雲南、見たり聞いたり感じたり

雲南が中心だった記事から、世界放浪へと拡大中

雲南のはちみつ③

2015-01-24 17:14:25 | Weblog


蜂蜜店の看板の上方には、100%純蜂蜜、ロイヤルゼリー、プロポリス(ミツバチの巣の樹脂)、花粉(働き蜂が花粉を集めるときに蜜で固めたもの)、蜂の子、蜂胎(中国のインターネット百科事典の百度によると、オスの蜂の子〔普通、オスなのだが・・〕の粉のこと。細胞壁を破壊する酵素を含み、不眠症に効果があるとされる。日本語に適当な訳がないので、日本にはない製品なのかも)を卸売り。500グラム単位から注文に応じます、と書かれている。これらは頼むと、冷蔵庫から出される。腐りやすいのだそうだ。

【漢方薬となる植物の蜂蜜も】
ほかにも雲南では百花ミツ、そばハチミツ(雲南のジンポー族などの少数民族はそば粉で料理をする。つまりそば畑が多い。)がよく売られていました。ミツの名前は日本と同じでも、なにしろ雲南の首都・昆明からして標高1890メートルと高原に位置し、それより北方に点在する蜂蜜の主産地がその標高よりも高原になるわけですから、高原独特の風味となっていて、いずれも、やや漢方風の味わいとなっていました。

 なかでも近年、注目を集めているのが雲南特産の漢方となる植物から集めたハチミツです。昭通市では天麻という漢方が採れますが、そのハチミツを採取した「天麻ハチミツ」や昆明から西北に270キロ離れたところにある楚雄州大姚県の「野坝子」と呼ばれるシソ科の植物のハチミツなどがあります。

これらの採れる昭通も大姚も深い谷を持ち、標高の高い山を抱えた複雑な地形。ここ特産の植物も多くあります。ちなみに偶然なのか、この2つとも、地震がよくあり、少数民族地帯のため、貧しく、深刻な被害となる地域です。

とくに大姚は長江の源となる金沙江が削りあげた谷間1023メートルからイ族地域でも主峰第一峰とされる帽台山3657メートルを抱える複雑な地形。茯苓や黄蓮など500種ほどの漢方薬の産地でそれが野生で植わる特殊な環境です。近くには漢方でもあり中華料理にかかせない八角(八角という地名もある)や花椒などの一大栽培地もあります。

このような特殊な環境で育つ「野坝子」。冬に花が咲くという変わりもので、採れるミツも採取後、数日でバターのように固くなり、変質もしにくいのだそう。

この「野坝子」ミツは日本では「薬蜜」とか「皇蜜」「ヤハシミツ」(「野坝子」の日本語読みだと思われる。日本の植物図鑑には「ヤハシ」という名の植物名はなし。昆明軍区後勤衛生部・昆明植物研究所編『雲南中草薬選』〔1970年8月〕にあり。)の名前で一部店舗やインターネット通販されています。中国では雲南で、というよりも上海などで販売されているようです。

その店の一つが上海・古北新区の「蜂蜜屋」さん(http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/seikan/kokuko/shanghai/topics/04/tp0408_1.htm。)
 日本人が経営していて、日本の駐在家族に人気の店のようです。いろんな人の日記やブログに紹介されています。雲南コーヒーや雲南紅茶も置かれていて、日本では横浜中華街とか、道頓堀でも販売所があるのです。なぜ、雲南よりも日本での宣伝の方が手厚く、手に入るのか、の不思議については次回。
 (つづく)
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雲南のはちみつ②

2015-01-18 12:29:52 | Weblog

写真上はプーアル茶を圧縮して固めた「茶餅」と呼ばれるもの。下はそれを風格があるように紙で包装したもの。羅平の固いハチミツの高級なものもこのように固めて茶餅とそっくりの表装を施し、黄色い布のついた固い包装紙に高級感あふれる形で置かれてる。
雲南では茶馬古道で遠くは北京まで運ぶ際に馬の背に振り分けて長い道中運ぶため、塩でもなんでも固めて運ぶ習慣があり。
(2005年撮影。)

【羅平のかたーいハチミツ】
 羅平県の菜の花油は雲南では一級品の食用油として人気があります。(数年前、当ブログでも羅平県の見渡す限りの菜の花畑をご紹介しました)なんといっても、店先に赤いペンキで大きく「羅平油」と書けば、それは食用油の品質保証と同義語になるほどです。

食用油を採るための、いく山も続く広大な菜の花畑は、ハチミツの採取にもうってつけ。2003年当時で県では野生蜜源が32種類あるなかで菜の花が30余万畝(213平方キロメートル=東京ドーム約1万6390個分)、レンゲの花が7万畝(47平方キロメートル=東京ドーム約3590個分)、ミツバチは6万群あり、1500トンあまりを生産していました。

羅平県では1988年より政府の肝いりで羅平県ハチミツ基地項目センターが設置され本格的にハチミツの生産加工場の建設が始まり、2003年には1000万元(1億9000万円)規模の投資をして、生産加工、瓶詰め、研究センターなどが増強されました。

羅平県に限らないのですが、雲南産のハチミツはよく固まります。日本だったら使いやすくするために固まらない工夫を重ねるところですが、雲南はその逆。
 
 プーアル茶も円盤状に固めて、使うときはナイフで削って茶葉をほぐしますが、ハチミツも円盤状のプーアル茶とそっくりに固めてしまいました。きっちりと固まると、それだけ品質が劣化しにくいそうなのです。
 それを羅平県では『皇蜜』という名で国際農業博覧会に出品し、2011年には金賞を受賞。以後、2013年、2014年には雲南の誇る一級品として中国南アジア博覧会などに積極的に出品し、海外の注目を集めつつあります。                           (つづく)

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雲南のはちみつ①

2015-01-12 14:54:18 | Weblog
写真は昆明の郊外の小売店街にあるハチミツ専門店(2010年夏撮影)

【ブーゲンビリアの香り】
昆明のいわゆる高級住宅街近くの町を歩くと、牛乳スタンドや食料品店と並んだ小さな店舗街のなかに蜂蜜専門店を見かけることがよくありました。ボトルに詰められて白濁したハチミツが、清潔そうな棚に等間隔に大事そうに並び、その脇でひまそうに店員が座っていました。その店員の後ろの床には農場などからそのまま運ばれてきたような、プラスチックの大きな桶が置かれていて、そこからすくって瓶づめ(多くはプラスチック製)されているのだな、とわかるところもありました。

 カルフールなどの大型スーパーにも雲南特産品コーナーには雲南のハチミツは置かれてはいましたが、私の見たかぎり、ロイヤルゼリーなどのミツバチ由来の貴重なものはハチミツ専門店ならでは、のようでした。

 我が家では、ハチミツ専門店で菜の花蜜や百花蜜などを買っては朝食のパンに塗ったり、ヨーグルトにかけたりして雲南ではお気に入りの食材アイテムとしてかかせない存在となっていました。なんといっても適度にドロリと白濁し、冬にはカチコチに固まるところが私のお気に入りでした。

小さいころ、群馬の祖父母の家には、いつでも舌がしびれるほど甘くて、白く固まっていて、子供心に格が違うおいしさのハチミツがありました。そういうわけでスプーンでガリガリと削り取るように使うハチミツこそ高級でホンモノだ、と子供心に刷り込まれてしまったわけです。のちに聞くと、私の母方の祖母が群馬県水上市出身だったため、地元産のハチミツが常備されていたとのことでした。

実際には白く固まるから高級、といったことではなく、ブドウ糖の割合が多く(菜の花ハチミツや、珍しいところではウドの花蜜)、花粉など固まるための核が含まれている(不純物を厳密に取り除かない、つまり自家製に近いもの)、といった要素によるものなのだとか。(農林水産省消費者相談よりhttp://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/0802/04.html)水上のハチミツはズバリ、自家製に近くてブドウ糖の多い菜の花やウドの系統だったのでしょう。

さて、雲南のハチミツも、じっさいに山野草からのものと菜の花のものが多く、花粉なども含まれる素朴なものが多いのです。これについては次回より詳しく述べます。

ただ、不思議なことに雲南では毎日、違和感なく食べていたのに、日本だと、なかなか減らないこと。

考えるに、雲南独自の高原植物主体の花の蜜となるため、独特の風味があるのです。雲南に住んでいるときは当然ながら雲南の作物や調味料を食べていたため、それらとうまくマッチしてハチミツの味も日本と同じように普通に味わえたのでした。

 ところが、日本のさっぱりとした食事だと、ハチミツの風味が日本料理とは全然別の方向に、なんというかさっぱりごはんにブーゲンビリアの香料を振りまいたようなミスマッチ感が際立って、どうにもバランスの悪い味となってしまったのでした。 (つづく)

※明けましておめでとうございます。いよいよ、今年で一段落つけられるように内容のあるものにしていきたいと思います。よろしくお願いします。
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