石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

圧倒的な米国の支配力―世界一の貸し手兼借り手:UNCTAD「世界投資レポート2024年版」(4)

2024-08-26 | 世界ランクシリーズ

(世界ランクシリーズ その9 2024年版)

2.FDIアウトバウンド(FDI Outflows, 対外直接投資)

(米国と日本で世界シェア4割!)

(1) 2023年のFDI outflows(FDIアウトバウンド) 

(表http://rank.maeda1.jp/9-T02.pdf 参照)

 2023年の世界のFDI Outflows(アウトバウンド)の総額は1兆5,500億ドルであった。対外直接投資額が最も多かったのは米国であり、金額ベースでは4,040億ドル、世界全体の26%を占めている。日本は米国に次いで多い1,840億ドルで世界に占めるシェアは12%である。第3位は中国(1,480億ドル)であり、4位、5位に1,040億ドルでスイスと香港が並んでいる。これら上位5か国がFDI Outflows全体に占める割合は61%に達しており、直接投資の資金供給源が一部の富裕国に集中していることがわかる。

 

これに続く6位はドイツの1,010億ドルであるが、6位のカナダ以降はFDIアウトバウンドが1千億ドル以下である。韓国は345億ドルで世界12位の資金供給国であり、またロシアとインドのFDI Outflows額はそれぞれ291億ドル及び133億ドルである。中東の主要国ではUAEが最も多い223億ドルであり、世界で17番目にOutflowsが大きい国である。またサウジアラビアのFDIアウトバウンドは161億ドルでインドを上回っている。UAE、サウジアラビア以外で中東の主要な対外投資資金の供給国はイスラエル(100億ドル)、トルコ(58億ドル)などである。これに対してエジプトのFDI Outflowsは4億ドルにとどまり、イランの場合は1億ドルを下回っている。イランは米国の経済制裁のため対外投資もままならないようである。

 

2023年のFDI Outflows総額は前年(2022年)とほぼ横ばいである。国別に見ると米国及び日本の2022年FDI Outflowsはそれぞれ3,660億ドル及び1,620億ドルであり、ともに2023年は10%強伸びている。一方、中国は前年より▲152億ドル減っており、その結果日本と順位が逆転した。韓国のFDI Outflowsは2022年の658億ドルから2023年は345億ドルに半減している。またロシアは2022年の115億ドルから2023年には2.5倍の291億ドルに増加している。

 

中東の主要国ではUAEのOutflowsは2年連続して200億ドルを超えて安定している。サウジアラビアは2022年の270億ドルから2023年は161億ドルと4割以上減少している。イスラエルは横ばいであり、トルコは対前年比で10億ドル(22%)増加している。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

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圧倒的な米国の支配力―世界一の貸し手兼借り手:UNCTAD「世界投資レポート2024年版」(3)

2024-08-22 | 世界ランクシリーズ

(世界ランクシリーズ その9 2024年版)

 

1. FDI インバウンド(FDI Inflows, 直接投資流入額) (続き)

(新型コロナ禍で急減、ようやく回復した海外直接投資!)

(2) 2019-2023年のFDI Inflows(FDI インバウンド)の推移

(図http://rank.maeda1.jp/9-G01.pdf参照)

2019年から2023年までの世界と中東主要国のFDI Inflowsの推移を示したのが図9-G01である(単位億ドル、対数目盛)。

 

2019年の全世界のFDI Inflowsの総額は1兆7,300億ドルであった。しかし同年に始まった新型コロナパンデミックのため世界経済は大きく後退、直接投資も激減した。2020年の全世界の直接投資額は1兆ドルを切り、対前年比▲43%の大幅減少であった。国別にみても米国は▲59%、サウジアラビアも▲47%と世界平均を上回る激減ぶりであり、日本も▲14%の減少であった。

 

このような中で2020年の対中国投資はわずかではあるが6%増加、インドは27%の大幅増であった。2021年は前年の大幅減少の反動としてFDI Inflowsは大きく膨らみ、全世界では1兆6,200億ドルと1兆ドルの大台を回復、コロナ禍以前の水準に近づいた。その後2023年までの2年間は若干足踏み状態であり、全世界のFDI Inflowsは1兆3千億ドル台が続いている。

 

米国と中国を比べると2019年のFDI Inflowsは米国2,299億ドル、中国1,412億ドルであったが、2020年には米国933億ドル、中国1,493億ドルと逆転している。しかし2021年には米国への直接投資が3,894億ドルに急回復、中国(1,810億ドル)を抑えて再び世界一の投資受け入れ国となり、現在に至っている。

 

日本とインドを比較すると、2019年のFDI Inflowsは日本138億ドルに対しインドは4倍弱の506億ドルであった。2020年には両国の差はさらに拡大したが、2021年には日本の投資受入額が343億ドルに拡大した一方、インドのそれは448億ドルに減り、両国の格差は縮小した。2022年、23年の両国への投資流入額は同じような傾向を示しており格差は変わっていない。

 

中東のUAE、トルコ及びサウジアラビア3カ国の推移を見ると、2019年はUAE179億ドル、トルコ95億ドル、サウジアラビア31億ドルであった。サウジアラビアの過去5年間のFDI Inflowsは激しい上下変動を見せており、2020年には16億ドルと前年比で半減になったあと、2021年には231億ドルに激増、UAE及びトルコを上回った。しかし2023年には123億ドルに減少、トルコをわずかに上回る水準に落ち込んでいる。

 

(続く)

 

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圧倒的な米国の支配力―世界一の貸し手兼借り手:UNCTAD「世界投資レポート2024年版」(2)

2024-08-20 | 世界ランクシリーズ

(世界ランクシリーズ その9 2024年版)

 

1. FDI インバウンド(FDI Inflows, 直接投資流入額) 

(世界の投資資金の4分の1を吸い上げる米国!)

(1)2023年のFDI インバウンド(FDI Inflows, 直接投資流入額)

(表http://rank.maeda1.jp/9-T01.pdf 参照)

 2023年の世界のFDIインバウンド総額は1兆3,300億ドルであった。流入額が最も多かったのは米国であり、金額ベースでは3,109億ドル、世界全体の23%を占めている。米国1国だけで実に全体の4分の1近い投資資金を吸い上げている。米国に次いで流入額が多いのは中国の1,633億ドル(12%)であり、米国と中国の2カ国で世界のFDIインバウンドの3分の1を占めている。

 

両国に次ぐ世界第3,4位のFDIインバウンド国(都市)はシンガポール(1,597億ドル)及び香港(1,127億ドル)であり、以上4カ国が1千億ドルを超えている。米国と中国を核とする太平洋経済圏が世界中から投資資金を集めていると言えよう。第5位はブラジルの659億ドルである。

 

その他主要な国を見ると、ドイツは370億ドル(世界9位)、インドは282億ドル(世界16位)である。日本のFDIインバウンドは214億ドルで世界で21番目に多い。韓国は日本より60億ドル少ない152億ドルの投資資金を集めている。なお英国の2023年のFDIインバウンドは▲892億ドルの巨額のマイナスとなっている。これは外国資金の引き上げが新規の流入額を大幅に上回っていることを示しており、英国経済に対する信頼感が薄れたことがうかがわれる。

 

中東各国のFDIインバウンドを見ると、UAEの流入額は307億ドルに達している。これはインドを上回り、世界12位である。UAEを構成する首長国の一つであるドバイは金融ハブとして中東の香港あるいはシンガポールのような役割を果たしている。コロナ禍を乗り越え、中東地域の旺盛な投資意欲を受け、ドバイは活況を呈しているようである。

 

ドバイに次ぐFDIインバウンド国はイスラエル(164億ドル)、サウジアラビア(123億ドル)、トルコ(104億ドル)であるが、イスラエルはハイテク産業が投資のけん引役であり、サウジアラビアは安定した石油収入を餌に、海外から投資資金を呼び寄せ国内経済の多角化を推進している。これら各国に比べイランの投資流入額は14億ドルにとどまっている。欧米先進国による経済制裁の影響が外国からの投資の障害となっていると考えられる。

 

FDIインバウンドの金額及び世界ランクを前年(2022年)と比較すると、1位から4位までは2年連続で変わらない。但し米国は6%、金額にして214億ドル減少、中国も259億ドル(14%)減少している。日本の2022年流入額は342億ドルであったが、2023年は4割近く減り、世界ランクも14位から21位に落ちている。

 

中東諸国は2022年比でFDI流入額の減少した国が多い。サウジアラビアは前年比で半減しておりイスラエル、トルコも20%台の減少となっている。これに対してUAEは2022年より80億ドル増加し、サウジアラビアと順位が逆転した。

 

(続く)

 

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圧倒的な米国の支配力―世界一の貸し手兼借り手:UNCTAD「世界投資レポート2024年版」(1)

2024-08-19 | 世界ランクシリーズ

(世界ランクシリーズ その9 2024年版)

 

  国連などの国際機関あるいは世界の著名な研究機関により各国の経済・社会に関するランク付け調査が行われている。これらの調査について日米中など世界の主要国及びトルコ、エジプト、イランなど中東の主要国のランクを取り上げて解説するのが「世界ランクシリーズ」である。

 第9回の世界ランクは、UNCTAD(国連貿易開発会議)が毎年刊行する世界各国の直接投資(FDI)に関する報告書の最新版「World Investment Report 2024」をとりあげました。(詳細は下記参照)

https://unctad.org/system/files/official-document/wir2024_en.pdf

 

「World Investment Report 2024」について

UNCTADの「World Investment Report 2024」は、外国直接投資(Foreign Direct Investment, 以下FDI)の最新の状況を世界規模で調査分析した報告書であり対象となっている国は200以上に達する。

 

 本稿ではFDI inflows、FDI outflows、FDI inward stock及びFDI outward stockの1990年~2023年のデータを取り上げ、上位5か国、日本、米国、中国など世界主要国のほか、中東の主要国について各国の直接投資の現状を比較することとする。

 

 なお本稿では上記それぞれの英語表記の訳語を以下の通りとする。

FDI inflows:        FDIインバウンド

FDI outflows:       FDIアウトバウンド

FDI inward stock:   FDIインバウンド残高

FDI outward stock:  FDIアウトバウンド残高

 

(続く)

 

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政治と経済で決まる世界の男女格差-「男女格差指数」(5完)

2024-06-28 | 世界ランクシリーズ

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0605WrldRank5.pdf

 

(世界ランクシリーズ その5 2024年版)

 

(突如急上昇したUAE、120位前後を上下する日本!)

5.2018~2023年の総合ランクの推移

(図http://rank.maeda1.jp/5-G01.pdf 参照)

 ここでは中東4カ国(UAE、エジプト、サウジアラビア及びイラン)に日本、中国を加えた6カ国の過去5回の世界ランクの推移を検証する。

 

 日本は2022年の116位をピークにして120位前後を上下しており今回は118位であった。また中国の過去5回の順位の推移は、106位(‘20年)→107位(‘21年)→102位(‘22年)→107位(‘23年)→106位と横ばい状態である。

 

 これに対してUAE及びサウジアラビアは世界順位が大幅に改善されている。特にUAEは2020年の120位から‘21年には72位と順位を大きく上げており、その後も70位前後にとどまっている。サウジアラビアも2022年に前年の147位から127位へ20ランクアップしその後も改善の兆しが見られる。エジプトは2021年、2022年は129位までアップしたが、その前後は130位台半ばに終始している。一方、イランは2021年の150位を底に現在は140位台前半にランクされている。

 

追記:各分野のスコアとその配分に若干の問題?

 WEFの男女格差指数では日本のランクが極めて低く、特に先進国の中で最低のランクとスコアであり、しかも明らかな改善の兆しが見えないことはかなりショッキングな内容と言えよう。日本の場合、諸外国に比べて政治分野の男女格差が際立って大きく、また経済分野でも格差の是正が遅れていることはWEFが指摘するまでもなく明らかであり、その点ではWEFの評価に異論を唱えるつもりはない。しかしながら4分野のスコア配分あるいは各分野において一部開発途上の国々がかなり高いスコアを出していることには若干問題があるように見受けられる。

 

 まず各分野のスコアの偏差値がかなり片寄っていることが指摘できる。例えば政治分野は0.972(アイスランド)が最も高く、0.006(バヌアツ)が最も低い。その格差は0.966である。経済分野も政治分野同様スコアの格差が大きい。これに対して健康分野では最高スコア0.980(ブラジル他26カ国)に対し最低スコアは0.938(アゼルバイジャン)であり、格差は0.042に過ぎず、教育分野では格差指数最大の1.000が33カ国にのぼっている。総合順位は各項目を加重平均したものであるため偏差値の大きい政治及び経済分野が全体のスコアと順位に影響を及ぼしているのである。

 

 各分野の国別スコアも問題含みと言えそうである。例えば健康分野の最高スコア0.980を与えられた26カ国の中にはナミビア(因みに同国は総合世界8位)、ボツアナなどアフリカ大陸の国々、あるいはブラジル、ドミニカ、エルサルバドルなどの中南米諸国が入っている。また経済分野では北欧諸国に並んでアフリカのリベリア、ボツアナ、エスワティニなど多くの開発途上国がトップグループに入っており、これらの国の中には独裁政権も混じっている。

 

 スコア算定のデータは国際機関が発表したものも少なくないが、原始データはいずれも各国政府が提供したものである。各国政府が意図的に脚色したデータを提出してもそれを検証することは困難であり、意図的な改ざんは独裁政権では極めてありがちである点を指摘しておきたい。(以上はあくまでも筆者個人の私見であることをお断りしておく。)

 

以上

 

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政治と経済で決まる世界の男女格差-「男女格差指数」(4)

2024-06-27 | 世界ランクシリーズ

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0605WrldRank5.pdf

 

(世界ランクシリーズ その5 2024年版)

 

4.要素別比較(レーダーチャート)

 ここでは8カ国及び世界平均を取り上げ、これらを3グループにわけてそれぞれの総合スコア、経済、教育、健康及び政治の4分野別スコアをレーダーチャートで表してみる。レーダーチャートは最も外側がスコア1.000(つまり男女格差が無い若しくは女性が男性を上回る)を示し最も内側はスコア0.000(即ち男女格差が無限大)である。グラフの実線が外側に広がるほど男女格差が少ないことを示し、また真円に近いほど4分野の男女格差が平均化していることを示している。

 

(際立って高いアイスランドの政治分野のスコア!)

(1)チャート1(アイスランド、米国、世界平均)

(図http://rank.maeda1.jp/5-G02.pdf 参照)

 総合スコアではアイスランドは0.935であり、米国は0.747、世界平均は0.685である。分野別に見ると政治分野はアイスランド0.972、米国0.225、世界平均0.251であり、アイスランドのスコアが際立って高い。経済分野はアイスランド(0.815)と米国(0.765)の格差は小さく、世界平均のスコアは0.605にとどまっている。教育及び健康分野は3者ともスコアが高く有意な差は見られない。

 

(政治分野は印中日、経済分野は中日印の序列!)

(2)チャート2(日本、中国、インド)

(図http://rank.maeda1.jp/5-G03.pdf 参照)

 総合スコアは中国(0.684)、日本(0.663)、インド(0.641)であり、3カ国に大きな差異はない。分野別に見ると政治分野ではインドが0.251と最も高く、次いで中国(0.123)、日本は0.118でありインドとの格差は大きい。経済分野の格差は中国(0.737)、日本(0.568)、インド(0.398)で政治分野以上に格差が大きく、しかも3カ国の中で政治分野トップのインドが経済分野では3カ国中最も低いことが特徴である。教育分野、健康分野はいずれも日本が最も高いが、3カ国のスコアに大きな差は見られない。

 

(教育分野以外でトルコ、エジプトに劣るイラン!)

(3)チャート3(トルコ、エジプト、イラン)

(図http://rank.maeda1.jp/5-G04.pdf 参照)

 中東の三大国トルコ、エジプト及びイランはイスラーム国家と言う共通点を持つが、人種的にはトルコ人、アラブ人、ペルシャ人の違いがあり、また政治・経済体制も異なる。しかし男女格差で見るといずれも世界ランクはトルコ127位、エジプト135位、イラン143位と世界の最低レベルにとどまっている。

 

3カ国を分野別に比較すると、経済分野の男女格差スコアはトルコ(0.507)、エジプト(0.406)、イラン(0.343)でイランのスコアがトルコ及びエジプトを下回っている。政治分野についても同様の傾向が見られ、エジプト(0.176)、トルコ(0.118)に対してイランは(0.031)であり、イランの男女格差が非常に大きい。教育及び健康分野のスコアはいずれも0.96から0.98の範囲である。ただし上記に述べた通りこの2分野は世界平均が0.949及び0.960であるため、3カ国の世界順位は100位前後にとどまっている。

 

(続く)

 

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政治と経済で決まる世界の男女格差-「男女格差指数」(3)

2024-06-26 | 世界ランクシリーズ

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0605WrldRank5.pdf

 

(世界ランクシリーズ その5 2024年版)

 

(格差が大きい政治分野、小さい教育分野!)

3.分野別のランクとスコア

(表http://rank.maeda1.jp/5-T02.pdf 参照)

 男女格差指数は(1)経済参画分野、(2)教育分野、(3)健康・寿命分野及び(4)政治参画分野の4つの分野について公表されたデータに基づいて詳細な比較検討が行われている(本稿第1章参照)。本章では第2章で取り上げた国々、すなわち世界の上位5か国及び日本を含む主要各国並びに中東主要国について4分野のスコアと世界ランクを概観する。

 

(1)経済参画分野の男女格差

 総合世界1位のアイスランドはこの分野では世界7位(スコア0.815)である。因みにこの分野のトップはリベリア(同0.874)であり、その他上位陣にはボツワナ、バルバドス、エスワティニなどアフリカやカリブ海の小国が入っている。米国は22位(同0.765)、英国は58位であるが、日中韓印のアジア4か国は、中国の39位(同0.737)が最も高く、韓国112位、日本120位、インド142位である。

 

(2)教育分野の男女格差

 WEFが各国の統計値をもとに判断した教育分野の男女格差は世界的に極めて小さい。即ち米国、英国、イスラエルのスコアは1.000であり男女格差が無い。格差指数は1.000が上限であり、国によっては1を超える(即ち女性と男性の逆格差)ケースもあり、教育格差指数1.000は146か国中28か国に達する。また146カ国中の半数を超える88カ国の格差指数が0.990以上である。

 

 日本のスコアは0.993でありトップ(1.000)との格差は0.007にすぎないが、世界ランクは68位である。中国はスコア0.934で世界127位である。中東諸国ではイスラエルがスコア1.000で世界1位グループに入っている。その他UAEは世界52位(スコア0.996)、サウジアラビア62位(同0.994)であり、エジプト、イランは世界100位以下である。但し世界110位のエジプトのスコアは0.966でUAEと比べスコアの格差はさほど大きくない。

 

(3)健康・寿命分野の男女格差

 世界1位のスコアは0.980で、ブラジル、ハンガリー、スリランカなど26カ国が並んでいる。スコアがわずか0.007しか違わない日本(スコア0.973)は世界順位が56位とされている。中国(スコア0.940)はこの分野最下位のアゼルバイジャン(同0.938)に次ぐ低いランクにとどまっている。トップと世界最下位のスコアの差は0.046で、この格差の中に146か国がひしめいており、わずかなスコアの差がランク上の大きな差となって表れている。

 

 留意すべきは健康・寿命格差は各国の医療福祉水準の良し悪しを比較したものではなく、あくまでも当該国において医療福祉にアクセスする場合の男女の格差を示したものである。先進国、発展途上国を問わず一般に女性の平均寿命が男性よりも長いことは事実であり、指数化して比較すると一見男女格差が無いように見える点に注意すべきであろう。

 

(4)政治参画分野の男女格差

 この分野の世界1位はアイスランドで同国のスコアは0.972である。これに続く世界2位はノルウェーであるが、同国のスコアは0.746でありアイスランドと大きな開きがある。3位、4位はそれぞれフィンランド、ニュージーランドであり総合順位とほぼ同じである。

 

日本はスコア0.118、世界順位113位であり、スコア0.251の米国、インド (共に世界63位)にはるかに及ばず、韓国(72位)、中国(111位)とも大きな差がある。中東諸国と比べても日本はUAE(39位)、エジプト(89位)と大きな差があり、トルコと同じ順位である。

 

政治の男女格差は女性国会議員数、閣僚数、或いは過去50年間の女性元首(首相等)の在任期間でランク付けされているため全体的に各国ともスコアが低く、また同じ先進国でもヨーロッパに比べ日米のランクが低い結果となっている。

 

(続く)

 

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政治と経済で決まる世界の男女格差-「男女格差指数」(2)

2024-06-25 | 世界ランクシリーズ

(世界ランクシリーズ その5 2024年版)

 

(北欧諸国がトップ独占、前年より少しアップした日本!)

2.2024年の男女格差指数世界ランク

(表http://rank.maeda1.jp/5-T01.pdf 参照)

 2024年の世界男女格差ランクのトップ(即ち男女の格差が最も少ない国)は昨年に引き続きアイスランドである。同国の格差指数は0.935で昨年の0.912より向上している。これに続く2、3位はフィンランドとノルウェーが同スコア0.875で並んでいる。ニュージーランドが4位(同0.835)、5位はスウェーデン(同0.816)がランクされている。上位5か国の顔触れは変わらず、うち4カ国は北欧諸国である。

 

 日本を含む主要な国々の世界ランクを見ると、英国は14位(スコア0.789)、米国は43位(同0.747)である。一方アジアの主要な国のランクは韓国の94位(同0.696)をはじめ中国106位(同0.684)、日本118位(同0.663)である。日中韓3か国はいずれも去年より順位を上げているが、中でも韓国は昨年の105位から94位と大幅にアップし唯一100位以内に入っている。インドは129位(同0.641)であり、日本は中国とインドの中間に位置している。

 

 中東の主要国では、UAEの世界74位(スコア0.713)がトップであり、イスラエルが91位(同0.699)でこれに続いている。両国はいずれも前年より順位、スコア共に悪化している。特にイスラエルは順位を83位から91位に下げている。その他の中東諸国はいずれも世界ランク100位以下であり、サウジアラビア126位、トルコ127位、エジプト135位が130位前後で並んでいる。イランは146か国中のほぼ最低ランクの143位(スコア0.576)にとどまっている。世界最下位の146位はスーダン(スコア0.568)であり中東北アフリカ諸国は男女格差が極めて大きい。

 

(続く)

 

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政治と経済で決まる世界の男女格差-「男女格差指数」(1)

2024-06-24 | 世界ランクシリーズ

(世界ランクシリーズ その5 2024年版)

 

国連などの国際機関あるいは世界の著名な研究機関により各国の経済・社会に関するランク付け調査が行われている。これらの調査について日米中など世界の主要国及びトルコ、エジプト、イランなど中東の主要国のランクを取り上げて解説するのが「世界ランクシリーズ」である。

 

第5回のランキングは世界経済フォーラム(WEF)が行った「世界男女格差報告2024 (The Global Gender Gap Report 2024)」をとりあげて比較しました。

 

*WEFのホームページ:

https://www.weforum.org/reports/global-gender-gap-report-2024

 

1.「世界男女格差報告2024」について

 「世界男女格差報告2024(The Global Gender Gap Report 2024)」(以下「2024年版報告書」)を発表した「世界経済フォーラム」(World Economic Forum, WEF)は、スイスのジュネーブに本部を置く非営利団体であり、毎冬行われる「ダボス会議」の主催者としてよく知られている。

 

 「2024年版報告書」は世界146カ国を対象に経済、教育、健康、政治の4つの分野について、世界或いは各国の公的機関が公表する男女別のデータに基づき、それぞれの分野の男女間の格差を指数化し順位付けを行ったものである。

 

(1)比較対象される分野とその内容

 対象とされるのは以下の4つの分野であり、各分野にはそれぞれ二つ乃至五つの比較項目がある。

I 経済参画分野:経済活動への参加度及び参画の機会(Opportunity)に関する男女格差
   比較項目:(1)労働参加比率、(2)同一労働賃金格差、(3)平均所得格差、
        (4)幹部職比率、(5)専門・技術職比率

II 教育分野:教育の機会に関する男女格差
   比較項目:(1)識字率、(2)初等教育就学率、(3)中等教育就学率、

(4)高等教育就学率

III健康・寿命分野:健康と寿命に関する男女格差
   比較項目:(1)新生児男女比率、(2)平均寿命

IV政治参画分野:政治参画の度合に関する男女格差
   比較項目:(1)女性議員比率、(2)女性閣僚比率、
        (3)過去50年間の女性元首(首相等)在任期間

 

(2)指数化の方法と順位付け

146カ国について上記四つの分野の各比較項目に関する男女それぞれの数値或いは比率のデータを抽出し、この男女のデータについて男性を1とした場合の女性の指数を算定する。この指数の意味は、指数1の場合男女が完全に平等であることを意味しており、指数が低くなればなるほど男女の格差が大きいことを示している。なお項目によっては女性が男性を上回り、単純計算した指数は1を超える場合があるが、このレポートでは格差指数1が最大値とされている。

 

各比較項目の指数を加重平均したものがその分野の指数となる。更に4つの分野の指数を加重平均したものがその国の格差指数として146カ国の指数を上位から順に総合順位を付けたものである。

 

(続く)

 

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

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