写真はテムズ河河畔のヴォクソール(Vauxhall)駅周辺の再開発地区にある高級マンションの一つセントジョージワーフ(St.George's Wharf development)
。このあたりから下流域にかけて、不思議なデザインの新しい建造物が並ぶ。有名なところではウェストミンスター寺院の対岸には建築当時の2000年当時は世界最大の高さ(約135メートル)を誇ったロンドン・アイ(観覧車)など。19世紀には世界の物産が集積した船着き場であるドックランドなど、再開発しやすいロンドンの東側地域、つまりテムズ下流域地区の水道事情は新しいだけによいらしい。
ちなみにシャーロックホームズが活躍した19世紀末にアヘン窟など治安の悪さで事件が起こる地区はロンドンの東側地域。ベーカー街は当時、水道などの近代設備が整った地域のちょうど西側地域の縁、という絶妙な場所だった。
【水道管の問題】
ロンドンで、疑問ももたずに、蛇口をひねると何はともあれ温かいお湯が出て、バスタブに簡単にお湯が張れていた我がシェアハウスの状況はかなり恵まれていようです。
他の日本の方のブログなどをみると、ある程度お湯を使うと、あとは水になってしまったり、断水も起きたりいうことが、ままあるようす。
ロンドンは世界でいち早く近代化したために、水道システムが古く、更新するのがたいへんという、問題が一つ。
さらに
「日本のように地震国でもなく湿気が多くもないこの国では、煉瓦造りの家は半永久的にもつ。国民性も日本ほど生活の便利さに貪欲ではないから、古くからの住宅街では、建物の外観同様内部の設備も建てられたほぼ100年前と同じだ。」(武谷牧子『テムズのあぶく』日本経済新聞社、2007年)
と日本のように建物を惜しげもなく壊しては新築する文化ではないので、古い配管からボイラーまでがそのままだと個々の住宅に付随する状況ということもあります。
さらに深刻なのが水道会社の体質です。
2023年8月2日『東洋経済オンライン』の田中理氏の報告によると、
ロンドンを含む900万人が利用する上下水道を管轄する水道会社「テムズウオーター」が経営危機に瀕している、とありました。19世紀に整備された水道設備が老朽化し、現在、この会社だけで一日当たりオリンピック競技用のプール250個分に相当する上水道の漏水が起こり、大雨のときには汚水の処理もままならなくなり、河川や海にそのまま汚水が流入することが度重なり、そのたびに裁判所に罰金を命じられています。
都市を流れる河川は、やはり大雨の後はおそろしく水質が悪化するもののようです。
(つづく)