雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

二度目のロンドン45 水が問題⁈④

2024-08-25 13:53:59 | Weblog
写真はテムズ河河畔のヴォクソール(Vauxhall)駅周辺の再開発地区にある高級マンションの一つセントジョージワーフ(St.George's Wharf development)
。このあたりから下流域にかけて、不思議なデザインの新しい建造物が並ぶ。有名なところではウェストミンスター寺院の対岸には建築当時の2000年当時は世界最大の高さ(約135メートル)を誇ったロンドン・アイ(観覧車)など。19世紀には世界の物産が集積した船着き場であるドックランドなど、再開発しやすいロンドンの東側地域、つまりテムズ下流域地区の水道事情は新しいだけによいらしい。
 ちなみにシャーロックホームズが活躍した19世紀末にアヘン窟など治安の悪さで事件が起こる地区はロンドンの東側地域。ベーカー街は当時、水道などの近代設備が整った地域のちょうど西側地域の縁、という絶妙な場所だった。


【水道管の問題】
ロンドンで、疑問ももたずに、蛇口をひねると何はともあれ温かいお湯が出て、バスタブに簡単にお湯が張れていた我がシェアハウスの状況はかなり恵まれていようです。
 他の日本の方のブログなどをみると、ある程度お湯を使うと、あとは水になってしまったり、断水も起きたりいうことが、ままあるようす。

ロンドンは世界でいち早く近代化したために、水道システムが古く、更新するのがたいへんという、問題が一つ。
さらに
「日本のように地震国でもなく湿気が多くもないこの国では、煉瓦造りの家は半永久的にもつ。国民性も日本ほど生活の便利さに貪欲ではないから、古くからの住宅街では、建物の外観同様内部の設備も建てられたほぼ100年前と同じだ。」(武谷牧子『テムズのあぶく』日本経済新聞社、2007年)

 と日本のように建物を惜しげもなく壊しては新築する文化ではないので、古い配管からボイラーまでがそのままだと個々の住宅に付随する状況ということもあります。

さらに深刻なのが水道会社の体質です。
 2023年8月2日『東洋経済オンライン』の田中理氏の報告によると、

ロンドンを含む900万人が利用する上下水道を管轄する水道会社「テムズウオーター」が経営危機に瀕している、とありました。19世紀に整備された水道設備が老朽化し、現在、この会社だけで一日当たりオリンピック競技用のプール250個分に相当する上水道の漏水が起こり、大雨のときには汚水の処理もままならなくなり、河川や海にそのまま汚水が流入することが度重なり、そのたびに裁判所に罰金を命じられています。
 都市を流れる河川は、やはり大雨の後はおそろしく水質が悪化するもののようです。
             (つづく)

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二度目のロンドン44 水が問題⁈③

2024-08-11 16:38:42 | Weblog
写真はケンジントン・ガーデンズにて。ロンドンは水の都でもある。公園には湖が、そして街には水路や暗渠も多くある。

【硬度や溶け込む物質についての規定がない】
次に日本の水道をより細かく見てみます。公益社団法人日本水道協会ホームページでは全国の浄水場の詳細な水質検査データを公表していて、50項目に及ぶデータが列挙されています。
 たとえば東京都武蔵野市の境浄水所だと最高値のphは8.0で若干の弱アルカリ性ですが、ほとんど中性、ナトリウムやカルシウムは10mg/ℓ以下で基準値の200mg/ℓ以下よりはるかに低い数字となっています。
(近年、発がん性の疑われる有機フッ素化合物(PFAS)が流入していた、と新たに外部調査から指摘されてはじめて明らかになる事実もあり、すべての物質が検査項目に入っているわけではありません。)
※2023年6月23日付東京新聞https://www.tokyo-np.co.jp/article/255545

 まとめると日本の水はおおむね中性で軟水、つまり溶け込んだ物質がない、ということがわかります。

 次に同じくらいの精度のロンドンの水質検査データをウェブ上で探してみました。ところがヒ素や大腸菌量などの水質管理データはあるものの、硬水となるための物質の含有量までは見当たりません。
 硬度は公表されているのに残念です。(https://cdn.dwi.gov.uk/wp-content/uploads/2021/10/11171047/hardness-map.pdf)

 ただ、古いデータですが1989年の民営化後に行われた1992年3月の水質検査では硝酸塩が1ℓ当たり50mg以下とするEC基準を超えていることがわかりました。原因は農家が撒く多量の肥料が地下水に流れ込むため、とのこと。(https://www.clair.or.jp/j/forum/c_report/pdf/077-2.pdf 2024年8月3日閲覧)
さすがにこの問題はいまでは解決されていると信じたい。

 さらに近年、水道水を調査したところ、水道水となる原水からはマイクロプラスチックが検出され、さらに処理された飲用水においても検出限界値以下ではあるもののマイクロプラスチックが検出されています。
(イングランドとウェールズの浄水場内の飲料水とその発生源におけるマイクロプラスチックの同定と定量化【JST・京大機械翻訳】 | 文献情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンターhttps://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=202002213653782589
 2024年8月8日閲覧)
日本のデータも調査したい項目しか検出されないので、すべて調べつくしているわけではないことは明らかですが、イギリスの水道水のデータは日本ほど公開されていないようです。

 そしてイギリスではそもそも飲料水の規定には硬度、カルシウム、マグネシウムの基準がありませんでした。
(https://www.dwi.gov.uk/consumers/learn-more-about-your-water/water-hardness-hard-water/)

となると、やはり詳細なデータを調べ、公表する義務はないことになります。
近代的な都市をいち早く作り上げ、水道設備を作った国に日本にはあるのに、詳細データがないなんてことがあるかしら、と調べてみるとロンドンの水道システムが、かなり危機的な状況であることがわかってきました。
                   (つづく)

※次週の更新はお休みします。暑さもここに極まれりとおもうほど、大気が焦げたような日中の日本となっております。どうぞ、どうぞ、お身体におきをつけください。暑さは目にもダメージをもたらすそうです。どうぞお気をつけて。(恐竜時代の恐竜の目は意外と見えてなかったのではないかしら、と最近思います。骨格しか化石がでてこないので、イラストをみると大きな目だけど、本当にそうなのか、と。暑さを目で受けとめて感じる実感・・)
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二度目のロンドン43 水が問題⁉②

2024-08-04 12:54:19 | Weblog
キュー王立植物園近くのテムズ河。ボートを一人、漕いでいる人もいた。汚泥もしくは砂利などを取る作業船も出ていた。水質は澄んではいないが、とくに悪臭もなかった。

【日本の4倍以上の硬度】
そもそも水が問題だと断定はできないのですが、どうやらロンドンの水に苦しんでいる日本人はけっこう多いようす。日本語で検索すると英国在住の日本人による手荒れしないハンドクリームの紹介や軟水へと変えるシャワーヘッドの紹介がたくさん見つかりました。
 枕詞のように冒頭には必ず「まず手荒れ、やがて乾燥がひどくなる」というロンドン生活の現状が書かれています。

日本はほとんどの地域が軟水ですが、それは世界的にみても珍しいことで、ユーラシア大陸の過半が硬水です。ロンドンも例外ではありません。

中国の雲南も硬水で、しかもかなり石灰岩質の水道で、飲用すると石が体内にできやすいと地元の人に強く勧められて飲用水はミネラルウオーターを購入していました。
 
 でもお風呂は水道水でした。たぶん硬水。しかも水道管の老朽化のせいなのか茶色くにごっていました。それでも、かぶれることはなかったです。

ロンドンの水は、見た目は透明です。問題はなさそうに思えます。でも、いろいろな地域を旅したなかでロンドンの水道水は私の肌には、もっとも合わなかった。

そこで水質をネットで調べてみました。

まず(総)硬度は、東京が50で、北京は360、ロンドンが220といったところ。(単位はmg/ℓ。60までが軟水。120以上が硬水。世界保健機構(WHO)のガイドラインによる。)
 私が暮らしていた雲南省昆明では環境局や水道局などのデータが新聞などでかつては公開されていたものの、現在、そのページにたどり着けないので、水質を自主的に調べた質問サイトを見るとおおむね220程度(https://bbs.tropica.cn/thread-1911313-1-1.html 2024年8月2日閲覧)でした。

 つまりロンドンと昆明は硬度が偶然にも同じでした。二つの地域は地盤となる岩石が白く、石灰岩質で有名なエリアなのでもしかしたら本来は似た水質なのかも。
           (つづく)

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