石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2022年版解説シリーズ12(消費篇4)

2022-07-26 | BP統計

3.世界の石油・天然ガスの消費量

(3-2) 米国、中国、日本、インド4カ国の2010~2021年消費量の推移

(首位交代が近い米国と中国!)

(3-2-1)石油 (図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G03a.pdf参照)

 2021年の石油消費量が世界1位から3位までの米国、中国、インド及び世界6位の日本について2010年から2021年までの消費量の推移を追う。

 

 2010年の米国の消費量は1,830万B/Dであり、中国930万B/D、日本440万B/D及びインド330万B/Dであった。米国と中国はほぼ2倍の格差があった。米国は2011年、12年と2年連続で1,800万B/Dを割ったが、2013年以降再び増加し2019年には1,940万B/Dに達した。2020年はコロナ禍のため1,720万B/D強に急減したが、2021年には1,870万B/Dまで回復している。

 

 これに対し中国の消費量は一本調子で増加、2012年に1千万B/Dを突破、その後も増加の勢いは止まらず、2020年のコロナ禍でも消費量が落ちることは無く、2021年は1,540万B/Dであった。首位米国との格差は20%に縮まる一方、インドの3倍、日本の4倍に達している。

 

 日本の消費量は長期減少傾向にあり、2010年に米国、中国に次ぐ世界3位であったが、2015年にはインドを下回り、その後サウジアラビア及びロシアにも追い抜かれ、昨年の消費量は世界6位の334万B/Dであった。

 

(アジアの天然ガス消費をけん引する中国!)

(3-2-2)天然ガス  (図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G03b.pdf参照)

 米国(2021年の天然ガス消費量世界1位)、中国(同3位)、日本(同7位)及びインド(同14位)の2010年から2021年までの消費量の推移を見ると、2010年は米国が6,480億立方メートル(㎥)、次いで中国が1, 090億㎥、日本1,000億㎥、インド590億㎥であった。 米国とその他3カ国の格差は6倍以上であった。その後中国の消費量は急ピッチで増加、2016年には2千億㎥、2019年には3千億㎥を突破、2021年の消費量は3,790億㎥を記録し、米国との格差は2倍に縮まっている。

 

 一方この間日本の消費量は2014年の1,250億㎥を天井にその後は年々減少し、2021年には1,040億㎥となり中国の4分の1に縮小している。インドは2010年の消費量590億㎥に対し2021年は620億㎥であり過去10年間にほとんど増加していない。

 

(まだまだ格差が大きい1位米国と2位中国!)

(3-2-3)石油+天然ガス(図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G03c.pdf参照)

 石油と天然ガスを合計した消費量を米国、中国、インド及び日本の4カ国で比較すると、まず2010年の消費量は米国が2,950万B/D(石油換算、以下同じ)であり、中国も1千万B/Dを超えており(1,120万B/D)、日本とインドは610万B/D及び430万B/Dであった。米国は2019年に3,410万B/Dまで伸びたが、2021年は3,290万B/Dに減少している。

 

 中国は過去10年間一度も減少することなく2021年の消費量は2010年の2倍、2,200万B/Dに増加している。日本は石油、天然ガス共に過去10年間消費が減少しており2021年の消費量は510万B/Dで2010年を100万B/D下回っている。インドは天然ガス消費は停滞したが、石油消費は増加している。この結果合計生産量では2018年に日本を超えて現在に至っている。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                              E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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BPエネルギー統計2022年版解説シリーズ11(消費篇3)

2022-07-25 | BP統計

3.世界の石油・天然ガスの消費量

(2) 1970~2021年の消費量の推移(続き)

(1970年以降の半世紀で消費量4倍に急成長!)

(3-2-2)天然ガス  (図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G02b.pdf参照)

 1970年に9,600億㎥であった天然ガスの消費量はその後1992年に2兆㎥、2008年には3兆㎥の大台を超え、2021年の消費量は4兆㎥を突破している。1970年から2021年までの間で消費量が前年度を下回ったのは2009年と2020年の2回のみであり、半世紀の増加率は4.2倍に達している。

 

石油の場合は第二次オイルショック後の1980年から急激に消費量が減った例に見られるように、価格が高騰すると需要が減退すると言う市場商品としての現象が見られる。天然ガスの場合は輸送方式がパイプラインであれば生産国と消費国が直結しており、またLNGの場合もこれまでのところ長期契約の直売方式が主流である。そして天然ガスは一旦流通網が整備されると長期かつ安定的に需要が伸びる傾向がある。天然ガス消費量が一貫して増加しているのはこのような天然ガス市場の特性によるものと考えられる。

 

 地域別の消費量の推移を見ると1970年の世界の天然ガス消費量の64%は北米、20%はロシア・中央アジア、11%が欧州と、三地域だけで世界全体の95%を占めており、アジア・大洋州などその他の地域は全て合わせてもわずか5%にすぎなかった。

 

その後、北米の消費量の伸びが小幅にとどまったのに対して、欧州及びロシア・中央アジア地域は1980年代から90年代にかけて急速に消費が拡大、1990年の世界シェアは北米が31%に半減したのに対して、ロシア・中央アジアと欧州の合計シェアは51%に達している。しかし1990年以降はこれら3地域に替わってアジア・大洋州の市場が大きく拡大し、世界に占めるシェアは1970年の1%から2000年には12%に増え、消費量は3千億㎥に達している。アジア・大洋州地域の消費量はその後も大きく増加し、2021年には1970年の65倍、9,200億㎥に激増し、シェアも北米の26%に次いで23%を占めるようになった。

 

北米、ロシア・中央アジア地域及び欧州とアジア・大洋州地域の違いは先に述べた輸送網の拡充が消費の拡大をもたらすことの証しであると言えよう。即ち北米では1970年以前に既に主要なパイプラインが完成していたのに対し、欧州・ユーラシアでは旺盛な需要に対応して1970年以降ロシア方面から西ヨーロッパ向けのパイプラインの能力が増強されている。この場合、パイプラインの増設が西ヨーロッパの更なる需要増加を招く一方、ロシア及び中央アジア諸国などの天然ガス生産国では新たなガス田の開発が促進され、相互に呼応して地域全体の消費を押し上げる相乗効果があったと考えられる。アジア・大洋州の場合は、日本が先陣を切ったLNGの利用が、韓国、台湾などに普及し、また中国、インド等新たなLNG輸入国が生まれたことにより地域における天然ガスの消費が近年急速に拡大しているのである。

 

(天然ガスの比率が27%から43%に!)

(3-2-3)石油+天然ガス(図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G02c.pdf参照)

 1970年から2021年までの石油と天然ガスの合計消費量の推移を追ってみると、1970年の石油と天然ガスの消費量は石油が4,540万B/D、天然ガスは9,620億㎥(石油換算1,660万B/D)であった。合計すると石油換算で6,200万B/Dとなり、両者の比率は石油73%、天然ガス27%で石油の消費量は天然ガスの2.7倍であった。

 

 その後、半世紀の間天然ガスの消費量はほぼ右肩上がりに増加しており、2021年の合計消費量は石油換算で1億6,400万B/D(内訳:石油9,400万B/D、天然ガス4兆㎥)であり1970年の2.6倍に達している。石油と天然ガスそれぞれについて見ると、石油は2.1倍、天然ガスは4.2倍と天然ガスの伸び率は石油の2倍であった。この結果、2021年の消費量に占める石油と天然ガスの比率は57%対43%であり、天然ガスの比率は半世紀の間に16ポイント上昇している。地球環境問題の高まりにより石油に比べてCO2発生量が少ない天然ガスの利用が進んでいることがわかる。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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BPエネルギー統計2022年版解説シリーズ10(消費篇2)

2022-07-22 | BP統計

3.世界の石油・天然ガスの消費量

(2) 1970~2021年の消費量の推移

(50年間でアジア・大洋州のシェアが15%から38%に急拡大!)

(3-2-1)石油 (図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-G02a.pdf参照)

 1970年の全世界の石油消費量は4,540万B/Dであったが、5年後の1975年に5千万B/D台に、そして1980年には6千万B/D台と5年ごとに大台を超える急増ぶりであった。その後1980年代は横ばい状態であったが、1990年以降再び増加に勢いがつき、1995年には7千万B/Dを超えた。そして2000年代前半には8千万B/D、2014年に9千万B/Dを突破して2019年には過去最高の1億B/D目前に達した。しかし2020年はコロナ禍の影響で消費が急減、2021年は多少回復したものの9,410万B/Dにとどまった。

 

消費量を地域別にみると、1970年には北米及び欧州地域の消費量はそれぞれ1,660万B/D、1,330万B/Dであり、この2地域だけで世界の石油消費の3分の2近くを占めていた。同年のアジア・大洋州の世界シェアは15% (670万B/D)であり、その他のロシア・中央アジア、中東、中南米、アフリカは4地域合わせても19%に過ぎなかった。その後はアジア・大洋州の消費の伸びが著しく、1980年には1千万B/Dを突破、1990年代前半には欧州を追い抜き、2000年の消費量は2,120万B/Dに達した。さらに2006年には北米をも上回る世界最大の石油消費地域となり、2021年の消費量は世界全体の38%を占める3,580万B/Dとなっている。

 

欧州地域は1970年に1,330万B/Dであった消費量が1980年には1,580万B/Dまで増加している。しかしその後は減少傾向をたどり1990年から2010年までの20年間はほぼ1,600万B/D前後で横ばい状態となった。2010年代に入ると減少傾向を示し、2021年の石油の消費量は1,350万B/Dで世界全体に占める割合は1970年の29%から14%に半減している。

 

北米地域については1970年の1,660万B/Dから1980年には2千万B/Dまで伸び、1980年代は需要が停滞した後1990年代に再び増勢を続け2005年には2,490万B/Dに達した。その後は減少を続け2021年は2,230万B/Dとなっている。これはシェールガスの開発生産が進み、エネルギーの消費構造が石油から天然ガスに移ったためと考えられる。 (天然ガスの生産・消費については次項参照)。

 

(続く)

 

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BPエネルギー統計2022年版解説シリーズ9(消費篇1)

2022-07-20 | BP統計

3.世界の石油・天然ガスの消費量

(3-1) 2021年の国別消費量

(石油の二大爆食国、米国と中国!)

(3-1-1)石油 (表http://bpdatabase.maeda1.jp/3-T01a.pdf参照)

 2021年の世界の石油消費量は9,410万B/Dであり、前年の8,870万B/Dを6%上回った。国別で石油消費量が最も多いのは米国の1,870万B/Dであり、世界全体の20%を占めている。これに次ぐのが中国の1,540万B/D、シェア16%である。消費量が1千万B/Dを超えるのはこの2カ国だけであり、3位インド(490万B/D)と比べると米国は4倍、中国は3倍の消費量を誇っている。米国と中国は石油の爆食国であると言えよう。

 

 世界4位はサウジアラビア(360万B/D)、5位ロシア(340万B/D)、6位日本(330万B/D)である。7位から10位までの各国の順位と消費量は以下のとおりである。

 7位韓国(281万B/D)、8位ブラジル(225万B/D)、9位カナダ(223万B/D)、10位ドイツ(205万B/D)。

 

(世界の天然ガスの2割を消費する米国!)

(3-1-2)天然ガス  (表http://bpdatabase.maeda1.jp/3-T01b.pdf参照)

 2021年の世界の天然ガス生産量は年産4兆立法メートル(㎥)であり前年(2020年)より5%多かった。

 

 天然ガスの最大の消費国は米国であり、消費量は8,300億㎥、世界全体の20%を占める。同国は石油消費量も世界1位でありエネルギー消費大国である。2位はロシアの4,700億㎥、3位は中国の3,800億㎥である。これら3か国の合計世界シェアは4割を超える。4位はイラン、5位はカナダであり、6位サウジアラビアに続いて7位を日本が占めている。以上7カ国が消費量1千万㎥を超えている。その他10位までの国はドイツ、メキシコ及び英国である。

 

 これら上位10カ国の顔触れを上記の石油と比較すると、米国、ロシア、中国、カナダ、サウジアラビア、日本、ドイツの7カ国は両方に顔を出しているが、イラン、メキシコ及び英国の3か国は石油消費上位10カ国に入っていない(同様に石油消費上位10カ国のうちインド、韓国及びブラジルは天然ガス消費上位10カ国に入っていない)。

 

(2021年の石油・天然ガス合計消費量は石油換算で1日当たり1.64億バレル!)

(3-1-3)石油+天然ガス(表http://bpdatabase.maeda1.jp/3-T01c.pdf参照)

 2021年の天然ガス消費量生産量4兆㎥を原油に換算すると6,960万B/Dとなり、石油と合わせた消費量は1億6,400万B/Dであった。石油と天然ガスの比率は57対43で石油の方が多い。

 

 上述のとおり米国は石油及び天然ガスそれぞれの消費量が世界一であり、従って合計消費量も世界一である。同国の天然ガス消費量8,300億㎥を原油に換算すると1,420万B/Dであり、米国の石油・天然ガスの合計消費量は3,290万B/Dとなり、全世界に占めるシェアは20%に達する。米国に次ぐのが中国である。同国は石油消費量では世界2位、天然ガス消費量は世界3位であり、合計消費量は原油換算2,200万B/Dである。第3位はロシアで合計消費量は1,160万B/Dである。因みに石油と天然ガスの比率は米国の場合石油57%、天然ガス43%であるのに対して中国は石油70%、天然ガス30%、ロシアは石油29%、天然ガス71%である。米国は石油が天然ガスを少し上っているのに対して、中国は石油が全体の7割を占め、ロシアは逆に天然ガスが消費量の7割を占め3か国の消費形態は対照的である。

 

 4位以下の国と石油・天然ガス合計生産量(原油換算)は以下のとおりである。

 4位インド(595万B/D)、5位イラン(585万B/D)、6位サウジアラビア(562万B/D)、7位日本(513万B/D)、8位カナダ(428万B/D)、9位韓国(389万B/D)、10位ドイツ(361万B/D)

 

(続く)

 

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BPエネルギー統計2022年版解説シリーズ8(生産篇4)

2022-07-18 | BP統計

2.世界の石油・天然ガスの生産量(続き)

(2-3) 主要国の2010~2021年の生産量推移(続き)

(2011年以降トップを独走する米国!)

(2-3-2)天然ガス  (図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-G03b.pdf参照)

 2010年から2021年までの天然ガス生産量の推移について、ここでは2021年世界1位、2位の米国、ロシア及び3位イラン、5位カタール、7位オーストラリアの5カ国の動きを見る。

 

 2010年のロシアと米国の天然ガス生産量はそれぞれ5,980億㎥及び5,750億㎥でありロシアが米国をわずかに上回っていた。しかし米国では前項に触れたシェール石油と同様商業ベースのシェールガス開発が軌道に乗り、生産量が急増した。2011年に米国がロシアを上回るとロシアの生産が停滞したこともあり、2015年には米国の生産量7,400億㎥に対し、ロシアの生産量は5,800億㎥にとどまった。格差はその後も年々広がり2021年は米国の生産量9,300億㎥に対しロシアは7,000億㎥であり、その差は1.3倍強に達している。

 

 カタールとイランの生産量は2015年までほとんど同じであった。LNG輸出中心のカタールは2010年までにLNG年産7,700万トン体制を整え、長期契約により世界のLNG市場をリードしているが、供給過剰を回避するため新規設備投資を凍結する「モラトリアム体制」を取った。このため2010年代を通じて生産量はほとんど増えていない。これに対して1億人近い人口を抱えるイランは国内のエネルギー消費を賄うため天然ガスの生産を高めた。この結果2021年の生産量はイランの2,600億㎥に対しカタールは1,800億㎥となり、2010年に比べるとイランは1.8倍増加したのに対し、カタールは1.4倍の増加にとどまっている。

 

 カタールの生産量が停滞している間に意欲的な増産に取り組んだのがオーストラリアである。同国の2010年の生産量は500億㎥でありカタールの2分の1以下であったが、2021年には1,500億㎥に拡大しカタールに迫っている。

(注、最近、カタールは「設備増強モラトリアム宣言」を撤回し、年産1億2千万トンを目指して設備の増強に着手、LNG輸出市場での主導権を回復しようとしている。)

 

(急伸する米国、停滞するロシアとサウジアラビア!)

(2-3-3)石油+天然ガス(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-G03c.pdf参照)

 石油と天然ガスの合計生産量について上位3か国(米国、ロシア及びサウジアラビア)と5位イラン、6位中国の過去11年間の推移を検証する。

 

 2010年時点では石油・天然ガス合計生産量はロシアが世界で最も多く、石油換算で2,070万B/Dであった。米国およびサウジアラビアは各々1,750万B/D及び1,130万B/Dでありいずれもロシアを大きく下回っていた。しかしロシアとサウジアラビアはその後増加が鈍り、一方米国はシェールオイル及びガスの本格開発により生産量が急増した。この結果、2021年には米国の生産量は3,300万B/Dとなり2010年の1.9倍に達し、一方ロシア及びサウジアラビアは2,300万B/D、1,300万B/Dであり、ロシアは米国の7割、サウジアラビアは4割にとどまっている。

 

 イラン及び中国はいずれも過去10年間で1.2~1.3倍程度の増加である。イランは石油・天然ガス共に十分な増産余力を持ちながら米国の経済制裁のため低水準の生産を余儀なくされている。高い経済成長を誇る中国はエネルギー需要が旺盛であるが国内資源の開発が追い付かず生産増強に四苦八苦しているのが現状である。

 

(続く)

 

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BPエネルギー統計2021年版解説シリーズ7(生産篇3)

2022-07-16 | BP統計

2.世界の石油・天然ガスの生産量(続き)

(3) 主要国の2010~2021年の生産量の推移

(シェールオイル開発で米国が驚異的な生産増!)

(2-3-1)石油 (図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-G03a.pdf参照)

 ここでは石油生産量が世界1~3位の米国、サウジアラビア、ロシアに加え、米国の経済制裁のため石油輸出に苦しみ2020年の生産量が世界8位のイラン、及び近年深海油田の開発で生産量が増加傾向にある世界9位のブラジルの5カ国について2010年以降の生産量の推移を検証する。

 

 2010年の石油生産量はロシアが唯一1,000万B/Dを超え(1,040万B/D)、世界2位がサウジアラビアの990万B/D、米国はこれら2カ国より200万B/D以上少ない760万B/Dにとどまっている。一方イランは440万B/D、ブラジルはイランの半分の210万B/Dであった。

 

 2011年にはサウジアラビアが1,100万B/Dを生産してロシアを追い抜き世界最大の石油生産国となった。同国はその後も2019年まで1,200万B/D前後の高い生産レベルを維持したものの、2021年は世界需要の減退の影響を受け1,100万B/Dに落ち込んだ。ロシアは2016年にはサウジアラビアを100万B/D以上下回っていたが、その後両国の差は縮まり2021年はサウジアラビアと同じ生産量となっている。

 

 このような中で生産量を大幅にアップしたのがシェールオイルの生産が本格化した米国である。同国の生産量は2011年から急激に増加し、2013年には1,000万B/Dを突破、2014年にはサウジアラビア、ロシアを追い抜いて世界一に躍り出た。その後も増産の勢いは止まらず、2019年の生産量は1,710万B/Dを記録し、これは2010年の2.3倍である。2021年の生産量は若干減退し1,660万B/Dにとどまったが、サウジアラビア及びロシアとの差は560万B/Dに達する。

 

 イランは2012年から2015年まで400万B/Dを下回るレベルで推移した後、2017年には490万B/Dまで回復したが、2020年には大きく減退し過去10年間では最も低い生産量となった。これは米国の経済制裁とコロナ禍の影響が重なったためである。2021年はコロナ禍が落ち着き石油生産量は362万B/Dに回復したが、未だ低いレベルにとどまっている。

 

 ブラジルは深海油田の開発が軌道に乗り、2013年以降生産量が順調に増加している。即ち2013年に210万B/Dであった同国の石油生産量は、2015年に250万B/D、2017年に270万B/Dとなり、2020年は他の産油国の生産が減少する中で唯一前年を上回り300万B/Dの大台を突破した。

 

(続く)

 

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BPエネルギー統計2021年版解説シリーズ6(生産篇2)

2022-07-14 | BP統計

2.世界の石油・天然ガスの生産量(続き)

(2) 1970~2021年の生産量の推移

(1億B/D目前で足踏みする石油生産量!)

(2-2-1)石油 (図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-G02a.pdf参照)

 1970年に4,800万B/Dであった石油の生産量は1970年代前半に5,000万B/D台、さらに1980年には6,300万B/Dに増加した。1985年には一旦5,700万B/Dまで減少したが、その後は再び成長軌道に転じ、2015年には9千万B/Dを突破、2019年には過去最高の9,500万B/D弱に達した。2020-21年は新型コロナウィルス禍のため経済活動が低迷、石油需要も大幅に減退したため、2021年の生産量は8,990万B/Dにとどまった。

 

 この間の地域別生産量の推移を見ると、1970年は中東が全世界の29%を占め、北米がこれに続く28%のシェアであった。その他の地域ではロシア・中央アジアが15%、アフリカ13%、中南米10%であり、アジア大洋州と欧州は5%以下であった。中東地域のシェアは1980年代半ばに一時北米あるいはロシア・中央アジアを下回ったが1990年半ば以降は再び30%のシェアを確保し、他の地域を抑えている。これに対して北米地域は1980年代半ばに世界最大の石油生産地域になったが、その後2000年前後はシェア20%を割る状態であった。しかし2010年以降、シェールオイルの生産が軌道に乗り2010年の1,390万B/Dが2021年には1,000万B/D増加して2,390万B/Dに達し、世界に占めるシェアも50年前に並ぶ27%に戻っている。

 

 全世界の生産量に占めるOPECのシェアを見ると、半世紀前の1970年のOPECシェアは47%を占めていたが、その後シェアは急落し1985年には27%に下がった。その後シェアは緩やかに回復し、2005年には42%になった。しかし2000年代後半以降再びシェアが漸減し、2021年のシェアは35%である。

 

(50年間で4倍になった天然ガス生産!)

(2-2-2)天然ガス  (図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-G02b.pdf参照)

 1970年の世界の天然ガス生産量は9,800億㎥であった。その後半世紀の間生産量は毎年大きく増加し、2021年には1970年の4倍、4兆400億㎥に達している。この間、前年比でマイナスになったのは1997年、2009年及び2020年の3回だけである。

 

 年間生産量が1兆㎥を超えたのは1971年であるが、その後は5~7%の成長を続け20年後の1992年に2兆㎥に達した。その後、増加のスピードは加速し、年産3兆㎥を達成したのは16年後の2008年であった。そして2021年には4兆㎥を超えている。

 

 生産量を地域別に見ると、1970年は北米が全体の65%を占め、これに次ぐロシア・中央アジアの19%、欧州の11%を大きく引き離していた。しかしその後20年の間に北米のシェアは31%に急落し、ロシア・中央アジアがシェア37%でトップとなった。北米、ロシア・中央アジア及び欧州のシェアはその後も低下し、代わって中東及びアジア・大洋州のシェアが大きく伸びた結果、2021年の地域別シェアは北米28%、ロシア・中央アジア22%、中東18%、アジア大洋州17%となっている。

 

(天然ガスの比率が26%から44%に!)

(2-2-3)石油+天然ガス(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-G02c.pdf参照)

 石油と天然ガスの1970年の合計生産量は石油換算で6,500万B/D、内訳は石油4,800万B/D、天然ガス1,700万B/Dであり、石油が天然ガスの3倍であった。その後、合計生産量は1985年に一時的に減少した以外は毎年増加を続け、2021年には石油9,000万B/D、天然ガス7,000万B/D、合計1億6,000万B/Dに達している。約50年間の間に2.5倍に増加したことになる。このうち天然ガスの伸びは4.1倍で石油のそれ(1.9倍)を大きく上回っている。石油と天然ガスの比率で見ると、1970年は石油74%、天然ガス26%であったが、2020年には石油56%、天然ガス44%と天然ガスの比率が大きく上昇している。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

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BPエネルギー統計2022年版解説シリーズ5(生産篇1)

2022-07-13 | BP統計

2.世界の石油・天然ガスの生産量

(1) 2021年の国別生産量

(断トツ1位の米国、2位、3位で拮抗するサウジとロシア!)

(2-1-1)石油 (表http://bpdatabase.maeda1.jp/2-T01a.pdf参照)

 2021年の世界の石油生産量は8,990万B/Dであり、前年の8,850万B/Dを1.6%上回った。国別では米国が最も多く1,660万B/Dであり、これは全世界の生産量の19%を占め突出している。これに次ぐのがサウジアラビアの1,095万B/D、ロシア1,094万B/Dでほとんど差が無い。生産量が1千万B/Dを超えるのはこの3カ国だけであり、4位カナダ(540万B/D)の2倍以上である。3カ国の世界生産に占める割合は43%に達している。

 

 世界4位のカナダから10位クウェイトまでの各国の順位と生産量は以下のとおりである。

 4位カナダ(540万B/D)、5位イラク(410万B/D)、6位中国(400万B/D)、7位UAE(370万B/D)、8位イラン(360万B/D)、9位ブラジル(300万B/D)、10位クウェイト(270万B/D)。

 

(米国は天然ガスも生産量世界1位!)

(2-1-2)天然ガス  (表http://bpdatabase.maeda1.jp/2-T01b.pdf参照)

 2021年の世界の天然ガス生産量は年産4.0兆立法メートル(㎥)であった。前年(2020年)より4.5%多く、石油の伸び率(1.6%)を上回っている。化石燃料の中で炭酸ガス排出量が石油より少ない天然ガスに需要がシフトしていることがわかる。

 

 天然ガスの最大の生産国は米国であり、年産量は9,340億㎥、世界全体の23%を占める。同国は石油生産量も世界1位でありエネルギー生産大国である。2位はロシアの7,020億㎥で、米露2か国だけで世界シェアは4割に達する。3位はイラン、4位中国で5位はLNG輸出大国カタールである。

6位から10位までの生産国を列挙すると、カナダ、オーストラリア、サウジアラビア、ノルウェー及びアルジェリアの各国である。

 

 これら上位10カ国の顔触れを上記の石油と比較すると、米国、ロシア、イラン、中国、カナダ、サウジアラビアの6カ国は両方に顔を出しているが、カタール、オーストラリア、ノルウェー及びアルジェリアの4ア国は石油生産上位10カ国に入っていない(同様に石油生産上位10カ国のうちイラク、UAE、ブラジル及びクウェイトは天然ガス生産上位10カ国に入っていない)。これは各国に存在する油田あるいはガス田の地質構造上の違いによるもので、ごく大まかにいえばカタール、オーストラリアなどはガス単体のいわゆるドライガス田が多く、一方、UAE、クウェイトなどはガスと原油が一緒に生産されるウェットガス田であり、天然ガスは原油の生産水準に左右されるためである。

 

(米国一国で全世界の2割を生産!)

(2-1-3)石油+天然ガス(表http://bpdatabase.maeda1.jp/2-T01c.pdf参照)

 2021年の天然ガス生産量4兆㎥を原油に換算すると6,960万B/Dとなり、石油と天然ガスを合わせた生産量は1兆5,940万B/Dである。石油と天然ガスの比率は56対44で原油の方が多い。

 

 上述のとおり米国は石油・天然ガス単独の生産量が世界一であり、従って合計生産量も世界一である。天然ガスの生産量9,340億㎥を原油に換算すると1,610万B/Dであり、従って米国の石油・天然ガスの合計生産量は3,270万B/Dとなり、全世界に占めるシェアは21%に達する。米国に次ぐのがロシアである。同国は石油生産量ではサウジアラビアに次いで世界3位であるが、天然ガスは世界2位であり、合計生産量は原油換算2,300万B/Dである。サウジアラビアは石油生産では世界2位であるが、天然ガス生産は世界8位にとどまっている。しかし石油生産量が4位以下の国と大きな格差があるため合計生産量(1,300万B/D)は米露を大きく下回るものの全体では世界3位を維持している。

 

 4位以下の国と石油・天然ガス合計生産量(原油換算)は以下のとおりである。

 4位カナダ(840万B/D)、5位イラン(804万B/D)、6位中国(760万B/D)、7位カタール(480万B/D)、8位UAE(465万B/D)、9位イラク(426万B/D)、10位ノルウェー(400万B/D)

 

(続く)

 

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BPエネルギー統計2022年版解説シリーズ1(埋蔵量篇4)

2022-07-11 | BP統計

1.世界の石油・天然ガスの埋蔵量

(1-4) 2000~2020年の可採年数(R/P)の推移

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-G04.pdf参照)

(可採年数46年から55年の幅で揺れ動く!)

(1-4-1)石油 

 可採年数(以下R/P)とは埋蔵量を同じ年の生産量で割った数値で、現在の生産水準があと何年続けられるかを示している。2000年以降昨年末までの石油の可採年数(以下R/P)を見ると、2000年のR/Pは47.8年であった。2002年にR/Pは50.2年に伸びたが、2006年には45.9年に低下した。その後R/Pは再び伸び、2011年には過去20年ではピークの54.6年に達した。その後2015年から2019年までR/Pは50年台を続け、2020年末は53.6年であった。

 

 2020年にR/Pが前年比大きく上昇したのは、新型コロナ禍により石油の供給(需要)が急減したことが原因である。2019年以前を検証すると、埋蔵量については2000年代前半は停滞、2000年代後半に伸び、そして2010年代は再び埋蔵量が停滞している。一方、生産量は(次章参照)は毎年漸増しており、埋蔵量が増加する時期にR/P(可採年数)も増えることがわかる。

 

(2001年以降ほぼ一貫して減退する天然ガスの可採年数!)

(1-4-2)天然ガス 

 2000年末の天然ガスのR/Pは57.5年であり、2001年末には62.0年であった。天然ガスのR/Pはこの年をピークとして毎年低下し、2018年には50年を下回っている。2020年末のR/Pは2001年末のピークに比べると12年強短くなっている。埋蔵量は2001年の153兆立方メートル(㎥)から2020年には188兆㎥に増加したが、この間、生産量の増加が埋蔵量増加のペースを上回っている為、R/Pが年を追うごとに低下しているのである。

 

 21世紀に入りLNGの利用が世界的に普及した結果、天然ガスの消費量が急増、探鉱開発による埋蔵量の追加が生産の増加に追い付かなくなったことが可採年数の低下につながっている。

 

(2018年を境に石油と天然ガスの可採年数が逆転!)

(1-4-3)石油+天然ガス

 石油と天然ガスの合計埋蔵量を両者の合計生産量で割った石油・天然ガスの可採年数(R/P)の推移を見ると、2000年末のR/Pは51.3年であった。R/Pは2003年に54.3年まで上がった後、下降局面に入り2006年の可採年数(49.1年)を底に再び増加、2011年末には55.1年のピークを記録した。2020年末には2000年と同じ51.5年まで下がっている。

 

 石油・天然ガス合計のR/Pを上記の石油あるいは天然ガスそれぞれのR/Pと比較すると、2001年には天然ガスのR/Pが62.0年、石油のR/Pは47.9年であり、両者の間には14年強の開きがあった。しかしその後は天然ガスのR/Pが年々下がり、2013年にはほぼ同じ(石油53.5年、天然ガス53.9年)になった。石油と天然ガスのR/Pが同じレベルになったことは炭化水素エネルギーとしての市場での評価が同等になったことを意味している。

 

 この状態は2017年まで続いたが、2018年以降は従来とは逆に石油のR/Pが天然ガスのそれを上回り始めた。この逆転現象は注目すべきことであり、市場で天然ガスが石油よりも評価が高くなったことを示していると言えよう。

 

(続く)

 

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BPエネルギー統計2022年版解説シリーズ1(埋蔵量篇3)

2022-07-07 | BP統計

1.世界の石油・天然ガスの埋蔵量

(1-3) 2000~2020年の埋蔵量の推移

(2019年から2年連続で埋蔵量が減少!)

(1-3-1)石油 (図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-1-G02.pdf参照)

 2000年から2020年までの各年末の世界の石油埋蔵量推移を見る。2000年末の1.3兆バレルから2020年末は1.33倍の1.7兆バレルに増加している。この間の対前年増加率の平均は2.9%であった。

 

年を追って見ると、2000年代前半は緩やかな増加を示し1.3兆バレル台で推移した。2000年代後半に入り、埋蔵量は急激に増加し2007年に1.4兆バレルを超え、2010年には対前年比7%の大幅な増加により埋蔵量は1.6兆バレル台に達した。2010年代前半は再び増加率が鈍り、埋蔵量が1.7兆バレルを超えたのは2017年である。そして2018年の1.74兆バレルをピークに2019年及び2020年は2年連続で埋蔵量が減少、2020年末の埋蔵量は1.73兆バレルとなっている。

 

(2019年の190兆㎥がピーク?)

(1-3-2)天然ガス  (表http://bpdatabase.maeda1.jp/2-1-G02.pdf参照)

 2000年末の世界の天然ガス埋蔵量は138兆立法メートル(以下兆㎥)であり、20年後の2020年末の埋蔵量は1.36倍の188兆㎥に達している。この間の対前年増加率の平均は1.6%であった。上記の石油と比較すると、天然ガスの方が増加幅は大きいが、対前年増加率の平均は小さい。これは天然ガスの対前年増加率が停滞する年が多かったためである。

 

 年を追って推移を見ると、2000年末の埋蔵量138兆㎥は翌2001年に大幅に増えて152兆㎥になり、その後2006年までは微増にとどまった。2007年以降埋蔵量は再び増加に転じ2010年末には180兆㎥の大台を突破、2019年には190兆㎥と過去最大に達した。しかし2020年末には埋蔵量が188兆㎥に下がっている。

 

(石油と天然ガスの比率は6:4で20年間変わらず!)

(1-3-3)石油+天然ガス(表http://bpdatabase.maeda1.jp/1-G02c.pdf参照)

 石油と天然ガスの2000年の合計埋蔵量は石油換算で2.2兆バレルであり、2020年には1.34倍の2.9兆バレルに増加、この間の対前年増加率の平均は1.5%である。合計埋蔵量は2010年に2.8兆バレルに達したが、2017年に2.9兆バレルを超えた後は横ばいを続けており、2020年は2019年より0.6%減少している。

 

 石油と天然ガスの比率を見ると200年は石油60%、天然ガス40%であったが、この比率はその後も変化が無く、2020年は石油59%、天然ガス41%である。

 

(付記)今後埋蔵量はさらに減少するか?:IEA勧告の影響度

 各年末の埋蔵量は下記の数式で表すことができる。即ち、

本年末の埋蔵量 = 前年末埋蔵量 + 本年中の新規発見量 - 本年中の生産量

 これは本年中の新規発見量が生産量を上回れば埋蔵量は前年より増加し、逆に生産量が発見量を上回れば埋蔵量は前年より減少することを示している。

 

 上述のとおり石油は過去2年連続、また天然ガスも昨年は埋蔵量が減少している。実は後述の「生産」の章で述べる通り、2020年は新型コロナ禍のため経済活動が停滞し、石油、天然ガス共に生産量が前年を下回っている。それにもかかわらず埋蔵量が減少しているのは、新規発見量がそれ以上に減少しているためである。これは世界的規模で探鉱開発が低調になっていることが原因である。

 

 今後コロナ禍が終息し経済活動が回復すれば石油・天然ガスの需要も回復するであろう。その際、石油・天然ガスの価格が上昇し、探鉱開発投資のインセンティブが生まれ、それが数年後に新規埋蔵量の増加と言う形に反映される、と言うのが従来の一般的な見方であった。IEA(国際エネルギー機関)もこれまでは埋蔵量の減少に対して、石油・天然ガスの生産国あるいは企業に対して探鉱開発の促進を呼びかけてきた。

 

 しかし最近、地球環境問題が大きくクローズアップされ、IEA自身が2050年までに炭酸ガス排出ゼロを目指すレポート「Net Zero by 2050」を発表した。IEAはこの中で石炭事業への投資を直ちにストップし、石油・天然ガスも新規開発投資をゼロにするよう勧告している。

 

 炭化水素エネルギーである石油・天然ガスに対してかつてない逆風が吹いており、埋蔵量も今後減少することは避けられない。

 

(続く)

 

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