とっちーの「終わりなき旅」

出歩くことが好きで、趣味のマラソン、登山、スキーなどの話を中心にきままな呟きを載せられたらいいな。

映画「劔岳・撮影の記」 標高3000メートル、激闘の873日

2010-11-23 23:10:03 | 映画
これは、2009年の夏、大ヒットした映画「劔岳・点の記」の撮影スタッフの記録映画である。本編は映画館で見たしDVDまで買ってしまっていたが、「劔岳・撮影の記」は映画館で見ることができなかったので、気になっていた。ところが先日WOWOWで放送があると知って、早速予約録画して全編を見ることができた。

「劔岳・点の記」は、明治時代日本地図完成に人生を賭けた測量隊の真実を描いた作品で、セットなど使わずリアリズムを前面に打ち立て、ここまでやるのかといった程の過酷な状況で撮影されている。撮影がすごい映画ということで大いに注目を浴びただけに、映像は素晴らしい。また過酷な自然もリアルに描かれている。「劔岳・撮影の記」では、「前人未踏の撮影」に賭けたスタッフ・キャストの標高3000メートル、激闘の873日の記録が、明らかにされている。

この作品の監督、撮影は『剱岳・点の記』のディレクターである大澤嘉工である 。企画から宣伝まで陣頭指揮した監督・木村大作の肉声を始め、全てのスタッフが黙々と北アルプスの高地で撮影に挑んでいる姿は、まさに感動ものだ。ところどころにキャストの浅野忠信、香川照之、松田龍平、仲村トオルらの生の声も入り、山での撮影の厳しさを垣間見ることが出来る。

登山経験のないスタッフ・キャストたちが、わずか数カットの撮影の為に毎日数十キロの荷物を背負い、長時間の徒歩行軍を繰り返す姿は、まさに苦行である。撮影は、順撮りにこだわり目的の剱岳山頂に登頂できたのは、本当に最後の最後だったそうだ。明治時代の測量隊が実際に経験したことをなぞる様に撮影することで、キャストの演技が時間を経過するたびにリアルになっていくことを狙ったのだろう。吹雪に行く手を遮られたり、強烈な風雨にさらされたりしながらも、目的のカットを撮るために何日も待つこともあったようだ。膨大な時間や労力と忍耐で作られた映画といってもいい。

撮影中には、落石で怪我をした人や、体を痛めやむなく下山した人もいたようだ。山岳ガイドがついて指導もしていたようだが、ガイドでも無茶だと言わせるような危険な場所を選んでカメラを設置したりする等、命をかけた撮影だったのが良くわかる。単なる映画製作といえない過酷な2年間の撮影ドキュメントに、あらためて映画『剱岳・点の記』の凄さを実感した。