大活字本で読む葉室麟さんの作品、
3作目は武家娘、雌伏の仇討ち物語「蛍草」
文庫本が読めなくなった「たにしの爺」
もっぱら大活字本の時代小説にハマっています。
葉室作品ではこれまでに「冬姫」「川あかり」の読みレポを書きました。
「蛍草」は前の二作に比べ少女の「一途さ」が染みる作品でした。
仕える主への募る想いと、無念に切腹した父に代わる仇討ちの執念。
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菜々の父・安坂長七郎は嵌められて無念の自刃を遂げる。
家は断絶、母も逝き、残された菜々は16歳、
武家の出ということを隠し奉公に出る。
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奉公先の風早家は温かい家だった。
当主の市之進は25歳、人望厚く、妻の佐知は23歳、心根の優しい美しい人でした。
幼い二人の子どもは菜々によく懐いた。
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敬慕する市之進に危機が迫っていた。
藩政の改革派であった市之進が轟平九郎の策略で、
獄に繋がれ、屋敷も没収され風早家は崩壊状態になってしまう。
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仕掛けられた罠……その首謀者は、
かつて母の口から聞いていた父の仇、轟平九郎であった。
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病気がちであった佐知は寝込むことが多くなり、容態は秋に入ってさらに悪くなり、
市之進と子供たちを頼むと、菜々に言い息を引き取った。
胸に強い思いを秘め、密かに剣術の稽古を積む菜々。
そんな奈々には奇妙で頼もしい応援団が付いた。
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剣術指南の〈だんご兵衛〉こと、壇浦五兵衛。
質屋で金貸しの〈おほね〉こと、お舟
儒学者の〈死神先生〉こと、椎上節斎先生、
湧田の権蔵親分〈駱駝の親分〉。
「後のことは頼みます」と言って逝った佐知夫人。
菜々は市之進への思慕を秘めて「風早家」再建に、
日々奔走するのだった。
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ついに強敵、平九郎と対峙するときが来る……。
新藩主の国入りに合わせ、御前試合が行われることとなり、
菜々はその中に平九郎への仇討の試合を加えてもらった。
真剣で立ち会う菜々と平九郎。
平九郎が後ろから打ち込んでくる気配を感じ、
菜々は跳躍して振り向きざまに平九郎の……
さて、首尾は???
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表題になっている「蛍草」が女二人を彩る。
菜々が築地塀のそばで草を取っていたとき、
堀の際に青い小さな花が咲いていた「露草だ」
「その花が好きなのね」佐知の声がした。
菜々の脇に腰を屈めた佐知は言葉を継いで、
「露草ですね。この花を万葉集には月草と記してありますが、
俳諧では蛍草と呼ぶそうです」と教えた。
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菜々はあるとき佐知から、
「月草の仮なる命にある人をいかに知りてか後も逢はむと言ふ」
の歌を教えてもらった。
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酷暑のこの夏の日に読んだ一冊。
清涼感に満ちたノベルストーリーでした。
発行所:社会福祉法人 埼玉福祉協会 2017年6月10日
底本:双葉文庫「蛍草」
近日には葉室麟さん原作の「散り椿」が映画上映される。
是非見に行かなければと思っています。