蜂蜜店の看板の上方には、100%純蜂蜜、ロイヤルゼリー、プロポリス(ミツバチの巣の樹脂)、花粉(働き蜂が花粉を集めるときに蜜で固めたもの)、蜂の子、蜂胎(中国のインターネット百科事典の百度によると、オスの蜂の子〔普通、オスなのだが・・〕の粉のこと。細胞壁を破壊する酵素を含み、不眠症に効果があるとされる。日本語に適当な訳がないので、日本にはない製品なのかも)を卸売り。500グラム単位から注文に応じます、と書かれている。これらは頼むと、冷蔵庫から出される。腐りやすいのだそうだ。
【漢方薬となる植物の蜂蜜も】
ほかにも雲南では百花ミツ、そばハチミツ(雲南のジンポー族などの少数民族はそば粉で料理をする。つまりそば畑が多い。)がよく売られていました。ミツの名前は日本と同じでも、なにしろ雲南の首都・昆明からして標高1890メートルと高原に位置し、それより北方に点在する蜂蜜の主産地がその標高よりも高原になるわけですから、高原独特の風味となっていて、いずれも、やや漢方風の味わいとなっていました。
なかでも近年、注目を集めているのが雲南特産の漢方となる植物から集めたハチミツです。昭通市では天麻という漢方が採れますが、そのハチミツを採取した「天麻ハチミツ」や昆明から西北に270キロ離れたところにある楚雄州大姚県の「野坝子」と呼ばれるシソ科の植物のハチミツなどがあります。
これらの採れる昭通も大姚も深い谷を持ち、標高の高い山を抱えた複雑な地形。ここ特産の植物も多くあります。ちなみに偶然なのか、この2つとも、地震がよくあり、少数民族地帯のため、貧しく、深刻な被害となる地域です。
とくに大姚は長江の源となる金沙江が削りあげた谷間1023メートルからイ族地域でも主峰第一峰とされる帽台山3657メートルを抱える複雑な地形。茯苓や黄蓮など500種ほどの漢方薬の産地でそれが野生で植わる特殊な環境です。近くには漢方でもあり中華料理にかかせない八角(八角という地名もある)や花椒などの一大栽培地もあります。
このような特殊な環境で育つ「野坝子」。冬に花が咲くという変わりもので、採れるミツも採取後、数日でバターのように固くなり、変質もしにくいのだそう。
この「野坝子」ミツは日本では「薬蜜」とか「皇蜜」「ヤハシミツ」(「野坝子」の日本語読みだと思われる。日本の植物図鑑には「ヤハシ」という名の植物名はなし。昆明軍区後勤衛生部・昆明植物研究所編『雲南中草薬選』〔1970年8月〕にあり。)の名前で一部店舗やインターネット通販されています。中国では雲南で、というよりも上海などで販売されているようです。
その店の一つが上海・古北新区の「蜂蜜屋」さん(http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/seikan/kokuko/shanghai/topics/04/tp0408_1.htm。)
日本人が経営していて、日本の駐在家族に人気の店のようです。いろんな人の日記やブログに紹介されています。雲南コーヒーや雲南紅茶も置かれていて、日本では横浜中華街とか、道頓堀でも販売所があるのです。なぜ、雲南よりも日本での宣伝の方が手厚く、手に入るのか、の不思議については次回。
(つづく)