(注)本シリーズ(1)~(4)はHP「マイ・ライブラリー:前田高行論稿集」で一括ご覧いただけます。
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1. 新生産枠は3千万B/D
12月14日、ウィーンで開かれたOPEC総会はイラクを含む加盟12カ国の現在の生産量3,000万B/Dを維持することで合意した。前回の6月総会では増産を主張するサウジアラビアに対してイランが強硬に反対し会議は決裂している 。それ以前にはOPEC加盟国の一つであるリビアが2月から内戦状態に突入し同国の石油生産が停止、一方同じ加盟国のイラクでは石油の生産が徐々に上向くと言う状況で、OPEC全体としての先行きの生産見通しは不透明な状態であった。
他方、需要についても中国、インドなど新興国の経済発展或いは福島原発事故の影響による石油・天然ガスの需要増加が見込まれる一方で、欧州の金融危機が引き金となって世界恐慌が発生、石油需要が落ち込むとの弱気の見方もあり、需要の面でも先行きが見通しにくい状況であった。
このように需給予測が困難なため、石油関係者はOPEC12月総会の成り行きに注目した。しかし総会は混乱もなく加盟12カ国の現在の生産量をそのまま追認する形となった。これは今年後半、石油価格が比較的高い水準で推移し、また来年の需要についてもIEA(国際エネルギー機関)が若干伸びると予測したことを踏まえ、OPEC事務局が総会前に周到な根回しを行ったためと考えられる。
この生産量3千万B/Dと現在の90ドルを超える価格はOPEC穏健派のサウジアラビア及び強硬派のイラン双方にとって満足すべきものであった。それとともにIEAを通じてOPECに増産圧力をかけ続ける消費国にとっても容認できる水準と言える。つまり今回のOPECの決定は八方丸く収まるものだったのである。
但し今回の決定は現在の生産水準を追認しただけで将来に対する明確なビジョンを欠いたものであることも事実である。以下は今回の決定に至る経緯と今後の見通しに関する私見である。
(続く)
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