続き
雨飾山は相耳峰になっているため北峰へ行くには一旦大きく下り登り返さなくてはならない。羽虫に追われる様に私達は北峰へ足を向けた。稜線は相変わらず色とりどりの花で飾られフィルムの残量が心配になる程だ。
花にウットリ。流れるガスは髪を濡らすがこうして花々に囲まれているとヨーロッパアルプスの花風景が懐かしく思い出されてくる。
今日の昼食はウドンを用意した。疲れた時にはこれに限る。
匂いを嗅ぎつけたか蝶が二頭、側から離れなかった
振り返れば苦しめられ、挙句の果てに展望のサービスも無かった本峰が実に重量感に溢れて座しているではないか。
ん? 青空!
そこへ4人のパーティが到着、元気で賑やかな女性3人とは対照的に少し遅れて来た男性は息を切らせてバテバテ状態である。山頂での出来事を話すと女性の内の一人が「私は山頂へ行くのは止めた、ここで昼食にしましょう」と言うやシートを広げてしまった。が効いた様で私は何か余計な事を言ってしまったかと後ろめたさを感じたが結構ここまで来た事に満足している様子。「マッいっか」気にすることは無さそうだ。
1時間強、全てが長閑な草原の中での一時、再びガスが上がり風も出て来たのを機にザックを背負い笹平の穏やかな稜線を下った。
登りがキツイと下りはそれ以上にキツイもの。おまけに赤土と石が良く滑り緊張の糸は張りっ放しだ。若い単独の男性は「嫌な下りですね」と言いながらもバランス良く下り私達との差をどんどん広げていった。そうした中、擦れ違った男女8人のパーティはかなりの高齢登山者だった。現在12時40分、今から山頂まで行って明るい内に下山出来るのだろうか?
ペースも落ち広河原手前でとうとう膝が笑い出し立ち止まるとガクガクする。「ここをホームグランドとしている民ちゃんは何処に魅力を感じているのだろう」雄さんが言う。民ちゃんとは私の高校時代のクラスメイトで陸上部に所属していた女性だ。
キャンプ場に着いた時、話しかけてきた男性は九州から百名山を拾いながら北海道へ帰ると言っていた。雨飾山は明日登るらしい。世の中には凄い人が居るものよ。
宿泊の雨飾荘。露天風呂は宿から徒歩3分の所に在り周囲は鬱そうと茂る原生林というロケーションだ。