ITSを疑う

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【官製プローブ】ETC2.0に意味があるのか

2017年09月08日 | ITS
そもそも13年前にこのブログを始めた理由がETC2.0に対する疑問だった。
当時はそういった名前がなく、単にETCを高速料金収受以外に拡大し、その未来には数兆円のマーケットが有る、という話だったのだが、それに対して絶対にそんなことはないと感じ、始めたのがこのブログなのだ。

で、すでに15年近い月日が流れ、遅々としてすすまなかったETCのその他利用だが、ここにきてETC2.0という名前でゆっくりとでは有るが拡大してきている。しかし、それは単にETC車載器の世代交代によるものであり、消費者が正しくそのメリットを理解して高額なETC2.0を購入しているのかどうかは極めて疑わしい。

ETC2.0は、単に高速料金ノンストップ収受にとどまらず以下を実現すると言っている。
a.渋滞情報と最適ルート案内
b.高速道路以外での利用(駐車場、GS、ドライブスルー等)
c.安全運転支援(この先の渋滞、落下物注意等)
d.経路情報サービス(渋滞迂回ルート通行車への割引など)

これらをセールストークにしてETC2.0車載器は販売されており、消費者も漠然とした理解で購入しているという感じなのだが、実際にはこのa~dのメリットなんか殆ど無い。
aの渋滞と最適ルートについては民間の通信型ナビがあるし、スマホのGoogleマップでも用が足りる。というか、ポストを通過しないと受信しないETC2.0よりも常時アップデートされる携帯通信利用に分があるのは言うまでもない。
bはもう13年前からずっとやろうとして実現しない。まだ諦めずに公共駐車場でやろうとしているが、多分民間には拡大しない。
cに関して、事故防止に実効があったという話は一切聞こえてこない。ETC2.0はポストを通過しないと受信しない。路側電光掲示板をナビ画面に表示するような話。
dは実際に行われているが、これは単なるETC2.0を普及させたいがためのETC2.0優遇策。

このようにあまり意味がないとしか言いようがないETC2.0に関し、なぜ官は予算を使い優遇割引をしてまで普及を進めるのか?

今となっては、その理由は自前のプローブデータ収集という一点しかない。(15年前にはそんなこと全く言っていなかったが)
プローブデータ(wikiへのリンク)=実際に走行している車両の位置情報。これを元にデータ解析を行い交通情報を作成する。
国が自前のプローブ情報を収集したい、ということであれば、わざわざ高い2.0車載器を購入し走行データを無料で提供するユーザーに対して料金優遇をするということは理にかなっている。但しそれを正しく理解している消費者はほとんどいない。

最近のETC2.0に関するニュースで、鎌倉市内の観光渋滞改善のためにETC2.0の走行データを分析するとか、外国人のレンタカー事故防止のためにETC2.0の情報から危険箇所を割り出す、ということが言われている。
結構なことだが、まず第一にETC2.0が渋滞や事故を防止するといっているのではない。交通規制のための情報分析としてプローブデータを活用する、というだけこと。そして、これがもっと重要な事だが、そんなのは民間が先行している携帯通信利用のプローブ情報を購入すればいいだけの話ではないか、ということ。すでにトヨタ、日産、本田、パイオニア、Google等がその仕組を持っている。

民間から買ったほうが早いし安い。そこまでして官としてプローブ情報を自前で持ちたい理由があるのだろうか?
ポストを設置しそこを通過しなければ情報授受ができないETC2.0と携帯通信のどちらが理にかなっているかは自明だろう。

現在はプライバシーの問題からETC2.0の位置情報と車両は紐つけされていないが、将来的には国家セキュリティとして活用したいのか?
それとも単に、ここまでやってきたから撤退できない、ということなのか?

路側ポストに掛けた250億円は無駄なお金だったが、この先更に活用する意味はない。これはサンクコストと割り切ってきっぱり諦め、この先の投資はやめるべきだと思う。