石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

JXホールディングスとJAPEXの業績を国際石油会社と比較する(下)

2014-05-17 | 海外・国内石油企業の業績

本レポート(上)(下)は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0312IocJxInpex2013.pdf

 

3.国際石油会社との比較
(1)売上高
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-20.pdf参照)
 国際石油会社(IOCs)の昨年1-12月の売上高はExxonMobilが4,383億ドル、Shell4,596億ドル、BP3,791億ドル、Total2,517億ドル、Chevron2,288億ドルでありShellの売上高が最も多かった。これに対してJXホールディングス(以下JX HD)の昨年4月―今年3月の連結売上高は1,241億ドル(1ドル=100円換算、以下同じ)、またINPEXの同期間の売上高は133億ドルであった。

 Shellの売上高はJX HDの3.7倍であり、IOC5社の中で最も売り上げが少ないChevronでもJX HDの1.8倍ある。因みに下流部門中心のJX HDと上流部門専業のINPEXの売り上げを合計すると1,374億ドルになるが、それでもShellは3.3倍、Chevronは1.7倍の規模であり、国際石油会社と日本企業の規模の違いは大きい。

(2)純利益
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-21.pdf参照)
 IOC5社を利益額の多い順に並べるとExxonMobil(326億ドル)、BP(238億ドル)、Chevron(214億ドル)、Shell(164億ドル)、Total(112億ドル)でありExxonMobilはShellの2倍、Totalの3倍である。一方日本企業2社はJX HDの純利益が11億ドル、INPEXは18億ドルであり、JX HDはExxonMobilの30分の1にとどまり、IOC5社中で利益が最も少ないTotalに比べてもその10分の1にすぎない。日本の石油会社は国際石油会社と比較して利益の面では大きく見劣りするのである。

(3)売上高利益率
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-22.pdf参照)
 売上高利益率で比較するとIOC5社の中ではChevronが最も良く(9.4%)、以下ExxonMobil(7.4%)、BP(6.3%)が利益率5%を超えており、続いてTotal(4.5%)、Shell(3.6%)であるが、JX HDの利益率は0.9%と非常に低い。ところがINPEXの利益率は13.8%に達し国際石油会社のいずれよりも高い。

 世界の石油企業はいずれも上流部門が高い利益率を確保している半面、下流部門は過当競争に晒され利益率が低い。国際石油会社も上流部門の利益に支えられているのが実情であり、全体としての利益率を5%前後に維持している。JX HDの利益率が極端に低い一方、INPEXの利益率が高いことがこの事実を示している。

(4)原油・天然ガス生産量
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-23.pdf参照)
 昨年1-12月の原油と天然ガスを合計した生産量(石油換算)は日量平均でExxonMobilが4,175千B/D、Shell 3,199千B/D、Chevron 2,597千B/D、Total 2,299千B/D、BP 2,256千B/Dである。これに対して日本企業2社はJX HDが115千B/D(1-12月外販量)、INPEX 409千B/D(昨年4月―今年3月生産量)であった。

 INPEXとIOC5社を比較するとExxonMobilはINPEXの10.2倍、Shellも7.8倍であり、5社中で最も少ないBPでもINPEXの5倍を超えている。INPEXとJX HDを合計した場合はExxonMobilの8分の1、BP或いはTotalの4分の1弱である。

以上

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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   E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

 

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