雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

昆明の幼稚園事情2

2006-09-29 22:40:56 | Weblog
写真は娘の通った昆明市の私立幼稚園
【私立の幼稚園】
 我が家の中国での引受先に所属するハンサムボーイTさんが紹介してくれたのは、私立の白馬にある幼児園。園長がTさんの友人なのだという。
 
 場所は白馬地区にあり、宿舎からは公共バスに乗って20分ほどの距離にある。そこは昆明市の西の郊外で、あと少しで、中国で6番目の広さを持つ市のはずれにあるテン池に接する。数年前に分譲されたらしい画一的な高級マンションと、町のゴミを買い取って瓶やペットボトルを洗って再生するようなくず屋街、昔ながらの村の風景が混在する昆明の周縁の町だ。高級マンションには、欧米系の外国人が少なからず住んでいて、喫茶店やピザ屋、雑貨屋を経営していた。そのマンション街の一角にその幼稚園はあった。

 電動式の厚みのあるジャバラ状の門が据え付けられていて、守衛さんがボタンを押して開閉する仕組みとなっていた。日本の幼稚園は出入り自由で事件も少なからず起きているので、そのセキュリティのよさに感心させられた。どうやら中国全体ではこの程度は当たり前らしい。それでも北京では2004年に幼稚園に駐在する守衛が次々と園児を殺害するという痛ましい事件も起きており、どんなに厳重な警戒でも絶対的な安全はありえない。

 その幼稚園ではおもしろいことに交替制となっている守衛の中に前園長がまじっていた。あまりに地味な服をきた普通のおじさんなので、最初はまったく気がつかなかった。

 その先には、白を基調にした3階建てのコンクリートの建物。壁面には絵本に出てくるような子供とクマが遊ぶ絵がカラフルに彩られていた。入口のガラス戸をくぐると、大型の水槽があり、鮒や金魚のような小魚が泳ぐ。床には塵一つ落ちていない。雲南では高級マンション以外には見られないほどのハイレベルな清潔感である。

【コンクリートで固められた園庭】
 建物は複雑なコの字形に配置されていて、トランポリンのある中庭、滑り台とジャングルジャムが一体となった遊具のある門前の庭、園長室前の大庭、と園庭だけで3ヵ所、他に2階と3階にそれぞれテラスの庭が2カ所置かれていた。すべての園庭がコンクリートの上なのが気になったが、町全体がコンクリートで固められた現状では仕方がないのかもしれない。全部で敷地面積は300坪程、どうやら雲南の中流階級以上の子弟が集う中規模程度の幼稚園らしい。 

 1階の園長室前の園庭が一番大きく、35坪ほど。たいして広くはないが、ここで朝礼やお遊戯会などが行われた。
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昆明の幼稚園事情

2006-09-22 16:27:44 | Weblog
写真は昆明市内の葬儀用品屋前にて。昆明の男の子も、いがぐり頭が一般的。真夏だというのに子供は重ね着させられることが多い。気温は高いが湿度が低いので子供は耐えられるようだ。一方、親は薄着のことが多い。
【私立の幼稚園】
 昆明には公立の幼稚園と、営利を目的とする私立の幼稚園がある。公立だと値段は安いが(98元以上=約1600円。昆明では女性の単純労働が月400元からなので低所得者世帯にはきつい)、質が落ちると思われている。一方、私立の方は、送迎バスを運行したり、英語教育を徹底して行ったり、スポーツを重視したり、算数などの英才教育をしたり(主にそろばん)と、様々な特徴を持たせ、経営努力に励んでいた。そうしないと、過当競争で生徒をとられる、という厳しい事情があるようだ。

 募集は中国の年度末の8月中下旬に集中する。その頃になると地元の新聞では、私立の幼稚園の広告が目立ちはじめ「幼稚園の選び方、私の場合」といった特集まで組まれる。親たちは一粒種のわが子によりよい教育を受けさせたいと少ない情報量のなかで右往左往し、2週間以内に決断する。最初は公立で、と構えていた親も、幼稚園協奏曲の熱にあおられ、いつの間にか私立の幼稚園に入園手続きに行っていた、ということも少なくないらしい。とはいえ日本での経験では、少なくとも私が住む東京では、人気の幼稚園に入るためには親が一年前から情報収集に動き出し、入園の半年以上前に募集が締め切られるところもある過酷な前倒しスケジュールなので、それに比べれば、ずっとのんびりした幼稚園選びではあった。

 しかし、日本は就職活動にしてもなんにしても、なんでも前倒しになっていくが、国民性の一言で片付けてしまっていいのだろうか。クリスマス商戦も年々、早まっているようだし。

【低所得者層には高嶺の花】
 さて価格は、月400元前後から(約6000円前後)だった。
このように幼稚園の費用は低所得者世帯にとっては高額なので、その子供が幼稚園に通うことは、まずない。だから彼らは路地裏で、親が仕事から帰ってくるまで誰の監督も受けることなく、遊び続けていた。じつはそれが大変な問題となっていて、恐ろしいことに、誘拐の標的となってしまうのだ。しかも不名誉なことに昆明は全国一、子供の誘拐事件の多い町となっていた。そういう子供は警察が、誘拐団から救出しても、日中は親がいないので、すぐまた誘拐される。親も困っているが、警察も頭をかかえていた。

 そこで市は、なんとか誘拐事件を減らそうと、「親同士で子供を見合うネットワークを作りましょう」と呼びかけたり、安価な託児所をそういう地域に設けたりし始めたが、それでも月98元では、難しいと入れる親は多くはないとのことだった。この誘拐事件については、また別の章で述べたい。
 
 我が家では5歳の娘を地元の私立の幼稚園に入れた。学年途中の4月に編入したため、私立しか受け入れてもらえなかったのだ。

 昆明では8月を除くと、幼稚園の情報が皆無となる。だから昆明で我が家の世話をしてくれた引受先のつてがなければ、とても4月からは入れなかっただろう。引受先のTさんらに感謝しつつ、その様子をリポートしよう。
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過熱する暗記地獄2

2006-09-14 23:02:54 | Weblog
写真は昆明より南にバスで4時間の町、石屏の郊外で。男の子はたいてい丸刈りで、子供同士で元気に遊んでいた。メンコやバドミントン、追いかけっこなどに興じていた。のびのびと子供が暮らす町もある。
【恐怖の白い粉】
 中国のある省の話。
 ・・子供が注意力散漫で宿題がいつも終わらないので、医者に連れて行ったところ、薬を処方された。その薬を飲ませると、子供は見違えるように集中力を発揮し、成績もよくなった。その3年後、高校の入学試験前後に成績が落ちてきたので、薬の量を増やしてもらった。するとまもなく、子供の様子がおかしくなった。親もこれはおかしいと思い、別の医者に診てもらったところ、「薬物中毒」との診断。なんと覚醒剤を処方されていたのだ。子供はへんになり、試験どころではなくなった。親もまさかそんな危険な薬とは思っていなかったと嘆いているそう。
 恐ろしい話です。当然ながら、試験がらみの自殺記事もありました。

 さて、今夏はちょうど高考の結果が整理されたころだったため、雲南の新聞では昆明市のお隣の曲靖一中から、10人が中国最高峰の理系大学の清華大学に、3人が北京大学に合格したという話題で盛り上がっていました。
 その中学校には生活保護世帯も相当数あったそうですが、親と学校の先生が一致団結し、子供の意欲をかき立てたことが合格の秘訣だったと分析していました。雲南省の人々は、なんとか生活をステップアップしたいという願望が他省よりもは強く、中国の伝統的な科挙の時代に逆戻りしてしまったような気さえします。

 全国紙の『中国青年報』で「人格教育がなおざりにされている」と指摘するまでもなく、心ある親が心を痛める今日の中国教育。日本ではゆとり教育が、批判にさらされてますが、私にはそれほど悪くはないように思うのです。
 
次回からは中国の幼稚園事情についてです。もし質問等ありましたら、遠慮なくお寄せください。

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過熱する暗記地獄

2006-09-07 16:36:18 | Weblog
写真は、昆明のピザ屋にて。せっかく我々が楽しくピザをほおばる横で延々一時間以上、いがぐり頭の高校生らしき息子に男女が説教を続けていた。たぶん親子だろう。胃の縮むような雰囲気だった。


【親も子も宿題漬け】
 今回、中国で痛切に感じたことは、「いまの中国で小学生にはなりたくないな」ということです。幼児期には、多くの大人の見守る中、大切に大切にのびのびと育てられた子供達が、小学校、早いところでは幼稚園からスパルタ教育に変身することは前にも書きました。その様子を、親たちに聞いたところ、涙なくしては語れない、すさまじい世界となっていました。

 雲南一のレベルを誇る雲南師範大付属小学校。ここは街の中心部の他に、近年、郊外の高級マンション群の中心にも設置され、大いにそのマンションの不動産価値を高めています。

 その高級マンションに住み、憧れの付属小に通わせる小学2年の保護者に話しを聞きました。すると1年生でも、一クラスの人数はなんと70人いて、朝からびっしりと授業が組まれているとのこと。宇宙人のようなチビちゃん大集団を指導する先生にも同情しますが、入学後に行われる保護者会で先生に開口一番、「ご存じの通り、人数が多いのでとても面倒は見きれません。親御さんの指導をよろしくお願いします」と宣告される親の苦労も相当なもの。

 5時に下校後、夕食もそこそこに膨大な宿題に取り組む子供達。算数なら計算100問は当たり前。それを熱心な親なら付きっきりで指導、たとえ宿題の山に懐疑的な親でも最低、答え合わせと間違え直しの指導はしなければならないというのです。古典の暗唱もかかせません。

 これが毎日続くのです。その家には1人の子の周りに両親、母方の祖父、叔母夫婦と大人が5人もいて、皆、職業を持つかたわら、交替で面倒を見ていたのですが、あまりの大変さに疲れ切り、とうとう財力にまかせて家庭教師を雇うことで、ようやく大人達は宿題地獄から開放されたのだそうです。子供はその他にピアノも習っていて、その練習もしている、とのことでした。ピアノは子供の希望で学ばせているようです。その子の叔母は、
「私たちのときは、こんなに勉強はしなかった。かけ算九九が小学一年で出てくることも、意味不明な古典の膨大な暗唱も。今の子供は大変です」と嘆いていました。

 それを聞いた、同じ高級マンションに住む日本人親子は、小学入学を控えて子供の人格形成に不安を覚え、雲南を脱出してしまいました。そして比較的勉強のゆるやかな上海の私立小学校へ入学したのです。

【上海と昆明の違い】 
 上海の小学校は、雲南ほど宿題がきつくないのか、と今度は上海で小学2年の子を持つ親に聞いてみました。すると答えは「イエス」。もともと商人の街で、語学はともかく、勉強は現場で生かされないと意味がないという考えもあり、宿題は他省に比べて多くはない、とのこと。その代わり、日本のかつての共通一次のような省ごとに行われる「高考」という大学入学試験では、上海は周辺の江蘇省や浙江省の人たちには、点数で適わないという副作用も出ているそうです。ただし、中国の大学入試の場合は、居住地域にある大学への入学は他省から試験を受けるよりもは、優遇されるので、上海にある大学なら、少し入りやすい、というカラクリつきでした。よほどじゃないと勝手に住民票を移せない中国らしい事情です。

 とはいえ、日本の小学2年の夏休みの宿題の量を教えると、「え、絵日記が一日分だけなの? それは日記とはいいませんね」と少しあきれられてしまいました。
 出会った親たちはどちらかというと、職業的地位と才能に恵まれた裕福な人たちのせいか、スパルタ教育には懐疑的な考えの人たちばかりでした。学校教育はこのままではいけない、と。でも中国で生きていく限りは同世代の人たちに負けるわけにもいかないし、将来を少しでもよくしてあげたい、と思うのも親心としては、当然あるわけです。だれか、この歯車を止めてくれ、と思いつつも、回り続けなければならない中国の親子。子供のストレスは、相当なものでしょう。(つづく)
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