写真は展覧会に出品されていた結婚式場の飾り花と花嫁衣装に使う花の展示。バイオテクノロジーを駆使した最新の花より、人気が高く、まじまじと見入る人が多かった。この頃、中国では結婚式も派手になっていき、飾り花の需要が見込まれるようになっていた。
現在では、大卒の若者も就職難で、お金にゆとりもないため、誰もが派手な結婚式をあげる、という風潮ではなくなっている。
派手なサービスとしては大きな黒塗りの車にハートであしらった花を車の中央や周辺に飾り、結婚式前に花嫁花婿は、景色のよい公園で熱々のポーズの写真をプロのカメラマンに撮ってもらう、当日、盛大に爆竹を鳴らす、飴を配るなどがあった。
ただし、昆明より離れ、雲南の中規模以下の都市に行くと、花嫁と花婿だけ衣装を身に着け、あとの参列者は拍子抜けするほど、ごく普通の(ちょっとこぎれい程度)の服装。爆竹、飴はあるが、それほど飾りののない食堂で披露宴を挙げる風景がよく見られていた。
【日本企業の昔日】
じつはこの展覧会のもう一つの目玉は日本だった。国内企業90社、外国企業20社の中で日本の企業が最多で、なかには日本から家族全員で移住して花の苗を雲南で生産して日本に輸出しようとする企業もあった。
(現在、マザーズ上場の株式会社ビューティ花壇。当時、山東半島の青島にも生産拠点を設けて、中国での事業展開を模索していた。ただし、質を一定に保てない現地事情と虫の燻蒸の管理が完璧でない状況などもあり、採算があがらず、現在は撤退。台湾に拠点を移している。すてきなご家族でした!)
参加企業の中で、もっとも名の通った会社はキリンビール。当時は本業のビール事業の他に、キリンアグリバイオという子会社を設立し、バイオテクノロジーで次々と美しい花の苗を生みだしていた。
1999年の昆明で開かれた世界園芸博覧会ではサントリーとともに最高賞を受賞。2004年3月には上海を拠点に中国進出を果たし、やがては雲南支社も開設ももくろんで、現地の花の苗を生産して日本に輸出および知的財産保護(品種権)を軸に本格的に活動していたのだ。
そのキリンが展示していた花は、色の変わったカーネーションだった。「青い色を出すのは難しいのですよ。」と日本語と中国語が堪能なキリンの関係者が丁寧に解説してくれるほどの華やかさだった。
キリンの会社も600種ほどの花の苗を開発し、いきおいもあったのだが、残念ながら2010年3月にはオランダの投資会社に権利を譲渡して種苗事業から完全撤退してしまった。当時の中核技術者は定年退職の時期となり、また本業以外を残す余力はないのだろう。日本の今を感じさせる話である。
(つづく)