雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

インドネシアでブーム?の雲南⑥ 異常気象の原因とも

2014-09-27 15:09:23 | Weblog
軽自動車ぐらいの大きさの乗り合いバスの後ろに次々とぶら下がる子ども達。屋根の上にも。
買い物がえりのおばちゃんから子どもまで乗りあう正規のバスなのだが、島を最北から最南端まで移動するには半日以上、このバスに乗らなければならない。ちなみに、これ以外に島を移動できる公共の交通機関はない。
とくにツテのない旅行者の場合は愛媛県ほどの大きさのニアス島のみならず、スマトラ島においても、このようなバスにぎゅうぎゅうづめになりながら移動することを覚悟しなければならない。おそらく中国の旅より数十倍苛酷になることが容易に予想される。なんだかんだいっても、中国は公共の乗り物がずいぶんとすみずみまで整備されているなあと、いまさらながら感じ入った。
(2014年8月ニアスにて)

【冷えない!】
日本も世界も異常気象続きで、数年前までは考えられなかったような災害が起きています。先日、NHKスペシャル『巨大災害MEGA DISASTER地球大変動の衝撃』で、インドネシアの海水温度の上昇を引き金に、異常気象が起きたかのような説明がされていました。これと関連があるかはわかりませんが、インドネシアではここ10年の間に人の手による大破壊が起きていました。

じゃかるた新聞から転載された日本アセアンセンターからのニュースによると、原生林の破壊では史上最悪のペースといわれたブラジルはアマゾン以上のスピードで森林破壊が進んでいるとのこと。2000年から2012年の間に602万ヘクタールの面積の原生林が失われた、と米メリーランド大学のチームが英科学誌ネイチャー電子版204年6月29日付で発表しました。
(http://www.jakartashimbun.com/free/detail/18976.html。衛星画像から面積を測った結果にすぎないため、インドネシア政府は実際の減少面積は45万ヘクタールにとどまると反論している。インドネシアの人がいうには原生林の消失ぶりは顕著で、インドネシアのカリマンタン島では残すと約束した50%を大きく割り込んで20%をも下回る原生林の情けないほどの減少ぶりとのこと。)

602万ヘクタールといえば北海道の面積の4分の3ほどの森林が失われた計算になります。これは日本の天然林の約半分にも匹敵します。

減少に歯止めがかからない原因の一つは汚職。インドネシアの州知事の多くが汚職で摘発されているお国柄なので、国の土地でも気がつくと丸裸、という事態が常態化しているとのこと。今夏インドネシアの大統領選でも環境対策は焦点にならず、農地を開発する面積を競っていました。

木を切った後どうするかというと、紙の原料となるパルプ材や環境にやさしいと日本で宣伝されるやしの油でつくった洗剤のもととなるパームオイルのプランテーションになっている可能性が高いとのこと。

ニアスでは「日本では暑さで人が死んでいるって本当ですか?」と聞かれ、実際、自然に囲まれたニアスでは日本ほど暴力的な暑さは感じませんでしたが、スマトラやカリマンタンでの森林破壊のすさまじさが日本の暑さに関係しているのでは、ということは言われました。地球の肺といわれたブラジル、それに次ぐインドネシアの熱帯雨林の消失を聞くにつけ、なんとも息苦しく感じます。

ちなみに中国ではスローガンとしての「緑化」がさかんです。雲南でも車で移動すると、山肌に「退耕還林」と書かれた石碑とともに、マツやゴムの木が律儀に等間隔で植わっている場所をよく見かけました。数年前、日本のテレビでも流れましたが、昆明近くで「緑化」とどう勘違いしたのか、山肌(石灰岩質がむき出したところが昆明には多い)をペンキで緑に塗りたくって「緑化」とし、緑化面積として中央政府に報告する事件がありました。こうなると、ちょっと笑ってしまいますが、もはや笑ってはいられない事態なのだと、インドネシアで感じたのでした。
(つづく)

※次回でこの章を終わります。暑さも遠のいてきましたね。季節の変わり目、体調をくずされませんように。
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インドネシアでブームの雲南⑤ 熱帯の畑

2014-09-20 07:08:46 | Weblog


写真上はニアス南部の畑。ちょっと写真ではわかりにくいが、下からサツマイモの葉、真ん中がマンゴー(と地元の方がいう)の木、上空を椰子の木が覆う。椰子の木はご存じの通りココナッツがとれる重要な食料品である。(2014年夏撮影)
写真下は雲南省シーサンパンナの中程にあるモンルン熱帯植物園内の熱帯の畑の展示場所。茶畑の上にゴムや椰子の木が覆っている。強すぎる日差しを避けるための工夫だという。(2005年1月撮影)

【3次元空間】
これらの果物を生み出す森もさることながら、ニアスの農業はまさに南国的。

高藤さんは ニアスは豊かな地なので育てれば作物も作れるのに、スマトラ地震後は野菜や米は外地から買って、畑仕事をする人が減ったことが残念、と語っていましたが、そもそも畑の概念が日本とは違う模様。

 たとえば農地があるとすると、そこに畝を築くのではなく、地べたにサツマイモの蔓が這い、ちょっと上に里芋の葉、その上にマンゴー、そのはるか上空にバナナや椰子の木、という重層空間の畑なのです。そして、ほとんど手をかけず、獲れたものをとる、というじつに幸せな畑なのです。目が慣れないうちはあまりにも規則的ではない緑のため、原生林と見間違えるほどでした。

この畑の作り方は雲南南部のシーサンパンナでも見たことがありました。といっても、それはモンルンの熱帯植物園内ですが。1950年代の設立時の園長にして中国の有名な植物学者・蔡希陶氏が当時の現地の畑の様子、としてわざわざ展示スペースを割いてつくったところにありました。浙江省に生まれて育った蔡氏にとって記録すべき珍しい畑だったということでしょう。

  雲南の畑では中程の空間にはマンゴーではなく茶やコーヒーの木で、その上空はゴムや椰子の木でした。下草は植物園らしく芝生。ただ、説明板には熱帯には重層的に畑をつくる習慣がある、などと書かれていました。

ただ雲南では1960年代の文革時に、紀元前後に書かれた『周礼』でも書かれている畝をつくって管理する漢族風の畑が広大に作られたため(日本も畝の畑ですね)、じっさいには重層的な雲南の昔ながらの畑を見ることは稀でした。が、ニアスでは、その畑がごく普通に、しかもあちこちで見られたのでした。

 ただ、野菜は島ではほとんど育てていないので、青物野菜が食べられない苦痛を生まれてはじめて味わいました。地元の方は、すぐに獲れる魚とフルーツで満足しているのかもしれませんが薬効の高いフルーツばかりで私は地元の人の半分もフルーツは食べられません。

 ただ、すぐお隣のスマトラ島ではニアスより、ずっと野菜づくりが盛んです。それでも明らかに野菜料理は少なめでした。

 とはいえ2億を超える民を養うためには自然農法というわけにはいかず、畑は製造工場のよう。化学肥料と農薬漬けであっという間に畑の土が死んでしまい、農家が農地を手放したところを買い取る、という、じつにおそろしいシンジケートが暗躍している、と現地の方が言っていましたが、まもなくニアス島にも上陸しそうで、痛ましさを感じてしまいます。
 日本もこれだけ農家が高齢化し、大規模栽培ばかり叫ばれるようでは、同じ道をたどることは必定です。日本で外資系の農薬会社に務めた経験のある知人が「あれはムチャクチャだ」といって、やがて投げやりな生き方になりあっという間に辞職してしまいましたが、なにか深い事情をつかんでしまったのかもしれない、とインドネシアに行って腑に落ちたのでした。
    (つづく)
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インドネシアでブーム? の雲南 果物天国

2014-09-14 09:19:57 | Weblog

写真上は、東南アジアでおなじみのドリアン。写真中がシルサック、写真下がシルサックの中身。
ドリアンはまとまっていていかにも食べやすそうだが、シルサックはスプーンにしてもフォークにしても箸にしても、とにかく繊維があってジューシーすぎで食べるのが難しい。

【季節まちがい】
ニアスの着陸時。飛行機自体が椰子の木が真横に見えるほど降下したにもかかわらず、大雨で視界不良のため再上昇。ある程度の小ぶりになるまで上空で待機することになりました。ニアスに何度も通う高藤さんですらはじめての経験だそうです。

30分後、ようやく降りたったニアスの街は、ゴミで下水管が詰まり、行き場のない雨水が道路や家の一階にたゆたっていました。人々は雨が降り続く中、家族で家の軒先に立ちバケツやほうきであてもなく、水を掻き出していました。

(日本各地で床上浸水どころではない被害がでているので、インドネシアも気候が猛烈になってきているのかもしれません。でも排水溝のつまりで浸水被害は日本でも時折みられます。たとえばNHKニュースで雨量計が○ミリを記録し、近くが浸水しました、で映像に出る都立某高校。雨が引いた後も数日は詰まった排水溝周辺は水たまりのまま。校内だけの排水溝の掃除に400万円、詰まった泥ゴミは産業廃棄物として処理されるため処理費に400万円かかる、と見積もられ、結局いまも手つかずとなっています)

『地球の歩き方・インドネシア編』ではインドネシアの8月は乾期と書かれていたのですが、地元の方に聞くとニアスは雨期とのこと。ガイドブックでは、旅行客の大半を占めるバリ、ジャカルタに絞って案内しているようで、スマトラ島北部の気候は無視されていた模様。日本も九州と北海道では気候は全然違うので、ちょっと考えればよかったのですが、まさかジャカルタの気候だけがカバーされているとは現地に行くまで気づかなかったのでした。おかげで私は服や持ち物のチョイスをすっかり間違え、靴はぐしょぐしょとなるなど、不便を強いられました。

【野生に近い果物たち】
ただ、雨期は誤算だったのですが、おかげで幸いにも、旬の果物を存分に味わうことができました。
まずはドリアン。タイのもの、すなわち雲南や日本にも輸入されるあの、ドリアンよりもは一回り小ぶりですが、味は濃厚。とにかく先ほど畑というよりも森で自然に出来たドリアンを無理なく獲っては、今日とれたものを家の庭先で売る、というのんびりしたもの。
 個人で買う人もいれば、バイクに竹を横に渡しそこに左右に振り分けてドリアンをくくりつけ、数個を同時に運んでいる人もいました。
 それを市場で買って、食べる。ちょっと口に放っただけで手が赤くなって身体がポッポと火照るほど、薬効にすぐれて沢山食べると、私のような体質には危険な感じがするほど、成分が濃密です。

ほかにインドネシア名シルサック。大きさはドリアンよりも一回り小さく、小玉すいか程度の大きさ。心臓の形をしてボツボツの短い黒い毛が突起のように伸び外は緑色、割ると白いフワフワ。黒い種をよけながらそのまま食べたり、ジュースにして飲んだりします。

なんでもガン予防の効果があるとかで、メダン暮らしの日本人の方がジュースにして飲んだり、製品化をもくろんだり、となんともホットな果物だそう。地元の人もジュースにして飲んでいました。

まず、食べてみたのですが、硬い実を割るのも大変、中を食べるにもフワフワの繊維をつまんで食べてみても、食べ方はよく分からず食べにくい。宿のおばさんが見かねて、翌日からジュースにしてくださいました。
 
 甘酸っぱくてジューシーでドリアンほど癖もなく、さっぱりとしてとても食べやすい!  でも、少し食べるとお腹がゆるくなりました。身体に悪いものをため込まない効果がガン予防に繋がるのかしら? ともかく味もよく、体も軽くなることから、お気に入りとなって、毎日、飲んでいました。

他、ランブータンもマンゴスチン(インドネシア名:マギス)も、やや大ぶりで甘みもたっぷり。マンゴスチンの皮は皮膚ガンに効果があるそうです。

樹上を見上げるとランブータンがたわわに実る様は、赤く燃える星のようで壮観でした。ただ甘さが虫を呼ぶのか、蚊も多く見られました。
ニアスの人が「本当のオーガニックだよ。たくさん食べてね」と親切にたくさんプレゼントしてくれたのですが、本当に渋みもなく、こんなにおいしいものが虫に食われずにいるなんて、不思議、と思いつつ、袋ごと部屋に置いていたら、見事に食べようと手を袋に入れると小さな蟻やら虫がちゃんとついていて、みょうに納得。

果物の薬効が強いのも、肥料で無理矢理、肥やしたのではなく、森の恵みをそのままに果実に結実させた、野放図な栽培からきているのでしょう。     (つづく)
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