報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「桧枝岐村での一泊」

2023-03-21 11:45:39 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月29日18時00分 天候:晴 福島県南会津郡桧枝岐村 旅館ひのえまた2階・大浴場]

 私達は温泉を堪能していた。

 高橋「秘技!『マッサージで感じちゃった僕』!」
 愛原「やめい!背中流すだけだろうが!」

 高橋は、いつもの狂ったノリで私の背中を流そうとした。
 これで、LGBTのBとかGじゃなかったらまともなんだが……。

 愛原「まあ、背中は流してくれてありがとうだな」
 高橋「あざーっス!」
 愛原「露天風呂行こう、露天風呂」
 高橋「うっス!」

 私と高橋は露天風呂に向かった。

 愛原「おお!天気がいいから、満点の星空だな!」

 だいぶ日も短くなり、西の空が若干明るい程度であった。

 高橋「そうっスね」
 愛原「満月もきれいだしなぁ……」

 月自体は東京でも見れるが、満点の星空となると……。

 愛原「めでためーでーたぁーの♪祭りの夜♪キミと2人きり♪」
 高橋「ヤッショーマカショー!シャンシャンシャン!ヤッショーマカショー!シャンシャンシャン!ハイッ!」
 リサ「先生の匂いがする!先生、そっちにいるの!?」
 愛原「だーっ!」

 リサの声がした。
 どうやら、男湯の露天風呂とは背中合わせになっているらしく、壁1つを挟んで、向こう側に女湯の露天風呂があるらしい。

 高橋「オマエは犬か!」
 リサ「鬼だよ!」

 自分で鬼だと認めたし……。

 高橋「犬ならワンと言え、ワンと!」
 リサ「ツー!」
 宿泊客「なかなか元気なお嬢さんが御一緒のようで……」
 愛原「あ、いや、どうもどうも……」

 私は温泉の熱さより、恥ずかしさで体が熱くなった。

[同日18時30分 天候:晴 同旅館1階・宴会場]

 愛原「あー、恥ずかしかった!オマエら、はしゃぎ過ぎだよ!」
 高橋「さ、サーセン」
 リサ「ゴメンナサイ……」
 高橋「オマエのせいで怒られただろうが!」
 リサ「お兄ちゃんだって、ノッてたじゃん!」
 高橋「人のせいにすんじゃねぇ!」
 愛原「あー、もう!うるせっ!」
 リサ「これがホントの『うる星やつら』ってね」

 リサ、右手から火花を散らした。

 愛原「やかましいわ!怒られるからやめろ!」

 私達は夕食会場である、1階の宴会場に向かった。
 宴会場は各テーブルごとに、掘りごたつ式になっている。
 つまり、座敷でありながら、椅子に座る感覚で座れるというわけだ。

 仲居「愛原様方のお席は、こちらでございます」
 愛原「ありがとう」

 テーブルの上には、部屋番号と『愛原様』と書かれた札が置かれていた。

 仲居「お飲み物は何になさいますか?」
 愛原「取りあえず、ビールで」
 高橋「じゃあ、俺も」
 リサ「わたしもー」
 愛原&高橋「何でやねん!」

 やると思ったw

 愛原「リサはジュースだろ」
 リサ「ちぇーっ!」
 愛原「オレンジジュースを1本」
 仲居「かしこまりました」

 メニューを見ていた高橋が、酒を指さした。

 高橋「先生、凄いっスね。マイタケ酒とか岩魚の骨酒とかありますよ」
 愛原「この辺は山菜、キノコ、蕎麦が名物だからな。東北地方とはいえ、この辺りは米が取れない。そこで、この辺りの人達は蕎麦を主食にしていたんだそうだ」

 蕎麦なら痩せた土地でも、十分に収穫できる。
 まあ、今なら流通も良くなったから、米だって普通に買えるんだがな。

 リサ「……日本の鬼族って、こういう魚を捕まえて、それでお酒を造っていたんだって」

 リサがポツリと言った。

 愛原「リサ!?」
 高橋「おい、角が出てるぞ。隠せ隠せ!」
 リサ「おっと……!」

 一瞬リサのヤツ、本当の鬼になっていなかったか?
 こいつに酒を飲ませてはいけない。
 年齢的な理由以外で!

 仲居「お待たせ致しました。ビール2本とオレンジジュースが1本でございますね」
 愛原「ありがとう」

 仲居さんがビール中瓶2つと、オレンジジュースの瓶1本を持ってくる。

 仲居「それでは、火をお点け致します」

 仲居さんはチャッカマンを取り出すと、1人鍋の下にある固形燃料に火を点けた。

 仲居「火が消える頃が、ちょうど煮立つ頃合いでございます」
 愛原「おー、いいねぇ!」
 高橋「先生、まずは一杯!」
 愛原「おっ、悪いな」

 高橋がビールを注ぐ。

 愛原「じゃあ、俺からも」
 高橋「あざざざざーっス!」
 リサ「先生、わたしも!わたしも!」
 高橋「おめーは自分で注げ」
 愛原「いいよいいよ。俺が注いでやるよ」
 リサ「わーい!」
 高橋「チッ!」
 愛原「というわけで、お疲れ!」
 高橋「お疲れ様っス!」
 リサ「おつかさまー!」

 夕食にはキノコ鍋や蕎麦、はっとうや山椒魚が並んでいる。
 肉は鍋の中に、少し入っている程度。

 リサ「あーん」
 愛原「肉を生のままで食べない!」
 リサ「えー……」
 愛原「先に蕎麦とか食べればいいんだよ」
 高橋「さすがは先生!」

 食べていると、善場主任からメールが来た。
 見ると明日、旅館のチェックアウト後に、BSAAと合流してもらいたいという。

 愛原「そ、そうか。まだ、仕事中だもんな……」
 高橋「何がですか?」
 愛原「明日、旅館をチェックアウトしたら、BSAAと合流してほしいんだってさ」
 高橋「そうなんスか。一緒に、現場を捜索っスか?」
 愛原「いや、そういうことじゃないだろ。だいいち、俺達の大仕事は既に終わってるはずなんだ。捜索はもう、公務員さん達の仕事さ」
 高橋「ですよねぇ……」

 多分、白骨死体を見つけた時点で、私の夢は正夢なのだろう。
 しかしながら、リサの記憶が戻らないというのは気になった。
 ついフラッシュバックでも起こして、最悪錯乱するところまでは想定していたのだが……。
 私が了解の旨返信すると、詳細はまた後でメールするとのことだった。
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“愛原リサの日常” 「桧枝岐村での一泊」

2023-03-20 20:37:39 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月29日17時00分 天候:晴 福島県南会津郡桧枝岐村 旅館ひのえまた]

 現場から移動した愛原達は、今宵の宿に向かった。
 旅館は村の中心部にあって、恐らく1番大きな宿泊施設なのではないだろうか。

 愛原「ここだな」
 リサ「おー!すっごいホテル!」
 高橋「本当に、ここに泊まっていいんスか?」
 愛原「善場主任紹介だから、間違いない」

 恐らく、リサがいるからだろう。
 この村には民宿もそれなりの数、存在している。
 もしも緊急時、どこの民宿か分からなくなると不都合なので、ランドマーク的に1番大きな旅館を指定したのかもしれない。

 愛原「まあとにかく、疲れたから、お言葉に甘えて、あとはゆっくりさせてもらうとしよう」
 高橋「そうっスね」

 旅館の中に入る3人。

 美人若女将「いらっしゃいませ。ご予約のお客様でございますか?」
 愛原「キミの心の宿に泊まりに来た、愛原と申します」
 美人若女将「はあ?」
 高橋「ズコーッ!」
 リサ「先生……!

 リサ、右手からパチッと火花を散らし……。

 リサ「またわたし以外の女を見て!お仕置きだっちゃーーー!」

 バリバリバリバリバリ(リサの電撃がさく裂!電圧は【お察しください】)

 愛原「ギャーーーーーー!!」
 高橋「オマエはラムちゃんか!」
 美人若女将「あ、あの、お客様。当館で、“うる星やつら”ごっこは、ちょっと困ります。著作権の問題もありますし……」
 高橋「そ、そうっスね。サーセン!リサ、このくらいにしとけ!」
 リサ「もうっ!」
 愛原「あひ……あひ……」
 高橋「今日から1泊で予約している高橋……じゃなかった。愛原っスけど……」
 美人若女将「愛原様でございますね。東京からお越しの愛原様、3名様でございますね」
 高橋「そうっス」
 美人若女将「お待ちしておりました。それでは、こちらの宿泊者カードにご記入を……」
 高橋「先生……は、まだ痺れて無理か。俺が書いてもいいっスか?」
 美人若女将「はい。結構でございます」
 リサ「チェックインが終わるまでは、しばらく痺れて動けないからねッ!」

 リサ、白目が黒くなり、瞳が銀色に光る。
 マスクをしているので分からないが、マスクの下には牙が隠されている。

 高橋「……っと、こんな感じでいいっスか?」
 美人若女将「はい、ありがとうございます。先にお支払いの方、よろしいでしょうか?」
 高橋「支払い……料金……」

 高橋は愛原の方を見た。
 愛原はまだ痺れながらも……。

 愛原「あっ、そこのかわいいお姉さん。どこから来たの?」
 リサ「全然懲りてないし!」

 バリバリバリバリバリ

 愛原「ぎゃーーーーーー!!」
 ナンパされた女性「なに?あのオッサン」
 彼氏「見ちゃダメだよ」
 高橋「おい、リサ。いい加減にしろ」
 リサ「だって!」
 高橋「先生、料金の支払いだそうです」
 愛原「そ、そそ、そうか……。こ、こここ、このカードを……つつつ、使え……。ば、ばばば、番号は……」
 高橋「ああ、番号は聞いてます。あとは控えと領収証をもらえばいいんスね?」
 愛原「そ、そそ、そうだ……。あっ、そこのきれいな仲居さん!」
 リサ「おらぁーっ!」

 バリバリバリバリバリ

 愛原「ぎゃーーーーーー!!」
 高橋「うるさくて、サーセン。支払いはカードでオナシャス」
 美人若女将「か、かしこまりました。ただいま、控えを発行させて頂きます。で、領収証の方なんですけど、チェックアウトの際にお渡しさせて頂きます」
 高橋「了解っス」
 美人若女将「こちらが、お部屋の鍵になってございます。あちらのエレベーターで、5階へどうぞ」
 高橋「あざーっス」
 愛原「幼女先輩、こんばんは!」
 幼女「? こんばんは」
 リサ「子供にまでナンパすなーっ!」

 バリバリバリバリバリ

 高橋「おい、リサ、やめろ。先生が感電死しちまう」
 リサ「だって!」
 高橋「だってじゃねぇ!」
 リサ「でもぉ……」
 高橋「でもじゃねぇ!……先生、大丈夫っスか?」
 愛原「か、肩こりと腰痛が治っちゃったよほぉ……!」
 高橋「そりゃ良かったっスね。静電気除去シート、良かったらこれで除電を」
 愛原「あ、ああ、済まない」
 リサ「電撃何回も放ったから、お腹空いちゃった」
 高橋「もうちょっとで飯だから、我慢しろ」
 リサ「はーい」

 3人はエレベーターに乗り込んだ。

 愛原「あー、エラい目に遭った」
 高橋「先生がフザけるからですよ」
 リサ「そうだよ。浮気はダメだよ。正に、『ダーリン、浮気は許さないっちゃよ』だよ」
 愛原「空は飛べないだろうが……」
 リサ「そりゃそうだよ」

 そして、客室フロアの5階に到着する。

 愛原「えーと……この部屋だな。うう……まだ手が震えてるよ……」
 リサ「先生が悪いんだよ」
 高橋「俺が開けますよ」

 高橋が部屋の鍵を開ける。
 ドアを開けると、畳の香りが広がった。

 愛原「畳のいい匂いだ」
 高橋「やっと旅行気分って感じっスね」
 愛原「うん」

 愛原達は部屋の中に入った。

 高橋「ん?畳部屋、1部屋だけっスか?」
 愛原「……そのようだな」

 部屋の広さは8畳間である。
 それにプラス、窓際に椅子とテーブルが置かれている。
 別に、3人で寝る分には十分な広さだ。
 しかし、リサは……。

 リサ「先生、一緒に寝ようね
 愛原「ちょっと、善場主任に確認してみる」

 愛原はスマホを取り出した。
 そして、善場主任に連絡した。

 愛原「……というわけですが、これで良いのでしょうか?」
 善場「構いませんよ。リサの監視、しっかりお願いします」
 愛原「仮にも、女子高生の女の子ですよ?」
 善場「見た目はそうですが、彼女はBOWであって、人間ではありません。それに、前にも申し上げましたよね?今はリサも変異したばかりということもあり、しばらくは監視強化でと」
 愛原「た、確かに……」
 善場「宿泊費用に関しても、こちらで出しますので、後で領収証の提出をお願いします」
 愛原「わ、分かりました」

 愛原は電話を切った。

 高橋「何ですって?」
 愛原「『監視強化を、しっかりお願いします』との御依頼だ」
 高橋「と、いうことは……」
 愛原「つまり……」
 リサ「おー!?」
 高橋「人食い鬼と同室か……」
 愛原「俺が監視されるようなもんだで?」
 リサ「わぁい!先生と一緒の部屋ーっ!」\(^o^)/

 それぞれの温泉の楽しみ方、これから始まる。
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“私立探偵 愛原学” 「桧枝岐村での調査終了」

2023-03-19 21:12:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月29日14時30分 天候:曇 福島県南会津郡桧枝岐村下見通]

 私とリサは、林道の脇道に入って行った。

 愛原「リサ、見覚えはあるか?」
 リサ「……ダメ。全然思い出せない」

 リサはパーカーのフードを取った。
 変異後である為、角が2本になっている。
 髪は切ったので、髪型は変異前のおかっぱと変わらない。

 愛原「人間だった頃の記憶が、また薄れている?」
 リサ「そうかも。多分、特異菌が弱くなったせい」
 愛原「そうか……」

 Tウィルスも殆ど死滅してしまい、今は最初の頃のGウィルスがリサの体を支配している。
 特異菌はオマケのようなもの。
 この特異菌が放電現象と関係あるのではないかと言われているが、何しろ他に例が無いので、全く分からないのである。

 愛原「! 行き止まりか……」

 10月も末であり、桧枝岐村では道路が冬季通行止めを迎えようとしている。
 つまり、冬支度が始まろうとしている時期である。
 私達が来た林道も、舗装こそしっかりされているものの、やはり冬季通行止めの措置は免れない道路である。
 滅多に他の車が来ないのも、こういう時期的な理由もあるのだと思われる。
 草は枯れている為、藪の中であっても、虫の姿は殆どない。
 そこは季節に恵まれた。
 これが夏だったら、色々な虫に私達は襲われただろう。
 最悪、スズメバチとかいるかもしれない。
 春のスズメバチは駆除しない方が良いらしい。
 まだ繁殖前であり、女王蜂しかいない状態なので凶暴性は無く、しかも繁殖に備えて様々な虫を食べる、つまり毛虫などの害虫もバクバク食べてくれるので、毛虫や蛾の繁殖を抑えたい場合は、むしろスズメバチに食わせる方が良いらしい。
 まあ、幸いスズメバチの気配は無かったが。

 愛原「とはいえ……」

 開けている場所ではある。
 ここに家が建っていた、と言われればそんな気もするが、何だかよく分からない。
 何しろ、形跡が全くと言って良いほど無いのだ。
 だが、これほどに何も無さ過ぎるのも、不自然と言えば不自然だ。
 アンブレラの、それも非合法部隊UBCSなら、痕跡ごと隠蔽することは可能だろう。
 家は焼却するものの、すぐに消火して、、焼け落ちた家はきれいさっぱり片付ける。
 死体だって、どこかに埋めてしまえば……。

 リサ「……動物の臭いがする」
 愛原「まあ、そりゃあ、動物の臭いはするだろうな」

 何しろこんな山奥だ。
 私は虫のことを気にしていたが、そんな虫を食べる動物とかも普通にこの山の中にはいるだろう。

 愛原「! まさか、熊がこの近くにいるとか……?」
 リサ「うん。こっちだよ!」

 鬼のリサは、熊など全く恐れていない様子。
 まあ、この辺にいるのはツキノワグマだろう。
 北海道のヒグマほど凶暴ではないとはいえ、冬眠前のクマに近づくのは危険なのではと思う。

 愛原「お、おいおい!危ないだろ!」

 しかし、リサは更に奥の獣道に向かう。
 そこにいたのは……。

 ツキノワグマ「アウ?」
 愛原「ツキノワグマだ!」

 本当に熊がいた!
 何やら、穴を掘っていた様子。
 食べ物を探していたのだろうか?

 リサ「熊の肉、美味しそう!」

 リサ、右手からバチバチと火花を散らした。

 愛原「熊を食べちゃいけませーん!」

 バリバリバリバリバリバリバリ!

 ツキノワグマ「ピィーッ!」

 哀れツキノワグマ、リサの電撃を受け、仰向けに倒れてしまった。

 リサ「先生!今日の夕食!」
 愛原「食えるか、アホ!」

 リサの血鬼術……もとい、攻撃方法に爪と噛み付き以外に、遠方からの攻撃として電撃も加わったのは強いのだが……。

 愛原「ってか、これ……!」

 ツキノワグマが掘っていた穴を私は見た。
 そこにあったのは、何と骨だった!
 最初は動物の骨だと思った。
 この熊に食われた鹿とかかなと思ったのだが、どうも白骨化してから相当な時間が経っているように見える。
 私は荷物の中から、折り畳み式のスコップを取り出して、もう少し穴を掘ってみることにした。

 愛原「人間だ……!人間の骨だ……!」

 出てきた頭蓋骨の形と、一対の肋骨の形からして、私はこの白骨死体が人間のものだと思った。

 愛原「高橋、高橋、大変だ!」

 私とリサは一旦、車に戻ることにした。
 高橋は車の外に出て、タバコを吸っていた。

 高橋「何スか?ゾンビでも出ましたか?」
 愛原「出たのは熊だよ!」
 高橋「マジっスか!?」
 愛原「それはリサが電撃で倒してくれた」
 リサ「むふー!」
 愛原「そうじゃなくて、白骨死体が出てきたんだ!それも2つ!」
 高橋「マジっスか!?」

 私は試しに周りも掘ってみた。
 すると、もう1つ頭蓋骨が出てきたことから、死体は2つ以上あるのだと分かった。

 高橋「じゃあ、すぐにサツに……」
 愛原「いや、その前に善場主任に連絡して指示を仰ごう」

 昔のガラケーなら圏外になっていそうな場所だが、さすがに令和の今はスマホで通話ができる。

 愛原「……というわけです。どうしますか?普通に警察に電話していいですか?」
 善場「いえ、それには及びません。むしろ、BSAAの調査部隊に調査してもらいます。ありがとうございました。取りあえず、愛原所長方の業務としては、そこまでで結構です。BSAAと合流次第、宿舎に向かってください」
 愛原「分かりました」

 業務委託の民間探偵業者としては、ここまでが仕事である。
 死体の調査については、公務員さん達の仕事になる。

 愛原「BSAAが来るまで、ここで待機だそうだ」
 高橋「うわ、絶対時間掛かるじゃないスか」
 愛原「しょうがないだろ」

 その通り、BSAAはヘリで来たのだが、1時間掛かった。
 ただ、私からすれば、1時間でも早い方だと思う。

 愛原「ここだ!ここだ!」

 私は荷物の中から発煙筒を出すと、それを点けてヘリコプターに合図した。
 ヘリコプターは着陸することなく、私達の上空にて旋回し、そこからロープが下ろされ、BSAAの隊員達が降下してくる。

 BSAA隊員「BSAA極東支部日本地区本部隊です!」
 愛原「お疲れ様です!場所を案内します!」

 高橋とリサには車で待っててもらい、私がBSAA隊員達を案内する。
 また熊がいたらどうしようかと思ったが、彼らの装備する銃火器を見て、その心配は無いと分かった。
 そして現場に着くと、もう熊はいなかった。

 愛原「これです!この骨です!」

 私が指さすと、すぐにBSAAの隊員達は調査を開始した。
 そして、隊長から発見した時の状況を聞かれたので、しっかり回答した。
 その後はBSAAが引き継ぐと言われ、私達は御役御免となったのである。

 愛原「お待たせ。それじゃ、俺達は離脱しよう」

 私達は車に乗り込むと、来た道を引き返し、国道の方へと向かった。
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“私立探偵 愛原学” 「桧枝岐村内を調査」

2023-03-18 20:27:12 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月29日13時00分 天候:雨 福島県南会津郡桧枝岐村見通 道の駅『尾瀬桧枝岐』]

 昼食を終えて、私達は取りあえず村の中心部に行くことにした。

 愛原「げっ!雨降ってきた!」
 高橋「そうっスね……」
 愛原「マジかよ。調査しにくいなぁ……」

 私は空を恨めしそうに眺めた。
 と、その時、救急車のサイレンがすぐ近くで鳴り始めた。
 静かな村だと思っている所に、けたたましいサイレンの音が聞こえるとびっくりする。
 もっとも、私達のいる場所は、村の中でも特に観光客が賑わう所なのだろうが。
 確かに1台の救急車が車庫から出て来て、国道の方を、村の中心部に向かって走り去って行った。
 車庫ということは、あそこは消防署なのか。
 消防署というよりは、消防団かもしれない。

 愛原「あ……!」

 そこで私は思い出した。
 確か、UBCSが来た後、現場は火災が起きていたはずだ。
 もしかしたら、消防車が出動したかもしれないと思った。

 愛原「ちょっと、あそこまで行ってみるぞ!」
 高橋「は、はい」

 私達は救急車が出動した建物へと向かった。
 そこは消防団ではなく、消防署の分遣所であった。
 消防団が民間人のボランティアから構成されるのに対し、こちらは本当に消防署から派遣されている消防士や救急救命士がいる所だ。
 さすがは土曜日でも、当直員はいるようだ。

 愛原「失礼します。突然の訪問、恐れ入ります」
 当直員「何でしょうか?」
 愛原「1つ、お聞きしたいことがありまして……」
 当直員「は?」
 愛原「今から7~8年ほど前、この村で火災はありませんでしたか?それも、住民に死傷者が出るほどの大規模な火災です。実は私達、東京から来た探偵の者ですが、その火災について調べております」
 当直員「と、急に言われても……」
 愛原「まあ、そうですよね。ただ、この村では滅多に火災など起こらないと思います。にも関わらず、死傷者が出るほどの火災とあらば、記憶に残られるのではないでしょうか?」
 当直員「そう言われても、自分も3年前に配属されたもので、それ以前となると……」
 愛原「そうですか」

 私は善場主任から渡された資料を見せた。

 愛原「この住所がどの辺りなのか分かりますか?」
 当直員「下見通ですか……」

 消防署には地図がある。
 当直員はその地図を私達に見せながら言った。

 当直員「この辺り一帯ですね」
 愛原「広っ!」

 元々が山間にある村であるが、更に山に入った所のようだ。

 愛原「ここに行くには……?」

 さっき通って来た国道352号線でも良いが、それ以外だと……。

 当直員「この道ですね。尾瀬・小繋ライン」
 愛原「これは県道ですか?」
 当直員「いえ。厳密に言えば林道です」
 愛原「林道……」
 高橋「こんなとこ、人が住んでるんスか?」
 当直員「いえ。林業の作業小屋とか、狩猟とか、そういう関係者が寝泊まりする小屋とかはありますが、住宅は無いですね」
 愛原「でもまあ、行ってみよう。何がしかのヒントくらいはあるかも……」
 高橋「はあ……」

 私は当直員に礼を言うと、分遣所をあとにした。
 そして再び車に乗り込み、来た道を戻る恰好になる。

 愛原「ああ、この道か!」

 スノーシェッドを出て、すぐの丁字路がそうだったのだ。
 信号など無いし、そもそも案内看板すら出ていない。

 愛原「ここを入るらしい」
 高橋「はい」

 林道といっても、舗装はちゃんとされているし、道幅も国道352号線と遜色ない2車線である。
 ただ、明らかに国道よりも車は少なかった。
 例え山間の村でも、そこは国道。
 田舎道は田舎道ならではの車通りがあるのに、こちらは一気に車が少なくなった。

 愛原「こ、これは……!」

 この道もグーグルマップのストリートビューで観れるはずだが、どうやら見落としていたようだ。

 高橋「大丈夫っスか、先生?」
 愛原「ああ」

 何となく夢で見た光景と、かなり雰囲気の似ている道だった。
 舗装はされていて、しかも道幅も広くなく狭くもなく、しかしなかなか滅多に車も通らない道……。
 夢の中で見た道路と、かなり似ていた。

 愛原「高橋、後ろから車来てるか?」
 高橋「あ、はい。来てますが?」
 愛原「ちょっと、先に行かせてやってくれ。ここからは、ゆっくり走ってほしいんだ」
 高橋「わ、分かりました」

 高橋は車を左に寄せると、左ウィンカーを点けて、後続の車を先に行かせた。
 栃木ナンバーの車だった。
 あれも、観光客の車なのだろうか。
 この道には速度制限の標識は無く、ということは法定速度の60キロで走って良い道なのだろうが、そこを半分以下の速度に落としてもらう。
 夢の中の光景が見えてきたら、すぐに車を止められるように。

 愛原「後ろから車が来たら、先に行かせてな?」
 高橋「分かりました」

 そして……。

 愛原「待て!車止めろ!」
 高橋「は、はい!」

 いつの間にか雨は止んだ。
 まだ、空は曇っているが、通り雨だったのだろう。
 そこは橋の近くだった。
 橋の手前に交差点がある。
 交差点といっても、信号などあるはずがない。

 愛原「ここは……!」

 夢の中で見た光景にかなり似ていた。
 私は車を降りた。
 車を降りると、とても静かな場所だった。
 聞こえてくるのは車のエンジン音と、ハザードランプのカチカチ音。
 自然音としては橋の近くということもあり、川のせせらぎの音と、天候が不安定なのか、時折吹いてくる突風のような風の音だった。

 愛原「リサ、ここに見覚えはあるか?」
 リサ「うん。わたしも、夢で見た光景に似てるような気がする」
 愛原「人間としての記憶はどうだ?戻りつつあるんだろ?」
 リサ「そ、それが……」
 愛原「ん?」

 どうも波があるのか、それとも変異のせいなのか、最近は人間だった頃の記憶が夢となって現れるようなことはないらしい。

 愛原「だが、この道の先かもしれんぞ。ちょっと行ってみよう」
 高橋「は、はい」
 愛原「高橋は車で待っててくれ」
 高橋「ええっ?」
 愛原「この道、駐禁の標識は無かったが、こんな所に車がポツンと止まってたら怪しまれちまう。そうなった時に上手く説明しといてくれ。オマエの点数、残り1点だろう?」
 高橋「そ、そうでした」

 何も無いと思うが、私は一応、後ろの荷物からショットガンを取り出し、ヘルメットを被った。

 愛原「リサはいいのか?」
 リサ「うん、大丈夫。ブルマ穿いてる」

 リサは黒いスカートを穿いていたが、それをピラッと捲ってみせた。
 確かにスカートの下には、昨日から穿いているエンジ色のブルマがあった。

 愛原「ああ、そう。いや、そういう問題じゃないんだが……。まあいい。行くぞ」

 私はリサを伴って、夢の中に酷似した脇道に入って行った。
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“私立探偵 愛原学” 「桧枝岐村へ」

2023-03-18 16:07:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月29日10時45分 天候:晴 福島県南会津郡南会津町 道の駅『きらら289』]

 国道289号線を西進する。
 そんなに高規格な国道ではないものの、バイパスは完成しており、走りやすい道路となっている。
 断続的にトンネルが続く区間を越えても、平成の大合併の結果か、町の名前が変わることはない。
 そして、バイパスと旧道の分岐点の手前に、道の駅があり、そこで休憩を挟むことにした。

 高橋「こっちっスね」
 愛原「そう」

 道の反対側にあるのだが、道の駅は国土交通省の肝煎りということもあり、入口には右折レーンが設けられている。
 右折レーンが設けられていたり、信号機が設置されていたり、はたまた高速道路のサービスエリアみたいな感じだったりと、道路構造的に恵まれているのが道の駅なのである。
 どうやらこの道の駅、日帰り温泉もあるようだ。
 一瞬食指が動いたが、さすがにまだ仕事先に向かっている最中で、温泉にのんびり浸かるわけにはいかない。
 駐車場に車を止める。

 リサ「わぁい!早速何か食べるー!」
 愛原「飯はまだだぞ」

 さすがにお昼にはまだ早い。
 桧枝岐村内にも道の駅はあるようなので、そこで食べればいいだろう。

 愛原「ここでは、おやつくらいにしときなよ」
 リサ「おやつ……ね」

 しかしリサにとってのおやつとは……。

 リサ「ビーフジャーキー……。辛味入りの……」
 愛原「ソフトクリームとかじゃねーのかよ」
 リサ「先生。何かね、味覚が変わったみたい」
 愛原「え?」
 リサ「甘い物は食べ物ではあるんだけど、あんまり美味しくないっていうか……」
 愛原「え?え?え?」
 リサ「どっちかっていうと、辛い物の方がいいっていうか……」
 愛原「そ、そうなの?」
 高橋「先生。鬼は辛い物が好きだと言います。ますますこれは、人食い鬼化へのフラグっスね」
 リサ「今ならあれも飲めそう」

 リサは土産物として売られている、辛口の日本酒を指さした。

 愛原「それは年齢的にアウトだからダメ」
 リサ「先生より年上なのに……」
 愛原「それは、『もしもリサがリサ・トレヴァーになっていなかったら』の話だろう」

 ここではトイレ休憩と、高橋はタバコ休憩。
 私はコーヒーと甘味休憩とした。
 まあ、リサはトイレ休憩と辛味休憩のようだが。

 高橋「そういやリサのヤツ、カレーの辛口を食うようになったみたいですよ?」
 愛原「マジで?」

 うちでは中辛くらいにしているのだが、リサはそれでも物足りないということで、辛子を入れたりするようになった。
 この辺は、後で善場主任に報告した方が良いだろう。

[同日11時55分 天候:曇 福島県南会津郡桧枝岐村 道の駅『尾瀬桧枝岐』]

 いつの間にか桧枝岐村に入ったようだ。
 恐らくは村の入口辺りであろう、道の駅に辿り着いた。

 愛原「ちょうどお昼の時間帯だ。ここでお昼を食べて行こう」
 リサ「おー!」

 駐車場に車を止めて、道の駅の本館と思われる『尾瀬桧枝岐 山旅案内所』という看板の出ている建物へ向かった。
 真新しい建物で、道の駅に指定されたのも、つい最近なのだろうと思われる。

 愛原「結構、広い道の駅だな」
 高橋「そうっスね」
 愛原「食事処は、向こうの交流センターにあるらしい」
 リサ「早く食べたい」

 私達は同じ敷地内にある別の建物、“尾瀬の郷交流センター”に行ってみた。
 さっきから尾瀬が出てきているが、その通り、この村は観光地で有名な尾瀬の入口があるのである。
 といっても、そろそろシーズンオフだと思われるが……。
 建物に向かうまでの間、ヒュウッと強くて冷たい風が吹く。

 リサ「ん……」
 高橋「先生、天気が悪くなるフラグじゃないっスか?」
 愛原「参ったな。調査を終えるまでは、何とか持って欲しいところだが……」

 建物の中に入り、食事処へ行く。
 お昼時ということもあり、建物内は観光客でそこそこ賑わっていた。
 尾瀬への観光シーズンもそろそろ終わるということで、その名残を惜しむ人達だろうか。
 私達は先に空いている席を確保してから、食券販売機に向かった。

 愛原「“ベタな道の駅の法則”通り、食事処は食券方式だ。何にする?」
 高橋「蕎麦が多いっスね」
 愛原「この村は蕎麦も名産らしいよ。まあ、俺は岩魚のフライ定食にするか」
 高橋「じゃあ、俺も」
 愛原「リサは?」
 リサ「厚切りカツカレー」
 愛原「あいよ」

 それで昼食を確保する。

 愛原「まあ、宿泊先の宿でも、立派な料理は出てくるだろうがな」
 高橋「それはいいっスね」

 しばらくして注文した料理が出来上がる。

 リサ「ん?んー……」

 リサはカレーを一口食べてみたが、どうも辛さが物足りないようで……。

 愛原「おいおい、そんなにかけるのか!?」
 リサ「ん」

 テーブルの上の七味唐辛子をドバドバ、カレーにかけていた。

 高橋「うへー……」

 高橋もまた比較的辛いのが好きなクチだが、さすがにリサのこの行為には驚いていた。
 私自身がそんなに辛い物が得意ではないということもあり、それでうちではカレーは中辛になっているのだが……。

 リサ「ん、美味しい!」
 愛原「そりゃあ良かった……」
 高橋「し、七味の辛味が俺んとこまで漂ってくるんですが……」
 愛原「お、俺もだ。高橋、我慢しろ。これも仕事だ」
 高橋「う、うっス……」

 ところで、辛味の方はリサの体にも多少の影響が出ているらしく、リサが辛い物を食べると、体が赤身を増す。
 それはまるで、赤鬼のようだった。

 高橋「それで先生、調査はどうやってやるんスか?」

 食事が終わり、セットのコーヒーやジュースを飲みながら、高橋が聞いてきた。

 愛原「俺の夢の中の話だ。それに、この村もなかなか面積が広い。闇雲に探す場合、恐らく時間は最低1週間は欲しいところだろう。もちろん、そんな時間は無い」
 高橋「それで?」
 愛原「俺やリサの夢の通りだとしたら、こんな田舎の村にとっては大事件だろう。ということは、村の資料に残っていると思われる」
 高橋「サツに行きますか?」
 愛原「実はこの村、警察署も駐在所も無い」
 高橋「マジっスか!?」
 愛原「意外だな。で、恐らく週末だから役場の方も休みだろう。観光案内所とかは、さっきの道の駅で見た通り、開いていたがな」
 高橋「他には?」
 愛原「グーグルマップで見てみたが、少なくともストリートビューでは見つからなかった。恐らく、ストリートビューでは映らないような場所だと思う」
 高橋「……ほとんどノーヒントでは?」
 愛原「そうなんだよなぁ……。まあ、取りあえず、役場の方に行こう」
 高橋「はあ……」
コメント
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