雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

魚料理3・昆明庶民の魚は意外にも海からやってくる

2008-02-29 23:54:59 | Weblog
写真は昆明の市場の水槽風いけすの一つ。あまりきれいとはいえない水の中に2,3匹が泳いでいる。ちなみに下のプラスチックのたらいの中は、スッポン、カエルなど。当然ながら、すべて食用。

【銀色にきらめくもの】
 昆明市民が気軽に年中、手に入れられる魚は、本来ならコイかフナのはず。もちろん、それらも禁漁の解かれた7月から8月ごろの夕暮れ時のみ、漁民が洗面器に水を張って市場前の路上で売りさばいてはいるが、それは一年のうちのほんの一瞬。漁獲量の減った死に体のテン池でとれる魚はほとんど期待できない。

 そんななか市場で年中、売られている魚はなんと、海からやっている。(もちろんテン池で昔からとれるポピュラーな川魚も、カエルやスッポンとともに生け簀売りされてはいるが、それらはとても大きいものばかりで特別な時の一品となっている。)

 庶民が日々、手に入れる魚というのは、なんと場違いなほどにギンギラに照り輝くタチウオ(太刀魚)。それもカチカチの冷凍品がゆっくり解凍しつつあるものなのだ。それと、15センチ程度の大きさのコイやフナにたっぷりのとうがらしと四川省産胡椒、ネギ、ショウガ、カリン、塩など味付けし、寝かせたもの、の2種類のみ。いずれも作り方を聞くと、「鍋で煮てもいいし、油で炒めてもいい、焼いてもおいしい」と肉屋で聞く説明とまったく同じ、万能食品として使われているらしい。

 川魚はともかく海でとれるタチウオはおそらく最近、市場に入り込んだ商品だろう。雲南料理を紹介する料理本を10冊近く持っているが、まったく作り方はでてこない。

 日本ではタチウオは北海道をのぞく各地、特に瀬戸内海でとれるらしいが、私はタチウオの姿のままのものを食べたことは一度もない(かまぼことして食べたことはあるかも)。日本ではあまり一般庶民になじみのある魚ではないのだろう。

 ところが中国では夏に中国大陸沿岸近くに幅広く分布しているらしい。つまり、かなりとれやすい上に、料理の下ごしらえもいらず、どんな料理法にも使える魚、というわけだ。(参考までに築地中島水産のホームページをごらんください。http://www.osakana-club.com/shop/static?nexturl=osk_zukan/tachiuo)魚の本を見ると、鮮度が落ちやすい魚、とあるし、中国中央電視台(国営テレビ)の人気料理番組でも、タチウオをメインにした料理は見たことはないのだが、昆明の市場では確かに一年中、毎日、冷蔵施設もない中で売られていた。

 一方の唐辛子塩漬けフナは、すべて小型の魚ばかりなところからも庶民のものだということがわかる。じつは、手元のちゃんとした料理本や雲南料理の店にも出てこない保存法ではあるのだが、冷蔵施設のない市場では最適な形といえる。日本でならさしずめ「塩鮭」のような存在なのである。

 次回は雲南料理として、とくにおすすめの魚料理を2品、紹介します。

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テン池・魚をはぐぐむ水は?

2008-02-22 21:50:11 | Weblog
写真は池にせり出してまで開発の進むテン池。別荘や保養施設、温泉施設が目白押し。新たな施設が増えるごとに、廃屋と化すレジャー施設が必ずできるのもお約束?

なかなか雲南の魚の話に到達できず、すみません。もう少し、お待ちください。来週、半ばに魚料理に到達したいと思います。

【日本の技術も浄化に貢献】
テン池の水は最悪なのに、保養地として使われているのは、かつて昆明市民にとって、めぐみの水であり、憩いの場でもあったからだ。

 1980年初頭に昆明に赴任した人は「そのころは家族で海水浴をして遊んだよ」といっていたし、2001年7月19日までは市民の水道水としてつかわれてもいた。
(1998年ごろから現れたアオコの発生のために停止された。現在は市北西郊外の貯水ダム「松華坝」から水道水を引いている。
 その周辺は、閑静な山里なのでダムそのものの汚染はないようだが、この湖から100メートルも下がると、近年、広まった自家用車を持った人の行楽ブームに乗ってつくられた下水施設の一切ない民宿が建ち並び、生活排水がじゃんじゃん入り込むようになったため、かなりひどい状態になっている。この水道水を、私もうがいなどに使っていたが、病気にはならなかった。地元の人が飲み水に水道水を利用することは、ほとんどない。)

 それが1990年代から急速に環境が悪化してしまった。政府は特別予算を組んでテン池の5カ所に浄水場を設け、水質チェックも始めたが、まだまだ最悪の状況からは抜け出していないのが現状だ。
 冬場には毎日のように雇われた作業員が手こぎ船でゴミを掻き出している。夏には生い茂ったアシを軍隊やボランティアを動員して抜き取っては「今日は何トン撤去した。これで少しテン池もきれいになった」との記事が新聞を賑わせる。(ゴミはともかく、草の撤去の意味はよくわからない。汚水を吸い込んだ草を撤去することで、テン池を浄化しようとしているのだろうか。)
 また、テン池そばの公園には筑波大学の研究室が提供したという「環境を汚染しない循環型トイレ」というものが設置されていたり、周辺の農村では、汚水を流さないように水を使わずに清潔なまま、出したものを乾燥させてためておけるというスイス製のトイレを設置するなど、汚染の根本となる工場の排出規制の遵守を徹底させるというところ以外では、国の指示もあって省政府も環境浄化に熱心に取り組んでいた。

 救いは、池に面した浄水場の壁に「孫、子の代を考えよう」といったスローガンが掲げられていたことだ。日本でこれほどストレートなスローガンを見たことはない。正直、時間軸のスケールの大きさに胸をうたれた。
 
 このような状態なので、現在の昆明では魚料理は盛んとはいえない。
 おいしい魚料理店となると、浙江料理や広東料理を連想させる名称の店へ駆け込むしかないほどだ。そんな中で市場で常時、手に入る魚は何なのか? 次回はそのお話です。

 
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テン池・魚をはぐくむ水は?

2008-02-15 20:36:07 | Weblog
写真はテン池に面して作られた公園の一つ、海ガン公園。厳冬のつづく2月に撮影。このころの水質は比較的よく、地元の趣味の釣り人の姿も見られる。(商業的な漁獲は2004年より夏期の一定期間のみとなっている。稚魚を守るためだ。

【雲南省で唯一の国家級の保養地区】
 テン池の水質汚染度は雲南省一、全国的に見ても浙江省など大人口地帯にある淮河や太湖と並び、水質汚染度が5段階評価で、90年代は1,21世紀の今日でも2,という不名誉な称号をいただいている。

 このような現状にもかかわらず、テン池は雲南省で唯一、「国家級旅游假区」に指定され、一大保養地となっている。湖畔の別荘が次々と建てられ、今でも飛ぶように売れているのだ。(あまりに湖畔上にまで建てるため、条例違反として、完成物件が時折、政府によってショベルカーで撤去されることも。)
世界トップレベルの日本のマラソン選手(野口みづきなど)が大勢練習している場所としても知られている。標高1890メートルという立地が高地十レーニングに最適なのだそうだ。
 そのため、アテネオリンピックで野口みずき選手が金メダルを取ったときは、地元新聞も大いに沸いた。「この昆明で練習した選手が『金』に」の見出しとともに「中国の選手も日本のノウハウを見習え」というのだ。またドイツの水泳選手らも以前から昆明で合宿しており、近くの市民プールには彼らの賞状などが掲げられていた。
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魚をはぐくむ水は?1

2008-02-08 22:54:38 | Weblog
写真は、テン池の上空を進むロープウェーにて撮る。ロープウェーは市街地からテン池を望む「西山」(美人な女性が横たわる姿と言い伝えられている)中腹部までを約30分でつないている。もともと99年に昆明で開かれた世界園芸博覧会にあわせて作られた。乗車賃は25元(約400円)。
 ちなみに市街から西山まではバスで2元ほど。当然、利用者は少なく、閑古鳥が鳴いている。私が行ったときは、4月で吹く風は高原らしく寒いというのにロープウェーの乗車案内の女性は長い黒髪を洗面器に張った水で洗っていた。

【緑のテン池】
 昆明市を特徴づけるテン池には大小合わせて100近くの河川が流入し、面積は約300平方キロメートル弱と中国で6番目の広さを誇る。が、水深はもっとも深いところでようやく8メートルといったところ。巨大な胃袋型の水たまり、といった感じだ。

 それだけに周辺環境の悪化がそのままテン池に濃縮され、頻繁にアオコ(日本では千葉県の手賀沼でよく見られた植物プランクトンの死骸で緑色になった状態。貧酸素状態になり、魚等の生存が危ぶまれる状態となる)が発生している。
 
 4月から10月までとろりとした緑色となるテン池に、しばしば足を運び、湖面に近づこうと試みてみた。湖沿いの公園から出る遊覧船もあるのだが、汚い水しぶきがかかりそうで、なかなか乗る勇気がでない。

 そこで周辺をぶらぶら歩くと畑の先に大金持ちの別荘地、中国銀行など大企業の保養施設、その先に石綿瓦(いわゆるアスベストのことですね)工場、食品加工場、製紙工場が立ち並んでいて、湖水に近づくのはなかなか難しい。明治時代に昆明を訪れた鳥居龍蔵も昆明城(中国ではかつて大都市の周辺は城壁で囲まれ、郊外と城内は明確に分けられていた)の周辺は湿地帯で湖水にはとうてい近寄れないことが明記されていたので、意味は違うけど、同じ状況ではあった。

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閑話休題・残留農薬

2008-02-01 23:18:19 | Weblog
写真は雲南省の省都・昆明市の胃袋を支えるテン池。上空から見ると、胃袋の形をしている。
[作物が育つ魔法の水]
日本に輸入された中国の冷凍加工食品で、日本人に、とうとう被害者がでる事態となりました。以前からこのブログでも指摘していたことですが、中国ではずっと残留農薬や薬物で、死者や被害者は数出ていました。一番の問題は利用する農民が、その恐ろしさを十分に理解していないこと。

化学肥料や農薬は「作物が育つ魔法の水」程度にしか認識がなく、真っ青な恐ろしげな色をした「水」をひしゃくや噴霧器でせっせと撒く姿は何度となく見てきました。農民になんのための薬が尋ねても無言だったり、入っていた袋を指したりするのですが、その袋がまた「偽装」で本当の内容がわからない、といったカオス的様相を呈しているのです。

 そんな雲南でも省政府が音頭をとって極力農薬の使用を抑えた「無公害基地」というじゃが芋畑や養豚場を作る計画は進んでいます。じっさい、作られていて、作物は主に日本に輸出される、と地元新聞にも大きく取り上げられていました。

一方で夏場には日中40度を超える雲南省南部で、村でいっせいに畑に化学肥料を撒いたところ、それらが急速に変成したのか、気化したことによって、頭痛や吐き気を催す人が続出し、とうとう化学肥料会社が被害者一人当たり数百元の保証金を出す、という不思議な展開を見せた事件まで起こっています。

 昆明の市場では、日々、入り口の黒板に残留農薬の検査を白墨で書いて発表していました。品目ごとに残留農薬値と、基準をクリアしているか、が書かれているのです。当然のように全部、クリアしているのですが。たまに遊びに来た農学博士である父も「これ、本当に検査しているのか? 検査薬も高いんだけどな」とつぶやいていました。そういう発表をするニーズがあるほど、買う側が農薬に敏感になっている、のは事実です。また、数字が信用できるかはともかく、私が身体を壊した事は一度もありませんでした。

 どうも経験上、大企業がらみか、高級料理店に行けば行くほど、問題が発生する確率は高まるようです。名声をえたおごりか、使用人が増えたことで目が行き届かなくなるのか、一定品目を大量に仕入れる中で無理が生じるのか、のいずれかでしょう。

 私も日本の生協の利用者ですが、袋に「これは中国産ですが、私どもか管理した自社農場で作られた原料のみを使い、自社工場で加工したものです」などと書かれていると、ついつい信用したくなります。でも、これはまさに上の「危ない」方程式の最上等のものだったのですね。今後も中国産に頼らなければならないのだとしたら、こまやかな目配り、しか方法はないのでしょう。

中国では「日本へ輸出するもの」(そこはかとなくその雰囲気を漂わせているもの)は高値がつき、人気も上がります。日本に輸出されているものは品質上、安全、という神話が中国の庶民にあるからです。日本はもうちょっと、強気に出て、今回の事件を、きちんと裁く事が中国の人の利益にもつながることでしょう。
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