写真は昆明に近い宜良県の市場の牛肉コーナーで売られていた干巴。豚肉から作るハムと違って黒々としている。雲南の牛肉は脂身が少ないのが特徴で、干し肉には向いている。宜良でこの干し肉を売っていたのは漢族の人だった。この干巴は、たたきつぶしてフワフワにして食べるのではなく、スライスやキューブ状に切って、炒めたり、スープの具材にしたりする。
【料理伝説のよくある話】
さて、『傣族風俗志』(白立元編著、中央民族大学出版、1995年)には、ほかにも気になる記述がありました。
「近現代以来、傣族の飲食のなかで昔からあるメニューは多くなく、発展して作られたメニューがすこぶる多い」
という断り書きです。
炭火でしっかり炙るビーフジャーキーはさまざまな伝統料理の本に見られないことからも、おそらく近年になって生み出されたものと思われます。
また同書には先の断り書きを入れた上で牛肉を材料とする
「烤干巴丝(炙った干巴の細切り)」は
「別具一格、有風味独特」とありました。
他にもたくさんのメニューが紹介されているなかで、この料理は別格のおいしさ、と強調されているのです。
このように専門家も認めた料理が企業家によって商品化されるのは、中国では常識中の常識。その際、いかにもありそうないわれを、新たにパッケージに書き添えて売るのもよくある話。
つまり、ビーフジャーキーにかかれていた
「傣族の宮廷名菜の一つです。かつて宮廷では新鮮な牛肉を3日以上、炭火で炙り、木臼で 舂いておりました。」
は、前半部分はおそらく嘘。ただし天日干しの肉を木の棒で叩く料理はあるので、地元の人も「そんなこともあったかも」という微妙な線をついたものなのでした。
おそらく、雲南や東南アジアの牛肉料理の多くがそうであるように、欧米の植民地化の影響でつくられたビーフジャーキーが、木の棒で叩いてフワフワにするというタイ族独特の料理法と融合して生まれた一品だったのでしょう。 (この章おわり)
※次週の更新はお休みします。暑さが続きますが、無理せず乗り切りたいですね。
【料理伝説のよくある話】
さて、『傣族風俗志』(白立元編著、中央民族大学出版、1995年)には、ほかにも気になる記述がありました。
「近現代以来、傣族の飲食のなかで昔からあるメニューは多くなく、発展して作られたメニューがすこぶる多い」
という断り書きです。
炭火でしっかり炙るビーフジャーキーはさまざまな伝統料理の本に見られないことからも、おそらく近年になって生み出されたものと思われます。
また同書には先の断り書きを入れた上で牛肉を材料とする
「烤干巴丝(炙った干巴の細切り)」は
「別具一格、有風味独特」とありました。
他にもたくさんのメニューが紹介されているなかで、この料理は別格のおいしさ、と強調されているのです。
このように専門家も認めた料理が企業家によって商品化されるのは、中国では常識中の常識。その際、いかにもありそうないわれを、新たにパッケージに書き添えて売るのもよくある話。
つまり、ビーフジャーキーにかかれていた
「傣族の宮廷名菜の一つです。かつて宮廷では新鮮な牛肉を3日以上、炭火で炙り、木臼で 舂いておりました。」
は、前半部分はおそらく嘘。ただし天日干しの肉を木の棒で叩く料理はあるので、地元の人も「そんなこともあったかも」という微妙な線をついたものなのでした。
おそらく、雲南や東南アジアの牛肉料理の多くがそうであるように、欧米の植民地化の影響でつくられたビーフジャーキーが、木の棒で叩いてフワフワにするというタイ族独特の料理法と融合して生まれた一品だったのでしょう。 (この章おわり)
※次週の更新はお休みします。暑さが続きますが、無理せず乗り切りたいですね。