石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

圧倒的な米国の支配力―世界一の貸し手兼借り手:UNCTAD「世界投資レポート2024年版」(3)

2024-08-22 | 世界ランクシリーズ

(世界ランクシリーズ その9 2024年版)

 

1. FDI インバウンド(FDI Inflows, 直接投資流入額) (続き)

(新型コロナ禍で急減、ようやく回復した海外直接投資!)

(2) 2019-2023年のFDI Inflows(FDI インバウンド)の推移

(図http://rank.maeda1.jp/9-G01.pdf参照)

2019年から2023年までの世界と中東主要国のFDI Inflowsの推移を示したのが図9-G01である(単位億ドル、対数目盛)。

 

2019年の全世界のFDI Inflowsの総額は1兆7,300億ドルであった。しかし同年に始まった新型コロナパンデミックのため世界経済は大きく後退、直接投資も激減した。2020年の全世界の直接投資額は1兆ドルを切り、対前年比▲43%の大幅減少であった。国別にみても米国は▲59%、サウジアラビアも▲47%と世界平均を上回る激減ぶりであり、日本も▲14%の減少であった。

 

このような中で2020年の対中国投資はわずかではあるが6%増加、インドは27%の大幅増であった。2021年は前年の大幅減少の反動としてFDI Inflowsは大きく膨らみ、全世界では1兆6,200億ドルと1兆ドルの大台を回復、コロナ禍以前の水準に近づいた。その後2023年までの2年間は若干足踏み状態であり、全世界のFDI Inflowsは1兆3千億ドル台が続いている。

 

米国と中国を比べると2019年のFDI Inflowsは米国2,299億ドル、中国1,412億ドルであったが、2020年には米国933億ドル、中国1,493億ドルと逆転している。しかし2021年には米国への直接投資が3,894億ドルに急回復、中国(1,810億ドル)を抑えて再び世界一の投資受け入れ国となり、現在に至っている。

 

日本とインドを比較すると、2019年のFDI Inflowsは日本138億ドルに対しインドは4倍弱の506億ドルであった。2020年には両国の差はさらに拡大したが、2021年には日本の投資受入額が343億ドルに拡大した一方、インドのそれは448億ドルに減り、両国の格差は縮小した。2022年、23年の両国への投資流入額は同じような傾向を示しており格差は変わっていない。

 

中東のUAE、トルコ及びサウジアラビア3カ国の推移を見ると、2019年はUAE179億ドル、トルコ95億ドル、サウジアラビア31億ドルであった。サウジアラビアの過去5年間のFDI Inflowsは激しい上下変動を見せており、2020年には16億ドルと前年比で半減になったあと、2021年には231億ドルに激増、UAE及びトルコを上回った。しかし2023年には123億ドルに減少、トルコをわずかに上回る水準に落ち込んでいる。

 

(続く)

 

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見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(197)

2024-08-22 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

エピローグ(9

 

197 見果てぬ平和(2/3)

「国破れて山河在り」というのは東洋思想である。しかしイスラームの一神教の世界ではそのような自然観を持つことも難しいようである。アラブの年配者たちの間では「これもすべてアラーの思し召し」とばかり運命をあるがままに受け入れる者も多いが、現世の矛盾と不平等に内心の怒りをたぎらせる若者はアラーが約束した来世の天国に急ぐため、「殉教」の名のもとに自爆テロに走る。

 

ITの世界を好む若者たちはテロリストにはならずインターネットのSNSを通じて社会改革を求める。彼らはSNSで独裁者打倒の反政府デモを呼びかける。呼びかけに応じて多数の若者が街頭に繰り出し独裁者の退陣を勝ち取ったのが「アラブの春」であった。しかしその後が続かない。それはなぜだろうか。インターネットで呼びかければ世の中がかなり簡単に動くことは実証された。しかし世の中を動かすことは簡単であっても、世の中を変えることはたやすくない。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

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