ITSを疑う

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トヨタ G-BOOK mXを発表

2007年04月11日 | ITS
トヨタは10日、自社テレマティクスであるG-BOOKの新世代サービス、「mX」を発表した

今年はカーメーカーテレマティクスに大きな動きはないだろうと予想していたが、大きく外れてしまった。
それほど、今回の内容にはインパクトが大きい。

それはこういうことだ。

まず、カーメーカーによるテレマティクスの方向が明確に定義されたということ。
大きく言って2つの事項が挙げられる。

ひとつは、完全無料化の宣言。
日産のCARWINGSも3年無料、+2年無料キャンペーンなど、事実上無料のようなものだが、G-BOOKの完全無料化でもはや誰もサービス料の徴収は出来なくなるだろう。

昨年年初のエントリーで、カーメーカーは完全無料を視野に入れてくるだろうと予想したが、一年遅れで現実のものになった。
これでテレマティクスはそれ自身プロフィットモデルとしては成立せず、車の顧客獲得・囲い込みツールとしてのコストモデルであることが決定したことになる。

ふたつ目はプローブ。
ホンダのインターナビプレミアムクラブは、あくまで運転補助サービスであり、そのキラーコンテンツは渋滞回避経路誘導である、と始めから宣言していたが、トヨタもそれに追随する。
携帯での接続は通信料ユーザー負担で利用料無料、トヨタの車載通信機DCMの場合は年間利用料12000円(初年度無料)。
DCM搭載車が10万台あれば、正確な渋滞情報が提供できるという。
トヨタ車の台数を考えれば、DCM搭載10万台は現実的な数字だろう。

やはり、これがテレマティクスに残された唯一可能性のあるキラーコンテンツなのだということが、はっきりしたのではないか。

但し、言うほどのキラーコンテンツかどうかは疑問。
インターナビによる目的地到達時間短縮は8%だそうだ。1時間の移動で5分。これに対価を払う価値があるかどうかは、議論が分かれるところだろう。
事実インターナビをもつホンダが国内の車両販売で一人勝ちしているわけではない。
キラーコンテンツといっても、その他の言われてきたテレマティクスの機能に比べれば可能性がある、という話だ。
実際、G-BOOK mXにはこれ以外にも地図更新データの差分配信や一時停止監視などの新機能があるが、やはり目玉となりうるのはプローブ情報による渋滞回避だろう。

そしてこれは、官の動きにも影響を与える。
この辺は2006年5月28日のエントリー(二件目の方)を参照ください。

トヨタも始めるということになると官のP-DRGS構想も動きが鈍くなるだろう。
民間が進める事業に対抗して税金を投入する是非ということもあるし、折角投資したカーメーカー大手にとっては、官製プローブは迷惑な話でしかないから活発なロビー活動をするはずだ。

しかし、消費者ニーズは特定のメーカーとの契約や通信料負担が必要なテレマティクスではなく、実感として無料提供されているVICSの精度アップだと思う。

より正確な渋滞情報、渋滞予測は特定カーメーカーの差別化ツールではなく、社会資本として整備するのが筋だと思うのだが。