雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

雲南の病院7

2012-08-10 10:20:27 | Weblog

写真上は、昆明市内の羊のしゃぶしゃぶのお店にて。鶏ガラスープにふんだんに生薬が入っている。漢方風の香りが食欲をそそる。写真下は、昆明の雲南料理の名店・石屏会館の料理。木の毛根を揚げたもの、と説明を受けた。かき揚げゴボウのような味がした。(2008年夏撮影。)

【生活に密着した漢方】
雲南で病気にかかると、お金を持つ親なら子どもにはまず、西洋医学の病院で診察を受け、西洋薬を中心に、プラス漢方の処方箋をもらい、病院の医局もしくは街の薬局に買いに行きます。

一方、大人は、病院に行く前にまずは漢方を試す、もしくは漢方を中心にした病院にかかることが多いようです。

以前にも話しましたが、知り合いの70才くらいの老大人は、雲南特産の「三七」のなかでも、もっとも高価な七年物の丸々とした根を、半年以上飲み続け、ついには白内障を治した、と自慢しておりました。

また、雲南の社宅では、秋ごろ、お年寄りのご夫婦が朝からゴボウのような木の根(黄色)をスライスしたものを広げてはお日様に干し、夕方になると取り込むことを1週間以上、繰り返していました。その名前をご夫婦に伺ったのですが、雲南方言が強くてわかりませんでした。市場の札を後で見ると、「黄耆」と書いてありました。強壮、止汗、利水、排膿などの効能があり、代表的な補気強壮薬〈胃腸系を強めて気を補い、体全体の強壮をはかる薬〉だそう。―漢方薬の生薬.comより。)なのだそうです。

フワフワの毛根のような木の根などを干している光景も見ました。それらは昆明近辺の山でとれた草や根。普通の野菜の10倍以上の値で市場に採れる季節になると出てきます。これも聞き取れなかったけど、何かの漢方だとのこと。それらを買ってきては自分で手を加えて、家族や親戚の薬にしているのです。

半完成品の生薬は、市場が少なくなったので気軽には買いにくくなりましたが、それでもいけば、季節によっては二〇種類ぐらいが種類ごとに分けられて売られています。昆明なら少量でよければ、カル・フールなどの大きなスーパーに行っても、買うことができます。

薬膳料理とまではいかなくても、日常的にしょうがやニンニクを中心に、ドクダミの根を含め、これら豊富な季節の野菜を、豊富に日常的に料理しているのは、やはり健康によさそうです。

日本でも、ここ10年ぐらい「太極鍋」や「モンゴル鍋」などと呼ぶ、辛い汁や鶏ガラスープの中国わたりの鍋料理が食べられる店がありますが、これは雲南でも定番。さらにいえば、それほど値段の高くない店でも、鍋にクコの実やナツメ、竜顔、草莓などといった時々の生薬を、頼まなくてもふんだんにうかべてくれるのが雲南風。今でも娘はこの鍋がむしょうに食べたくなる、といっていますが、日本でこの鍋を再現したら、とてつもない金額になってしまうでしょう。

本屋にいけば、いつでも薬効のある食べ合わせや、逆に食べ合わせたらいけない食べ物を紹介した本はいつも、ベストセラー。明(日本の室町から江戸時代初期ごろの中国の王朝)の李時珍が書いた漢方の元となる本『本草綱目』も、何度となく編集し直されては、売れ筋の棚に並んでいます。

「医薬同源」のお国だけに、そして、動植物の種類の豊富さを誇る雲南だけに、薬に対する考え方は日本とはだいぶ異なるようです。

 (つづく)

*いつもお読みくださり、ありがとうございます。
 次週のその次の週のブログの更新をお休みさせていただきます。おかげさまで、体もだいぶ元気になりましたので、ちょっと遠くに行ってまいります。
 今後とも、よろしくお願いします。
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雲南の病院6

2012-08-05 10:16:09 | Weblog
写真は、雲南北部の「シャングリラ」より車で3時間ほど奥に入った街にて。(2004年撮影。)観光客が訪れる街には、あまりどぎついペンキ書きのスローガンは書かれていないが、貧しい農村地帯に入ると、とたんに、このような生活に密着したスローガンが目に付くようになる。

【男の子の多い世界】
 一人っ子政策といえば、雲南の貧しい農村地帯に行くと、ペンキでよく書かれているのが
「男女一様好」。
日本語でいうと
「男でも女でも同じぐらいいいですよ。」

 そう。やはり、一人だけ産むなら男の子、の風潮は厳然としてあるのです。

 実際、以前、取り上げた雲南に多い赤ちゃんの誘拐では、男の子が圧倒的に多い。家を継がせる、農村なら力仕事などの労働力としても最適、というわけです。

 正常な場合、男の子の方がちょびっと生まれる率が高くて、女の子の1.03~1.07倍なのだそうですが、2005年の中国全土を対象とした人口調査によると、男女の出生差は1.186倍に。
 80年代は1.085倍だったそうですが、明らかに異常事態です。跡取り意識の特に強い広東省では、男女の出生比は1.3倍になっています(2007年4月広東省人口と計画出産委員会発表より)。
彼らが結婚適齢期を迎えた20年後には男性の5人に少なくとも1人はカップルの相手がいないのです。

 これほどまでに深刻な男女差をもたらしてしまったのが、文明の利器。B超と呼ばれる「超音波エコー」なのです。女の子とわかると、早々に見切りをつける人がけっして少なくないのです。もちろん、一人娘を大切に育てているご家庭も多いですが。

 一人っ子政策が続く限り、また価値観が変わらない限り、「婦産科」医院が街に溢れる光景は、残念ながら変わりそうもありません。
(超音波エコーの普及による世界規模の悲劇的な結末については『女性のいない世界―性比不均衡がもたらす恐怖のシナリオ』マーラ・ヴィステンドール著、講談社、2012年6月)。かなり衝撃的な内容です。最近、性比不均衡の問題がインド、中国の問題として日本の各新聞にも取り上げられていました。)
                                       (つづく)
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