石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(104)

2024-01-17 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第4章:中東の戦争と平和(18)

 

104 アフガン戦争勃発:呉越同舟の米国とアラブ(4/5)

 この戦争でアラブ諸国から多数の義勇兵が参加したが、その最大の人物こそサウジアラビアのオサマ・ビン・ラーデンである。世界中で彼の名を知らない者はほとんどいないであろう。また彼の素性と死に至るまでの経緯も良く知られているが、ここではアフガン義勇兵になるまでの経歴を簡単に紹介する。

 

 ビン・ラーデンは1957年、サウジアラビアのジェッダで生まれた。彼の父親はイエメン出身で若くして聖都マッカの門前町ジェッダに移住、路上の行商から身を起こし、サウジアラビアの初代国王となるアブドルアジズに取り入り、オサマ・ビン・ラーデンが生まれたころはサウジ国内最大の建設財閥になっていた。父親は多数の妻を娶り、ビン・ラーデンは17番目の息子であるが、11歳の時に父親が飛行機事故で死亡、当時の金で3億ドルの遺産を相続したと言われる。

 

彼はその後イスラーム神学校(マドラサ)に入学、過激なイスラーム原理主義に傾倒した。そして22歳の時に義勇兵としてアフガニスタンに入った。アフガニスタンにはサウジアラビアの援助によるマドラサが多数建設され、ムジャヒディン(ジハード戦士)たちはイスラーム原理主義思想に洗脳されていた。そこに3億ドルを抱えてビン・ラーデンが乗り込んだのであるから彼がすぐに頭角を現し、外国人義勇兵のトップに立ったのは当然の成り行きであった。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

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戦後ガザはどうなるのか?当事者たちの本音と本性(中)

2024-01-17 | その他

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0595GazaJan2024.pdf

 

(English Version)

(Arabic Version)

 

欧米・イスラム諸国の本音と本性

自国の偉大さを信じ、親子兄弟が戦場で戦っている現状で、大多数のイスラエル国民はテロリスト・ハマスのせん滅が戦争終結の必須条件であると確信している。戦時体制下、しかも勝利が確実であると自他ともに認めるなかでは無条件即時停戦など問題外であろう。平和を標榜するだけのひ弱な知識人は排除され投獄される。戦争とはそういうものである。

 

 それではガザ戦後処理の利害関係者(ステークホルダー)である欧米或いは周辺イスラム諸国の対応はどうであろうか。問題は本音と建前の使い分けである。

 

ヨーロッパ各国は、ガザ紛争がイランを含む中東全域に拡大し、それを導火線にヨーロッパでイスラムテロが頻発することを恐れている。しかし強力な仲介者がいない中でただ人道的停戦を求めるだけではナンセンスである。それが戦争の現実というものであろう。一方、平和の掛け声の陰で米国、フランス、ドイツなど先進軍事大国は大量の兵器を輸出し、防衛産業は我が世の春を謳歌している。彼らの本音と建前のギャップは小さくない。

 

 周辺イスラム諸国の本音と建前はもっと単純である。彼らはアラブ・イスラム国家としてのパレスチナの独立を支持し、無辜の女性や子供を大量殺りくする(ジェノサイド)イスラエルを非難する。そして人道的な支援は惜しまない。

 

しかしパレスチナが政治的に独立し、自分達と対等になることを望んでいるとは思えない。特にサウジアラビア、UAEなど湾岸の専制君主国家にとっては、民主化されたパレスチナとシーア派イランの挟み撃ちにあう可能性が高い。パレスチナが形式的な独立を保ちながら、イスラエル支配のもとで周辺国の食料や医療支援に頼って細々と生きていく。それが周辺アラブ諸国の本音であろう。無気力と腐敗が広まっている現在のヨルダン川西岸パレスチナ自治政府の姿と重なる。

 

各国は国連安保理の呼びかけに応じないイスラエルに経済制裁を課するでもなく、ただ2国家共存論を唱えるだけである。さらにイスラエルの非人道性を声高に叫びながら、その一方安保理で拒否権を発動してイスラエルを擁護する米国の姿勢(二枚舌外交)を前に国連は機能不全に陥っている。そしてロシアと中国はイスラエルと欧米を非難し、ハマスの過激な行動に自制を促すものの自らは傍観者の立場を変えない。結局、国際政治の舞台でこの2か国が漁夫の利を得ている感がある。

 

(続く)

 

本件に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

荒葉一也

Arehakazuya1@gmail.com

 

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