雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

雲南の牛肉④ 牛の生ハム

2015-05-31 10:10:24 | Weblog
写真は回族の多く住む村、昆陽の回族料理店前にて2005年2月撮影)。右手前がなぜかしっぽだけがリアルな牛の大腿骨付近。その左手奥には牛を各部にさばいて干された牛干巴が鉄釘にずらりとつるされている。

【ジャーキーより技が必要】
ほかに雲南北部の比較的標高の高いところに住む回族(イスラム教を信仰する人々。尋甸、会澤、魯甸、昭通など)が寒露節(1年の暦を二十四節気に分けたうちの秋分の次の節気。秋の涼しくなったころですね)につくる食品として、紹介する本もあります。

こちらも「雲南牛干巴」と書かれてはいますが、手間のかかり方は上記の比ではなく、火は一切使いません。つまり生ハムです。回族なので豚は禁忌。だから牛。

牛肉は使っているものの、浙江省の名産の金華ハム以上に雲南では名声を博する昭通市付近の宣威ハムの系統で先週、ご紹介したものとは別物です。

これを私は食べたことがあるかなあと記憶を絞り出してみました。もしかすると、明の時代に東南アジアから中東、アフリカまで遠征した、あの鄭和の出身村・昆陽のイスラム料理店で食べた、あの肉がそうだったかなあという記憶はあります。

その店の前にはすっかり肉をそぎ落としきった牛のあばら骨と背骨としっぽのついたものがぶら下がっていました。このときは生ハムとして食べるのではなく、普通にスープの材料として使っていました。

作り方は、以下のとおり。(『雲南伝統食品大全』雲南省食品工業協会編、雲南科学技術出版社、1994年6月)
①寒露節の前後に牛を殺し、血、皮はぎ、など丁寧な工程を経て、肉を24カ所で切り分けて、さらに形をだいたい2キロから10キログラムぐらいに切り分けて置く。

②肉を涼しいところで(短時間)通風する。

③1、2分もんで柔らかくしてから、塩(100キログラムの肉に対して6キロの塩)
五香粉(または胡椒)、花山椒、ショウガ、香草の葉、茴香、黒砂糖など、を肉の上に撒いて揉み込む。

④肉に③を2、3回繰り返したら缶に入れる。

⑤肉は平たくしてぴったりと平らにして重しをかけ(日本のカブや白菜の漬け物の作り方と要領は同じ)、さらに上に塩を撒いて、3重にした紙、またはさらし布で缶の口をきつく縛って密封し、涼しいところに置いておく(20日前後、気温5度ぐらい)。

⑥肉を取り出し、塩水をさっと洗い落として、縄がけをして、日に当たって、風の通るところに吊す。必ず見張り番を置いてハエがこないようにする。(2日ほど)

⑦肉を木の板の上に置いて、上から圧力をかけて、水出しをし、さらに干す。肉が硬くなり、栗色になれば完成。

こうすれば2,3年は保存できるそうです。
(つづく)
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雲南の牛肉③ ビーフジャーキーの作り方

2015-05-24 11:01:04 | Weblog
写真は雲南のシーサンパンナ州景洪市にてビーフジャーキーを作っていた店の裏庭で料理するタイ族の人。(2005年撮影)
雲南に住むタイ族の人はこの臼と杵と日本語では形容する石でできた重いすり鉢とすりこぎの大きいサイズのような杵を料理道具として多用していた。この道具はベトナム、タイ、インドネシアなど東南アジア一帯で広く使われている料理道具。胡椒の実やハーブなどなんでもこれで何度もトントンとたたき、もしくはすりつぶして味を決める。雲南のビーフジャーキーのフワフワ感もこれらでつぶして出すようだ。

【特産品の作り方】
作り方は、目で見ることができなかったので。いろいろと本とネットで調べたものを書きます。民族学者や雲南の人が調べた本のタイ族のページにはなく、雲南の回族の料理として解説されていました。
(文山州の回族、壮族の伝統食品。)

作り方は以下の通り。
①肉のかたまりに塩を揉み込む、さらに唐辛子やほかの香辛料(唐辛子、茴香、八角、草果、こしょう、花山椒、場合によっては落花生の砕いたモノ漢方薬にも使われるもの)も入れもみこみ、20分置く。

②肉を縄でしばり、1週間、通風する。(肉は暗緑色に)

③1時間、火で炙る。

④焦げた部分を削ぐ(肉は金黄色に)

⑤吊す。

食べるときは、切って、油で揚げて食べるなどの方法がある、と書かれています。

 塩と熱で菌の増殖を抑え、乾燥させるという上記の作り方は、世界各地で作られるビーフジャーキーの作り方と同様です。ただ、一点、各種香辛料をふんだんに使う点が雲南らしい特徴といえるでしょう。

雲南西部のミャンマー国境に近い徳宏地域の瑞麗傣旺食品有限公司では、上記の方法で「火焼牛肉干巴」という名で製品化し、2001年に第二回中国国際昆明旅遊節という公易会に出品。そこで優秀旅遊商品賞を受賞したのに力を得て、雲南省内外で販路を広げていきました。

私が住んでいた10年前もその後2年おきに行ったときにも、いつでも土産物コーナーの一番いい位置にこれが並んでいました。

 ちなみに、この会社は以前、雲南の甘酒の章でご紹介した企業と似たような歴史を持っています。
1997年に国道320号沿いに店を出し、国道を通る人々に売ることで利益と評判を生み、増産体制を整えて、雲南省全体に販路を広げていったのです。

 その際、自らの販売する干巴に由来を印刷していました。

「傣族の宮廷名菜の一つです。かつて宮廷では新鮮な牛肉を3日以上、炭火で炙り、木臼で 舂いておりました。」

その文字の横には影絵のようなタッチでタイ族風のエキゾチックな服を着た細身の体型の男女が炭火で牛を肉を炙り、二人で木臼の両脇に座って杵で硬そうな肉を優雅につく絵がついています。

 国道の敷設によって、バスの休憩時間に食べられる食品が評判になり製品化。そこに土地に伝わる口伝もしくはいかにも歴史書にかかれていそうな伝承を入れこむ、という流れは雲南の特産物にはかかせないようです。そもそも人というのは食べ物にロマンを求めたいのかもしれません。
(つづく)

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雲南の牛肉② ビーフジャーキーの細ちぎり

2015-05-17 10:09:29 | Weblog
昆明にある石屏の名菜を出す昔の建物で食事ができるレストラン・石屏会館の「状元干巴条」。日本でいうと、干したイカ、つまりスルメを手でちぎる感じに似ている。

 ちなみに状元とは、かつて中国で行われた官吏登用試験の「科挙」で最後の試験で第1番の成績を修めた人を指す。石屏は雲南では、多くの科挙合格者を出した町としても知られる。「主席合格の牛のビーフジャーキーの細切り」といった名前なのだ。

 【雲南のビーフジャーキー】
真冬の2月。タイ族の多く住むシーサンパンナの中心都市・景洪市。その料理屋の裏庭に行くと、風が通って、日の当たらない場所に、あばら骨を抜いた形で胸を開いた牛肉の干したものを見かけました。店の人にこれで料理を頼むと、牛肉の繊維に沿って手で細かくちぎって縮れた細切り状態にし、それをさらにネギなどとともに軽く油で炒めたり、揚げたり、もしくは、そのままの状態に香菜(パクチー)や現地のシソの葉のようなものを散らして出してくれました。

 同様に牛のビーフジャーキー風を使った食べ物は、雲南中部の漢族中心の町・石屏の特色料理を出す昆明の名店の一つ「石屏会館」でもいただきました。こちらは、やはり手で細くちぎって、油で揚げて、その上に花胡椒の粒などをちらしします。

日本のコンビニのおつまみコーナーなどで見かける塩にせいぜい胡椒風味のビーフジャーキーとは違って、肉そのものに塩以外に様々なその土地ならではの香辛料(漢方薬にも使われるようなもの)をよーく揉み込んで作られているので、さっぱりとしているのに、味が複雑で手がとまりません。まさにビールのおつまみにぴったり。

 先週、ご紹介したとおり、昆明では特産品として一口タイプの「タイ族の牛干巴」が売られています。ただ、それらはたいてい、赤みを増すための食品添加物などが入っていて、手でちぎってふわふわになった食感も自分でつくらねばならず。料理屋で食べたものと、同じ味には仕上がりません。
(つづく・次回は作り方です)
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雲南の牛肉 ①

2015-05-09 18:14:57 | Weblog
写真は昆明の市場の牛肉売り場にて。(2005年2月撮影)。この撮影した市場をはじめ、昆明市内の市場の④多くがつぶされて個人用マンションやオフィスに転用されてしまったが、市外にはまだ、ある。
 ちなみに売り場の下にペンキで描かれている文字は「無注水牛肉供応店」。市場では目方を目の前で量って値段を出すため、少しでも肉の比重を稼ごうと、水をあらかじめ吸収させて目方を増す店があることが問題となっている。そのような肉は当然、質が悪い。この店は優良店だ、と言っているのである。
 さらに店で売る肉が人目でわかるように、売る肉の骨や頭、しっぽなどをわかるように置いておく。以前にも書いたが「羊頭狗肉」という故事成語が、実感としてわかる。市場には、犬も売られている。ペットにするのは自由だが、もちろん、目的は違う。

【歯が抜けるかたさ】
中国の牛の肉は硬いです。

最近では中国でも神戸牛志向が高まり、やわらかい牛肉も出ていますが、10年前の雲南の肉は凄まじいものでした。

一度、ステーキを食べたいと思い、牛の固まりを買って、厚さ1.5センチぐらいに切って、焼いてみました。なんとも肉の焼ける香ばしい香りがします。

さて、皿に盛り、ナイフで一切れにして口に運ぶと・・。
日本で味わえる、穏やかなあまみのあるうまみとは違って、野趣の味。ただ、そこから先が問題で、いつまでも噛んでものどを通ってはくれません。かみ切れないのです。
 私のあごは疲労困憊。当時5歳の娘の乳歯は、きれいにポロポロ抜けました。

 つまり、筋が硬くて、サシなど入り込む余地のない、つまり牛としてはメタボではなく、よく労働したお肉なのです。

 このような肉はステーキには向きません。当然、料理法も変わり、紀元前から神に最高の供物として捧げられていた頃は、煮込み、近年では細切りにしてピーマンと合わせた青椒肉絲(チンジャオロース)が食べやすい、ということになります。
そして、もう一つ、ビーフジャーキーです。

ビーフジャーキーの場合、脂身は徹底的にこそぎ落とすので、日本の牛肉のようにサシがいっぱい入ったメタボくんは、ステーキには向きますが、この食材としては今ひとつ、ということになるでしょう。

 これを特産品として売り出しているのが、雲南でもタイ族の地域に住む人々。ミャンマー国境に隣接する徳宏州瑞麗市とシーサンパンナ州です。昆明のスーパーには牛が踊る赤と銀のど派手な大袋の中におつまみ用に一口サイズで個包装された「牛干巴」(牛の干したもの)がよく売られていていました。タイ族風味専門店の個人商店でも多種類の「牛干巴」が見られました。味は、日本で食べ慣れたアメリカ風の黒こしょうや塩味だけの風味とは明らかに一線を画する、八角やウイキョウ、花山椒などの中華風風味がたっぷり。なかには、唐辛子の粉ですっかり真っ赤にコーティングされてしまったものまであります。

すっかり干し上がっているので、噛めばすぐに牛肉の繊維がほぐれて、あごが痛むこともありません。
                  (つづく)
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