石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

(SF小説) ナクバの東(19)

2024-10-15 | 今日のニュース
Part I:「イスラエル、イラン核施設を空爆す」(15)

第五章 三羽の小鳥(2)「マフィア」(1/2)
 
「マフィア」はロシア正教を信じるウクライナ地方の貧しい農民の息子である。彼が生まれた当時はまだソ連邦の時代であり、社会主義国家のソ連はキリスト教、イスラム教、ユダヤ教を問わず宗教を敵視し教会を否定した。モスクワ中央政府は集団農場制度により農民はロシア時代の農奴制から解放され、コルホーズは労働者の天国になる、と宣伝した。しかし農民の暮らしは楽になるどころかノルマに追われる生活が続いた。支配者がかつての地主から中央政府の高級官僚に替わっただけだった。それでも農民たちはいつか救われると信じて自宅や集会所でひっそりとキリストのイコンに祈りを捧げていたのである。

1985年にソ連でペレストロイカが起こると、帰還法に触発されてソ連から100万人とも言われる大量の移民がイスラエルに流れ込んだ。イスラエルの「帰還法とは祖父母のうち少なくとも一人がユダヤ人ならば誰でも移住できるというものである。母親の実家の祖母がユダヤ人であったことを思い出した「マフィア」一家は当時5歳の息子を連れて新天地を目指した。仲間の中には役人を買収して祖父母がユダヤ人であったと言う偽の証明書を手に入れイスラエルに移住した者も少なからずいた。

(続く)


荒葉一也
(From an ordinary citizen in the cloud)

コメント
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