雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

さとうきび3 さとうの時代がやってきた

2007-01-26 21:49:08 | Weblog
写真は雲南の食事店でごく普通に見られる豚肉のシンプルな炒め物。すごい量の唐辛子だが、雲南の人は唐辛子を入れないと味がない、と感じるそうだ。ほんとにおいしいけど辛い。

【サトウキビの歴史を見ると】
 サトウキビは中国では紀元前から食べられていたらしいが(屈元の『楚辞』などに見られる、と専門家はいっている)、爆発的に需要が増えたのは17世紀後半以降のことだ。中国南部の福建省や広東省、さらには台湾で大量に生産され、以後、かかせない調味料となった。その当時、栄えた杭州(浙江省)や「食は広州にあり」で知られる広州(広東省)料理は、サトウキビが自由に使える環境が、伝統の味を決定づけたように思う。

 今振りかえると我ながら驚くが、学生時代、杭州料理のあまりのおいしさに、その町の名店に4日間、通いつめ、メニュ-全品を食べ尽くしてしまったことがある(現地で友人をつくって通ったのです)。また会社の出張で行った広州では、こんなにグルメでいいの? と思うほど、何を食べてもおいしかった。砂糖の甘さと、杭州なら醤油ベ-ス、広州なら塩の塩梅プラス酢の風味が絶妙で、それに極上の紹興酒と銘茶が小食の私をいざなったのである。唐がらしをあまり使わず、また脂っこくもない料理のため、日本人好みの中華、となるのだ。

 ところで雲南では、現在ではほとんど現地では見られないが、昔は砂糖やしからの砂糖が主流だったという。今ではすっかりサトウキビからの糖ばかりとなっているが(雲南省の主要産業の一つはサトウキビ栽培とその精製)、伝統雲南料理で評判の高いものには一切、砂糖が使われていないか、妙に甘すぎるかどちらかなのは、砂糖の使い方の歴史が浅いせいもあるのかもしれない。
【日本にも大きな影響】
 一方、日本も当時の中国の砂糖ブームにかなり影響を受けている。1665年から3年間の中日貿易の記録を調べた研究者によると、外国商人の86%を福建商人が占めていた長崎貿易では日本の銅と中国の糖が交易されていた。江戸時代は「卵百珍」などの料理書が出てくるほど様々な料理法が生み出された時代だが、その背景には、砂糖の流通も大きな役割を果たしたに違いない。(つづく)

 
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中国のお正月1 さとうきび2

2007-01-19 22:03:46 | Weblog
写真は雲南の市場にて。春節前には縁起物のさとうきびが飛ぶように売れていた。

【さとうきびを門松に】
 雲南でのサトウキビの収穫は11月から3月。そして春節前になると、葉つきで竿竹のように長くて立派なサトウキビ売り場が突然、市場に設けられた。2本セットで飛ぶように売れていく。

 昆明出身の大学生が、
「形が『節節高』で味が『甘くて美味しい』ので縁起物として、門柱に1本ずつ、計2本飾ります。後で嘗めることができるから、子供たちは大好きなんですよ」
と教えてくれた。なんと正月の飾りものとしてサトウキビが使われているのだ。

ちなみにサトウキビの食べ方は、黒々とした皮を剥いて、中心部分の白くて比較的柔らかいけど、縦に繊維がびっしり通ったある部分を噛みしごいて、その汁を吸うというもの。これが、簡単に甘い食品を取ることができる現代人の私や娘にとっては結構、まどろっこしい。

 とはいえ日本の門松に竹が使われるように節節で伸びる縁起物で、しかもおやつにもなるわけだから、まさに一石二鳥。そもそも日本の門松のルーツは中国で、その中国では一般的には春聯という、一対の赤い紙におめでたい言葉を書いて、玄関先などに飾る。だが昔は魔除けに桃の木のお札を表門の両側に飾った、という言い伝えもある。

 雲南ではそれがサトウキビとなったわけだが、これは雲南独特のものなのだろうか。調べてみると、明代(日本の室町時代から江戸時代初期)の福建省や、民国期(日本の大正、昭和初期)の浙江省でも、同様の飾りがされていたことがわかった。

 「大晦日の夜に門を閉じ、サトウキビの樹木を束ねて門の両側に立てる。年が明けると門を開ける。人々が年始参りで門をくぐると『佳しき境に入っていく意味』となって喜ばれた」という(『杭州府志・歳時民俗』)。これを「封門甘蔗」と呼んだ。

 また正月に子供たちが糖を食べる習慣もあり、運が向くように、また一年が無事であるようにとの願いをこめたとか。

 雲南では、それらの風習が脈々と今に受け継がれてきたわけだが、他の地域にも残されているのだろうか。一応、インタ-ネットで中国語のペ-ジにアクセスしてみたが、それらしい風習を発見することはできなかった。

もしサトウキビの飾りものの風習を他地域で見た方がいましたら、ぜひコメントをお寄せください。(つづく)
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中国のお正月1 さとうきび

2007-01-12 22:55:00 | Weblog
 日本では新年を迎えたばかりですが、中国では、これから本番を迎えます。中国の正月「春節」特集です。 

さとうきび

 冬になると時折、手押し車でサトウキビを売るおじさんが出没する。赤黒く、竹のように節があり、ひたすら真っ直ぐに伸びた棒。2~3メートルはある。竹竿のようだ。以前、沖縄でサトウキビを収穫中のおじさんから、
 「まっすぐなヤツは絞り機に入れやすいだけで、うまくない。本当に甘くておいしいのは節の間隔が短くてジグザグに伸びた、ぶさいくな方だよ」と聞いていた。だから、
 「あれは甘くないほうだ」とピンときたのだが、娘の熱視線に反応したサトウキビ売りのおじさんにくどかれ、結局買うことになった。

 例によって「ほんのちょっとください」といったはずなのに、サトウキビ丸ごと一本分を缶ジュ-スほどの大きさに切りわけて、丁寧に皮まで剥いてくれたものを手渡され、3元(約40円)。サトウキビのつまった袋が、ずっしりと手に食い込む。

 こうして苦労して家路についたのだが、娘は一口なめるやいなや「青くさーい。あまくなーい」といって終わり。のこりの大量のさとうきびは、あわれな末路をたどったのである。

 その後、シーサンパンナで昔ながらの絞り機でサトウキビを絞る体験をしたとき、絞り汁に、ちょっと塩を入れたら、青くさいけど、けっこうさわやかな味わいとなった。

 このサトウキビが春節前に大量に出回るのだ。しかも意外な使われ方で。その話は次回で。
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「なにもない」正月

2007-01-05 18:24:03 | Weblog
 中国では新暦の正月を祝う習慣はない。一応、1月1日から3日までは休みだが、普通の連休だ。町を歩いても政府関係の建物に新年の年号を書いた垂れ幕が下がっている程度で、他に特別な飾りもなければ、デパートのセールもない。

 じつは中国の伝統行事はすべて旧暦で行われる。ちなみに今年の正月は2月9日だ。その日は「春節」とも呼ばれ、一週間以上、お休みとなる会社も多い。帰省するのもその頃だ。

 春節の日には「紅白歌合戦」に笑いを織り交ぜたテレビ番組がド派手に放映される。放映日が近づくと、「誰が司会をする」とか、「今年のあの人のお笑いのネタは20秒に一回の大笑いの渦になるだろうとか」とかがマスコミの話題の中心となり、世間の関心も高まってくる。そして、当日。親戚とともに番組の出来映えを家で酒や1.5リットル入りのペプシコーラやお茶などを飲みながら賑やかに過ごす。お年玉もある。

だが私は新暦の正月には、あまりの「何もなさ」にうろたえた。まず、幼稚園には12月下旬からの冬休みがない。だから12月31日に小雪舞う中、野外で幼稚園の演芸会が行われたわけだ。あまりにさびしいので餅米を買ってきて、蒸し、ビール瓶の底でついて餅に丸めて、雑煮にして食べた。1月1日夜のウィーンフィル・ニューイヤーコンサートの中継だけが、「ああ、世界は正月を祝っている」と感じられた瞬間だった。

さて、新聞に1月1日より花卉節が開かれる、とあったので、昆明の繁華街に家族で出かけた。昆明はなんといっても花の生産地として名高いし、やっぱり中国でも新暦の正月を祝うのだ、と正直、ほっとした。きっと、いろいろな花々が繁華街一面に咲き乱れ、美しく飾られているに違いない。

だが実際に行ってみると、インパクトのない花飾りの盆景? が並んでいるだけだった。1.2メートル四方の台の上を木や花で漠然と飾りつける。それらが何十台もあり、一つ一つにスポンサー名がぶらさがっている。傍らに投票箱。

どうやら一等を競っているらしい。まるで田舎のひなびた七夕飾りの競い合いのような光景だった。やはり新暦の正月を祝う行事ではなかったのだった。

年があけました。今年もどうぞよろしくお願いします。


コメント (6)
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