新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

11月9日 その2 外国人労働者受け入れと移民と移民の問題

2018-11-09 14:26:24 | コラム
残念ながら法の整備が何時も後手後手:

国会では外国人労働者受け入れと移民の問題で、野党が政府をここを先途と攻め挙げている。簡単な問題ではないのは確かなので、慎重に審議して貰いたいと願っている。だが、私がこれまで見聞し経験してきた限りでは、我が国では多くの分野で世の中の急速な進歩と変化に対応できていなかっただけでなく、対処すべき法律の整備も極めて遅れていたのである。即ち、掲題の如くに後手後手を踏んできたのだ。

例えば、道交法にしたところで、今日のように全国津々浦々まで輸入車から軽自動車までが溢れるとは想定されていない法律だったのである。また、長年我が国に輸出してきた牛乳パック用の原紙にしたところで、我が国の往年の省令では「牛乳の容器はガラス瓶と定めらていたので、紙パックを採用したい乳業メーカーは厚生省(当時)に『例外容器申請書』に輸入して使用する原紙の見本を添えて出願せねばならなかった」のである。その手続きは、例外が80%を超えても維持されていたようなことだった。

アメリカ側の会社としては、我が国の法規制には事ほど左様に禁止条項が多く設定されていたのだと受け止めていた。話を解りやすくする為に極端な表現を用いれば「我が国の貿易管理令では輸出も輸入も原則禁止だが、例外としてあれとこれは許可する」というように定められているのだった。それと同じような点を8日夜のPrime Newsでケント・ギルバートが「日本の出入国管理局は基本的に移民を受け入れないと決めている」と指摘していた。こういう点ではアメリカの法的規制は「何をやっても良いが、これとあれは禁じる」というように、見事なまでに「逆さの文化」を示しているのだ。

そういう視点で移民と帰化を規制していた我が国の法律は「今日のような少子高齢化が急速に進み、若い労働力を海外から受け入れようとする時代が来るということは想定されていなかった」のである。しかも、近年では欧州の先進国には近隣の途上国からの合法と非合法の移民が大量に流入して単なる政治問題だけに止まらず、国の根幹を揺するような喫緊の課題となっている。その点は南アメリカとアジアからの大量の流入問題を抱えたアメリカも同様で、トランプ大統領は厳しい制限策を講じて国の内外に大きな波紋を巻き起こしている。だが、これも十分に理解できる対抗策だと思って見ている。

そのような重要な課題となる事態が至る所の先進国で生じているこの時代にあって、我が国は労働力不足という大問題を抱えて、近隣の諸国からの労働力の導入を現実の問題として真剣に考えざる得ない時期が来てしまったのである。だが、忌憚のないことを言えば「現実問題になっていながら、法律の整備をこれからやろう」と言って国会で審議し始めているのだ。明らかに後手である。しかも、入管は移民を歓迎する態勢もないし、そういう姿勢でもないようである。ギルバートも指摘していたが「帰化は5年で申請できても、永住権は10年や20年後にと規制されている」という矛盾点を指摘していた。

法律の遅れの問題を指摘し批判するのはこれくらいにすべきだと思う。政府も関係省庁も考えるべき事は「如何にしてこの安全且つ世界的に見ても技術的に進歩している国に、導入した労働力が貢献してくれた上で定着してくれるように、法律のみならず衣食住の環境まで整えるか」を考慮すべき時期かと思っている。有識者も指摘したし私も理解しているように問題は「苛酷な労働条件を強いたり、低賃金で働かせるような事態が生じないような態勢を整えて、行方不明者をこれ以上出さない工夫をすべき」なのである。

野党が招致した聴取した技能実習生たちはどうやら劣悪な条件で働かせた者たちが多かったようだった。かかる偏向を避けて、そうではなかった者たちの意見も聞くべきではないか。我が国の中小企業にはキチンと条件が整備された会社(雇用主)は幾らでもあるだろう。揚げ足取りの公聴会など不要だ。

私が繰り返して指摘したように「我が国は戦後70有余年を経た今でも外国人に対して不慣れであると共に、過剰に親切であり甘い」のだ。こういう事態を一刻も早く解消すべきなのだが、だからと言って彼らを虐待して良いというものではない。地方に行けば白人に対しては未だに「外人さん」などと言わば敬称に近い接尾語がつくことすらある。そうかと言って、急に外国人慣れができるような教育もできる訳でもないので、外国人労働者受け入れには慎重にして十分な準備態勢を整えねばならないと思っている。そこが最も肝腎な問題であろう。

更に「言葉の問題」もあると思う。私は「日本語は難しくて短期間には習得できない」との説は採らない。この点も繰り返して指摘して来たことだが、現実に2~3年自国で勉強したと言うだけで、立派な日本語を操る外国人が急増しているではないか。要は教え方の問題であって、6~8年も学校で英語を教えてもろくに自己表現もできないような英語教育しかできない我が国に外国人を連れてきて、日本語を教えようというのならば、諸外国の教え方を研究して直ちに役に立つような日本語の教育法を確立すべきだ。

私はここ新宿区百人町/大久保界隈の実態を見ているので、公式な外国人労働者受け入れには疑問を感じざるを得ない。だが、政府が「最早待ったなし」と言うのであれば、法整備から何から十分に(折角養成した人材に逃げられないような)受け入れ態勢を整えて、取りかかって欲しいと思っている。だが、自分の経験からも言えるのだが、「異文化の国に溶け込んでその国の為に働くというのは、言うべくしてそれほど簡単なことではない」のである。安倍内閣の奮起を切に望む次第だ。


トランプ大統領対策

2018-11-09 07:52:51 | コラム
“That’s not fair.”と言えば良い:

本当は「アメリカ人を殺すに刃物は要らぬ」と言いたかったところだが、これでは余りに過激なので敢えて穏やかな表現を採った。何故こんな事を言い出したかと言えば、中間選挙後の記者会見だったと聞こえたが、トランプ大統領は相変わらず我が国の対アメリカ貿易黒字が大きいことを「数百万台の車を安い関税で売り込んでいながら、アメリカの自動車を輸入しない。“That’s unfair.”」と言っておられたからだ。

私はこの大統領の事実誤認というか無知からかというか、繰り返して発言されることは「知っていながら知らん顔で、実情を知らない非知識層の支持者たちを洗脳しようとされているのだ」と認識している。アメリカ製の車が売れていないのは我が国だけにことではない。アメリカ国内で見ても、国産車よりも日本車、ドイツ車等の欧州車、韓国車等ばかりだ。まさかその原因が「自国の低い労働力に質に起因する質が低くで高額な車ばかりだから」とご存じないとは私は考えていない。

我が国から数百万台も輸入されてくると言われたが、9日の産経の記事では17年度の日本車の実績ではアメリカの現地生産が671万台で、輸入分は168万台に過ぎない。即ち、輸入された分は日本車全体の20%なのだ。それでも「数百万台」と言われた上で、“That’s unfair.”では我が国がまるで悪者の如きである。上記のような支持者の層に向けての発言である点を割り引いても、私は“Mr. President. That is not a fair statement for Japan.”と申し上げたい。

私の主張は「自国の問題点を棚に上げて、他国の責任に押しつけるのは誠に以て fair ではない」ということである。アメリカのデトロイトの問題点は既に明らかだと証明されているし、そこで造られる車の質では国際競争能力を失っていたのである。しかも、我が国ではとトヨタを始めとして多くのメーカーがアメリカ側の要望を受け入れて現地生産に転換している。17年度の実績でも現地生産分は80%を占めているではないか。常にこういう表現で責め立てるのがトランプ流である。

だからと言って我が方が沈黙している必要はない。“unfair statement”であると反発して然るべきだ。“fair”ではないと指摘されれば、トランプ大統領も返す言葉はないだろうと思う。私も“That’s not fair.”を使った経験はあるが、それは最後的手段であって、その相手を凹ますだけではなく絶縁すら覚悟で言う台詞だった。実は、8日夜のPrime Newsに出たケント・ギルバートも「アメリカ人は fair ではないと言われるのを最も嫌うのだ」と指摘していた。それは私も「最後の切り札になる」と十分に承知している。

こういうトランプ大統領の言葉遣いというか表現を聞いていると、その狙いとする先は明らかに38%から徐々に拡大しつつある(されつつある?)岩盤の非インテリ階層の支持者たち向けであると思える。しかも、彼の支持層である嘗ての少数民族(今では minorities と複数で表現される)は6,000万人以上も増えて、如何にトランプ大統領が強硬な対移民政策を採られても、増加の一途であろう。そこには、彼が制限する相手が支持層に回っていくという皮肉な現象もあると、私は見ているのだ。

と言うことは、私は「トランプ大統領にとっては仮令民主党に下院で過半数を獲られても、彼の支持層の非インテリ階層やプーアホワイト以下を抑えておく以上、議会運営も安泰だし、次期大統領選挙に勝利する可能性は揺るぎない方向に向かっていることになるのだ」と思って見ている。勿論、トランプ大統領の再選にとっての危険な材料はCNNの記者ではないがロシア疑惑等々数多くあるとは思う。だが、我が国を敢えて“unfair”と罵っても「支持層の確保と拡大を図っておけば」との作戦のように見えるのだ。

我が国からは「自動車の輸入と貿易黒字の件についてのご発言は unfair ですよ」と指摘するのまでは良いだろう。だが、同盟国として、また安倍総理が築き上げられた信頼感までが揺らぐような事態を招くことがないように注意すべきだろうとは思っている。