石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

中東現地紙ニュース転載:「米国は昨年10月7日以来、イスラエルへの軍事援助に過去最高の179億ドルを費やしている。」

2024-10-10 | 今日のニュース
原題: US spends a record $17.9 billion on military aid to Israel since last Oct. 7
掲載紙;2024/10/7 Arab News (Original;AP通信)

以下は米ブラウン大学がハマスによるイスラエル攻撃の記念日である月曜日に発表した戦争費用プロジェクトの報告書の概要である。この報告書は、イスラエルが9月下旬にレバノンでイラン支援のヒズボラ過激派に対する第二戦線を開く前に発表されたもので、バイデン政権がガザとレバノンの紛争でイスラエルを支援し、同地域でのイランと同盟関係にある武装集団による敵対行為を封じ込めようとしている中で、米国の推定コストを初めて集計したものの1つである。

ガザでの戦争が始まって中東各地で紛争が激化して以来、米国はイスラエルへの軍事援助に少なくとも過去最高の179億ドルを費やしている。さらに2023年10月7日の攻撃以来48億6000万ドルが同地域での米軍の軍事作戦強化に投入されており、これにはイラン支援のハマスと連帯してイエメンのフーシ派が行っている商船への攻撃を鎮圧するための海軍主導の作戦の費用も含まれる。

人命の損失も発生している。ハマスの戦闘員らは1年前、イスラエルで1,200人以上を殺害し、人質に取った者もいる。ガザ地区保健省によると、イスラエルの報復攻撃により、ガザ地区では4万2,000人近くが死亡したという。イスラエルが9月下旬にレバノンへの攻撃を大幅に拡大して以来、ヒズボラの戦闘員や民間人を含む少なくとも1,400人がレバノンで死亡した。

イスラエルへの記録的な軍事援助
1959年以来、イスラエルはインフレ調整後のドルで2,512億ドルを受け取っており、米国史上最大の軍事援助受領国である。

2023年10月7日以降に費やされたインフレ調整後の179億ドルは、1年間でイスラエルに送られた軍事援助としては突出している。米国は、1979年に米国が仲介した平和条約にイスラエルとエジプトが署名した際に、毎年数十億ドルの軍事援助を行うことを約束しており、オバマ政権以降は、イスラエルに対する年間援助額を2028年まで38億ドルと定めた合意を行っている。

ガザ戦争が始まって以来の米国の援助には、軍事資金、武器販売、連邦準備金からの少なくとも44億ドルの引き出し、中古装備の譲渡などが含まれている。

米国が供給した兵器の多くは、砲弾から2,000ポンドのバンカーバスター、精密誘導爆弾に至るまでの軍需品だった。

研究によると、支出額はイスラエルのアイアン・ドームとダビデ・スリングミサイル防衛システムの補充にかかる40億ドルから、ライフルやジェット燃料の現金まで多岐にわたる。

米国のウクライナに対する公式文書化された軍事援助とは異なり、昨年10月7日以降に米国がイスラエルに何を送ったかの全詳細を入手することは不可能だったため、この1年間の179億ドルは部分的な数字だと研究者らは述べている。また、バイデン政権が「官僚組織による操作により援助の総額とシステムの種類を隠そうとしている」と指摘した。

民間人に多大な犠牲を強いている戦争中に米国の主要同盟国に資金援助をすることは、大統領選の選挙戦で米国民を二分した。しかし、イスラエルへの支援は米国政治において長い間大きな影響力を持っており、バイデン氏は金曜日、「私ほどイスラエルを支援した政権はない」と述べている。

中東における米軍の作戦
バイデン政権はガザ戦争が始まって以来、イスラエルと米軍への攻撃を抑止し、対処することを目指して同地域での軍事力を強化してきた。

報告書によると、これらの追加作戦には少なくとも48億6000万ドルの費用がかかったが、これには同地域のエジプトやその他のパートナーに対する米国の軍事援助の増強は含まれていない。

ハマスがガザ周辺のイスラエルのバリケードを突破して攻撃した日、米軍は中東に3万4000人の部隊を配備していた。この数は8月には5万人にまで増加し、イスラエルによる攻撃でハマスの政治指導者イスマイル・ハニヤがイランで殺害されたことを受けて報復を阻止する狙いで、2隻の空母が同地域にいた。現在は合計で約4万3000人。

地中海、紅海、アデン湾に配備された米艦艇と航空機の数(空母打撃群、水陸両用即応群、戦闘機中隊、防空砲台)は、今年に入って変動している。

国防総省は、別の空母打撃群が間もなく欧州に向かうと述べており、2隻の空母が再び同時にこの地域にいれば、兵力総数は再び増加する可能性がある。

フーシ派との戦い
米軍は戦争開始以来、イエメンの首都と北部地域を支配し、ガザ地区と連帯して紅海の商船に砲撃している武装勢力フーシ派による攻撃の激化に対抗するため展開してきた。研究者らは、米国が被った48億6000万ドルの費用を「予想外に複雑で非対称的に高額な課題」と呼んだ。

フーシ派は重要な貿易ルートを通過する船舶への攻撃を続けており、発射場やその他の標的に対する米国の攻撃を引き起こしている。この作戦は、海軍が第二次世界大戦以来直面した中で最も激しい海戦となっている。

米国は、2,000ドルのイラン製フーシ派ドローンに対して、複数の空母、駆逐艦、巡洋艦、数百万ドルの高価なミサイルを展開している。米軍は金曜日だけでも、イエメンのフーシ派の標的12カ所以上を攻撃し、兵器システム、基地、その他の装備を狙ったと当局者は述べた。

以上
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

(SF小説) ナクバの東(17)

2024-10-10 | 今日のニュース
Part I:「イスラエル、イラン核施設を空爆す」(14)

第四章 三羽の小鳥(1)「エリート」(2/3)

 
普通のイスラエル人であればこれらのニックネームを聞いただけで本人の出自がすぐにわかる。「エリート」の父親は第一次中東戦争、一般にはイスラエル独立戦争と呼ばれる戦いで活躍、その後は空軍パイロットとして三度の中東戦争でエジプト、シリアのソ連製ミグ戦闘機を撃墜するなど輝かしい戦功をたてた。1991年には空軍司令官として有名な「ソロモン作戦」の現場指揮をとっている。「ソロモン作戦」とはエチオピア内戦で首都アディスアベバに孤立したユダヤ教徒一万数千人をイスラエルに空輸すると言う空前絶後の作戦である。作戦名が両国を結びつけた古代の歴史「ソロモンとシバの女王」に因んだものであることは言うまでも無い。父親は将軍にまで上り詰め、退役した今も政府及び軍部の御意見番として穏然たる勢力を保っている。

「エリート」とその一族はアシュケナジムである。アシュケナジムは元々ドイツに住んでいたユダヤ人であり、彼の父も祖父もナチスのユダヤ人狩りで強制収容所に送られ、祖父はホロコースト(大虐殺)で亡くなった。父親もガス室に送り込まれる運命であったが、寸前に戦争が終結し強制収容所から救出された。まだ若かった父親はユダヤ人の祖国建設を目指すシオニズム運動に身を投じイスラエルに移住した。彼はそこで同じアシュケナジムの女性と知り合い二人の間に生まれたのが「エリート」である。

(続く)


荒葉一也
(From an ordinary citizen in the cloud)


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする