(注)HP「中東と石油」で「BPレポート解説シリーズ:石油+天然ガス篇(2008年版)」の全文を一括でご覧いただけます。
BPの「BP Statistical Report of World Energy 2008」をもとに本シリーズではこれまで石油及び天然ガスの埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したが、最後に石油と天然ガスを合わせた形でその埋蔵量、生産量及び消費量についての解説を試みる。なお天然ガスから石油への換算率は10億立方メートル=629万バレル(1兆立方メートル=62.9億バレル)である。
石油+天然ガス篇(3):世界の石油と天然ガスの消費量
1.2007年の石油と天然ガスの地域別合計国別消費量
2007年の世界の石油消費量は日量8,522万バレル(以下B/D)であり、これに対して天然ガスの消費量は年間2兆9,219億立方メートル(以下㎥)であった。天然ガスの消費量を石油に換算すると5,035万B/Dとなり、従って石油と天然ガスを合わせた1日当りの消費量は1億3,557万B/Dとなる。両者の比率は石油63%、天然ガス37%でほぼ2:1の割合である。
消費量を地域別に見ると(上図参照、拡大図はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-1-92a-Oil-&-Gas-consump.gif)、欧州・ユーラシアが最も多く石油換算で4,002万B/Dであり、これに次ぐのが北米の3,883万B/Dである。但し両地域を比較すると、欧州・ユーラシアは石油の消費量が2,010万B/Dに対して天然ガスの生産量は1,992万B/D(石油換算)であり、石油と天然ガスがほぼ同じであるが、北米は石油2,502万B/D、天然ガス1,380万B/D(石油換算)と石油の消費量が天然ガスの2倍近くに達している。
欧州・ユーラシア、北米に続いて多いのはアジア・大洋州である。同地域の消費量は石油が2,544万B/D、天然ガスが771万B/D(石油換算)の合計3,316万B/Dであり、天然ガスは石油の3分の1に満たない。これら3地域の世界全体に占める割合は、欧州・ユーラシア29.5%、北米28.6%、アジア・大洋州24.5%であり、3地域を合わせると世界全体の82.6%に達する。残る3地域(中南米、中東、アフリカ)を併せても17.4%に過ぎず、石油及び天然ガスの消費が先進国及びアジアの新興工業地帯に集中していることがわかる。
2.国別消費量(上位20カ国)
生産量を国別に見ると(詳細は表「石油と天然ガスの号k利消費量上位20カ国(2007年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-1-92b%20Oil%20and%20Gas%20Consumption%20by%20Countries,%202007.htm参照)、世界で石油と天然ガスの合計消費量が最も多いのは米国である。同国の消費量は石油換算で3,195万B/D、実に世界の4分の1の石油と天然ガスを消費しているのである。2位のロシア以下の各国の消費量の世界シェアがいずれも一桁台であることに比べ、米国が如何にエネルギーを浪費しているかが解る。
米国に次いで消費量が多いのはロシアの1,026万B/D(石油換算)である。同国は石油の消費量は世界5位であるが、天然ガスを石油の2.8倍消費している。第3位、第4位はそれぞれ中国(901 万B/D)、日本(661万B/D)である。両国を比較すると、石油の消費量は中国が日本を上回っているのに対して天然ガスの消費量は日本の方が多い。 5位のカナダ(石油換算392万B/D)以下は石油と天然ガスの合計消費量が4百万B/D以下であり、ドイツ(382万B/D)、イラン(355万B/D)、サウジアラビア(346万B/D)、インド(344万B/D)、英国(327万B/D)と続いている。
3.1965年~2007年の消費量の推移
1965年から2007年までの石油と天然ガスの合計消費量の推移を追ってみると(詳細は図「石油+天然ガス消費量(1965-2007年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-1-95-Oil-&-Gas-Consumpt.gif参照)、1965年(第一次オイルショック前)の石油と天然ガスの合計消費量は4,253万B/D(石油換算、以下同じ)であったが、10年後の1975年には1.8倍の7,562万B/Dに急増している。第二次オイルショック後の1980年代前半は消費が一時停滞したが、1985年(8,803万B/D)以降は再び消費は一貫して増加しており、1990年には1億B/Dの大台を突破した(内訳:石油6,686万B/D、天然ガス3,413万B/D)。
そして2000年には1億1,834万B/D(内訳:石油7,634万B/D、天然ガス4,200万B/D)、2007年には上記のとおり1億3,557万B/D(内訳:石油8,522万B/D、天然ガス5,035万B/D)に達している。2007年の消費量は1965年に比べて3.2倍であるが、石油と天然ガスそれぞれについては石油の伸び率が2.7倍に対し、天然ガスは4.5倍である。過去40年強の間に天然ガスの消費が石油を大きく上回っていることがわかる。
(石油+天然ガス篇第3回完)
(これまでの内容)
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(注)HP「中東と石油」で「BPレポート解説シリーズ:石油+天然ガス篇(2008年版)」の全文を一括でご覧いただけます。
BPの「BP Statistical Report of World Energy 2008」をもとに本シリーズではこれまで石油及び天然ガスの埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したが、最後に石油と天然ガスを合わせた形でその埋蔵量、生産量及び消費量についての解説を試みる。なお天然ガスから石油への換算率は10億立方メートル=629万バレル(1兆立方メートル=62.9億バレル)である。
石油+天然ガス篇(2):世界の石油と天然ガスの生産量
1. 2007年の石油と天然ガスの地域別合計生産量
2007年の世界の石油生産量は日量8,153万バレル(以下B/D)であり、これに対して天然ガスの生産量は年間2兆9,400億立方メートル(以下㎥)であった。天然ガスの生産量を石油に換算すると5,067万B/Dとなり、従って石油と天然ガスを合わせた1日当りの生産量は1億3,220万B/Dとなる。両者の比率は石油62%、天然ガス38%でほぼ3:2の割合である。生産量を地域別に見ると(上図参照、拡大図はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-1-91a-Oil&Gas-Productio.gif)、欧州・ユーラシア地域が最も多く、中東がこれに次いでいる。但し両地域を比較すると、欧州・ユーラシアは石油の生産量が1,784万B/Dに対して天然ガスの生産量は1兆757億㎥(石油換算:1,854万B/D)であり、天然ガスが石油を上回っている。一方、中東は石油2,518万B/D、天然ガス3,559億㎥(石油換算:613万B/D)と、石油の生産量が圧倒的に多い。
欧州・ユーラシア、中東に続いて生産量の多いのは北米である。北米は石油と天然ガスの比率がほぼ同じであり(石油生産量1,367万B/D、石油換算の天然ガス生産量1,337万B/D)、石油換算で合計2,703万B/Dの生産量に達している。
残るアジア・大洋州、アフリカ及び中南米の3地域の生産量はいずれも上記3地域の半分以下である。このうちアフリカと中南米は中東と同じく石油生産が大半を占めており、天然ガスの割合が小さい。前回の埋蔵量で触れたとおり世界の石油と天然ガスの埋蔵量はほぼ等しく、石油埋蔵量は1兆2千億バレル、天然ガスの埋蔵量は石油換算で1兆1千億バレルである。このことから欧州・ユーラシア、北米及びアジア・大洋州では埋蔵量に見合った石油と天然ガスが生産されているのに対し、その他の3地域(中東、アフリカ及び中南米)では今後さらに天然ガスの生産に拍車がかかることが考えられる。
2. 国別生産量(上位20カ国)
生産量を国別に見ると(詳細は表「石油・天然ガスの合計生産量上位20カ国(2007)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-1-91b%20Oil&Gas%20Production%20by%20Countries,%202007.htm参照)、世界で石油と天然ガスの合計生産量が最も多い国はロシアである。石油換算では2,045万B/Dで、同国だけで世界全体の15.5%を占めている。ロシアの場合、石油生産量はサウジアラビアに次いで世界第2位であるが、天然ガスの生産量がサウジアラビアの8倍あるため、石油と天然ガスの合計生産量では世界一となっている。
ロシアに次ぐ世界第二位の生産量を誇るのは米国であり、同国は石油生産量が688万B/D(世界第3位)、天然ガス生産量が941万B/D(石油換算、世界2位)であり、石油よりも天然ガスの生産量が多い。なお埋蔵量と比較すると(前回参照)、ロシアは埋蔵量ベースでも世界一であるが、米国は10位である。このことからロシアは当面の生産余力がある一方、米国の場合は国内の石油・天然ガス資源が急速に枯渇に向かっていると言えよう。
3位はサウジアラビアの1,172万B/Dであり(石油1,041万B/D、天然ガス131万B/D:石油換算)、上位3カ国の生産量は石油換算で1千万B/Dを超えている。4位から10位までの生産国は、4位カナダ(石油換算648万B/D、以下同じ)、5位イラン(633万B/D)、6位中国(494万B/D)、7位メキシコ(427万B/D)、8位ノルウェー(410万B/D)、9位UAE(376万B/D)、10位アルジェリア(343万B/D)となっている。このうちアルジェリアは石油の生産量だけでは世界14位であるが、天然ガスが世界6位であるためベスト・テンに入っている。一方、メキシコ及びUAEは天然ガスの生産量は10位以下であるが、石油の生産量が多いため石油と天然ガスの合計生産量で上位10傑に入っている。
3.970年~2007年の生産量の推移
1970年から2006年までの石油と天然ガスの合計生産量の推移を追ってみると(詳細は 図「石油+天然ガス生産量(1970-2007年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-1-94a-Oil-&-Gas-Product.gif参照)、1970年(第一次オイルショック前)の石油と天然ガスの合計生産量は6,544万B/D(石油換算、以下同じ)であり、生産量はその後1980年までは5年ごとに1,100万B/Dずつ増加し、1980年の合計生産量は8,793万B/D(石油:6,295万B/D、天然ガス:2,498万B/D)に達している。5年毎の増加の内訳はほぼ石油が700万B/D、天然ガスが400万B/Dであった。第二次オイルショック(1979年)を契機に1980年代前半は石油の生産が減退し、1985年の石油生産量は5,747万B/Dにとどまった。しかし天然ガスの生産は着実に増加し1985年には2,876万B/D(石油換算)に増加、その結果合計生産量は1980年とほぼ同じ8,793万B/Dとなっている。その後は石油および天然ガスともに生産は増加し、1990年には合計生産量が1億B/Dの大台を突破した。
その後も石油と天然ガスの生産はともに一貫して増加し、2000年には1億1,674万B/D(内訳:石油7,492万B/D、天然ガス4,182万B/D)、そして2007年には1億3,220万B/D(内訳:石油8,153万B/D、天然ガス5,067万B/D)に達している。1970年と2007年の生産量の伸びを比較すると、合計生産量では倍増している。石油と天然ガスのそれぞれの増加率は石油1.7倍、天然ガス2.9倍であり、天然ガスの生産が急速に伸びていることがわかる。これを比率で見ると1970年には石油と天然ガスの比率が石油73%、天然ガス27%であったものが、その後天然ガスの比率が徐々に拡大し、2007年には石油62%、天然ガス38%となっている。現在天然ガス田の開発が活発に行われている他、パイプライン及びLNGのサプライチェーンも急速に整備拡充されている。従って生産に占める天然ガスの比率は今後更に高まるものと思われる。
(石油+天然ガス篇第2回完)
(これまでの内容)
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