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第4章:中東の戦争と平和(23)
109 イラン・イラク戦争:産油国と米国が味方のイラクと孤立無援のイラン(1/3)
アフガニスタンのイスラーム勢力(ムジャヒディン)はソビエトを後ろ盾とする共産主義中央政府を相手に一神論と無神論をかけた戦いを有利に展開した。そしてイランでは僧職者とバザール商人のイスラーム連合勢力がシャー(皇帝)の推進する西欧流「白色革命」を打破してイスラーム革命を成し遂げた。イスラーム復興の動きはアフガニスタンに始まり西の隣国イランに及んだ。
イラン・イスラム共和国の最高指導者ホメイニ師はその動きをさらに西隣のアラブ諸国に向けた。彼はペルシャ湾を挟んだサウジアラビアなど湾岸各国のムスリムたちに君主制国家の打倒を呼びかけた。曰く、サウジアラビアのサウド家はイスラームの聖地マッカ、マディナを私物化し、さらに石油の富を自分たちだけで独占している。彼らはアラーにとって許されざる存在であり、ムスリムは王制打倒に立ち上がるべきだと説いた。ホメイニ師はさらに世俗国家イラクの市民に対しても独裁者フセインはイスラームの教えを忘れアラーに背いているとして反抗をそそのかした。
ペルシャ湾沿岸やイラク南部には多くのシーア派の住民がおり、バハレーンはシーア派が国民の多数を占めているほどである。スンニ派が支配するイラクも実はシーア派が多数である。ホメイニ師はこれらシーア派住民に体制打倒を呼びかけたのである。そしてホメイニ師がさらに西の先に打倒を目指すのがイスラエルである。彼は「イスラエルを地中海に追い落とせ」とイスラーム諸国全体に呼びかける。
(続く)
荒葉 一也
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