療養中ということになっているので、事務所にいるのは不都合だ。
 かといって、リサを1人でマンションに残してはいけないという取り決めがある。
 だから高橋には、事務所ではなく、マンションでリサの見張りという名目で待機してもらうことになる。
 一方、私は東京中央学園上野高校に向かうことにした。
 意外なことに、私には善場主任が同行してくれることになった。

 善場「私からも、学校側に説明しないといけませんので」

 ということだった。

〔まもなく5番線に、東京、上野方面行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕
〔まもなく6番線を、電車が通過します。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。京浜東北線の快速電車は、当駅には停車致しません。山手線の電車を、ご利用ください〕

 山手線と京浜東北線が同時に入線してくる。
 山手線が減速しているのに対し、京浜東北線は減速する様子は無く、むしろ加速している。

〔しんばし~、新橋~。ご乗車、ありがとうございます〕

 ホームドアが開いて、電車のドアも開く。
 東海道本線の普通列車は停車するのに、京浜東北線の快速は通過するという不思議な駅である。
 この辺、東京初心者は日暮里駅並みにトラップに引っ掛かりやすいという(地方在住の作者の友人が、乗り換えアプリで京浜東北線に乗り換えろとあった為、真昼間の日暮里駅、いつまでも各駅停車を待っていたらしい。LINEに気づいた作者が、山手線に乗れと指示した)。

 愛原「リサのヤツ、不機嫌でしたね」

 電車に乗り込み、座席に座りながら私は言った。
 隣に座った善場主任が、微笑を浮かべて頷いた。
 ホームからは、汎用の発車メロディが聞こえてくる。

 善場「しょうがないです。今、リサを学校に連れて行くわけには参りませんから」

〔5番線の山手線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 電車のドアと、ホームドアが閉まる。
 新橋駅のホームは湾曲しているのでホームドアが設置できないと言われていたこともあったが、そんなことはなかった。

〔次は有楽町、有楽町。お出口は、左側です。地下鉄日比谷線と、地下鉄有楽町線はお乗り換えです〕

 リサは善場主任がついていくのが気に入らなかったようだ。
 もちろん、私も主任も仕事で一緒に行くだけであって、全く他意は無いのだが。

 愛原「あいつ、家でおとなしくしているといいんですが……」
 善場「本当にそうですねぇ……」

 まあ、高橋がいるから、大丈夫だと思うが……。

[同日13時30分 天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校]

 学校に到着し、まず私達は購買部に行って、リサの新しい体操服を購入することにした。

 愛原「採寸した後で良かったですね」
 善場「業者が直接採寸したので、合っているはずです」
 愛原「なるほど」

 これも2着ずつ購入する。
 すると、案外大きな荷物になった。
 尚、ブルマ派のリサに対しては、短パンは1着だけで良いだろうと判断した。
 この後で職員室に行き、リサの担任の坂上先生と面談する。

 善場「……というわけでありまして、現在は自宅にて療養中ではありますが、来週には復帰できるものと見込んでおります」

 どちらかというと、善場主任の方が熱心に説明していた。
 因みに電撃のことについては、ロクに説明していない。
 坂上先生もリサがBOWであることは知っているので、電撃のことについても話して良いのではないかと思ったが、それはしなかったようだ。
 あくまでも体内のウィルスが暴走した為に、体に変化が起こったことで、専用の施設に緊急収容したこと。
 現在はそれも沈静化し、今は元の姿に戻っていること。
 まずは今週一杯、様子見をしておきたいという説明であった。

 坂上「……なるほど。状況は理解できました。それでは……」

 面談は小一時間ほどで終了した。

 小島「あっ、愛原先生!」
 淀橋「愛原先生!」

 職員室を出て廊下を歩いていると、体操服姿の小島さんと淀橋さんと会った。
 リサを『魔王』とする、『魔王軍』の『四天王』の2人である。
 これから体育なのか、はたまた授業から戻ってきたのか、体操服にブルマ姿だった。
 リサの意向で、『魔王軍』のメンバーは基本ブルマを穿くことになっている。

 愛原「やあ、お久しぶり」
 淀橋「魔王様は無事ですか?」
 リサ「いつ、学校に戻れるんですか?」
 愛原「今はもう退院しているよ。で、大事を取って、今週一杯は家で様子を見ることにして、何も無かったら、来週月曜日から復帰かなって思ってるよ」
 小島「ほー……それは良かったー……」
 淀橋「魔王様がいないと、纏まらないもんね」
 愛原「そんなにリサには、カリスマがあるのかい?」
 小島「リサさんの魔王様としての力は、絶大ですよ」
 淀橋「『学校の七不思議』のほとんどは制覇してるもんね」
 小島「うんうん」
 愛原「そ、そうなのか」
 善場「ちょっとリサには、事情を聴いて、説明させた方がいいかもしれませんね」

 善場主任は『四天王』2人のブルマを見て言った。
 リサが起こした騒動でブルマが復活したことは知っているはずだが、実際に穿いている2人を見て、噂が本当であると確信したのかもしれない。

 淀橋「あ、あの……」
 愛原「ん?」
 淀橋「良かったら、お見舞いに行ってもいいですか?」
 愛原「お見舞い?」

 私は善場主任を見た。

 善場「いいんじゃないでしょうか。リサも、『友達』の顔は見たいでしょうし」
 淀橋「ありがとうございます。学校が終わったら、お見舞いに行きます!」
 小島「帰りにお菓子買って行こうか?」

 学校のチャイムが鳴り、2人の少女達は去って行った。

 愛原「主任、本当にいいんですか?」
 善場「それは構わないでしょう。それより、あの2人のコ、見ましたか?」
 愛原「『魔王軍』のメンバーは、リサの意向で、体育の時にはブルマを穿くことになっているそうです」
 善場「いえ、そこじゃありません。彼女達の顔色です」
 愛原「顔色?……特段、悪い感じはしませんでしたが……」
 善場「目の色と言ってもいいかもしれませんね。いわゆる、『ハイライト』がありませんでした。これは、未だに彼女達が『寄生虫』の影響を受けていることに他になりません」
 愛原「なるほど。供給元はもう『寄生虫』の在庫が無くなってしまいましたが、供給先はまだあるということですね」
 善場「はい」

 リサはまだ供給した『寄生虫』を操る力を持っているのか、そこが善場主任は気になっているようだった。
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“私立探偵 愛原学” 「リサの制服採寸」

2023-03-15 16:14:21 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月27日07時00分 天候:曇 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 翌朝になり、私は起床した。
 今日もまた、色々とやることはある。
 それにしても……。

 愛原「おはよう」
 高橋「あ、おはざーっス!」

 先に起きていた高橋が、キッチンに向かっていた。

 愛原「昨夜は大変でしたねぇ……」
 高橋「まあな」

 リサの体が成長したのはいいのだが、性欲も増大した上に、藤野では禁欲状態だった為か、昨夜は……。

 高橋「おう、自家発電ご苦労さんw 電気は無駄にするんじゃねーぞ?」

 起きてきたリサをからかう高橋。

 高橋「何回オナったんだ、お前?」
 リサ「くっ……!」

 リサ、さすがに恥ずかしかったのか、赤面していたが……。

 リサ「うるさーい!」
 高橋「ぎゃああああ!」

 バリバリバリバリと電撃を高橋に放つのであった。

 リサ「シャワー浴びる」
 愛原「あ、ああ」

 バスルームに向かう高橋。

 愛原「だ、大丈夫か、高橋?」

 お仕置き電撃の場合、リサはさすがに手加減するので、死に至る直流1500ボルトの電撃をすることはないのだが……。

 高橋「か、肩こりと腰痛……治りますねぇ……。はは……はははは……」
 愛原「ああ、そう……」

 スーパー銭湯とかにたまにある、電気風呂をリサに再現してもらう……のはちょっと怖いな。

[同日09時23分 天候:曇 同地区 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線969K電車最後尾]

 私達はデイライトさんの事務所に行く為、最寄りの地下鉄駅に向かった。
 都営バスで向かえば乗り換え無しで行けるのだが、予期せぬトラブルで遅れたりしないよう、行きは地下鉄かタクシーを使うようにしている。

〔まもなく1番線に、各駅停車、笹塚行きが10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 朝ラッシュのピークは過ぎているものの、まだ余波が残っており、駅は賑わっている。
 都営新宿線も女性専用車は実施されているが、9時を過ぎればそれも終わる。
 もっとも、私達は乗り換えの関係で、最後尾の車両に乗るが。

〔「2番線、ご注意ください。各駅停車の笹塚行き、到着致します。危ないですので、ホームドアから離れてください」〕

 強風と轟音を伴って入線してきたのは、京王電車だった。
 “京王ライナー”などでお世話になった、新型車両である。
 満員というわけではないが、まだラッシュの余波が残っていることもあり、車内は賑わっていた。

〔2番線の電車は、各駅停車、笹塚行きです。きくかわ~、菊川~〕

 ライナー使用時は進行方向を向いている座席も、それ以外の普通の電車としての運用時は横を向いたロングシート仕様になっている。
 また、この場合、座席備え付けの充電コンセントも使用できない。

〔2番線、ドアが閉まります〕

 私達は反対側のドアの横に立った。
 幸いなことに、下車駅ではこちら側のドアが開くのは既知である。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕

 旧型車両(6000系)の時は、自動放送が使用できないというのがあったが、新型車両(9050系、5050系)ではそんなこともない。

 愛原「何か、事務所に制服の業者が来て、リサの採寸をしてくれるらしいぞ?」
 高橋「VIP待遇ですね」
 リサ「むふー!」

 リサは私服であり、新しくユニクロで買ったグレーのパーカーを羽織り、フードを被っている。
 これなら第1形態時でも、角や長く尖った耳は隠せる。

 愛原「俺も意外だったよ」
 高橋「ねーちゃんが呼んでくれたんスか?」
 愛原「……と、思うよ」

 ついでにサイズの合わなくなった制服は下取りしてくれるというので、それも持って来ている。

[同日10時30分 天候:曇 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 デイライトの事務所に到着すると、確かに業者は既に着ていて、リサは別室で採寸することになった。
 私と高橋は、別の会議室で待つことになる。

 善場「お待たせしました」

 善場主任とリサが戻って来る。

 愛原「どうでした?」
 善場「幸い1番多く出ているサイズということもあり、業者の方に在庫が残っているとのことです」
 愛原「それは良かった!」

 その在庫を回してもらえばいいわけだ。
 尚、冬服の場合、ブレザーの下に着るブラウスは、白であれば一般的に販売されているもので構わない。

 善場「それと、予備として同じサイズの中古品も回してもらうことにしました」
 愛原「あー、それはいいかもしれませんね」

 私が警備会社にいた時も、制服は2~3着貸与されていた。
 私はこの感覚だったから、特に違和感は無いのだが、高橋はそう思わなかったようで……。

 高橋「贅沢っスね」

 と言った。

 愛原「リサのことだから、予備は必要だよ」
 高橋「あ、まあ、そうなんスけど……」
 善場「体操服などは、学校の購買部で買った方が良さそうです。既にサイズは分かりましたし、またGウィルスが不活化しない限りは、このサイズで卒業まで行けると思います」
 愛原「了解しました」

 Gウィルスと言うが、他のゾンビウィルスと違って空気感染も飛沫感染も血液感染もしない。
 つまり、感染力は物凄く弱い。
 ウィルス保有者が胚を体内から出して、対象者にそれを植え付けることで感染する(例、シェリー・バーキン)。
 或いは薬物として摂取した場合など(例、ウィリアム・バーキン)。
 性欲の強いリサだが、まだその胚を体から出す所は見たことがない。


 リサ「ブルマならネットで注文したから、今週中に届くからね?」
 愛原「一応、短パンも買っといた方がいいと思うぞ?」

 あとは長袖のジャージとか。
 リサは『病気』だから学校に行けないから、私が学校に行ってくるか。

 善場「これがリサのサイズ表です。もしも購入しに行かれるのなら、これを参考にしてください」

 主任はリサの服のサイズが書かれたメモをくれた。

 愛原「ありがとうございます」
 善場「それでは次に、藤野の事に関してと、今後の事についての話をさせて頂きたいと思います」

 話はここで本題に入った。
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