写真は昆明。強烈な陽射しのため、女性は雨傘を日傘としてもよく使用する。この陽射しに目のくらむ空気の悪さが加われば、光化学スモッグも起きていることだろう。ちなみに新聞には洗濯指数はないが、紫外線情報は掲載されている。
【水道管の鉛】
鉛は昔から自然界に存在した。だから衛生研の研究員の発言も完全に間違いではない。でも産業革命、とくに1923年にアルキル鉛がガソリンに添加されて以来、大気中に莫大な量の鉛が放出され、広く一般の人間も鉛の汚染を受けるようになったのだそうだ。北極の氷を調べるとそれが顕著などだという。
一年ぶりの昆明の空気の悪さは相当なものだったが、日本も完全に鉛汚染から免れているわけではない。ゴミ焼却灰やたばこの煙、一部の陶磁器の釉薬、それに以前、水道管の主流だった鉛管が汚染の源となっている。水道管は現在ではステンレス管へ多くが切り替わったとはいえ、いまなお鉛管が残っている地域もあり、その場合は朝一番の水などに鉛が溶けだしている。
WHOの飲用水の水質基準では鉛濃度は0.01㎎/ℓ以下。日本では92年12月に従来の0.1から0.05へととりあえず厳しくし、つい最近の2003年にようやくWHO並みとなった。そうしないと水道業者が財政的に間に合わず、新たな基準を達成できないためだという。
わが家も古いので不安になって市水道局に電話してみると、すぐに家の水道管の材質を教えてくれた。幸いステンレスだった。「住民への基本情報」だそうなので、不安な人は聞いてみるといいだろう。
【キレやすい子供】
鉛中毒は重症になると貧血となり、手の麻痺、腹痛、脳障害などの症状がでる。低量でもその影響は大きい。不妊や疲労感もそうだし、とくに子供には深刻だ。1989年、スコットランドでの子供への調査では注意欠陥による衝動的暴力傾向が見られる児童の鉛レベルは平均10.4μg/㎗だった、という報告がある。また異論もあるようだが、1993年のアメリカ小児科アカデミーの研究によると、血中鉛濃度が10μg/㎗増加するごとに、子供の知能指数が5程度ずつ低下したという。
平均知能指数が5ポイント低下すれば正常な知能指数以下の人数が50%増えることになるという。今回、対岸の火事として調べはじめた鉛中毒の問題が、じつは「キレやすい子」など昨今の問題に大きく関わっているかもしれないと知り、影響の大きさにボー然とした。
参考文献
和田攻『金属とヒト』(1985、朝倉出版)
堀口俊一『環境中の鉛と生体影響』(1997、財団法人労働科学研究所出版部)
加賀屋実『環境毒性学 上巻』(昭和52年、日刊工業新聞社)
次回から、子供の教育と幼稚園レポートとなります。
【水道管の鉛】
鉛は昔から自然界に存在した。だから衛生研の研究員の発言も完全に間違いではない。でも産業革命、とくに1923年にアルキル鉛がガソリンに添加されて以来、大気中に莫大な量の鉛が放出され、広く一般の人間も鉛の汚染を受けるようになったのだそうだ。北極の氷を調べるとそれが顕著などだという。
一年ぶりの昆明の空気の悪さは相当なものだったが、日本も完全に鉛汚染から免れているわけではない。ゴミ焼却灰やたばこの煙、一部の陶磁器の釉薬、それに以前、水道管の主流だった鉛管が汚染の源となっている。水道管は現在ではステンレス管へ多くが切り替わったとはいえ、いまなお鉛管が残っている地域もあり、その場合は朝一番の水などに鉛が溶けだしている。
WHOの飲用水の水質基準では鉛濃度は0.01㎎/ℓ以下。日本では92年12月に従来の0.1から0.05へととりあえず厳しくし、つい最近の2003年にようやくWHO並みとなった。そうしないと水道業者が財政的に間に合わず、新たな基準を達成できないためだという。
わが家も古いので不安になって市水道局に電話してみると、すぐに家の水道管の材質を教えてくれた。幸いステンレスだった。「住民への基本情報」だそうなので、不安な人は聞いてみるといいだろう。
【キレやすい子供】
鉛中毒は重症になると貧血となり、手の麻痺、腹痛、脳障害などの症状がでる。低量でもその影響は大きい。不妊や疲労感もそうだし、とくに子供には深刻だ。1989年、スコットランドでの子供への調査では注意欠陥による衝動的暴力傾向が見られる児童の鉛レベルは平均10.4μg/㎗だった、という報告がある。また異論もあるようだが、1993年のアメリカ小児科アカデミーの研究によると、血中鉛濃度が10μg/㎗増加するごとに、子供の知能指数が5程度ずつ低下したという。
平均知能指数が5ポイント低下すれば正常な知能指数以下の人数が50%増えることになるという。今回、対岸の火事として調べはじめた鉛中毒の問題が、じつは「キレやすい子」など昨今の問題に大きく関わっているかもしれないと知り、影響の大きさにボー然とした。
参考文献
和田攻『金属とヒト』(1985、朝倉出版)
堀口俊一『環境中の鉛と生体影響』(1997、財団法人労働科学研究所出版部)
加賀屋実『環境毒性学 上巻』(昭和52年、日刊工業新聞社)
次回から、子供の教育と幼稚園レポートとなります。