市場にてもちトウモロコシをひくのに使う石臼。新鮮なもちトウモロコシは、水を加えなくても十分、トロミがある。臼での挽きたてを、鉄板で焼いて売っている。プレーンなお好み焼きのような出来上がりとなる。
【包谷バーバ】
戦後まもない記憶の残る群馬出身の私の父母の話では、
「そういえば、そのころのトウモロコシは、紫の粒も混じってた。粉っぽくて、おいしくなかったけど。」
今ではすっかり果実並みの甘さとみずみずしさへと変貌を遂げた日本ですが、昔のままで出回っている雲南では、現在でも庶民の‘ごちそう’です。
紫色のトウモロコシ畑の麓の市場では、真っ黒に日に焼けたおばさんが、白いトウモロコシの粒を石臼で挽いては、せっせとバーバ(まんじゅうの意)を作っていました。個旧、蒙自の特産品として政府公報パンフレットに名を連ねる「糯包谷バーバ」です。(包谷:とうもろこしの俗称)
●つくりかた●
①新鮮な白い糯(もち)トウモロコシを石臼で粉にし、
②水と、場合によってはつなぎに小麦粉やご飯を加え(市場では②の工程はなかった)、
③トロトロっと平たい油を引いた鉄鍋に落として、丸くて平たい形に整え、
④じっくり蒸し焼きに。
プレーンなお好み焼き、といった風情です。ホカホカのバーバにザラメをたっぷりかけてもらい、ほおばると、腹にずしりときました。
私が「香ばしくておいしい」と告げると、無愛想な作り手のおばちゃんの顔がほころび、
「もう一枚食べるかい?」
うなずくと、写真を撮ってもいいよ、と張りのある声をかけてきました。お言葉に甘えていると、お隣の野菜売りのおばちゃんや米売りのおばちゃんたちまで寄ってきて下町の大所帯のような雰囲気となってきました。
誇り高い、錫の街・個旧の人々は自分を認める人だととわかると、じつに気持ちのよい応対へと切り替わるようです。そこにたどりつくまでは、本当に近寄りがたいような怖さと厳しさがあって、うっかりカメラもぶらさげられない雰囲気だったのですが。ほっとして、味も倍増した気がします。
【伝統あるお祝い食】
ちなみにトウモロコシ栽培のさかんな農村地域では伝統的なお祝い料理となると、米よりもトウモロコシの方がポピュラーなようです。
昆明に住むお年寄り世代と食事をしたときや、雲南中部の農村で歓迎会があったときなど、必ずといっていいほど、饅頭風に形の整えられた、この料理が山と盛られていました。
酒のつまみからはもっとも遠い、甘くて油っぽくて素朴に腹がふくれる、この饅頭。同席するご老人方は、これが出ると必ず「ごちそうなんだよ」と目を細めてほお張り、私や娘の皿に山盛りによそってくださったのでした・・。
いつか雲南の「お好み焼き」「もんじゃ」へと化ける日はくるのでしょうか?
《つづく》
【包谷バーバ】
戦後まもない記憶の残る群馬出身の私の父母の話では、
「そういえば、そのころのトウモロコシは、紫の粒も混じってた。粉っぽくて、おいしくなかったけど。」
今ではすっかり果実並みの甘さとみずみずしさへと変貌を遂げた日本ですが、昔のままで出回っている雲南では、現在でも庶民の‘ごちそう’です。
紫色のトウモロコシ畑の麓の市場では、真っ黒に日に焼けたおばさんが、白いトウモロコシの粒を石臼で挽いては、せっせとバーバ(まんじゅうの意)を作っていました。個旧、蒙自の特産品として政府公報パンフレットに名を連ねる「糯包谷バーバ」です。(包谷:とうもろこしの俗称)
●つくりかた●
①新鮮な白い糯(もち)トウモロコシを石臼で粉にし、
②水と、場合によってはつなぎに小麦粉やご飯を加え(市場では②の工程はなかった)、
③トロトロっと平たい油を引いた鉄鍋に落として、丸くて平たい形に整え、
④じっくり蒸し焼きに。
プレーンなお好み焼き、といった風情です。ホカホカのバーバにザラメをたっぷりかけてもらい、ほおばると、腹にずしりときました。
私が「香ばしくておいしい」と告げると、無愛想な作り手のおばちゃんの顔がほころび、
「もう一枚食べるかい?」
うなずくと、写真を撮ってもいいよ、と張りのある声をかけてきました。お言葉に甘えていると、お隣の野菜売りのおばちゃんや米売りのおばちゃんたちまで寄ってきて下町の大所帯のような雰囲気となってきました。
誇り高い、錫の街・個旧の人々は自分を認める人だととわかると、じつに気持ちのよい応対へと切り替わるようです。そこにたどりつくまでは、本当に近寄りがたいような怖さと厳しさがあって、うっかりカメラもぶらさげられない雰囲気だったのですが。ほっとして、味も倍増した気がします。
【伝統あるお祝い食】
ちなみにトウモロコシ栽培のさかんな農村地域では伝統的なお祝い料理となると、米よりもトウモロコシの方がポピュラーなようです。
昆明に住むお年寄り世代と食事をしたときや、雲南中部の農村で歓迎会があったときなど、必ずといっていいほど、饅頭風に形の整えられた、この料理が山と盛られていました。
酒のつまみからはもっとも遠い、甘くて油っぽくて素朴に腹がふくれる、この饅頭。同席するご老人方は、これが出ると必ず「ごちそうなんだよ」と目を細めてほお張り、私や娘の皿に山盛りによそってくださったのでした・・。
いつか雲南の「お好み焼き」「もんじゃ」へと化ける日はくるのでしょうか?
《つづく》