写真はカサゴ(ミナミアフリカユメカサゴ)と右奥が黒タチウオ。魚の名前を一つ一つ表示してあるのがスゴイ! 魚はこのように起てて置かれるものが半分ほど。新鮮ゆえか。
【あやしい地下鉄】
いい音楽は睡眠の質を上げてくれるようで、ファドから帰った翌朝は8時に自然に目が覚めました。そこで地下鉄1駅でいけるメルカド(市場)に行くことにしました。
ところが、地下に降りると券売機やホーム、はては列車の中にまで、あきらかに客を物色している様子の人々がウロウロ。たった一駅だけなのに、私にもついてこられた気配を感じました。怖かったので帰りは歩いてホテルに戻ることにしました。
いいこともありました。地下鉄駅のホームで、反対車線に停まった電車に、ファドにご一緒したMさんが乗っていたのです。車窓越しに、静かにほほえんで小さく手を振っているのが見えます。LINEで行き先を尋ねると、文書館に行くのだとか。彼女はリスボンの知人宅に泊まっているので、私とは宿泊先は別。広いリスボンで不思議なこともあるものです。
【いよいよ魚市場へ】
さてピコアス(Picoas)駅で降りると、すぐ、左手に葉付きニンジンの束、右手に青物野菜をぶら下げて速足で歩く人を見つけました。市場が間近な証拠です。
「市場まであと2分」と書かれた看板が見え、その先にスチールの箱のような建物がありました。メルカド31・デジャネイロ(de Janeiro)市場です。
なかからは強烈な生魚の匂いが漂っています。どうやら魚主体の市場のようです。9時半は市場がそろそろ終わる時間なのか、パンにハムを挟んだものをほおばっていたり、水をジャブジャブ流して掃除を始めていたりする人もいました。魚部門の人々はみな、ニコニコして写真撮影をOKしてくれました。ここがリベイラ市場のような有名どころではなくて、観光客が珍しかったこともあったのでしょうが、うれしかったです。
ちなみにホームページではこの市場の終了時刻は午後2時です。でも魚の卸売時間はここまでなのでしょう。これは築地の魚市場でも同じです(今は豊洲ですね。)
違うのは、ここは女性の売り手が多かったこと。彼女たちは細指で手早く魚のうろこを削り取り、器用に3枚におろします。胸を張って誇らしげです。
干し塩タラのバカリャウを売るブースも何区画もありました。ビンテージもののバカリャウは分厚くて、やや黄色みがかっていて、今までで一番、風格がありました。ポルトガルの食の中心にバカリャウがあるのだなあ、と実感。
当たり前のように魚が新鮮です。表面はぬるぬると光っていて、目ににごりは一切なし。太刀魚(タチウオ)は銀色に輝き、ポルトガル特産の黒タチウオは黒々して、デカくて太い! ほかにタイ、アジ、ヒラメ、何種類ものイカ(墨を取るのが主体のイカもありました)、タコにタラ・・・。イワシとサバは日本で見るよりだいぶ小さかった。これはすでにいいものが売れて、残ったものだからなのでしょうか?
中身がよく見えるように腹を裂いて置かれたアンコウ、サケやマグロも切り開かれて置いていました。脂のノリがすごいのがよくわかります。アサリやカキも大ぶりでした。とにかく種類が豊富です。
ちょうど旬だったのか、目を引いたのが桃色のソーセージのような大きさに橙色のひびのような血管風のひびのようなものが入った大きなたらこ。とってもおいしそう。
日本でも見られる魚が8割方を占めています。全体に魚の色は黒々としている傾向にありました。
とくに見た目のグロテスクな、もっちり、ヌルヌル系の魚(深海魚系)がたくさんあって、うれしい。魚好きの国なのだと実感しました。ポルトガル料理が日本人の舌に合うわけだ。
(つづく)