雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

レンコン湯③

2009-12-20 21:14:29 | Weblog
写真は波も荒々しい撫仙湖。くるりと振り返ると、椰子の木とへんなモニュメントなどがわざとらしく設えられた休暇村公園となっている。

【レンコン粉の雲南料理】
 レンコン粉を使った雲南料理に「藕粉丸子」があります。とはいえこちらは雲南で旅行、不動産、デパート業を展開する「柏聯」集団が作り出した新作メニュー。澄江のレンコン粉を練って薄くのばして皮をつくり、ラードに白砂糖、バラの香りの砂糖、ごま油、松の実の粉を練り上げた餡を包んで、グラグラの湯で煮上げ、氷砂糖で作ったシロップをかけてできあがり。1991年度の雲南省主宰の商業系統飲食産品の分で金賞を獲りました。

 じつはこのデザートはオリジナルメニューではなく、調べると清代嘉慶年間(1796年 - 1820年)に湖北省鄂東地区で作られたという伝統的デザート「藕粉圓」または江蘇省塩城で200年以上前より続くといわれる「藕粉圓子」そのもの。雲南でなんとかレンコン粉を使ったメニューを広めたいとの思いが感じられます。

【レンコン粉の特産地の実態】
 ところで雲南のレンコン粉の特産地・撫仙湖は、一番深いところが157.8メートルあるという、中国では第2の水深を誇る湖です。(ちなみに中国第一の水深を持つ湖は朝鮮との国境、長白山のカルデラ湖・天池。最大水深は373メートル。)この湖は神秘の湖として、中国の国営テレビでも取り上げられたことがあります。

 1998年、湖底に人工的な巨石群があるとの地元漁師による古くからの言い伝えが発端で、大規模な湖底探査が行われました。その結果、前漢時代頃の古代都市と比定される巨石都市が見いだされ、2001年に『古滇王国』として、中国中央テレビで大々的に報道されました。実際に周辺には、以前より青銅でできた巨大な太鼓のようなものなどが発掘されています。

 水深の深さゆえ、波も荒く、「抗浪魚」(学名:shizothorax toliensis)と呼ばれる特殊な魚が生息する湖としても有名。近年ではそれらの養殖も盛んになっています。波の荒さゆえ、1980年代は渡り船の転覆事故で多数の死者を出したこともありました。

 開発も滇池ほどはひどくないため、透明度は今のところ4~5メートルはあると発表されています。
とはいえ近年、昆明への大型道路が建設され、海水浴場と見まがうような休暇村が建設されるなど、コンクリートの固まりが一気に押し寄せて、一農村の風情を大きく変えつつあります。

湖周辺には、稲、麦、空豆、煙草、菜種といった農作物が植わり、隣村には農作物の一大集積地も整備される、雲南政府期待の先進的農地への道をひたはしっているのです。(おわり)

参考文献
『雲南小吃』(梁玉虹著、雲南科技出版社、1998年)他

*来週より2週、お休みさせていただきます。
 今年もお付き合いくださり、ありがとうございました。よい年の瀬をお過ごしください。 
 
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レンコン湯②

2009-12-13 17:37:06 | Weblog
8月の雲南・蒙自の市場にて。日本で見るようなスーパー用に短く切ることもなく、長い棒の形で堂々と売られている。日持ちもよい。
 花期が終わる頃、蓮の実も、おやつとして売られ始める。
(お寺の仏間の横で金色に光る蓮の実が見られますね。)
 地元の人から「甘くてうまい」と勧められたが、私には青臭い実、としか思えなかった。しかし、不思議とのどの渇きは癒えた。

【トロトロのわけ】
 レンコンがなぜ、葛湯のようにトロトロするのかというとその正体は、ムチンと呼ばれる糖タンパク質にあります。長芋や里芋、オクラ、昆布などにも含まれる、あのネバネバです。

 ムチンは、『食の医学館』(本多京子著、小学館、2003年)によると、
「ムチンは胃や唾液にも含まれている成分なので粘膜を潤す効果があります。そのため胃粘膜の強化によって胃壁を保護し、胃炎や胃潰瘍の予防、改善に効果を発揮。また鼻の粘膜を丈夫にして風邪やインフルエンザにかかりにくくするのに役立ちます。また、タンパク質分解酵素を含むため、肉や魚などのタンパク質の吸収もよくなり、疲れが溜まっているときにも効果的。さらに抗ウイルス作用もあるので風邪の予防にも威力を発揮します」という、なんとも頼もしい物質なのです。

 レンコンにはその他にもビタミンC、鉄分、タンニンなどが含まれてます。タンニンがあるため、茶色に変色してしまうのですが、漢方的には止血作用があるため、産後の方によく勧められます。

 つまり、純粋な炭水化物でビタミンを含まない葛(くず)湯と、レンコン湯は成分的に、まったく別物なのです。

 明代に書かれた薬草の百科辞典『本草綱目』ではレンコンを次のように紹介しています。「熱や渇きを癒し、悪血(凝り固まった血)を散じて、肌をなめらかにする(効能がある)。また久しく服用すれば心を歓ばせ、怒りを静めてくれ、お通じもよくなる。酒や毒を消し、火照りを鎮め、胃にも良い。お産後の血にもよい。・・」おだやかな漢方作用で、副作用もとくにはなさそうで、しかもおいしい、ということが調べれば調べるほど分かってきました。

 最近、NHKテレビ「鶴べえの家族に乾杯」でレンコン農家の主婦が、レンコンをおろし器で摺って、挽き肉に醤油を混ぜてよく捏ね「レンコンハンバーグ」なるものを作っていたので、さっそく試してみました。レンコンの粘りがうまい具合に肉をまとめてくれるので、パン粉や卵など入れなくても、本当に簡単にハンバーグが出来上がりました。しかも、さっぱりして美味い! 今まで、煮物やきんぴらしか作らなかったので、気づかなかったレンコンの「粘り」。あなどれません。
                                (つづく)

雲南で見かけた手縫いおぶいひも2(文山・硯山周辺にて)
数年前までは手縫いのおぶいひもを土産物屋で探せば、なんとか買えた。(昆明・100元~)最近ではなかなか難しくなってきた。
 ともかく、子供への愛情たっぷりの刺繍が本当に美しい。
                                       
    

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レンコン湯①

2009-12-06 22:48:27 | Weblog
 写真は雲南澄江特産のレンコン粉。乾燥した顆粒状のレンコンに砂糖がまぶされたレンコンの粉が250グラムごとに小分けされている。安くて、食べやすい子供のおやつとしても人気がある。

【‘葛湯’発見】
 わが家では、風邪を引くと葛根湯と葛湯を飲む習慣があります。体も心も芯から温まる上に、食欲がないときでもスッとおなかになじんでいくのがうれしいものです。

 ところが雲南ではそれらがなかなか見つからないのです。葛根湯の処方箋を漢方の本場・中国の漢方医に診せてみても「知らないなあ。」というばかり。どうやら葛根湯は、明の李時珍が「本草綱目」で紹介した時に、ダイレクトに日本にもたらされ、日本では以後、大事にされてきたのだが、本場中国では廃れてしまったらしいのです。

 葛根湯はあきらめました。さて、葛湯は、と探すと、ありました、似たものが。ただし葛の粉ではなくレンコンの粉。「藕粉(オウフェン)」といいます。食べ方は、袋にレンコンと砂糖のパウダーが入っているので葛湯のように、それをお碗に入れ、80度のお湯で混ぜるだけ。葛湯と同等、いやそれ以上にとろみがあり、上品でくせのない甘さがやみつきになってしまいました。

 娘はこれが大好きなので、日本へのおみやげに大量に買ったこともあるのですが、娘以外には、残念ながら好評とはいえませんでした。あまりに淡泊な味にとまどわれてしまったようです。

 この粉は、昆明市中心部からおよそ40キロ南にある中国第2の水深を誇る撫仙湖のほとり、澄江の特産品。夏ともなるとこの湿地帯には蓮の花が美しい花を咲かせています。

 ちなみに、他に藕粉の特産地には、江蘇省の宝応、浙江省の杭州、貴州省の楽至、山東省の微山があります。いずれも風雅な淡水湖があることで知られ、特に杭州の西湖では、藕粉のトロトロ碗にキンモクセイをブレンドした「西湖桂花藕粉」が浙江料理の一角を占めるほどの名品となっています。

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