写真は、豆腐厰のなによりの財産の井戸水をくみ上げる、北門・石屏豆腐の社長。
【石屏豆腐の作り方/おぼろ豆腐まで】
翌朝、日曜日にもかかわらず社長以下5人体制でフル操業中だった。日本から来たと聞くと「とにかく見ていってくれ」と社長。事務のお姉さん風の人が、店に一枚しかないというカラーA4紙の三つ折りパンフレットを持って現れ、「品質は世界一です」と鼻息も荒い。このテンションの高さは雲南では珍しいことだ。
100坪ほどの広さの豆腐厰は四合院づくりで、左の建物では主に豆乳から豆腐の工程を、中央の建物では豆洗いと豆のよりわけ作業を、右の建物には青みがかった大豆と、熟し切った黄色い大豆2種類の倉庫となっていた。中央の建物に対面する正面入り口の建物が人々の往来する道路に面していて、立派な看板を持つ表玄関となっている。そこでは、出来たての石屏豆腐の乾燥・保存・切り分け・売り場、4つの役割を担っていた。
それらの建物に囲まれた中庭の真ん中に井戸があった。井戸にはポンプが突き刺してあり、機械の力で水をドドっと汲み上げては、バケツに次々と入れていく。その作業をしているのがあの社長だった。まるで貴重な井戸水の配分こそ重要な仕事だ、といわんばかりである。
左の棟ではより分けた豆を使って豆乳を作っている。温めた豆乳の湯気がもうもうと立っている。その作りたてでアツアツの豆乳に社長自らが、その黄色みがかったその井戸水を注ぐ。すぐに作業員がそのバケツをゆっくりとかきまぜると、白い花のようなものが浮いてきた。
ほろほろのおぼろ豆腐が出来上がったのだ。
なんとここでは、井戸水そのものがニガリなのだ。
「気温などによって日々、豆乳の状態も変わるので、入れる水の量は毎日、違いますよ」
と、社長は気さくに話してくれた。
作業員にすすめられるままにアツアツ、できたてのほろほろ豆腐をいただくと、豆の甘さとやわらかな香りがたまらない。色は白く、舌ざわりはなめらかで、これだけでも十分、いける。 (つづく)
写真上は、井戸水をおぼろ豆腐づくりの従業員に渡す社長、写真下は、できあがったおぼろ豆腐。