[10月29日08時12分 天候:曇 栃木県日光市今市 東武鉄道下今市駅]
〔「まもなく下今市、下今市です。2番線に入ります。お出口は、左側です。下今市駅で、前3両と後ろ3両の切り離し作業を行います。“リバティ会津”101号は、8時16分に発車致します。“リバティけごん”1号は……」〕
私達を乗せた特急列車は、ダイヤ通りに下今市駅に到着した。
愛原「……なあ、おい」
私達は先頭車両に乗っているので、ホームに入線した時、先にホームの様子を知ることができる。
そこで私は気づいた。
愛原「駅弁の売店、閉まってなくね?」
と。
私がそれを呟くと、背後からパンタグラフがスパークするような音が聞こえた。
えーと……この車両、パンタグラフがあったかなぁ……と。
高橋「先生、リサの放電のせいで、電子機器がヤバそうなんスけど……」
リサ「駅弁が買えない……!」
段々と鉄道の旅も不便になってくるねぇ……。
しょうがないので、この駅では自販機で飲み物だけ買い足しておくことにした。
[同日09時40分 天候:晴 福島県南会津郡南会津町 会津鉄道田島駅]
〔「長らくのご乗車、お疲れさまでした。まもなく終点、会津田島、会津田島に到着致します。1番線に入ります。お出口は、左側です。会津田島より先へおいでのお客様、9時47分発、快速“リレー”101号、会津田島行きは3番線から発車致します。……」〕
何時間もかけて、ようやく鉄道の旅は終わりを見せようとしている。
そう、『鉄道の旅』は!
何せ、目的地はこの町ではない。
今度は、鉄道の無い村まで、車で行かなくてはならない。
お昼ぐらいには着けるのかなぁ……?
そう考えると、リサの言った通り、学校は早退させてでも、前乗りして今夜はこの町に泊まり……といった方法でも良かったかもしれない。
愛原「あー、やっと着いた」
電車が架線の張られているホームに到着する。
1番線は行き止まりのホームだが、他のホームはまだ線路が先まで続いている。
だが、架線が張られているのはこの駅まで。
接続列車が発車するホームには、架線が張られていない。
つまり、接続列車はディーゼルカーだということだ。
ホームに降りると、案外ヒヤッとした風が私達に吹き付けた。
もうここは東北地方。
しかも、山間で冬は豪雪地帯ということもあり、既に冬の影がチラチラとこちらの気配を窺っているような10月末である。
2番線を挟んだ向こうのホームでは、ディーゼルカーのアイドリング音が響いている。
一部の乗客達は、そちらへ移動する。
電車は確かに、東武鬼怒川線の各駅で乗客を降ろしていった。
会津田島駅で降りた乗客はもちろん私達だけではないが、それでも都内から乗り通した客は週末であっても、少ないようだった。
駅員「はい、ありがとうございました」
自動化されていない改札口に立つ駅員に、浅草からのキップを渡して出場する。
愛原「この後は地元のレンタカーショップに行くが、もう行って大丈夫か?少し休んでから行くか?」
高橋「いえ、俺は大丈夫っス。久しぶりに運転できて、腕が鳴りますよ!」
リサ「わたし、トイレに行って来る」
愛原「ああ、行ってこい」
リサにとっては駅弁も車内販売も無い、つまらない鉄旅であったか。
まあ、帰りに期待しよう。
[同日10時00分 天候:晴 同町内 会津レンタカー]
リサがトイレから戻ってきた後、私達はレンタカー会社へ向かった。
レンタカー会社は全国チェーン店ではなく、地元の会社である。
駅から徒歩4~5分くらいだということで、そこへ向かう。
愛原「いいか?本当はオマエ、免停なのに、今日と明日だけは善場主任の計らいで、特別に運転できるんだ。感謝の気持ちを忘れんなよ?」
高橋「も、もちろんです、先生」
善場主任は政府機関の職員で、そこからデイライトに出向しているという形を取っている。
そしてそんな主任が本当に所属している機関の手に掛かれば、高橋の免停を解除できる力を持っているのだろう。
とはいえ完全にというわけではなく、あくまで今日と明日の2日間だけ。
持ち点も1点だけというものだった。
もしまた減点を食らおうものなら、今度は良くて免停期間の延長、最悪は免取になるかもしれないという。
スタッフ「それでは、こちらのお車をご利用ください」
私達のプランでは、コンパクトカーである。
車種は選べないとのことだったが、スタッフが指定したのはホンダのフィットだった。
大抵、レンタカー会社で私達が乗ろうとすると、これである。
愛原「ありがとうございます」
私達はハッチを開けると、そこに荷物を積んだ。
スタッフ「これから、どこに行かれるんですか?」
愛原「桧枝岐村です」
スタッフ「桧枝岐ですか」
愛原「ここから車で、どのくらい掛かりますか?」
スタッフ「そうですねぇ……。休憩無しで急いで向かっても、1時間強といったところでしょうか。村の中心部までくらいでしたら、そんなに難しい道じゃないですし、カーナビも付いてますから」
愛原「ありがとうございます」
高橋は運転席に乗り込んだ。
私が助手席に乗り込み、リサはリアシートに乗り込んだ。
愛原「リサ、狭くないか?」
リサ「ううん、大丈夫。……けど、何だか車が小さいような……?」
愛原「それはオマエが大きくなったんだよ」
リサ「あ、そうか」
車を出して、まずは会社の前の町道に出る。
そこから西進して、国道121号線に向かった。
この国道だけで行ければ良いのだが、そんなことはない。
愛原「さっきのスタッフ、急いでいけば1時間ちょっとって言ってたな。まあ、こっちはそれまでにも鉄道の旅をしてきたわけだし、休憩を挟みながら行こう」
高橋「うっス」
愛原「遅くても、昼過ぎぐらいに着ければいいんだ。だから高橋、スピード違反とか信号無視で捕まるなよ?あとは、一時停止不停止とか」
高橋「だ、大丈夫っスよ」
国道121号線は数百メートル走っただけで別れる。
今度は国道289号線に入り、さっき乗って来た会津鉄道の線路の下を潜った。
愛原「そうだな……。途中に道の駅があったら、そこで休もう」
高橋「はい」
どうやらこの国道沿いに、それはあるようだ。
まずは、そこを目指してみることにした。
〔「まもなく下今市、下今市です。2番線に入ります。お出口は、左側です。下今市駅で、前3両と後ろ3両の切り離し作業を行います。“リバティ会津”101号は、8時16分に発車致します。“リバティけごん”1号は……」〕
私達を乗せた特急列車は、ダイヤ通りに下今市駅に到着した。
愛原「……なあ、おい」
私達は先頭車両に乗っているので、ホームに入線した時、先にホームの様子を知ることができる。
そこで私は気づいた。
愛原「駅弁の売店、閉まってなくね?」
と。
私がそれを呟くと、背後からパンタグラフがスパークするような音が聞こえた。
えーと……この車両、パンタグラフがあったかなぁ……と。
高橋「先生、リサの放電のせいで、電子機器がヤバそうなんスけど……」
リサ「駅弁が買えない……!」
段々と鉄道の旅も不便になってくるねぇ……。
しょうがないので、この駅では自販機で飲み物だけ買い足しておくことにした。
[同日09時40分 天候:晴 福島県南会津郡南会津町 会津鉄道田島駅]
〔「長らくのご乗車、お疲れさまでした。まもなく終点、会津田島、会津田島に到着致します。1番線に入ります。お出口は、左側です。会津田島より先へおいでのお客様、9時47分発、快速“リレー”101号、会津田島行きは3番線から発車致します。……」〕
何時間もかけて、ようやく鉄道の旅は終わりを見せようとしている。
そう、『鉄道の旅』は!
何せ、目的地はこの町ではない。
今度は、鉄道の無い村まで、車で行かなくてはならない。
お昼ぐらいには着けるのかなぁ……?
そう考えると、リサの言った通り、学校は早退させてでも、前乗りして今夜はこの町に泊まり……といった方法でも良かったかもしれない。
愛原「あー、やっと着いた」
電車が架線の張られているホームに到着する。
1番線は行き止まりのホームだが、他のホームはまだ線路が先まで続いている。
だが、架線が張られているのはこの駅まで。
接続列車が発車するホームには、架線が張られていない。
つまり、接続列車はディーゼルカーだということだ。
ホームに降りると、案外ヒヤッとした風が私達に吹き付けた。
もうここは東北地方。
しかも、山間で冬は豪雪地帯ということもあり、既に冬の影がチラチラとこちらの気配を窺っているような10月末である。
2番線を挟んだ向こうのホームでは、ディーゼルカーのアイドリング音が響いている。
一部の乗客達は、そちらへ移動する。
電車は確かに、東武鬼怒川線の各駅で乗客を降ろしていった。
会津田島駅で降りた乗客はもちろん私達だけではないが、それでも都内から乗り通した客は週末であっても、少ないようだった。
駅員「はい、ありがとうございました」
自動化されていない改札口に立つ駅員に、浅草からのキップを渡して出場する。
愛原「この後は地元のレンタカーショップに行くが、もう行って大丈夫か?少し休んでから行くか?」
高橋「いえ、俺は大丈夫っス。久しぶりに運転できて、腕が鳴りますよ!」
リサ「わたし、トイレに行って来る」
愛原「ああ、行ってこい」
リサにとっては駅弁も車内販売も無い、つまらない鉄旅であったか。
まあ、帰りに期待しよう。
[同日10時00分 天候:晴 同町内 会津レンタカー]
リサがトイレから戻ってきた後、私達はレンタカー会社へ向かった。
レンタカー会社は全国チェーン店ではなく、地元の会社である。
駅から徒歩4~5分くらいだということで、そこへ向かう。
愛原「いいか?本当はオマエ、免停なのに、今日と明日だけは善場主任の計らいで、特別に運転できるんだ。感謝の気持ちを忘れんなよ?」
高橋「も、もちろんです、先生」
善場主任は政府機関の職員で、そこからデイライトに出向しているという形を取っている。
そしてそんな主任が本当に所属している機関の手に掛かれば、高橋の免停を解除できる力を持っているのだろう。
とはいえ完全にというわけではなく、あくまで今日と明日の2日間だけ。
持ち点も1点だけというものだった。
もしまた減点を食らおうものなら、今度は良くて免停期間の延長、最悪は免取になるかもしれないという。
スタッフ「それでは、こちらのお車をご利用ください」
私達のプランでは、コンパクトカーである。
車種は選べないとのことだったが、スタッフが指定したのはホンダのフィットだった。
大抵、レンタカー会社で私達が乗ろうとすると、これである。
愛原「ありがとうございます」
私達はハッチを開けると、そこに荷物を積んだ。
スタッフ「これから、どこに行かれるんですか?」
愛原「桧枝岐村です」
スタッフ「桧枝岐ですか」
愛原「ここから車で、どのくらい掛かりますか?」
スタッフ「そうですねぇ……。休憩無しで急いで向かっても、1時間強といったところでしょうか。村の中心部までくらいでしたら、そんなに難しい道じゃないですし、カーナビも付いてますから」
愛原「ありがとうございます」
高橋は運転席に乗り込んだ。
私が助手席に乗り込み、リサはリアシートに乗り込んだ。
愛原「リサ、狭くないか?」
リサ「ううん、大丈夫。……けど、何だか車が小さいような……?」
愛原「それはオマエが大きくなったんだよ」
リサ「あ、そうか」
車を出して、まずは会社の前の町道に出る。
そこから西進して、国道121号線に向かった。
この国道だけで行ければ良いのだが、そんなことはない。
愛原「さっきのスタッフ、急いでいけば1時間ちょっとって言ってたな。まあ、こっちはそれまでにも鉄道の旅をしてきたわけだし、休憩を挟みながら行こう」
高橋「うっス」
愛原「遅くても、昼過ぎぐらいに着ければいいんだ。だから高橋、スピード違反とか信号無視で捕まるなよ?あとは、一時停止不停止とか」
高橋「だ、大丈夫っスよ」
国道121号線は数百メートル走っただけで別れる。
今度は国道289号線に入り、さっき乗って来た会津鉄道の線路の下を潜った。
愛原「そうだな……。途中に道の駅があったら、そこで休もう」
高橋「はい」
どうやらこの国道沿いに、それはあるようだ。
まずは、そこを目指してみることにした。