石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

GECF(ガス輸出国フォーラム)の実力を探る(2)

2011-12-05 | その他

3.天然ガスの貿易量に占めるGECFの地位
 天然ガスの貿易には気体のガス状態で搬送するパイプラインによるものと液体化して搬送するLNG(液化天然ガス)の二種類がある。LNG貿易は比較的歴史が新しいが最近急速に普及している方式である。

(1)パイプライン貿易
 2010年のパイプラインによる天然ガス貿易量は6,776億㎥であった。これを輸出国別にみると最も輸出量が多いのはロシアの1,538億㎥であり、全世界の輸出量の23%を占めている。
(注)ロシアの総輸出量は1,865億㎥であるが、ウズベキスタン等から327億㎥輸入しておりNET輸出量は1,538億㎥となる。以下LNGを含め数値は輸出入を相殺したNET輸出量。
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-3-96aGasNetExportByPipeline2010.pdf参照)

 ロシアに次ぐ輸出国はノルウェー(959億㎥、シェア14%、以下同じ)、第3位はカナダ(715億㎥、11%)であり、これら3カ国だけで世界の輸出量の48%を占めている。以下上位10カ国をあげると、アルジェリア(365億㎥)、オランダ(364億㎥)、トルクメニスタン(197億㎥)、カタール(192億㎥)、ウズベキスタン(136億㎥)、ボリビア(117億㎥)及びインドネシア(99億㎥)となる。

 これら10カ国のうちGECF加盟国はロシア、アルジェリア、カタール、ボリビアの4カ国で、オブザーバーのノルウェーとオランダを加えると10カ国のうち6カ国がGECF関係国である。輸出量11位から20位までにリビア、カザフスタン(オブザーバー)、エジプト、イランが入っており、全世界のパイプラインによる天然ガス輸出量のうちGECF加盟国が占める割合は35%、オブザーバー国を加えると55%を占めている。

 但しイランの場合はトルコなどに84億㎥を輸出したのに対しトルクメニスタン他から69億㎥を輸入しており純輸出量は16億㎥に過ぎない。これは同国の生産量1,385億㎥(前項参照)の2%に満たない。さらにベネズエラの場合は輸出の実績は無く、むしろ隣国コロンビアから輸入しているありさまである。これら2カ国は「GECF」(天然ガス「輸出国」フォーラム)メンバーとしては名ばかりの存在であると言える。

(2)LNG貿易
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-3-96bLngExport2010.pdf参照)
 2010年の世界のLNG貿易量は2,976億㎥であった。これを輸出国別に見るとトップはカタールの758億㎥で全世界の輸出量の4分の1強(26%)を占め、圧倒的な存在感を示している。カタールに次ぐLNG輸出国はインドネシア及びマレーシアであり、それぞれ314億㎥、305億㎥を輸出している。その他の輸出上位10カ国はオーストラリア、ナイジェリア、トリニダード・トバゴ、アルジェリア、ロシア、オマーン及びエジプトの各国であり、このうちGECF加盟国はカタール、ナイジェリア、トリニダード・トバゴ、ロシア、エジプトの5カ国である。

 10位以下を含めGECF加盟国のLNG輸出総量は1,795億㎥であり世界全体の60%(オブザーバー国を含めた場合は62%)を占め、GECFのシェアはパイプラインの35%(上記)に比べて非常に大きい。

(3)パイプライン・LNGの合計貿易量
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-3-96cGasExport2010(Pipeline+Lng).pdf参照)
 上記のパイプライン貿易量(6,776億㎥)とLNG貿易量(2,976億㎥)を合算した2010年の全世界の天然ガス貿易量は9,752億㎥となる。パイプラインとLNGの比率は7対3(パイプライン69%、LNG31%)であり、現在の天然ガス貿易の主流はパイプラインであると言える。

 これを輸出国ベースで見ると、パイプラインとLNGを合わせた輸出量が世界で最も多いのはロシアであり、同国の輸出量は1,672億㎥(パイプライン1,538億㎥、LNG134億㎥)、世界シェアは17%である。これに次ぐのがノルウェー(1,006億㎥、内パイプライン959億㎥、LNG47億㎥、シェア10%、以下同じ)、カタール(949億㎥、192億㎥、758億㎥、9.7%)、カナダ(695億㎥、715億㎥、-20億㎥=輸入、7.1%)、アルジェリア(558億㎥、365億㎥、193億㎥、5.7%)、インドネシア(413億㎥、99億㎥、314億㎥、4.2%)である。

 さらに7位から10位まではオランダ、マレーシア、ナイジェリア及びトリニダード・トバゴの各国であり、これら上位10カ国のうちGECFのメンバーは半数の5カ国(ロシア、カタール、アルジェリア、ナイジェリア、トリニダード・トバゴ)にのぼり、オブザーバー国(ノルウェー及びオランダ)を加えると10カ国中の7か国がGECF構成国である。

 これら以外のGECF構成国(正式メンバー:エジプト、ボリビア、リビア、オマーン、エクアトール・ギニア、イラン、ベネズエラおよびオブザーバー:カザフスタン)の輸出量も合算すると、世界の天然ガス輸出に占めるGECFメンバー国のシェアは42%であり、オブザーバー3カ国を含めた場合のシェアは57%に達する。

(続く)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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