(英語版)
(アラビア語版)
Part I:「イスラエル、イラン核施設を空爆す」(70)
第27章 米軍乗り出す(5)米軍機の救援呼びかけ(1/3)
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3機のイスラエル戦闘機はペルシャ湾上空をあてどなく飛行し続けていた。残された燃料はわずかである。左岸はイラン、右岸はサウジアラビア、カタール、UAEと続くアラブの国々である。いずれもイスラエルと敵対する国々であり、陸に近寄り過ぎると領空侵犯になり、敵国戦闘機のスクランブル(緊急発進)に遭遇するか、さもなければ地対空ミサイルで迎撃される恐れがある。
救難信号「メーデー」を発信してカタールの米空軍基地に助けを求める手が無い訳ではないが、そうなると米国は厄介な外交問題を背負いこむことになる。今回のイラン空爆はイスラエルの単独軍事行動である。米国は事前に空爆計画を知らされ、それを黙認したのは事実だが、それはあくまでも暗黙の了解ということであって、積極的な支援はしない約束であった。従って飛行中のイスラエル機が独断で救援を求めることは許されない。
イラン或いはアラブ湾岸諸国の領空外のペルシャ湾の空域―その狭くて細長い回廊だけが今やイスラエル機に残された唯一自由で安全な場所であった。それはホルムズ海峡で一本の線に細り、海峡を抜けるとアラビア海、インド洋という果てしなく自由な空が開ける。そうなれば海面に不時着する寸前に緊急脱出し、洋上を漂流しながら救助を待つことができる。しかし差し迫った状況はそれを許さない。何しろホルムズ海峡まで達する燃料すらないのだから。
(続く)
荒葉一也
(From an ordinary citizen in the cloud)
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